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四大陸選手権2020・女子&アイスダンス―紀平梨花選手、シーズンベストで2連覇(前編)_c0309082_01210653.jpg


 アジア、北南米、オセアニア、アフリカの選手が一堂に集う四大陸選手権2020が、今年は韓国の首都ソウルにて行われました。先月開催された欧州選手権にも勝るとも劣らない白熱した試合となりましたが、この記事ではその女子とアイスダンスの模様をお伝えしていきます。
 女子の覇者となったのは、ディフェンディング・チャンピオンの紀平梨花選手です。ショート、フリーともに1位の完全優勝で女子では初めての連覇を達成しました。2位は地元韓国のエース、ユ・ヨン選手、3位はアメリカの実力者、ブレイディー・テネル選手となりました。
 一方、アイスダンスはアメリカ王者のマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組が制し、こちらも2連覇を成し遂げました。

ISU Four Continents Championships 2020 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子史上初の2連覇に輝いたのは、日本のエース、紀平梨花選手です!

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 SPは代名詞3アクセルから、これを完璧に決めて2.13点の加点を得ると、3フリップ+3トゥループはセカンドジャンプが若干詰まりましたがしっかり着氷。後半には今大会から構成に戻した3ルッツに挑み、これも余裕を持って成功させ、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と隙のない演技を見せ、シーズンベストに迫る81.18点で断トツの首位発進としました。

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 フリー冒頭は4サルコウに挑戦することも予想されましたが、回避し確実に3サルコウを着氷。続いて3アクセルでしたが、珍しくタイミングが合わずパンクして1回転に。しかし直後の3ルッツはクリーンに決めます。さらにスピンを挟んで2本目の3アクセルは2トゥループをつけてきれいに成功させ、立て直します。後半はまず3フリップ+3トゥループ+2トゥループを下りると、予定を変更して3フリップ+3トゥループを成功。最後の3ループも軽やかに決め、演技を終えた紀平選手は笑みを浮かべました。得点はシーズンベストに肉薄する151.16点でフリーも1位、トータル1位で、四大陸女王の座を守りました。
 圧巻の初優勝を遂げた年末の全日本選手権から1か月余り。その間にもアイスショーに出演したり、渡米して密度の濃い合宿をこなしたりと、忙しい日々を送っていた紀平選手ですが、そうした期間を経ての変化が今大会ではうかがえましたね。一つは3ルッツを再び跳べるようになったということ。元々得意なジャンプの一つですが、足の痛みのため数か月間練習も控えてきました。ですが、年が明けて、しばらく試合もなく、休養を取りつつじっくり練習もできたということで、ようやく3ルッツが復活しました。やはり3アクセルに次いで基礎点の高い3ルッツが跳べないというのは技術点にも影響してきますので、シーズン後半に間に合って良かったなと思います。そして今大会もう一つ大きな注目を浴びたのは4サルコウです。現地に入ってからも練習で成功させる姿を見せていて、GPファイナル以来の投入にも意欲を示していましたが、フリー当日の朝のジャンプ全体の状態があまり芳しくなく、4サルコウ挑戦は断念。そのフリーでは3アクセルが1回転になる大きなミスがありながらも、後半に冷静かつ機転の利いたリカバリーを見せ、唯一の150点台をマーク。さすがの底力を知らしめました。4サルコウに関しては、次の世界選手権でロシア勢に勝とうと思うなら、やはり跳んで、しかも成功させなければ勝てないでしょうが、まだ実戦での成功例がないだけにかなりのリスクを伴う諸刃の剣でもあり、いきなりそれを世界選手権という最高峰の大舞台でできるかというのは難しいところで、紀平選手がこれからの1か月余り、どのように4サルコウと向き合い、自分のものにし、世界選手権での成功に結びつけるか、楽しみに見守りたいですね。四大陸選手権優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはユースオリンピック2020金メダル、韓国のユ・ヨン選手です。

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 SPは大技3アクセルから、回転は充分でしたがステップアウトします。次いで3ルッツ+3トゥループはクリーンに成功。後半の3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされますが、加点がつく出来でまとめ、73.55点で3位と好位置につけました。
 フリーもまずは3アクセル、今度は完璧に跳び切って2.67点の加点を得ます。さらに3ルッツ+3トゥループ、3ループと危なげなく成功。後半に入り3ルッツ+1オイラー+3サルコウを決めると、2アクセル+3トゥループも着氷。続く3フリップはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点となりますが、最後の2アクセルは問題なく下り、自己ベストを約8点更新する149.68点でフリー2位、総合でも2位となり、韓国勢としては2009年のキム・ヨナさん以来の表彰台に立ちました。
 ショート、フリーともにミスを最小限に抑え、会心の演技を披露したユ選手。先月にはユース五輪に出場し、そこでも安定した演技で金メダルを獲得していますが、そうした自信が今大会にも繋がったのかなと思います。また、安定感があるというだけではなくジャンプの質も非常に高く、GPの時と比べてもいろんな部分が洗練されて進化しているなというのを感じますね。
 地元開催というプレッシャーをはねのけるメンタルの強さを示したユ選手。世界選手権でも母国の期待を一身に受けることになるでしょうが、今回のようなのびやかな演技で上位を引っ掻き回してほしいですね。


 3位に入ったのは全米選手権2020銅メダル、ブレイディー・テネル選手です。

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 SPは得点源の3ルッツ+3トゥループから、しっかり回り切って着氷し高い加点を得ます。次いで2アクセルも余裕を持って下り、後半の3フリップも軽快に成功。ステップシークエンス、スピンでも軒並み高い加点を積み重ね、パーソナルベストの75.93点で2位と好発進します。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループからでしたが、これは若干ランディングが乱れて減点に。続く2アクセル、3サルコウ、2本目の2アクセルは難なく跳び、前半を終えます。後半は2つ目の3ルッツ+3トゥループを今度は完璧に決めると、3+2+2、3ループもきれいに着氷。フィニッシュしたテネル選手は破顔しました。得点は147.04点でフリー3位、総合でも3位となり、チャンピオンシップでは初めての表彰台となりました。
 先月の全米選手権ではフリー後半にミスが重なったテネル選手。そのあたりの課題がどう修正されているかが今大会の注目ポイントだったのですが、お見事としか言いようのない演技でしたね。大技を持つ紀平選手、ユ選手の後塵を拝すことにはなりましたが、演技全体の完成度の高さ、エレメンツの質の高さでは高さでは際立っていて、安心感を持って見ていられました。今回の演技でまた自信がついたでしょうから、世界選手権でもテネル選手らしい演技を楽しみにしたいですね。


 4位に入ったのは日本の実力者、樋口新葉選手です。

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 SPはまず得意の2アクセルを軽々と決めてスタートを切ると、続いて3ルッツ+3トゥループもクリーンに成功させます。後半の3フリップは踏み切りのエッジが不正確と判定されたため加点は伸びませんでしたが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とまとめ上げ、自己ベストの72.95点で5位につけました。

