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 今年もジュニアのグランプリシリーズ(以下、JGP)が8月下旬から10月中旬にかけて全7試合行われました。全体的にロシア勢の活躍が目立つ一方、日本勢は苦戦を強いられる結果となりました。そんなJGP全体の結果を女子、男子、ペア、アイスダンスの順に振り返りつつ、それぞれのファイナルの展望を占ってみたいと思います。


Junior Grand Prix Standings Ladies  女子のスタンディング(シリーズ全体の順位)が見られます。
Junior Grand Prix Standings Men  男子のスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Standings Pairs  ペアのスタンディングが見られます。
Junior Grand Prix Ice Dance Standins  アイスダンスのスタンディングが見られます。

*****

《女子シングル》

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①アレクサンドラ・トゥルソワ(ロシア):30ポイント オーストラリア大会優勝、ベラルーシ大会優勝
②ソフィア・サモドゥロワ(ロシア):30ポイント クロアチア大会優勝、イタリア大会優勝
③アリョーナ・コストルナヤ(ロシア):28ポイント ポーランド大会優勝、イタリア大会2位
④ダリア・パネンコワ(ロシア):28ポイント ラトビア大会優勝、ポーランド大会2位
⑤アナスタシア・タラカノワ(ロシア):26ポイント オーストリア大会優勝、クロアチア大会2位
⑥紀平梨花(日本):24ポイント ラトビア大会2位、イタリア大会3位
―――
補欠⑦山下真瑚(日本):24ポイント オーストリア大会3位、クロアチア大会2位
補欠⑧荒木菜那(日本):22ポイント ベラルーシ大会2位、イタリア大会4位
補欠⑨イム・ウンス(韓国):22ポイント オーストリア大会2位、ポーランド大会4位



 女子は全7試合を全てロシア選手が制するという女子では史上初めての快挙を達成(ペアでは08/09シーズンにロシア勢の全試合優勝がありますが、この時は全9試合制でペアの実施は5試合のみでした)。そしてファイナルはロシア選手5人、日本選手1人という圧倒的にロシア有利の顔ぶれとなりました。
 その中でもアレクサンドラ・トゥルソワ、ソフィア・サモドゥロワの両選手は2試合とも優勝で安定した成績を残しました。
 トゥルソワ選手は今季からのJGP参戦という新勢力ですが、何といっても4サルコウに挑戦中というのは特筆すべきことでしょう。まだ試合での成功はありませんが、成功となれば安藤美姫さん以来女子では史上2人目の成功者となるので本当に楽しみだなと思います。もちろん4サルコウ以外でも3ルッツ+3ループ、3フリップ+3ループ、3ルッツ+3トゥループとさまざまな組み合わせの3+3をポンポン跳んでいて、さらにステップシークエンスやスピンでも確実にレベル4が取れるという、今のところ弱点と言える弱点が見当たらないほどの均整の取れた完成度の高い選手だなと思います。ただ、ファイナル優勝のためにはやはり4サルコウの失敗を最小限にとどめることが肝心かなと思うので、回転不足であってもダウングレード(大幅な回転不足)ではなくアンダーローテーション(軽度の回転不足)、体を締めてパンクなく跳び切れれば、もちろん成功すれば最高ですが、たとえ成功しなくても大きな得点ロスにはならないので優勝を引き寄せられるのかなという気がします。
 一方のサモドゥロワ選手はJGP参戦2季目。2試合ともSP3位からフリー1位で追い上げるというパターンで優勝しているのですが、ファイナルではショートで出遅れると命取りになる危険性がありますから、やはりショートを完璧に仕上げることが優勝に向けての鍵になりそうですね。ジャンプ構成としてはショートは2つのジャンプ要素を後半に、フリーでは7つのジャンプ要素のうち4つを後半に配置していて、最近では6つ、ないしは7つ全てを後半に跳ぶという構成を組むロシア選手も増えてきていることを考えると、わりとオーソドックスな構成なのですが、その分大崩れはしないという意味で強みになっているのかなと思います。
 ランキング3位のアリョーナ・コストルナヤ選手は成績こそ1位と2位ですが、2試合のスコア合計は390.06点と1位のトゥルソワ選手の394.01点にも迫る高い得点を出していますし、自己ベストは197.91点と今季の女子ジュニアの最高記録をマークしていて、トゥルソワ選手の対抗馬筆頭と言えますね。ジャンプ構成はショートはジャンプ要素3つ全て後半、フリーは6つのジャンプ要素を後半に固めてた最近隆盛の戦略で、やはり技術点を稼ぎやすい構成になっています。
 4位のダリア・パネンコワ選手はショート、フリー通して全てのジャンプを後半に組み込む構成。同じエテリ・トゥトベリーゼコーチ門下生であるアリーナ・ザギトワ選手の戦略を受け継いでいます。最も点を稼ぎやすい方法であるのは間違いないですが、その分一つ失敗を犯したときにその流れに飲み込まれやすいというリスクもあって、ラトビア大会は優勝こそしたもののそうした穴にハマってしまって得点を伸ばし切れなかったという試合だったので、ファイナルでもその点の成否が順位を左右しそうです。
 5位のアナスタシア・タラカノワ選手は優勝したオーストリア大会こそ素晴らしい出来で196.68点とハイスコアをマークしましたが、2戦目のクロアチア大会は3度転倒とフリーで大崩れして3位にとどまりました。そういった部分でまだ安定感はあまりない選手かもしれないのですが、やはり爆発力のある構成は組んでいるので、フリーをまとめられれば優勝争いにも絡んでくるのではないでしょうか。
 そして唯一のロシア勢以外のファイナリストとなったのが日本の紀平梨花選手です。今季も毎試合大技3アクセルに挑んでいて、完璧な成功は8月のアジアンオープンの1回のみですが、回転自体はJGPの2試合とも認定されているので紙一重かなと思います。あとは他のジャンプでのミスをいかに減らせるか、優勝争いということを考えると3アクセルを決めた上でほかのジャンプも全て完璧に跳ぶくらいの内容でないとロシア選手たちと張り合えないのかなと思うので、うまくピークを合わせてベストな状態で臨んでほしいですね。
 改めてこうしてファイナリストの顔ぶれを見渡すと、紀平選手以外は全員初出場ということで、昨季のファイナリストだったアリーナ・ザギトワ選手、本田真凛選手、坂本花織選手の3人がシニアに上がったとはいえ、ジュニアの移り変わりの早さを感じますね。特にロシアは昨季ファイナルに進んだアナスタシア・グバノワ選手やエリザヴェータ・ヌグマノワ選手(ヌグマノワ選手は補欠からの繰り上がり)が今季もジュニアであるにもかかわらず目立った活躍ができなかったというのが、本当にロシア女子フィギュア界の弱肉強食ぶりを如実に表していて、この子たちの中で一体何人が生き残れるのだろうと思ってしまいますね。
 7位以下を見ますと、7、8位と日本勢が続いていて、良いところまでは行ったけれどもやはりロシアの壁に跳ね返されてしまったという感が否めませんね。そして韓国勢が9、12、13位にランクインしていて、昨季以上の好成績ということで強化、育成の成果が表れてきていますね。また、強豪国アメリカは昨季は10位台にさえ一人もランクインしていなかったのと比べると、今季は10位台に2人が入っているという点で昨季よりは健闘と言えるかもしれません。