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 フリーは冒頭では大技3アクセルに挑戦、回転は問題ありませんでしたが転倒し、初成功はならず。しかし直後の3ルッツ+3トゥループは冷静に成功。次の3サルコウは回転が抜けて2回転となりますが、3ループは鮮やかに決めます。後半最初の2アクセル+3トゥループは少し着氷を乱しましたが、3+2+2、3ルッツは落ち着いて決め、自己ベストの134.51点でフリー5位、総合でも自己ベストで4位となりました。
 大会前から3アクセルにチャレンジすることを公言し、実際に果敢に挑んだ樋口選手。惜しくも成功はなりませんでしたが、フリー演技直前の6分間練習では完璧に決める姿も見せていて、完成は間近だなというのを感じさせられました。世界選手権でもぜひ挑んで成功させてほしいなと期待してしまいますが、世界選手権は四大陸と違って翌年の国別の出場枠というのも懸かってきますので、プレッシャーというのは今回とは比べものにならないでしょうし、そうした中で3アクセルに挑み、その上でプログラム全体も締まったものにしなければいけませんから、本当に心身ともに緊張を強いられる試合にはなると思うのですが、実際に3アクセルに挑むにせよ挑まないにせよ、樋口選手らしく元気に明るく、躍動感たっぷりのショートとフリーを演じてほしいですね。


 5位は四大陸選手権2018金メダル、坂本花織選手です。

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 SPは冒頭の3フリップ+3トゥループを抜群の飛距離とスピード感で決めると、2アクセルもダイナミックに成功。最後の3ループは着氷が乱れますが何とかこらえ、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4かつ高い質で揃え、シーズンベストに迫る73.07点で4位と表彰台圏内につけました。

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 フリー冒頭、試合では2度目となる大技4トゥループにチャレンジしますが、ダウングレード(大幅な回転不足)で転倒します。次いで3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプで乱れて単独に。続く3ルッツは踏み切りのエッジが不正確となったものの、高さのある跳躍で加点を獲得。さらに単独予定だった3サルコウに急遽3トゥループをつけてコンビネーションにします。後半は最初の3+2を決めて立て直したかに見えましたが、2アクセル+3トゥループ+2トゥループはセカンドジャンプが1回転に。最後の3ループでも乱れて、演技を終えた坂本選手は顔を曇らせました。得点は129.72点でフリー8位、総合5位と順位を一つ落としました。
 ショートは一つ小さなジャンプミスがありましたが4位と、及第点の滑り出しに成功した坂本選手。そしてフリーでは先日行われた国民体育大会に続き、思い切って4トゥループに挑戦。残念ながら今回も失敗に終わりましたが、練習を始めて日は浅いと思いますので、地道にコツコツと練習を積み重ねて、試合での成功に繋げてほしいですね。ただ、4トゥループに成功しても、ほかのジャンプでミスを連発してしまっては結果的に大技に挑んだ意味がなくなってしまいますから、まずは坂本選手らしい安定感のあるジャンプを取り戻し、心身ともに自信が持てる状態になって初めて、4トゥループを含む高難度のプログラムを滑り切れるようになるのではないかなと感じますし、坂本選手ならば充分可能性はあると思いますので、ゆっくり休養を取って、またリスタートしてほしいですね。



 さて、四大陸選手権2020、女子&アイスダンス編の前編はここまでです。女子の6~8位の選手、そしてアイスダンスについては後編で書いていきます。では。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、紀平選手の画像、テネル選手の画像、樋口選手の画像、坂本選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ユ選手の画像は、中日スポーツのニュースサイトが2020年2月6日に配信した記事「“キムヨナ2世”劉永は演技後に自ら拍手…母国開催のSPは73・55点でメダル圏内の3位発進」から、坂本選手のSPの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2020-02-12 02:20 | フィギュアスケート(大会関連)

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 1月23日から26日にかけて、アメリカ王者を決める全米選手権2020が行われました。世界的にも注目が集まるフィギュア大国アメリカの最高峰の試合ということで、やはり非常にレベルの高い内容となりました。

2020 Toyota U.S. Figure Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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《女子シングル》


 上位3選手が220点を超えるハイレベルな戦いが繰り広げられた女子。その頂に立ったのは、ディフェンディング・チャンピオンのアリサ・リュウ選手です。規定により代名詞の4回転を組み込めないショートは、冒頭に大技の3アクセルに挑みましたが、ステップアウト。しかし中盤の3フリップ、後半の3ルッツ+3トゥループは完璧に決め、さらにはステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃えて隙のなさを見せ、75.40点で2位と好位置につけました。そして逆転の連覇を狙ったフリー、まずは3アクセル+2トゥループからで、これをきっちり下ります。続いて大技4ルッツ、しかしアンダーローテーション(軽度の回転不足)で着氷も乱れます。ですが、直後に再び跳んだ3アクセルは成功。その後もミスらしいミスなく質の高いジャンプを次々と成功させ、非公式ながら自己ベストを20点以上上回る160.12点を叩き出し、フリー1位、総合1位で弱冠14歳ながら連覇を達成しました。
 今季からジュニアの国際大会に出場できる年齢となり、さっそくジュニアGPでも際立った活躍を見せたリュウ選手。やはりその活躍を支える柱となっているのは4ルッツと3アクセルで、今大会も細かいミスはありましたが致命的な失敗はなく、そもそも1年前はまだ4ルッツを跳んでいなかったことを思うと、たった1年で急激な進化を見せているなと思います。
 リュウ選手の今後の大きな目標となるのは3月の世界ジュニア選手権ですが、そこではJGPファイナルで敗れたロシアのカミラ・ワリエワ選手と再び相対することになると思われます(正式にはロシアの代表選手はまだ決まっていません)。ワリエワ選手も4トゥループという大技を持っている選手ですが、リュウ選手はそれ以上に基礎点の高い4ルッツ、さらにはショートでも跳べる3アクセルを持っており、これだけ見るとリュウ選手の方が有利なのですが、ワリエワ選手はロシアの女子選手らしい総合力の高さ、全てのエレメンツにおける完成度と質の高さがあるので、その壁をぶち破るためには、リュウ選手にもさらなる進化が必要なのかなと思います。12年ぶりにアメリカからの世界ジュニア女王誕生なるか、大きなプレッシャーがかかるでしょうが、頑張ってほしいですね。

 銀メダルを獲得したのは昨年3位のマライア・ベル選手です。SPは冒頭の2アクセル、得点源の3フリップ+3トゥループ、後半の3ルッツと危なげなく着氷。ノリノリの音楽に乗って全身を余すことなく使って躍動感たっぷりに演じましたが、ステップシークエンスの途中で体を大きく使いすぎてバランスを崩し転倒するアクシデントに見舞われます。しかしすぐに立ち上がって冷静にステップを再開し、減点を受けましたがレベル4を獲得。73.22点で3位と表彰台圏内につけました。フリーはまず得点源の3フリップ+3トゥループをクリーンに下りると、3ループ、3サルコウ、2アクセルと前半のジャンプは完璧。後半も勢いは衰えることなく、3+2+2、3+2と決め、最後の3ルッツはわずかな回転不足となりましたが、ほぼクリーンに滑り切り、非公式ながら自己ベストを大幅に上回る151.99点をマークし、フリー2位、総合でも2位と一つ順位を上げ、自己最高位となりました。
 ショート、フリーを通して本当に安定感抜群で、確かに大技というのはないですが、それ以上に質の高いエレメンツと表現で魅せるというのを体現した演技だったのではないでしょうか。ここ数年のベル選手の安定感と表現の充実ぶりを見ていると、やはり年齢と経験を積み重ねた選手だからこそできる演技というのは確実にあるんだなというのをヒシヒシと感じて、昨今の大技を操る若い選手ばかりが注目されがちな女子フィギュア界の潮流とは、一線を画すベル選手のようなスケーターがいてくれることに、何か喜びというか、フィギュアスケートの醍醐味を感じるような気がします。
 4年連続で世界選手権の代表に選ばれたベル選手。そちらでも満足のいく演技ができることを願っています。

 3位は元全米女王のブレイディー・テネル選手です。ショートは冒頭の3ルッツ+3トゥループを完璧に決めると、続く2アクセル、後半の3フリップも余裕を持って成功させ、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と隙なし。非公式ながら自己ベストを約3点上回る78.96点で首位発進とします。フリーもまずは3ルッツ+3トゥループを下り、次いで2アクセル、3サルコウ、2アクセルを難なく決めます。後半も最初の3ルッツ+3トゥループを成功させて良い出だしでしたが、3+2はファーストジャンプが回転不足に。そして、最後の3ループは転倒となります。それでも141.90点でフリー3位、総合3位と表彰台はキープしました。
 フリーは終盤でミスが重なって順位を落とす結果となりましたが、それ以外はいつものテネル選手らしい安定感、完成度の高い演技でしたね。だからこそ余計にフリーのミスというのが悔やまれる部分だと思いますし、今季はフリー後半でミスすることが多いので、疲れてくるフリー後半をいかにクリーンに滑り切るか、シーズン後半のテネル選手の課題、注目ポイントと言えそうですね。

 全米選手権特有の4位、ピューターメダルを獲得したのは、元全米女王のカレン・チェン選手です。ショート冒頭は3+3ではなく、3+2を確実に成功。次いで2アクセル、後半の3ループもきれいに着氷させ、70.41点で5位につけます。フリーはまず単独の3ルッツを鮮やかに決めると、2アクセル+3トゥループも成功させます。しかし続く3フリップはパンクして1回転に。直後の3ループはしっかり下りて、すぐに立て直します。後半最初は3ルッツからの連続ジャンプでしたが、3ルッツの着氷で乱れて単独に。さらに2アクセル+1オイラー+3サルコウは最後のジャンプがアンダーローテーション、単独の3ループも回転が足りず着氷を乱します。複数のジャンプミスが響き、123.24点でフリー4位、総合も4位となりました。
 怪我による休養から今季競技復帰したチェン選手。なかなか良い時の迫力のあるジャンプというのは戻らず、今大会も良いジャンプとそうでないジャンプとのギャップがあったのかなと思うのですが、全体的にチェン選手らしさを完全に取り戻すには、もう少し時間が必要なのでしょうね。それでも4位とピューターメダルを手にし、この舞台に帰ってこれたということがまずはスタートラインに立ったと言えるので、次戦の四大陸選手権でチェン選手らしい演技が見られることを楽しみにしたいですね。

 5位は成長株のアンバー・グレン選手。SPは冒頭の3フリップ+3トゥループ始め、質の高いジャンプやスピン、ステップシークエンスで着実に得点を積み重ね、73.16点で4位と好位置につけます。フリーもまずは3フリップ+3トゥループからの予定でしたが、これが3+2に。さらに前半の3ルッツで転倒すると、後半でも2つの3回転ジャンプが2回転になるなどミスが重なり、フリー9位、総合5位と初めての表彰台には届きませんでした。
 6位は若手のスター・アンドリュース選手です。ショートは冒頭の3トゥループ+3トゥループ、さらに2アクセル、3ループと全てのジャンプをきっちり下りましたが、スピンでは取りこぼしもあり、65.86点で7位に。フリーは序盤からジャンプミスが相次ぎましたが、中盤以降は切り替えてジャンプを予定どおりにこなし、フリー6位、総合でも6位で自己最高位タイとなりました。
 7位はシエラ・ヴェネッタ選手です。ショートは冒頭の得点源のコンビネーションジャンプでミスを犯し、11位発進。フリーは冒頭の3フリップこそ踏み切り時のエッジが不正確となり若干の減点を受けましたが、得点源の3+1+3はしっかり着氷。その後も大崩れすることなく演技をまとめ、フリー5位、総合7位と躍進しました。
 8位はベテランのコートニー・ヒックス選手です。ショートは冒頭に高難度の3フリップ+3ループを組み込み着氷しますが、少し乱れてわずかな減点に。さらに後半の3ルッツでもミスが出て9位にとどまります。フリーはショートで小さなミスのあった3フリップ+3ループをクリーンに跳び切り好スタートを切りますが、3サルコウはダウングレード(大幅な回転不足)に。その後もいくつかジャンプミスがありましたが、フリー7位、総合8位で5年ぶりに入賞しました。


《男子シングル》

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 圧巻の4連覇を達成したのは世界王者のネイサン・チェン選手です。ショート冒頭は大技の4フリップから、これを軽々と完璧に決め、5.19点という極めて高い加点を獲得します。続いて3アクセルもパーフェクトに着氷し加点3.2点。後半に組み込んだ4トゥループ+3トゥループも全く問題なく成功させ、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4を揃える完全無欠の演技を披露し、非公式ながら世界最高得点に相当する114.13点を叩き出し、断トツの首位発進となりました。フリーもまずは4フリップからの連続ジャンプ、これを難なく着氷させると、4サルコウ、4トゥループ+1オイラー+3サルコウと続けてクリーンに成功。中盤の3アクセルも鮮やかに決めると、3ループ、4トゥループ、3+3と全てのジャンプを予定どおりに、しかもきれいに下り、216.04点をマークしフリー1位、もちろんトータル1位となり、圧勝で男子では史上7人目の4連覇を成し遂げました。
 大会前に体調不良に陥り、充分な練習が積めなかったというチェン選手。そのため最高難度の4ルッツは回避し、多少難度を落としたジャンプ構成ではありましたが、とはいえ世界でも最高レベルの難しいプログラムを、当然のようにあっさりと、かつクールに演じ切り、下馬評どおりに4連覇しました。体調不良だったというのが信じられないくらい完成度の高い演技で、改めてピーキングのうまさを示したチェン選手ですが、体調も万全で、練習や準備も完璧で試合に臨めれば、まだまだ高い得点を叩き出せる可能性もあり、世界選手権でどこまで上り詰めるのかにも期待ですね。

 2位に入ったのはベテランのジェイソン・ブラウン選手です。ショートは冒頭の3フリップに対し9人中8人のジャッジが満点となる加点5を与え、2.65点の加点を得ると、続く3アクセルも3.09点の加点。後半の3+3も軽やかに決め、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4の上、全て加点1以上を積み重ね、100.99点をマークして2位と好発進しました。フリーは冒頭で3アクセル+2トゥループを決めると、次いで試合では未成功の4トゥループにチャレンジしますが、ダウングレードで失敗に終わります。ですが、次の3アクセル、3フリップと落ち着いて成功させると、後半の3+1+3、3+3、最後の3ループと全て加点2以上がつく出来で跳び切り、191.89点をマークし、フリーも2位、総合でも2位と銀メダルを手にしました。
 今シーズンは初戦のGPスケートアメリカこそ2位と好調な滑り出しを見せたものの、NHK杯では5位と安定感がいまひとつだったブラウン選手。そのあとに調整のため出場したB級国際大会でも優勝はしましたが演技内容は低調で、今回どこまで復調しているか懸念していたのですが、全く心配いりませんでしたね。残念ながら4回転の初成功は次回以降に持ち越しとなりましたが、それ以外のエレメンツの質の高さ、何といっても芸術性に溢れたスケーティングと表現力は際立っていて、演技構成点に関してはショートではチェン選手をも上回り、改めてブラウン選手の凄さを知らしめました。
 次戦の四大陸選手権、また、シーズン集大成の世界選手権で、このようなクリーンな演技が見られることを祈りたいですね。