《男子シングル》

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①アレクセイ・エロホフ(ロシア):30ポイント ベラルーシ大会優勝、ポーランド大会優勝
②アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ):30ポイント オーストラリア大会優勝、クロアチア大会優勝
③カムデン・プルキネン(アメリカ):28ポイント オーストリア大会優勝、ポーランド大会2位
④須本光希(日本):24ポイント ラトビア大会優勝、クロアチア大会4位
⑤マカール・イグナトフ(ロシア):24ポイント ラトビア大会2位、クロアチア大会3位
⑥アンドリュー・トルガシェフ(アメリカ):22ポイント ベラルーシ大会2位、イタリア大会4位
―――
補欠⑦ジョセフ・ファン(カナダ):22ポイント オーストラリア大会4位、クロアチア大会2位
補欠⑧リュック・エコノミド(フランス):22ポイント オーストリア大会2位、ポーランド大会4位
補欠⑨ロマン・サヴォシン(ロシア):22ポイント オーストラリア大会2位、ラトビア大会4位



 男子はアメリカ勢3名、ロシア勢2名、日本勢1位名というファイナルの顔ぶれとなりました。
 1位でファイナルに駒を進めたアレクセイ・エロホフ選手は2試合のスコア合計が454.68点ということで頭一つ抜きん出ています。ジャンプは4サルコウと4トゥループの2種類の4回転を習得していてそれが大きな得点源となっているわけですが、まだ安定感抜群というところまでは行っていないように見えるので、優勝できるか否かはやはり4回転をいかにまとめられるかに懸かっているのかなと思いますね。
 2位に入ったのは今年のファイナリストの中では唯一のファイナル経験者であるアレクセイ・クラスノジョン選手。クラスノジョン選手といえば史上初めて4ループを公式試合で跳んで回転を認定された選手ですが、今季はその4ループに苦戦していて回り切っての着氷はまだありません。クラスノジョン選手の場合、4回転はその1本のみなので、そのほかの3アクセルや3+3といった得点源となるジャンプを確実に決めることが優勝へ向けての必須条件ですね。
 3位のカムデン・プルキネン選手は4回転はまだプログラムに組み込んでいないので、4回転を跳ぶ選手たちに勝つためには全てのジャンプを確実に成功させることが必要かと思います。まだその3回転にも取りこぼしが多々見られるので、ファイナルではさらなるジャンプの精度とプログラムとしての完成度に期待ですね。
 そして日本から唯一の出場となったのが須本光希選手。日本勢のファイナル進出は2季前の山本草太選手以来です。須本選手もプルキネン選手同様、4回転はまだ持っておらず3アクセルが軸となります。優勝したラトビア大会はその3アクセルのミスを最小限に抑えたことが功を奏し、一方クロアチア大会は3アクセルが2本とも大きく乱れてしまったことが影響を及ぼし4位に終わりました。今回のファイナリストの中で須本選手のパーソナルベストは最も低いので、メダル争い、引いては優勝争いに絡むためには全ての要素をクリーンにこなし自己ベストを更新するくらいの勢いでないと難しいのかなと感じますね。
 5位のマカール・イグナトフ選手は4トゥループの使い手で、今のところ比較的安定感もあるように思われます。ただ、そのほかの3回転でちょこちょこミスを犯してしまっているのがもったいないので、4回転を決めてさらに3回転もまとめられれば優勝争いにも食い込めそうですね。
 6位のアンドリュー・トルガシェフ選手も4トゥループを習得していますが、3アクセルはまだプログラムに組み込んでいません。その分ルールによって4回転を入れられないSPであまり高得点は望めないので、フリーでどれだけ点を積み重ねられるかが勝負の鍵になりそうです。
 7位以下について見てみますと、補欠3人は全員22ポイントということでファイナリストも含め実力は拮抗しているのがわかりますが、ファイナルに進んだ6人は皆2試合のスコア合計が410点を超えていますから、つまり1試合平均で205点以上をしっかり取れる安定感がないと、1試合の爆発力だけでは接戦を勝ち抜くのは難しいということが言えますね。
 その中で順位としては11位だったものの、スコア合計が421.97点だったイタリアのマッテオ・リッツォ選手はおもしろい存在だなと感じました。すでにシニアのチャレンジャーシリーズにも参戦して、ロンバルディアトロフィー、ネーベルホルントロフィー両方ともで220点台をマークしているので、JGP1戦目のポーランド大会のフリーで大崩れして6位にならなければファイナルの可能性も大いにあったと思うと、惜しかったですね。ただ、今後が楽しみな選手なのは間違いないです。