 3位となったのは今季シニアデビューの樋渡知樹選手です。ショートは冒頭の4トゥループ、3アクセルと高い質で成功させ、後半の3+3も確実に成功。94.21点で5位につけました。フリーは序盤に得点源の4トゥループを固め、その2本とも完璧に成功させ高い加点を得ます。さらに3アクセルも2本ともきれいに着氷。ほかのジャンプも全て加点のつく出来で揃え、非公式ながら自己ベストを約24点上回る183.87点をマークしフリー3位、総合でも3位に入り、昨年の4位から一つ順位を上げました。
 昨季の世界ジュニア王者として鳴り物入りでシニアデビューした樋渡選手。GP初戦のフランス大会では5位と健闘したものの、2戦目のNHK杯では10位と不安定さもうかがわせていましたが、今大会はきっちりピークを合わせ、最高の演技を見せてくれましたね。まだまだ粗削りですが、シーズンでも最も重要な大会でしっかり結果を残せるというのは素晴らしいですし、樋渡選手本人にとっても自信になるんじゃないかなと思います。残念ながら世界選手権の代表からは外れてしまったようですが、派遣が決まった四大陸選手権もレベルの高い試合になるでしょうから、その中でどこまで上位に食い込めるか、楽しみにしたいですね。

 4位には世界選手権2019銅メダルのヴィンセント・ジョウ選手が入りました。SPは冒頭の4サルコウを完璧に決め3.6点の加点を得ると、続く3+3、後半の3アクセルも確実に成功させ、94.82点で4位と好位置につけます。フリーもまずは4サルコウをきっちり着氷させ、さらに3ルッツ、3フリップ、3アクセル+3トゥループと安定したジャンプを続けます。後半の3+2、3アクセルはパーフェクトな着氷とは言えず、加点は伸びませんでしたが、最後の3+1+3はクリーンにまとめ、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と取りこぼしなく、180.41点でフリー4位、総合でも4位と順位をキープしました。
 今シーズン、名門ブラウン大学に進学し、競技と学業の両立を目指すこととなったジョウ選手。しかし課題や試験の準備のためにスケートへの時間を削るしかなく、GPシリーズは出場辞退し、今大会が9月のUSクラシックインターナショナル以来の今季2試合目となりました。準備期間としてはやはり充分でなかったようで、ジャンプ構成は難度を落とすこととなりましたが、その中でも今できるベストを尽くし、やるべきことはやったのではないかなと思います。その結果、順位は4位でしたが、3位の樋渡選手との点差は僅差で、過去の実績も考慮されて世界選手権の代表に選ばれました。今後のトレーニング次第で世界選手権までにはさらにジャンプ構成の難度も上げられ、調子も上がってくるだろうという期待を受けての選出だと思うのですが、何といっても昨年の世界選手権銅メダリストですから、限られた時間ではありますが、世界選手権でどのような演技を見せてくれるのか、期待ですね。

 5位はジュニアのアンドリュー・トルガシェフ選手です。ショートはまず4トゥループをパーフェクトに決め3.39点の加点を獲得すると、3アクセル、3+3も高い質で成功させ、97.87点で3位と好発進します。フリーは冒頭で4サルコウに挑みましたが、回転不足であえなく転倒。次の4トゥループ+2トゥループはきれいに下りますが、3アクセルは回転不足で再び転倒と、荒れ気味の序盤になります。後半も4トゥループの回転が足りず乱れるミスがありましたが、そのほかのトリプルジャンプは確実にこなし、フリー5位、総合でも5位と自己最高位を更新しました。
 6位は若手のアレクセイ・クラスノジョン選手です。ショートは冒頭の3ルッツでわずかなミスを犯しますが、そのあとの3アクセル、後半の3フリップ+3ループはしっかり着氷させ、6位につけます。フリー冒頭は大技4ループに挑戦、しかしアンダーローテーションで惜しくも成功ならず。次いで3アクセル+3トゥループはきれいに決めますが、単独の3アクセルはランディングが乱れます。その後のジャンプは全て予定どおりに成功させ、スピンやステップシークエンスでは取りこぼしも散見されたものの、フリー6位、総合6位に入りました。
 7位はシニア1季目のカムデン・プルキネン選手です。ショートは冒頭の4トゥループをクリーンに下りましたが、3アクセルではミス。さらに後半の3+3は3+1となり、7位にとどまります。フリーは序盤の4トゥループ、3アクセル、3ループと完璧に成功。しかし中盤以降はミスが相次ぎ、フリーも7位、総合でも7位と順位を上げることはできませんでした。
 8位はジュニアのディン・トラン選手。SPは全ジャンプをきっちり跳び切り、11位発進。フリーは冒頭の3アクセルを決めると、3+3、3フリップと基礎点の高いジャンプを確実に成功。後半はちょっとしたミスが出たジャンプもありましたが、終始コントロールされた演技となり、フリー6位、総合8位と初出場で初入賞しました。


《ペア》

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 2年ぶり3度目の優勝を果たしたのは、アレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組です。ショート冒頭、得意の3ツイストをパーフェクトに決め2.69点の加点を得ると、その後も目立ったミスなくコンスタントに得点を積み重ね、77.06点で首位に立ちます。フリーもまずは3ツイスト、これを全ジャッジから満点となる加点5を引き出す出来で成功させます。続くソロジャンプの3トゥループは転倒で予定していた連続ジャンプにはできず、もう一つの3サルコウも2サルコウとなりますが、それ以外のエレメンツは高い質のものを揃え、フリー2位、トータルでは逃げ切って総合1位となりました。
 昨年の全米では思いがけないミスを犯して総合7位にとどまったクニーリム夫妻。今大会のショート、フリーはその雪辱を晴らすのに充分な演技だったのではないでしょうか。フリーではソロジャンプが2本とも失敗に終わっているので課題は残りましたが、そうした部分を改善できれば、世界選手権でも上位進出が叶うのではないかと思いますね。

 2位はペア結成2季目のジェシカ・カララグ&ブライアン・ジョンソン組です。ショートは冒頭の3サルコウがダウングレードの着氷となり、ほかの要素は手堅くまとめたものの、4位にとどまります。しかしフリーはまず3ツイストを確実にクリアすると、次いで2つのソロジャンプもしっかり成功。その後もミスらしいミスなく演じ切り、フリー1位、トータル2位と順位を上げ、初表彰台となりました。
 昨季からペアを組んでいるカララグ&ジョンソン組。ペアとしての経歴は浅いですが、今季はGPでも最高4位と実績を残していて、今大会いよいよ花開いたという感じでしょうか。少し停滞感のあるアメリカのペア界において、こうしたニューフェイスの登場というのは明るい材料と言えますし、2人とも24歳とまだまだ伸びしろの大きいペアですので、楽しみですね。