《ペア》

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①ダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキン組(ロシア):28ポイント ベラルーシ大会優勝、ポーランド大会2位
②アポリナリーア・パンフィロワ&ドミトリー・リロフ組(ロシア):26ポイント ラトビア大会優勝、ベラルーシ大会3位
③エカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組(オーストラリア):24ポイント ラトビア大会4位、ポーランド大会優勝
④アナスタシア・ポルヤノワ&ドミトリー・ソポト組(ロシア):24ポイント ベラルーシ大会2位、ポーランド大会3位
⑤アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組(ロシア):24ポイント ラトビア大会2位、クロアチア大会3位
⑥高誉萌&解衆組(中国):22ポイント クロアチア大会2位、ポーランド大会4位
―――
補欠⑦ポリーナ・コスチュコヴィッチ&ドミトリー・イアリン組(ロシア):20ポイント クロアチア大会優勝、ポーランド大会6位
補欠⑧イヴリン・ウォルシュ&トレント・ミショー組(カナダ):20ポイント ラトビア大会3位、クロアチア大会4位
補欠⑨ライケン・ロクリー&キーナン・プロチュノウ組(アメリカ):14ポイント ラトビア大会5位、クロアチア大会5位



 ペアは6組中4組がロシア勢となり、ロシアは5年連続で4組以上の派遣となりました。
 中でも1位でファイナル進出のパブリュチェンコ&ホディキン組は2試合通じて大きなミスというのが少なく、最も安定感のあるペアと言えるでしょう。2試合のスコア合計も331.04点と抜きん出ていて、間違いなく優勝争いに絡んでくると思います。
 2位のパンフィロワ&リロフ組は順位こそ2位ですが、スコアの合計は307.72点とファイナルに進んだ6組の中で最も低い数字となっています。まだ安定感には欠けているという点で、ファイナルで自分たちより自己ベストの高いライバルたちを相手にどこまで上位に食い込めるか注目ですね。
 そして3位のアレクサンドロフスカヤ&ウィンザー組は昨季の世界ジュニア王者であり、先日のネーベルホルン杯ではシニアに交じって190点台という高得点をマークして3位に入ったという実績もあり、やはり優勝候補筆頭と言えます。もちろんジュニアとシニアではルールも異なるので、シニアの大会で出した得点をそのまま当てはめられるわけではないですが、実力を出し切れればほかのペアを圧倒できるだけの力は持っていると思いますね。
 4位のポルヤノワ&ソポト組はスコア合計ではパブリュチェンコ&ホディキン組に次ぐ2位で、大きなミスの少ない安定型のペアと言えます。また、男性のソポト選手は前のパートナーとのペアでJGPファイナル優勝、世界ジュニア3位と好成績を収めた経験もあり、そうした経験が今度のファイナルでも活きてくるのではないかと思います。
 5位のボイコワ&コズロフスキー組は昨年のJGPファイナル3位、世界ジュニア2位の実力者。ですが、今年のJGP2試合では全体的にミスや取りこぼしが多く少し安定感を欠いています。特にジャンプ系エレメンツでのミスが多いので、ファイナルに向けてどれだけ課題を修正できるかが優勝争いに絡むためのポイントですね。
 6位の高&解組は昨季の世界ジュニア銅メダリスト。JGP2試合通じて比較的ミスも少なく安定しているので、確実にエレメンツをこなしていければ優勝争いに割って入る可能性も十分に秘めているのかなと思います。


《アイスダンス》

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①クリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組(アメリカ):30ポイント オーストリア大会優勝、ベラルーシ大会優勝
②アナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組(ロシア):28ポイント ベラルーシ大会2位、ポーランド大会優勝
③ソフィア・ポリシュチュク&アレクサンデル・ヴァフノフ組(ロシア):28ポイント オーストラリア大会優勝、イタリア大会2位
④マージョリー・ラジョワ&ザカリー・ラガ組(カナダ):28ポイント オーストラリア大会2位、クロアチア大会優勝
⑤ソフィア・シェフチェンコ&イゴール・エレメンコ組(ロシア):28ポイント ラトビア大会優勝、クロアチア大会2位
⑥アリーナ・ウシャコワ&マキシム・ネクラソフ組(ロシア):26ポイント ベラルーシ大会3位、イタリア大会優勝
―――
補欠⑦クセニア・コンキワ&グリゴリー・ヤクシェフ組(ロシア):24ポイント オーストリア大会2位、クロアチア大会3位
補欠⑧エリザヴェータ・フダイベルディエワ&ニキータ・ナザロフ組(ロシア):24ポイント オーストラリア大会3位、ポーランド大会2位
補欠⑨キャロライン・グリーン&ゴードン・グリーン組(アメリカ):22ポイント ラトビア大会3位、ポーランド大会3位



 アイスダンスはこちらも6組中4組がロシア勢と圧倒的な層の厚さを見せつけ、アメリカ、カナダというアイスダンス強豪国が続く形となりました。
 そんな中1位でファイナル進出を決めたのがカレイラ&ポノマレンコ組。昨季の世界ジュニアでも3位という実力者ですが、優勝にはなかなか届かず常に2位、3位に甘んじてきた過去があり、今季ようやくJGP初優勝ということできっかけをつかんで飛躍したという感じですね。自己ベストでも6組の中で一歩リードしているので、普通にいつもどおりのパフォーマンスができれば、ファイナル初制覇は目の前なのではないでしょうか。
 2位のスコプツォワ&アリョーシン組も世界ジュニア5位と実績のあるカップルで、今季はすでにSDで自己ベストを更新し、トータルでも自己ベストに迫る得点をマークしているということで、勢いがあるカップルなのかなと思います。その自己ベストでカレイラ&ポノマレンコ組に最も近いスコアを持っているということもあり、カレイラ&ポノマレンコ組の優勝を阻むとすればこのカップルなのではないかという気もしますね。
 3位のポリシュチュク&ヴァフノフ組は過去にもJGPで何度も表彰台に立っていますが、ファイナル進出は初めて。今季は自己ベストを2度更新していて、こちらも波に乗っているカップルと言えます。
 4位のラジョワ&ラガ組は昨季の世界ジュニア6位。JGP2戦目のクロアチア大会で大台の150点台に乗せて初優勝していて、成長著しいカップルですね。
 5位のシェフチェンコ&エレメンコ組、6位のウシャコワ&ネクラソフ組はパーソナルベストは140点台とまだ低いですが、今季自己ベストを更新しているということでファイナルでもその伸びしろに期待できるカップルですね。