 3位は四大陸選手権2018金メダルのタラ・ケイン&ダニー・オシェア組です。ショートは3ツイストがレベル2、3サルコウはアンダーローテーションと細かなミスはありましたが、そのほかのエレメンツでは高い加点を積み重ね、2位と好発進。フリーは前半のエレメンツを無難にまとめ、中盤以降は細かなミスが出たエレメンツもありましたが、大崩れすることなく滑り切り、フリー2位、総合3位に入りました。
 出場しなかった2017年を除き、2015年以降常に表彰台に乗っているケイン&オシェア組。今大会もノーミスではありませんでしたが、最小限のミスで抑えた粘り強さというのが3位に食い込めた要因と言えるかもしれません。現時点からさらにレベルアップ&ステップアップするためには、何かプラスアルファの強みが必要なのでしょうが、次戦の四大陸選手権でそんな“何か”が見つかるといいなと思いますね。

 4位はディフェンディング・チャンピオンのアシュリー・ケイン=グリブル&ティモシー・ルデュク組です。ショートはスロー3ルッツのミスに加え、デススパイラルがノーカウントとなる大きな失敗もありましたが、それ以外のエレメンツと演技構成点では高い評価を受け、3位につけます。フリーは序盤は良い出だしでしたが、スロー3ルッツ、3+2+2、リフトなどでミスを重ね、フリー4位、総合でも4位と一つ順位を落としました。
 昨年のチャンピオンですから、当然連覇したいという想いは少なからずあったでしょうが、ショート、フリーともに安定感を欠き、4位にとどまりました。今季はショートとフリーそれぞれでパーソナルベストを更新し、調子も悪くないシーズンを送っていたように思うのですが、うまく全米にピークを合わせられなかった感じかもしれません。今後の奮起に期待ですね。


《アイスダンス》

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 5年ぶりに全米王者に返り咲いたのは、マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組です。RDは冒頭のリフトを完璧に決めると、続くフィンステップはレベル3でしたが、それ以外の要素はレベル4を揃え、堂々のトップ発進とします。FDはまずコレオスピンで幕を開け、次いでリフト、ワンフットステップとレベル4の技を披露。後半のステップはレベル3になりましたが、ほぼレベル4でまとめ上げ、非公式ながら自己ベストを約5点上回る134.23点でフリーも1位、トータルでももちろん1位となり、圧巻の完全優勝を成し遂げました。
 今季はシーズン初戦から表彰台を逃すことがなく、GPファイナルでも銀メダルと好調を維持していたチョック&ベイツ組。今大会も揺るぎない安定感が際立ちましたね。かつて世界選手権で表彰台に乗っていた時と比べると、ここ数シーズンはいまひとつ本来の滑りができていないのかなという印象だったのですが、今季は今大会も含めて、気持ち良くシーズンを送れているのではないかと思います。四大陸選手権、世界選手権でも満足のいく演技ができることを祈りたいですね。

 2位はディフェンディング・チャンピオンのマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組です。RDはツイズルとミッドラインステップではレベル4を獲得しましたが、そのほか3つの要素はレベル3にとどまり、2位発進に。FDは序盤から精度の高いエレメンツを続け、自己ベストを上回る130.88点をマークしましたが、フリー2位、総合2位となり、3連覇はなりませんでした。
 こちらも優勝してもおかしくないくらいレベルの高い演技でしたが、チョック&ベイツ組には惜しくも及びませんでした。ハベル&ドノヒュー組は多少レベルを取りこぼした部分もあり、本当に些細な違いだとは思うのですが、それが積み重なってトータルでは約4点差となりました。ただ、次にこの2組が相対した時、どちらが勝るかは誰にもわからず、これからもこの2組がアメリカのアイスダンス界を切磋琢磨しながら引っ張っていくことになりそうですね。

 3位はケイトリン・ハワイエク&ジャン=リュック・ベイカー組です。RDは冒頭のフィンステップでレベル4を獲得し好調な滑り出しでしたが、パーシャルステップとツイズルはレベル3にとどまり、3位。フリーはまずリフトからでしたが、時間超過のため減点対象となってしまいます。その後は中盤のステップやスピンでレベルを取りこぼす場面もあり、フリーも3位、総合3位となりました。
 2年連続で銅メダルを獲得したハワイエク&ベイカー組。ただ、チョック&ベイツ組、ハベル&ドノヒュー組のレベルが例年以上に高かったのもあって、2位までは16点差、1位までは20点差と、昨年以上に差は開きました。この差を埋めるのは簡単なことではないですが、ハワイエク&ベイカー組も着実に力をつけており、シーズン後半の伸びしろに期待したいですね。

 4位はシニア2季目のクリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組です。RDはフィンステップやパーシャルステップで取りこぼしが見られましたが、自己ベストに迫るハイスコアで4位につけます。フリーも序盤から確実性高く演技を進め、終盤のコレオステップが認定されず無得点となる思いがけないミスがありましたが、終始エネルギッシュに演じ切り、フリーも4位、総合4位と初めて表彰台に立ちました。
 昨季からシニアに上がり、昨年の全米は5位と表彰台まであと一歩だったカレイラ&ポノマレンコ組。まだシニアのトップレベルとの差はありますが、将来のアメリカのエース候補として、大器の予感を漂わせる期待のカップルですね。今大会も取りこぼしはところどころあり、特にフリーの終盤のコレオステップのノーカウントは残念でしたが、可能性は無限にあるカップルでもあり、来季に繋がる今季、そして今大会だったのではないでしょうか。



 全米選手権2020の記事は以上です。さて、そうこうしているうちにすでに四大陸選手権が始まっています。この全米選手権で活躍した選手も多く参加しており、世界選手権の前哨戦としても、要注目ですね。では。


:女子メダリスト4選手の画像、男子メダリスト4選手の画像、ペアメダリスト4組の画像は、写真画像サイト「ゲッティイメージズ」から、アイスダンスメダリスト4組の画像は、アイスダンス情報サイト「ice-dance.com」から引用させていただきました。

# by hitsujigusa | 2020-02-07 16:46 | フィギュアスケート(大会関連)

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 ヨーロッパのナンバーワンを決める欧州選手権2020がオーストリアのグラーツにて開催されました。試合は女子、男子、ペア、アイスダンス全てでロシア勢が優勝し、一国が金メダルを独占するのは2006年のロシア以来の快挙となりました。

ISU European Championships 2020 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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《女子シングル》


 史上最高レベルの女子の戦いを制したのは、GPファイナル女王のアリョーナ・コストルナヤ選手です。

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 得意のショートは代名詞の3アクセルを完璧に跳び切り、ほかのジャンプやスピンもクリーンにこなし、自身が持つ世界最高得点に迫る84.92点で圧巻の首位発進とします。
 フリーもまずは3アクセル、1本目を2トゥループとのコンビネーションとして危なげなく下りると、次いで2本目もパーフェクト。その後のジャンプも次々とクリーンに決め終盤に入りましたが、最後の3ルッツで珍しく転倒。それでも高い表現力で演技構成点はトップのスコアをマークし、フリー2位、トータルではショートのアドバンテージを活かして逃げ切り、初優勝を果たしました。
 12月末のロシア選手権では惜しくも2位だったコストルナヤ選手ですが、常にレベルもクオリティーも高い演技を続けており、今大会も変わらぬ安定感を示しましたね。唯一ミスらしいミスとなったのはフリーの3ルッツの転倒ですが、彼女も人間であるということを今さらながらに思い知ったような、それくらい滅多に見ない光景ではありました。ただ、そんなに深刻なミスではないでしょうし、ちょっとした狂いだと思うので、次戦の世界選手権ではまた完全無欠な演技に期待したいですね。欧州選手権優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのはロシア女王のアンナ・シェルバコワ選手です。