 さて、JGPについてざっと振り返ってみました。毎年言っているような気もしますが、どこを見渡してもロシアは強いなーと思うばかりです。日本の紀平、須本の両選手には自分らしい演技でロシアを始めとした世界の壁を打ち破ってほしいと思います。
 そしていよいよ今日からシニアのGPが開幕。ロステレコム杯にはさっそく男女の世界チャンピオンがお目見えということで、レベルの高い戦いが繰り広げられることは間違いありません。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、女子の画像、ペアの画像、アイスダンスの画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、男子の画像はフィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。


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# by hitsujigusa | 2017-10-20 17:20 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 10月7日、さいたまのさいたまスーパーアリーナにて恒例のジャパンオープンが開催されました。フィギュアファンの皆様にとってはおなじみですが、ジャパンオープンは日本、欧州、北米という地域別で争われる団体戦。各チーム男女2名ずつで構成され、フリーのみを行い、その得点を足し算し、チーム別の順位を決定します。
 さっそく結果をお伝えしますと、優勝したのは欧州チームで、2位は日本、3位は北米となりました。ここからはチーム別に各選手の演技内容を振り返っていきたいと思います。

Japan Open 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****


●日本チーム

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 日本チームは三原舞依選手、本田真凛選手、宇野昌磨選手、そしてプロスケーターの織田信成さんの4人が今回のメンバー。三原、本田の両選手は初出場となりました。チームの得点は614.93点で、0.42点差で惜しくも欧州チームに届きませんでした。
 女子二人は非公式ながら自己ベストを上回るスコアでチームに大いに貢献。三原選手は予定していたエレメンツを全てクリーンにこなす圧巻の演技で147.83点をマークし、女子の2位に入りました。9月のオータムクラシックインターナショナルでは3フリップのエッジエラーやジャンプミスがあり、また、表現面でも動きが小さくなってしまうなど課題が見つかった三原選手ですが、それから2週間余りでまるで別人のように躍動しましたね。もちろん本当に大切なのはこれからですが、技術は相変わらず安定していますし、短い期間での切り換え力、修正力も光っていて、やはり強いなと感じさせられました。シニア2季目で好成績を期待されるプレッシャー、4年に1度のオリンピックシーズンという特別感をあまり気にすることなく乗り越えられれば、五輪の切符にぐっと近づくんじゃないかなと思いますね。
 今季シニアデビューの本田選手もパーソナルベストより高いスコアをマークしました。が、内容的には後半のジャンプにミスがあり冷静なリカバリーも見せたものの完璧ではありませんでした。また、自己ベストを上回る得点でも順位では6人中5位ということでジュニアとシニアの違いを痛感させられる試合ともなり、本田選手自身悔しさを露わにしました。ジュニアでは申し分ない成績を残し、メディアでも取り上げられる機会の多い本田選手ですが、あくまでもシニアでは実績ゼロのルーキー。注目度が高い分、期待に応えなければいけないというプレッシャーもあるかもしれませんが、本来シニア1年目の選手というのは何も失うものがなく、怖いもの知らずでいろんなことにチャレンジできるはずです。シニアデビューシーズンが五輪シーズンと重なったがゆえに、五輪代表に選ばれるためにはすぐに結果を出さなければいけないという難しさもありますが、シニア1年目だからこその怖いもの知らずの特権を活かして、いろんな場面で攻めていってほしいですね。
 世界選手権銀メダリストの宇野選手はチームをリードする役割を期待されましたが、練習からジャンプが不調だったようで男子の3位にとどまりました。冒頭の4ループは完璧に成功させて波に乗るかに見えましたが、続く4サルコウは着氷で大きく乱れ、後半の4フリップは転倒、4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)、3アクセルからのコンビネーションジャンプも単独にとミス連発の演技となってしまいました。最近見ないくらい荒れた内容でしたが、それだけ4回転5本という構成は跳び切るだけで至難ということを改めて感じさせられましたね。ただ、宇野選手の実力を考えればこの構成は無謀な挑戦ではありませんし、ピーキングさえうまくいけば確実にものにできる構成だと思うので、ジャンプの成功はもちろんのこと、全ての要素を含めたプログラムとしての完成も楽しみにしたいと思います。
 2年連続出場の織田さんは4トゥループ2本、3アクセル2本という昨年より難度を上げた構成に挑戦。4トゥループ2本は見事着氷しましたが、3アクセルは2本とも失敗し昨年のような“自己ベスト更新”とはならず。ですが4位と健闘し、引退からもうすぐ4年経つにもかかわらず、“現役感”満載の演技で会場を沸かせました。


●欧州チーム

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 欧州は世界女王エフゲニア・メドベデワ選手、世界ジュニア女王アリーナ・ザギトワ選手のロシア女子二人、前世界王者のハビエル・フェルナンデス選手、イスラエルのアレクセイ・ビチェンコ選手という顔ぶれとなりました。チームの得点は615.35点で3年ぶりの優勝を果たしました。
 チームを引っ張ったのはやはり世界選手権2連覇中の絶対女王メドベデワ選手。内容的には若干苦手としている3ルッツの踏み切りが不正確であると判定されたのが気になるくらいで、いつもどおりの安定した演技で152.08点をマークし、もちろん1位でした。ただ、ジャンプ構成は9月のオンドレイネペラトロフィーから変更されていて、オンドレイネペラではフリーは前半にジャンプは2アクセル1つのみだったのが、今大会は3+3と3ルッツを前半に跳ぶという昨季の構成に戻していて、メドベデワ選手の中で前の構成に何かしっくりこないところがあったのかなと想像します。元々昨季の構成でもメドベデワ選手は無敵状態だったわけで、それをあえてさらに難しい構成にしたということ自体が、自分の現状にあぐらをかかず高みを目指すというアグレッシブな姿勢がうかがえて素晴らしいなと思うのですが、彼女ほどの実力と実績があれば五輪シーズンである今季は新しい試みをせず、着実に足元を固めていく戦略の方がより金メダルは確実なものになるのかなという気がします。メドベデワ選手を将来的におびやかす選手がいるとすればザギトワ選手が一番怖い存在かなと個人的には思いますが、いくら勢いがあっても今季中にメドベデワ選手の域にまで達するのは無理でしょうから、メドベデワ選手はこれまでどおり自分らしい演技を心がけていればおのずと五輪の金メダルは近づいてくるのではないでしょうか。
 そのザギトワ選手は、全ジャンプを後半に固めたいつもの構成をクリーンにこなし3位となりました。点数的には9月のロンバルディアトロフィーよりは落ちましたが、内容的には相変わらずの安定感で、GPに向けてさらに勢いづかせる演技でしたね。こうした勢いや流れというのはソチ五輪シーズンのユリア・リプニツカヤ選手を思わせる部分があり、今季に関してはこの流れがオリンピックまでは継続されるんじゃないかという気がします。
 前世界王者のフェルナンデス選手はちょこちょこ3回転が2回転に抜けるミスはありましたが、全体の流れを途切れさせることなくベテランらしい落ち着いた演技を披露し、189.47点で1位となりました。スロースターターのフェルナンデス選手にとって今はまだ自分の状態を様子見しているような段階かもしれませんが、試合に合わせる力はさすがにピカイチですね。現在4回転は3種類、4種類、さらには5種類という時代にまで来ていますが、あくまで2種類で完成度を追い求めるフェルナンデス選手の戦法がどういった結果をもたらすのか注目したいと思います。
 当初出場を予定していたトマシュ・ベルネルさんに代わって出場が決まったビチェンコ選手は、ミスが相次ぎ最下位に終わりました。ビチェンコ選手は9月のオータムクラシックインターナショナルに当初エントリーしていたのですが、結局そちらに出場はせずジャパンオープンに参加したということを考えると、ジャパンオープンの出場が決まったからオータムクラシックはキャンセルしたということなのかもしれません。ただ、オータムクラシックとジャパンオープンでは勝手が違いますし、9月下旬の大会と10月初旬の大会とでは調整の仕方も変わってくるので、そういった部分で調整の難しさはあったのかなと想像します。ビチェンコ選手のGP初戦はNHK杯、次こそは日本でビチェンコ選手らしい演技が見られることを期待したいですね。


●北米チーム

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 北米チームは全米女王のカレン・チェン選手、ベテランの長洲未来選手、全米王者のネイサン・チェン選手、今年現役引退を表明したジェレミー・アボットさんという全員アメリカのメンバー構成に。チームの得点は572.95点で2年連続の3位にとどまりました。
 昨季大躍進を遂げた男子のチェン選手は、9月のUSインターナショナルクラシックから4回転の本数を増やして臨み、4フリップでの転倒や4サルコウのパンクなどはあったものの、4ループと4ルッツはクリーンに着氷させ、178.46点で2位に入りました。それでもまだまだ本調子ではなさそうですし、4回転の数もさらに増えることが予想されますから、GPでギアチェンジして良い意味で調子に乗ったチェン選手の姿が見られることを楽しみにしたいですね。
 先日引退を発表したばかりのアボットさんは3年連続の出場。4回転は含まない構成で得点源としては3アクセルを軸とした演技でしたが、クリーンに着氷することは叶わず5位となりました。GPシリーズや全米選手権など公式試合に出場したのは14/15シーズンが最後で、その後は進退を明確にはせずジャパンオープンやアイスショーで活躍していたアボット選手。なので引退と聞いてもあまり実感は沸かないのですが、改めてお疲れさまと言いたいですね。ジャンプが何よりも華である男子フィギュア界の中においては、ジャンパータイプではないアボットさんは決して目立つ存在ではありませんでしたが、無駄な力なくすいすい伸びるスケーティングは随一の美しさで、そこから繰り広げられる透明感と気品溢れる表現力は唯一無二で忘れられません。選手を引退しても、あのスケーティングで魅せる舞台はたくさんあると思いますから、第2の人生を楽しく歩んでほしいと思います。
 女子は出場予定だったグレイシー・ゴールド選手がコンディション不良のため欠場、その代わりとして長洲選手が3年ぶりに出場しました。冒頭では先日のUSインターナショナルクラシックで初成功させた大技3アクセルに挑戦。両足着氷でバランスを崩し惜しくも成功とはなりませんでしたが、回転は認定されました。そのほかはミスらしいミスなく滑り切り、非公式ながら自己ベストを上回る134.69点で4位となりました。3アクセルは残念でしたが、空中で身体が斜めになってしまったことによる失敗でそこまで悪い形での失敗ではなかったと思うので、そう遠くないうちに完全な形での成功も見られるのかなという気がします。また、それ以外の部分でも一つもアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られていないというのが前戦から修正されていて良かったですね。この調子でGPにも良い流れを継続させてほしいと思います。
 一方、全米女王のチェン選手はアンダーローテーションや転倒といったミスが重なり6位にとどまりました。チェン選手も9月のUSインターナショナルクラシックに出場して回転不足を多々取られたのですが、まだその部分での修正が上手くいっていないようですね。ほかのアメリカ女子たちに後れを取らないためにも、次のスケートカナダまでには課題を乗り越えたいところですし、シーズン序盤から存在感をアピールできるかできないかというところでオリンピックの代表争いにも関係してくると思うので、全米女王のチェン選手といえどもうかうかしていられない状況ですね。



 ジャパンオープン2017の記事は以上です。さて、ここから選手たちは本当の戦いに入っていきます。これまでは自分の状態を確かめたりじっくりと調整に時間を費やしたりしてきた選手たちも、オリンピック出場に向けて結果が求められる試合が続いていくことになります。4年に1度のオリンピックシーズン、どんな戦いが繰り広げられるのか、どんな予想外のことが起きるのか、楽しみです。では。


:記事冒頭の全選手の集合画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、日本チームの画像、北米チームの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、欧州チームの画像は、フィギュアスケート情報サイト「EUROPEONICE.COM」の公式ツイッターから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
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オータムクラシックインターナショナル2017&オンドレイネペラトロフィー2017―世界王者に明暗 2017年9月30日
ネーベルホルントロフィー2017&フィンランディアトロフィー2017―日本、五輪団体戦出場へ前進 2017年10月11日