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 ショートは序盤の2アクセル、3フリップを落ち着いて成功。後半の得点源、3ルッツ+3ループも完璧に着氷させ、自己ベストに肉薄する77.95点で2位と好発進しました。
 フリーは冒頭に代名詞の4ルッツ+3トゥループを組み込み、これをパーフェクトに成功。ついでGPファイナルから取り入れている4フリップにも挑みましたが、こちらはわずかに回転不足に。さらに、2本目の4ルッツは珍しくダウングレード(大幅な回転不足)となって転倒してしまいます。しかし後半は大きなミスなくジャンプを全て予定どおりこなし、159.81点でフリー1位、総合ではコストルナヤ選手に約3点及ばず2位で、銀メダルを獲得しました。
 フリーはいくつかミスがあって、コストルナヤ選手を逆転するまでには至りませんでしたが、相変わらずの安定感、メンタルの強さを発揮しました。冒頭の4ルッツ+3トゥループ、そして回転不足ではあったものの結果的にはGOEで加点のつく出来にまとめた4フリップと、大技の精度もシーズン序盤と比べて増していて、それに加えてコストルナヤ選手にも迫ろうかという演技構成点での高評価があり、総合的に実力がどんどん上がっているなという印象があります。世界選手権ではどんな演技を見せてくれるのか、楽しみですね。


 銅メダルを手にしたのはこちらもロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ選手です。

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 SP冒頭は3アクセル挑戦も予想されましたが、無難に2アクセルを選択。しかし珍しく着氷が乱れ若干の減点を受けます。続く3フリップ、後半の3ルッツ+3トゥループは完璧に下り、スピン、ステップシークエンスも全てレベル4で揃え、自己ベストの74.95点で3位につけます。
 フリー冒頭は代名詞の4ルッツ、しかし転倒し波乱の幕開けに。ですが、直後の4トゥループ+3トゥループはクリーンに着氷。さらに、3フリップ、2アクセルも決めて立て直します。後半は2本目の4トゥループからでしたが、こちらはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒に。次の3ルッツ+3ループ、3+1+3は問題なく下り、150.39点でフリーも3位、トータルでも3位となりました。
 12月のロシア選手権は精彩を欠いた演技となり、キス&クライでは涙を見せたトゥルソワ選手。そこからの技術的、精神的な立て直しに注目が集まりましたが、完全に自信を取り戻すまでには至らなかったのかなという印象ですね。大会前には4種類の4回転と3アクセルという、持てる武器全てを使ってくるのではないかという憶測もありましたが、実際にはショートは3アクセルは回避し確実性を重視。フリーも4フリップや4サルコウは跳ぶことなく、2種類の4回転のみで(それでも充分凄いですが)安全策を取ってきました。ただ、それでもクリーンな滑りはできなかったということで、今後もメンタル面が少し心配ですね。世界選手権でコストルナヤ、シェルバコワ両選手を上回る、もしくは二人のあいだに割って入れるのか、シーズン序盤のような勢い溢れる滑りをまた見たいなと思います。


 4位はスイス女王のアレクシア・パガニーニ選手です。ショートは得点源の3ルッツ+3トゥループを決めると、残りの3ループ、2アクセルもクリーンに成功させ、さらにはステップシークエンス、スピンを全てレベル4でまとめ上げ、自己ベストの68.82点で4位と好位置につけます。フリーもまずは3ルッツ+3トゥループをきれいに下りますが、次いで単独の3ルッツは回転不足で転倒に。直後の3サルコウは決め、続いて次のジャンプに向かいましたが、ジャンプに繋げられずにノーカウントに。しかし後半は切り替えてノーミスでまとめ、こちらも自己ベストの124.06点でフリー4位、総合でも4位に入り、自己最高位を更新しました。
 5位はフィンランド女王のエミ・ペルトネン選手です。SPは冒頭の3トゥループ+3トゥループ始め、全てのジャンプ、ほかのエレメンツも加点のつく出来で揃え、自己ベストの66.49点で5位発進。フリーも序盤は良い出だしでしたが、中盤以降は転倒を含むミスが重なります。しかし自己ベストの115.30点でフリー7位、総合では5位とショートの順位をキープし、自己最高位となりました。
 6位はアゼルバイジャンの新星、エカテリーナ・リャボワ選手です。ショートは得点源の3ルッツ+3トゥループを何とか下りると、後半の3フリップはわずかにマイナスが付きましたが最小限のミスにとどめ、62.22点で6位発進。フリーも冒頭の3ルッツ+3トゥループはルッツの踏み切りのエッジの不正確さのため若干の減点を受けましたが、大きなミスとはせず、その後もミスらしいミスとしては3フリップが2回転になったものの、ほかは大きな失敗なく踏みとどまり、フリー6位、総合でも6位で昨年の12位から大きく順位を上げました。
 7位はエストニアのエヴァ・ロッタ・キーブス選手。ショートは前半2つのジャンプを完璧に決め好スタートを切ったものの、後半の2アクセルが回転不足となり、パーソナルベストにわずかに及ばず11位。しかしフリーはミスを前半の3ルッツの小さな乱れのみにとどめ、自己ベストの121.54点でフリー5位、総合7位と初出場にして入賞しました。
 8位はイタリア女王、アレッシア・トルナーギ選手です。SPは冒頭の3トゥループ+3トゥループが回転不足となったものの、ほかの要素をクリーンにまとめ7位発進。フリーは序盤からミスが相次ぎましたが、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4を揃え、フリー11位、総合では8位と健闘しました。


《男子シングル》

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 初の欧州王者に輝いたのはロシアチャンピオンのドミトリー・アリエフ選手です。

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 SP冒頭は大技4ルッツ+3トゥループ、きれいに下りたかに見えましたが、ファーストジャンプはアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定となります。続く4トゥループはクリーンに着氷。しかし後半の3アクセルは軸が曲がり回転不足で着氷も乱れます。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃え、88.45点で2位と好発進します。
 フリーもまずは4ルッツ、大きな乱れなく着氷しますが、再びアンダーローテーションの判定に。しかし直後の4トゥループ+3トゥループは高い加点のつく出来で成功させます。後半も3アクセルを始め、難度の高いジャンプを次々と下り、演技を終えたアリエフ選手は表情に達成感を滲ませました。得点は自己ベストを塗り替える184.44点でフリー1位、逆転で総合1位となり、初めてのヨーロッパチャンピオンとなりました。
 ショート、フリーともにミスを最小限にとどめ、最も安定感のある滑りを披露したアリエフ選手。誰もが納得する新欧州王者と言えるのではないでしょうか。また、アリエフ選手自身にとっても、ロシア選手権、そして今大会とシーズンの中でも重要な2試合を制することができたということで、ますます自信がついたと思いますし、殻を破れつつあるのかなとも想像します。ですが、ロシア王者、欧州王者となったことで、伴う責任も今まで以上に大きく、重いものとなり、世界選手権ではロシアの、さらにはヨーロッパのエースとして表彰台を狙っていくことになると思うので、大変でしょうが頑張ってほしいですね。欧州選手権優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのはロシアの若手、アルトゥール・ダニエリアン選手です。