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# by hitsujigusa | 2017-10-14 01:58 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 9月27日から30日にかけてドイツのオーベルストドルフにて行われたネーベルホルントロフィーと10月6日から8日にかけてフィンランドのエスポーにて行われたフィンランディアトロフィー。前者は平昌オリンピックのまだ埋まっていない国別の出場枠をかけた戦い、後者は世界の覇権を争うトップ選手たちのGPシリーズ前の最後の調整といった意味合いが強い試合となり、それぞれ質の異なる盛り上がりを見せました。両大会の模様をざっくりと振り返ってみたいと思います。

*****

《ネーベルホルントロフィー2017》

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 今回はいつもとは違って変則的ですがアイスダンスの結果から。優勝はイギリスのペニー・クームズ&ニコラス・バックランド組。SDは全てのエレメンツを高いレベルでまとめて唯一の70点台に乗せて堂々の首位発進。FDはツイズルで細かなミスがありレベルは取りこぼしましたが、そのほかのエレメンツでは全て1点以上の加点を積み重ね、他を寄せつけず自己ベストで完全優勝となりました。16/17シーズンはクームズ選手の怪我によって全ての試合を欠場したクームズ&バックランド組。今大会が2季ぶりの復帰戦となったわけですが、さすが世界選手権で入賞経験のあるカップルとあって、他のカップルとの格の違いを見せつけた形となりましたね。スコアも自己ベストを4点近く一気に更新ということで、復帰シーズンを申し分ない形でスタートできたのではないでしょうか。
 そして2位に入ったのが日本の村元哉中&クリス・リード組です。SDはクリーンなエレメンツを揃えて自己ベストまで約1点というスコアで2位につけると、FDは全てのエレメンツをレベル3もしくは4と高いレベルでまとめて自己ベストを4点近く更新。トータルでもパーソナルベストをマークし、銀メダルを獲得しました。まだ平昌五輪のアイスダンスの出場枠を獲得していない日本にとって、この最終予選の舞台で枠を取れるか否かはアイスダンスの枠のみならず、日本チームとして団体戦の出場権も懸かる重要な試合でした。そのプレッシャーが重くのしかかる場面で、自己ベスト更新の演技というのは本当に素晴らしかったですね。思えば4年前のこの大会でクリス選手と姉のキャシーさんとのカップルで枠を獲得したのですが、現在は村元選手とクリス選手という結成3季目とまだ歴史は浅いカップルではあるものの、着実に地道に進化を遂げて、日本のアイスダンスのレベルを底上げしてくれているように感じます。このあとのシーズンも怪我なく順調に、オリンピック出場へ向けて頑張ってほしいですね。
 3位はドイツのカヴィタ・ローレンツ&ヨディ・ポリゾアキス組です。SDは目立ったミスなくエレメンツをこなして3位と好発進。FDはステップがレベル2にとどまる取りこぼしはありましたが、ほかはおおむねミスらしいミスなく滑り切り3位、総合でも3位とチャレンジャーシリーズでは初めての表彰台を射止めました。


 続いてはペアです。優勝したのは世界選手権2017の銅メダリスト、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。SPは冒頭の3ツイストで加点2という極めて高い評価を受けると、続く3トゥループ、スロー3ループも完璧に成功。珍しく演技時間超過で1点減点はありましたが、内容的にはほぼノーミスでトップに立ちます。フリーは大技4ツイストに挑み、加点こそ伸びなかったものの大きなミスなくまとめると、3サルコウ、スロー3サルコウと続けて着氷。次のコンビネーションジャンプがパンクするミスはありましたが、その後は目立ったミスなく演じ切り、国際大会では自身2度目となる140点台をマークしてトップの座を守り切りました。
 2位は世界選手権2017銀メダル、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。SPは大技スロー3アクセルに果敢に挑戦しますがあえなく転倒。ソロジャンプの3サルコウでも乱れがあり、2位にとどまります。フリーは前半にジャンプ系エレメンツを固め、まずはショート同様にスロー3アクセルに挑みましたが再び転倒。さらに3トゥループ+3トゥループのジャンプシークエンスでも転倒、3サルコウは2回転にとミスが重なります。その後のエレメンツは全てレベル4とさすがの実力を見せつけましたが、タラソワ&モロゾフ組には及びませんでした。
 3位は世界ジュニア選手権2017の王者、オーストラリアのエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組。ショートは全エレメンツをクリーンにこなし自己ベストを2点ほど更新して4位発進。フリーはスピンでところどころ取りこぼしは散見されましたが、それでもGOEでマイナスが付く要素は一つもなく実力を出し切って自己ベストを20点以上更新。トータルでも26点以上もパーソナルベストを上回り、シニアの国際大会で初めてのメダルを手にしました。
 日本の須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組は11位となり、平昌五輪での日本のペアの出場権獲得はなりませんでした。SPは序盤のサイドバイサイドの3サルコウで転倒。そのほかのエレメンツは大きなミスなくまとめましたが11位にとどまります。挽回したいフリーでしたが、再び3サルコウで転倒。その後も2つの転倒があり、リフトやスピンでもミスと精彩を欠き13位、総合11位と順位を上げられませんでした。須藤&ブードロー=オデ組のパーソナルベストは164.96点で、それを今大会のペアの結果と照らし合わせても順位は11位ということで、どちらにしてもなかなか厳しい戦いだったのかなと思うのですが、点数的、順位的なことよりも、内容的に彼ららしい演技がほとんどできなかったことの方が大きいのかなと思います。GP初戦のロステレコム杯では何よりも二人らしい演技が見られることを祈りたいですね。