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 SPは「ドンファン」。冒頭は得点源の4サルコウ、これをクリーンに決めて好調な滑り出し。3アクセルはミスとなりますが、後半の3+3はきれいに下り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4でこなし、自己ベストの84.63点で3位と好位置につけます。
 フリーは「映画『グラディエーター』より」。まずは4サルコウ+1オイラー+3サルコウの難しい3連続コンビネーションから、これを完璧に決め2.49点の加点を得ます。さらに単独の4サルコウも着氷と最高の出だしとなります。続く3アクセル、3ルッツとミスが重なりますが、後半は3つのジャンプをほぼノーミスで跳び切り、自己ベストを6点以上上回る162.11点でフリー4位、トータル2位となり、初出場にして銀メダルを獲得しました。
 まだジュニアを主戦場としながらも、ロシア選手権で2位と躍進し、今大会も2位と目覚ましい飛躍を遂げている16歳のダニエリアン選手。シーズン序盤のジュニアGPでの安定ぶりを思えば、決してそこまで驚くべきことではないのかもしれませんが、ジュニアとシニアでいろいろと勝手が違う中で、しっかり好成績を収められているというのは、確かな技術力の証ですね。まだ正式には発表されていませんが、たぶん世界選手権の代表にも選ばれる可能性は高いでしょうから、今大会のようにのびのびと、結果を気にせず演技してほしいと思います。


 3位はジョージアの実力者、モリシ・クヴィテラシヴィリ選手です。

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 SPはまず得点源の4サルコウ+3トゥループをクリーンに決めますが、続く3アクセルはわずかにミス。さらに後半の4トゥループは転倒と痛い失敗を犯しますが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4でクリアし、シーズンベストの82.77点で4位につけます。
 フリー冒頭も4サルコウからの連続ジャンプ、これをきっちり下りると、続く3アクセルも鮮やかに決めます。しかし次の4トゥループは転倒。ですが、直後の3ループは着氷してすぐに立て直します。後半は4トゥループ+2トゥループなど、全てのジャンプを高い加点がつく出来で揃え、自己ベストの163.94点でフリー3位、総合3位と一つ順位を上げ、ジョージアの男子選手としては初めて表彰台に立ちました。
 ショート、フリーともに1度ずつ転倒はありましたが、そこからの切り替え、挽回にクヴィテラシヴィリ選手の本領が発揮されていたのではないでしょうか。失敗した後にどうするかというのがその選手の本当の実力が表れる部分だと思いますので、そういった意味では今回のクヴィテラシヴィリ選手の失敗と成功は、意義深い経験とかけがえのない財産になったでしょうし、世界選手権、さらに来季以降にも繋がっていく良い試合、演技になったのではないかと感じますね。


 4位はイタリア王者のダニエル・グラスル選手です。SPは冒頭で4ループ+3トゥループという大技にチャレンジし、きれいに下りましたが、ファーストジャンプがアンダーローテーションとの判定を受けます。さらに続く3アクセルも回転不足。後半に大技4ルッツに挑みましたが転倒と、全ジャンプでミスを犯し、76.61点で11位にとどまります。しかしフリーは冒頭の4ルッツ、さらには4フリップにも成功。次いで4ループは再び回転不足となりましたが、3アクセルは成功させ、後半も細かな回転不足を取られるシーンは複数ありながらも、大きな乱れはなく滑り切り、自己ベストの168.27点でフリー2位、総合4位と躍進しました。
 5位は同じくイタリアの実力者、マッテオ・リッツォ選手です。ショートは冒頭の4トゥループが若干乱れますがまとめ、3アクセルは高いクオリティーで成功。しかし3+3はセカンドジャンプがダウングレードとなり大幅な減点を受け、79.07点で7位となります。フリーはまず3ループを確実に決めてスタート。続いて4トゥループは回転不足で転倒となってしまいます。直後の3アクセル+3トゥループは決めますが、次の3ルッツは2回転にと不安定な前半に。しかし、後半は全てのジャンプをきれいに決め、157.94点でフリー5位、総合でも5位と順位を上げました。
 6位はラトビアの実力者、デニス・ヴァシリエフス選手です。SPは3アクセルの乱れがありましたが、そのほかのエレメンツ、特に得意のスピンやステップシークエンスは全て加点1以上と高評価を受け、80.44点で5位と好位置につけます。フリーはまずショートでミスのあった3アクセルを連続ジャンプとしてきれいに下りて好調な滑り出しを見せましたが、2本目の3アクセルはランディングが乱れます。その後も4トゥループのパンクや3連続コンビネーションジャンプの回転不足など、いくつかミスがあり、152.23点でフリー7位、総合6位と一つ順位を落としました。
 7位はチェコの大ベテラン、ミハル・ブレジナ選手です。ショートは冒頭の4サルコウ+2トゥループをクリーンに決めると、続く3フリップ、後半の3アクセルも完璧に成功させ、シーズンベストの89.77点で首位発進します。しかし、フリーは冒頭に固めた2本の4サルコウが両方とも不首尾に終わり、次いで予定を変更して再び4サルコウに挑んだものの転倒に。後半は全ジャンプをほぼノーミスで着氷に繋げましたが、序盤のミスを取り返すには至らず、フリー11位、総合7位と表彰台を逃しました。
 8位はドイツのベテラン、パウル・フェンツ選手。ショートは序盤の4トゥループと3アクセルをパーフェクトに成功させますが、後半の3+3は3+2に。しかしミスらしいミスはそれくらいで、自己ベストの80.41点をマークし6位につけます。フリーはショートで回避した4トゥループから、これをきれいに着氷させると、3アクセル+3トゥループも完璧に成功。その後は細かいミスが複数ありましたが踏ん張り、フリー9位、総合8位で初入賞しました。


《ペア》

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 女子同様、ロシア勢が表彰台を独占したペアですが、その頂点を射止めたのはロシア王者のアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組です。SPは冒頭の3サルコウを完璧に下りると、3ツイスト、スロー3フリップと難度の高い技も軽々と成功。後半のエレメンツもレベル4を揃える会心の演技となり、世界最高得点の82.34点をマークし、堂々の首位に立ちました。フリーもまずは3サルコウ、そして次の3+2+2ときっちり着氷。3ツイストはレベル3となりましたが、リフトやスロージャンプなど、一つ一つを丁寧に、かつ、ダイナミックにこなし、パーソナルベストの152.24点をマークしフリー1位、トータルでももちろん1位で、完全優勝を果たしました。
 欧州選手権の出場は銅メダルを獲得した昨季に続いてまだ2回目。にもかかわらず、すでに貫禄さえ漂わせるような圧巻の滑りで、ほかのペアを寄せ付けませんでした。弱冠18歳と20歳のペアで、もちろんまだまだ若手で経験豊かとは言えないのですが、単なる勢いだけではない確固たる実力を持って、ロシア選手権、欧州選手権を制しているのは間違いなく、3月の世界選手権でも優勝候補の一角と言えるでしょう。ただ、世界選手権には世界選手権の怖さがあり、そうした魔物に打ち勝てるかどうか、ボイコワ&コズロフスキー組の今季の集大成がどんな演技になるのか、楽しみにしたいですね。欧州選手権優勝、おめでとうございました。

 銀メダルを手にしたのは昨年も2位のエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。ショートは得意の3ツイスト、さらには課題としているソロジャンプの3トゥループと鮮やかに決め、順調に演技を進めましたが、終盤のリフトで男性がバランスを崩してしまい、途中で女性を下に降ろしてしまうミスを犯し、大きな減点に。このミスが響き、今季最も低い73.50点で3位となります。フリーも冒頭は代名詞の3ツイストをパーフェクトの決めてスタート。しかし3サルコウ、3トゥループからの連続ジャンプは両方とも失敗に終わります。しかしその後は全ての要素をクリーンにこなし、フリー2位、トータルでも一つ順位を上げて2位となりました。
 本来のタラソワ&モロゾフ組の演技からすれば、まだまだ改善点は多い内容と言えるのでしょうが、ひとまずは思いがけないミスのあったショートから、フリーは切り替えることができたということで、ほっと一安心はできたのではないかなと思います。世界選手権で4年連続の表彰台、さらにはその上を狙っていくためには、修正しなければいけない部分はいろいろありそうですが、焦らずじっくりと取り組み、世界選手権では納得のいく演技ができることを祈りたいですね。

 3位となったのは若手のダリア・パヴリュチェンコ&デニス・ホディキン組です。SPは全てのエレメンツで加点を獲得、また、レベル4を揃え、2位と好発進。フリーは冒頭のソロジャンプの3フリップ、中盤のスロー3フリップとミスが出てしまいましたが、そのほかのエレメンツは目立った取りこぼしなくまとめ上げ、自己ベストの131.61点でフリー3位、総合3位で初表彰台となりました。
 優勝したボイコワ&コズロフスキー組とともに、成長著しいシニア2季目のパヴリュチェンコ&ホディキン組。特にソロジャンプを得意とするペアで、今回はフリーでそのソロジャンプに細かなミスがあってベストを出し切るとまではいきませんでしたが、やはりシーズンを追うごとに安定感を増してきているなと思います。同じシニア2季目ということで、ボイコワ&コズロフスキー組とは何かと比較されがちですが、現時点では技の完成度や質の高さ、また、演技構成点で水をあけられていて、今後に向けての課題と言えます。技術点の基礎点の合計では優位に立てるペアなので、細部を磨いていけば、まだまだ進化できそうですね。

 以下、4位はイタリアのベテラン、ニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組、5位はドイツ王者のミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ&ノーラン・ジーゲルト組、6位はオーストリアのミリアム・ツィーグラー&セヴェリン・キーファー組、7位はドイツの若手、アニカ・ホッケ&ロベルト・クンケル組、8位はイタリアのレベッカ・ギラルディ&フィリッポ・アンブロジーニ組となっています。


《アイスダンス》

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 華麗なるアイスダンスの戦いを制したのは、ロシアチャンピオンのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組です。RDは冒頭のツイズルを完璧にこなすと、そのほかのエレメンツもミスらしいミスなく演じ切り、自己ベストの88・73点、首位のカップルとは0.05点差で2位につけました。FDもまずはツイズルをクリーンに成功させると、ステップやリフトなど質の高いエレメンツを揃え、パーソナルベストの131.69点をマークしフリー1位、トータルでは2位のカップルを0.14点差でかわし、念願の初優勝を成し遂げました。
 圧倒的な強さを誇る世界王者、ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組を破り、下馬評を覆したシニツィナ&カツァラポフ組。もちろん今季のシニツィナ&カツァラポフ組の活躍は目覚ましく、シーズン中にもぐんぐん伸びていっている感はありましたが、そうはいっても今大会彼らがパパダキス&シゼロン組に勝つというのは、予想していませんでした。世界王者にも隙があったとはいえ、今まではその隙を突くことのできるカップルがいなかったのが、今回シニツィナ&カツァラポフ組がほぼ完璧な演技を披露したことによって、超僅差ではあるもののパパダキス&シゼロン組を負かすことができるという新たな事実を作り、世界の勢力図が変わるきっかけを生み出しましたね。ただ、ようやくパパダキス&シゼロン組と肩を並べられたということで、ここからが本当の勝負だと思うので、世界選手権でも同じような接戦が展開されることを期待したいですね。欧州選手権優勝、おめでとうございました。

 銀メダリストとなったのは世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。RDはいつもと比べると少し加点が伸び悩んだエレメンツもありましたが、全体的には完成度の高い滑りで貫禄の首位発進。フリーも序盤から高い加点のつく技を続けますが、後半のワンフットステップでレベルが2となる取りこぼしがあり、いまひとつ技術点を伸ばせず。フリー2位、トータルでも惜しくも2位となり史上初の6連覇を逃しました。
 2年前の平昌五輪で2位となったのを最後に、以降は出場した全ての大会を制覇してきたパパダキス&シゼロン組。今大会も当然のごとく優勝候補筆頭で、実際に優勝してもおかしくないくらいハイレベルな演技を見せましたが、FDでちょっとしたミスがあってシニツィナ&カツァラポフ組に逆転を許しました。パパダキス&シゼロン組が負けるというのは信じられないような感じさえするのですが、もちろん彼らも人間ですからミスがあって当たり前ですし、それ以上に死角のない世界王者にどうやったら勝てるのかという研究の結果、今回はシニツィナ&カツァラポフ組がパパダキス&シゼロン組を上回ったわけで、パパダキス&シゼロン組の存在が近年のアイスダンス界のレベルアップをもたらしたのは間違いなく、今後もしばらくはパパダキス&シゼロン組がアイスダンス界の軸、指標であり続けるのだろうと思います。そんなプレッシャーに常にさらされながら戦い続けているパパダキス、シゼロン両選手には改めて敬意を覚えますし、世界選手権では再び頂点を奪還しにいくでしょうから、逆襲なるか注目したいですね。

 3位はGPファイナル4位、ロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組です。RDは5つあるエレメンツのうち、レベル4が2つのみとなって技術点を伸ばしきることができず、4位発進に。しかしFDは中盤のワンフットステップがレベル2になった以外はほとんどの要素でレベル4を並べ、フリー3位、総合でも3位となり、3年連続で表彰台に立ちました。
 上位2組とは少し点差が開きましたが、それでも充分にレベルの高い演技を見せたステパノワ&ブキン組。世界選手権でもメダルを狙っていくためには、本当に些細なミスさえ許されないと思いますので、今回取りこぼした部分も含め、さらに演技全体の完成度を高める必要があるでしょう。そういった意味ではまだまだ伸びしろの大きいカップルと言えますので、世界選手権でどこまでレベルアップ&ブラッシュアップしてくるか、楽しみにしたいですね。

 以下、4位はイタリア王者のシャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ組、5位はイギリス王者のライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組、6位はロシアのティファニー・ザゴースキー&ジョナサン・ゲレイロ組、7位はスペインの実力者、サラ・ウルタド&キリル・ハリャービン組、8位はスペイン王者のオリヴィア・スマート&アドリアン・ディアス組となりました。



 さて、欧州選手権2020の記事は以上です。そうこうしているうちに早くも2月。欧州以外のアジア、北南米、アフリカ、オセアニアの選手が集う四大陸選手権の開催が迫っています。が、その前に欧州選手権と同時期に行われた全米選手権2020についても記事にしたいと思いますので、しばしお待ちください。では。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、コストルナヤ選手の画像、シェルバコワ選手の画像、トゥルソワ選手の画像、アリエフ選手の画像、クヴィテラシヴィリ選手の画像、ペアメダリスト3組の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、男子メダリスト3選手のスリーショット画像は、AFPBB Newsが2020年1月24日に配信した記事「アリエフが新王者に、フィギュア欧州選手権」から、ダニエリアン選手の画像は、Yahoo! Sportsが2020年1月24日に配信した記事「Aliev wins European figure skating title as Brezina implodes」から引用させていただきました。

# by hitsujigusa | 2020-02-01 02:18 | フィギュアスケート(大会関連)