 次は男子。優勝はベルギーのヨリク・ヘンドリックス選手です。ショート、フリーともに4回転には挑まず、その分確実にできるエレメンツを丁寧にこなし、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4という完成度の高い演技を見せ、2位に27点もの差をつけての優勝となりました。
 2位はアメリカのアレクサンダー・ジョンソン選手。こちらもショート、フリーともに4回転はなしで、SPは全体的にクオリティーの高いエレメンツを揃えて2位と好発進。フリーは得点源の3アクセルでミスが相次ぎましたが、それ以外のエレメンツはおおむねコンスタントにまとめ、僅差ながら2位の位置を死守しました。
 3位はスウェーデンのアレクサンデル・マヨロフ選手。ショートは冒頭の4トゥループのミスを最小限に抑えて3位。フリーも4トゥループや3アクセルを大きなミスなく揃えて3位のままフィニッシュしました。

 最後は女子です。優勝はオーストラリアのカイラ二・クレイン選手。ショート、フリー通じて3+3は組み込まずに臨み、ところどころ細かいミスはありましたが大きくリズムを崩すことはなく、ショート1位、フリー2位、総合1位でチャレンジャーシリーズ初優勝を成し遂げました。
 2位はスウェーデンのマチルダ・アルゴットソン選手。こちらも大会を通じて大きなミスなく、また、スピンはほとんどがレベル4と取りこぼしも少なく、自己ベストを12点以上更新。クレイン選手とは0.44点差で2位と惜しくも優勝は逃しましたが、チャレンジャーシリーズでは初めての表彰台となりました。
 3位はスイスのアレクシア・パガニーニ選手。ショートは得点源の3+3や3ループでミスがあり6位と出遅れ。フリーでもちょこちょこミスはありましたが、大崩れすることなく耐えた演技でフリー3位、総合でも3位と追い上げました。



《フィンランディアトロフィー2017》

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 まずは女子の結果からです。優勝はロシアの成長株マリア・ソツコワ選手。SPは演技時間超過による減点こそあったものの内容的には大きなミスなくまとめて2位につけ、フリーは終盤の2アクセルの回転不足がミスらしいミスと言えるくらいの完璧に近い演技を披露し自己ベストを更新。トータルでも自己ベストをマークし、逆転での優勝を手にしました。シニア2季目となるソツコワ選手ですが、この時期としては文句なしの好演だったのではないでしょうか。ロシア女子の国内の争いは非常に厳しいですが、国際大会初戦でいきなりの200点超えは好スタートですし、このあとのGPでのジャッジへの印象も良くなりますから、ソツコワ選手がどんな活躍を見せてくれるのか、期待したいですね。
 2位はイタリアのベテラン、カロリーナ・コストナー選手。SPは得点源のコンビネーションジャンプが入らず痛い得点ロスとなりましたが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4に加え高い加点を稼ぎ、首位と0.37点差の3位と好位置につけます。フリーも冒頭からジャンプミスが相次ぎましたが、後半のジャンプは致命的なミスなくまとめて2位、トータルでも2位とベテランの底力を発揮しました。地元開催のロンバルディアトロフィーに続きチャレンジャーシリーズ2戦目の出場となったコストナー選手。得点的には前回も今回もさほど悪くなく、むしろシーズン序盤としては上々という印象ですが、内容的にはまだジャンプが不安定ですね。それでも当たり前のように190点台を出せるのがコストナー選手の凄さで、技術点では若い選手たちの後塵を拝しても、演技構成点では遥かに優位に立っているので、やはり強いなと思います。とはいえシーズンも大詰めの頃になれば、今大会のようなミスをしていてはコストナー選手といえども高難度のジャンプ構成を組む選手たちに追いつけなくなってしまう可能性もあるので、今後コストナー選手がどうレベルアップしてくるかに注目ですね。
 3位は元世界女王、ロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。SPはノーミスの演技で極めて僅差ながら首位発進。しかしフリーは序盤に転倒を含むミスを重ね、後半は挽回を見せたものの得点を伸ばし切れず4位、総合3位と順位を落としました。コストナー選手同様、ロンバルディアトロフィーに続いてチャレンジャーシリーズ2戦目だったトゥクタミシェワ選手。メダルを逃したロンバルディアよりは得点も上積みできて良かったのかなと思うのですが、フリーで崩れてしまったという印象があるので今持っている力を出し切れたという感じではないですね。3アクセルもまた見たいなーという気はしますが、まずはショート、フリーを揃えて、トゥクタミシェワ選手らしい演技というのを楽しみにしたいと思います。
 日本の白岩優奈選手は7位に入りました。SPは冒頭の3+3のセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定。さらに後半の3フリップがパンクして2回転となり規定違反で無得点に。ステップシークエンスやスピンのレベルの取りこぼしもあり、自己ベストより約10点ほど低い得点で8位にとどまります。フリーもまずは3+3からで、出来栄えとしては若干マイナスとなりますが回転不足なく着氷。後半に5つのジャンプ要素を固め、ところどころ細かいミスはありましたが大崩れすることなくまとめ6位、総合7位で大会を終えました。どちらかというと苦さの方が残る試合だったかなと思いますが、ショートのミスをフリーで挽回したのは素晴らしかったですね。8月のアジアンオープンも今大会もジャンプに苦戦している印象でまだ本調子までは遠いのかなと思うのですが、焦らずじっくり本来のジャンプを取り戻してほしいですね。


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 男子の優勝者は世界選手権2016、2017の銅メダリスト、中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。SPは大技4ルッツ+3トゥループと3アクセルを決めたものの、後半の4トゥループが回転不足で転倒し2位発進。フリーも冒頭の4ルッツは成功させますが、続く4サルコウは転倒。後半の2本の4トゥループは着氷しますが、3+3は転倒。ミス連発で得点は自己ベストより40点近く低い得点で3位でしたが、トータルでは1位となり接戦を制しました。ショート、フリーそれぞれで4ルッツをクリーンに下りたのはさすがでしたがほかの4回転ではミスが多く、まだまだプログラム全体をまとめる段階までは行っていないのかなという感じですね。とはいえこれだけのジャンプ構成を組める選手は世界でも稀有ですし、やはりここぞという時の爆発力は恐ろしいものがあり、あとは調子が良くない時にいかにミスを最小限に抑えられるかというのも重要だと思うので、オリンピックメダル候補の一人として目が離せない選手ですね。
 2位は世界ジュニア王者、アメリカのヴィンセント・ジョウ選手です。SPは冒頭で大技4ルッツに挑みますが回転不足で着氷も乱れます。しかし続く4フリップ+3トゥループは完璧に成功。が、後半の3アクセルはこちらも回転不足となり、6位にとどまります。フリーもまずは大技4ルッツから、着氷で片手を氷につきますが回転は認定されます。続く4フリップはショート同様にクリーンに成功。さらに4サルコウも着氷と、前半だけで3種類の4回転を跳び切ります。後半は4トゥループを成功させますが1本目の3アクセルがパンクして1回転に。ちょこちょこミスはありましたが大崩れせずまとめてフリー1位、総合2位に躍り出ました。昨季ジュニアながら全米選手権で2位に食い込み、世界ジュニア選手権では男子史上4人目となる4ルッツを成功させて一躍脚光を浴びたジョウ選手。そしていよいよ今シーズン鳴り物入りでの本格的なシニア参戦となったわけですが、さっそくインパクト大の演技を見せてくれましたね。何といっても昨季習得した最高難度の大技4ルッツもそうですが、国際大会では初めて成功させた4フリップ、4トゥループ、以前から跳んでいる4サルコウとすでに4種類もの4回転を自分のものにしていて、正直ジョウ選手がここまで急激に伸びてくるとは想像以上で驚かされました。昨年のフィンランディアトロフィーでは同じくアメリカのネイサン・チェン選手がシニアデビューで初優勝していますが、まさにその再現のような感じもあり、ジョウ選手が昨季のチェン選手のように一気にスターダムを駆け上がるのか、それともどこかで壁にぶつかるのか、どちらにしろ非常に興味深い存在ですね。
 3位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。ショートは4回転を回避し、確実性の高い構成をクリーンに演じ切り3位につけます。フリーは冒頭で4ルッツに挑戦しますが回転不足で転倒。しかしその後は問題なくジャンプをこなし、1本目の3アクセルは着氷で乱れましたが、2本目の3アクセルはしっかりコンビネーションにして成功。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4とリッポン選手らしさを示しフリー2位、総合3位となりました。昨季は怪我のためにシーズン後半を休養にあてたリッポン選手。久しぶりの実戦となった今大会、まだジャンプの不安定さは見られたものの、リッポン選手らしさは健在といったところも垣間見られ、復帰戦としてはまずまずの内容だったのではないでしょうか。アメリカ男子も次々に強力な若手が登場してきていますが、表現力という点においてはリッポン選手の右に出る者はなかなかいません。今までオリンピックには縁がなかったリッポン選手ですが、今度こそそのチャンスが巡ってくることを祈りたいですね。


 ペアは中国の彭程(ペン・ジャン)&金楊(ジン・ヤン)組が優勝。ショートは全てのエレメンツを高い質で揃えトップ発進。しかしフリーはサイドバイサイドジャンプとスロージャンプでそれぞれ1度ずつ転倒があり2位、総合では1位となりショートのアドバンテージに救われた形となりました。
 2位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組。SPはツイストとスロージャンプで細かなミスがあり3位。フリーもいくつか小さなミスはありましたが全体的にはまとまった演技で1位、総合2位と順位を上げました。
 3位はソチ五輪銀メダル、ロシアのクセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ組。ショートは冒頭のツイストで男性が女性をキャッチする時に長く抱えるような形になってしまい、レベル2どまりの上に減点されるミスがあり3位。巻き返したいフリーでしたが、ツイストはショートと同じようなミスを繰り返してしまいます。その後は難しいスロー3ルッツや3連続コンビネーションジャンプを決め立て直したかに見えましたが、中盤のリフトで女性が落下する大きなミス。さらに2つ目のリフトでも同様に女性が空中でポジションを維持できないまま落下、男性もバランスを崩して転倒します。続くスピンでも男性が体勢を崩し尻もちと信じられないようなミスが相次ぎます。その後の2つの要素は気持ちを切り替えてクリーンにこなしましたが、得点はパーソナルベストから40点ほど低い点数で4位、総合3位に終わりました。


 アイスダンスは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が圧勝しました。SDはほぼ完璧といっていい演技で自己ベストに0.17点と迫るハイスコアで首位。FDは珍しくステップシークエンスで男性のシゼロン選手が転倒するアクシデントがありましたが、それ以外はクオリティーの高いエレメンツを揃え、断トツで今季初戦を制しました。
 2位はロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組。SDはミスも取りこぼしもなくまとまった演技で自身2度目となる70点台で2位と好発進。FDも序盤は上々の滑り出しを見せますが、中盤のステップは女性のステパノワ選手が微妙にバランスを崩す場面もありレベルも2で加点もつかず。リフトの時間超過による減点もあり得点はあまり伸びませんでしたが、ショートと合わせて2位のポジションは揺るぎませんでした。
 3位はデンマークのロランス・フルニエ・ボードリー&ニコライ・ソレンセン組です。SDはステップがレベル2にとどまった以外はおおむね高いレベルでエレメンツをまとめ3位発進。FDはリフトで流れが滞るミスがあり減点を受け、2つのステップもレベル2どまりになる取りこぼしもあり5位。ですが総合では3位となり銅メダルを獲得しました。



 ネーベルホルントロフィー2017&フィンランディアトロフィー2017の記事は以上です。チャレンジャーシリーズはこのあとも4試合残っていますが、GPシリーズ前の試合は全て終了ということで、GPに出場するトップ選手たちはこれからいよいよ本格的にシーズンに突入していくということになります。今からがオリンピックへ向けての本当のアピール合戦の場になるといっても過言ではないですから、チャレンジャーシリーズで調整してきた選手たちがそこでつかんだ課題と収穫をGPにどうつなげるか注目ですね。では。


:記事冒頭の国際スケート連盟のロゴは、国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、ネーベルホルントロフィー2017のアイスダンスのメダリスト3組の画像は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から、フィンランディアトロフィー2017の女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skating」の公式ツイッターから、フィンランディアトロフィー2017の男子メダリスト3選手のスリーショット画像は、「International figure Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2017-10-11 18:22 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)