花岡ちゃんの夏休み (ハヤカワコミック文庫 (JA840))


※5月21日、写真の変更、文章やリンクなどの追記をしました。

前の記事で清原なつのさんの「花岡ちゃんシリーズ」を紹介しました。
「花岡ちゃんシリーズ」は金沢を舞台にした漫画なので、実在するスポットがいくつか出てきます。
そのひとつが中央公園。
繰り返しになりますが、清原さんが金大生だった頃、キャンパスは今の金沢城公園にありました。中央公園はそのすぐ横にあるため、実際に学生たちにとってなじみのある公園だったんじゃないかと想像します。
シリーズの中でも、花岡ちゃんをはじめとした学生たちの憩いの場として描かれています。
中央公園が登場する場面がこちら。

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(清原なつの『花岡ちゃんの夏休み』早川書房、2006年3月、13頁)


木々があふれ、ふかふかの芝生が生い茂っているのがわかります。
作品が描かれてから数十年経って、芝生が退化するなど多少の変化はありつつも、今も中央公園は「花岡ちゃん」を想起させてくれる場所であります。

前置きが長くなりましたが、そんな中央公園に再整備の計画が上がっています。

◇◇◇◇◇

県の中央公園 減る緑 使い勝手優先  県が樹木45本伐採へ  環境団体から疑問の声

 石川県が北陸新幹線金沢開業を見据え、金沢市中心部の中央公園の改修を進めることになり、大型連休明けから公園の樹木伐採を始めることが県への取材で分かった。環境保全を訴える県民から懸念の声が上がる一方、県はイベント時の使い勝手などを理由に挙げ、一定の樹木を残すとして理解を求める。都市の魅力向上と自然環境の両立の難しさが浮き彫りとなっている。
 中央公園は約四十年、都市部の緑地空間として親しまれているが、近年は芝生の劣化で雨天時に地面がぬかるみ、イベント運営に支障が出る状態。改善を求める声に県は二〇一三年度、事業費約二億八千二百万円で改修に着手する。来年二月の食イベント開催までに公園中央部の地面を透水性舗装に変更。香林坊側入り口と、しいのき迎賓館側の緑地を結ぶ通路、金沢城公園玉泉院丸側へ横断する通路を直線化する。
 これに伴い、県は公園内の大小の樹木約六千本のうち、高木など約四十五本を連休明けから伐採する予定。夜間の香林坊側の見通しを良くすることで治安改善の狙いもあると説明する。
 これに対し野鳥観察や環境保全に取り組む市民団体「森の都愛鳥会」前会長の本間勝美さん(73)=金沢市=は「県は国際会議誘致など生物多様性の重要性を強調するのに、都市の緑地を減らすのは矛盾」と批判。世界には中心部に広い緑地がある都市が多いと指摘し「新幹線準備を盾に、観光資源になる豊かな自然を捨てることになる」と見直しを求める。
 一方、県側が中央付近の広場の一部に芝生を残し、所々にシンボルの高木を残すほか、樹木をそのまま残す区域もあると説明。担当者は「しいのき迎賓館側に緑地機能を持たせることで中央公園の緑は減るが、一定の樹木は残すので緑地が失われるわけではない」と話している。

北陸中日新聞 2013年4月26日 朝刊


こうした県の動きに対し、残念がる声、反対の声がすぐに上がりました。


中央公園伐採へ  癒やしの緑 残して  市民ら訴え 専門家「金沢のご神木」

 深く根を張り、若葉を茂らせた巨木が切り倒される。連休明けの改修着手が明らかになった金沢市広坂の中央公園。散策する市民は「宝物みたいな存在。お願いだから切らないで」と訴える。識者からは議論の不十分さを指摘する声も。このまま伐採されるのか、保存の可能性は―。身近な緑地空間に環境問題が浮上した。
 県が伐採するのは公園内の約六千本のうち、1%に満たない四十五本程度。とはいえ、クスノキやヒマラヤスギなどほとんどが大木。市民らが全体を眺めた時に、緑がぐっと減った印象になることを心配する。
 真っすぐに伸びた大木の高さは三階建ての建物ほど。若葉がもえる枝を広げ、遊歩道沿いのベンチを木陰で包む。根は大蛇が這うように地面を盛り上げ、コケが広がる。大人二人が両手で抱えようとしても届かないほどの幹に、伐採を告げる赤いテープが巻かれている。
 仕事帰りの四十代女性は「あふれる緑が癒やし。思い出が詰まった場所。本当は一本も失いたくない」。散歩コースにする六十代男性は「学生時代から見慣れた風景だから」と大木に安心感を抱く。
 まちづくりに詳しい金沢大の伊藤悟教授(地理学)が「ふらっと足を運び、弁当を広げることができる。観光客が集う兼六園や金沢城公園にはない魅力がある」。県が説明するイベント運営やアクセス強化に一定の理解を示した上で「それらが本当に今、あの場所に適切なのか。市民の声に耳を傾け、議論と検証を重ねて」と求める。
 富山市に生まれ、日本建築学会長を務めた尾島俊雄早稲田大名誉教授(都市環境)は、中央公園の樹木を「金沢のご神木」と表現する。四十本余の伐採を「地域の雑木と同じ扱いにしてはならない」と強調。県民の意見を聴く場を十分に設けなかった点を疑問視し「一本一本が県民の記憶と重なり、受け継がれてきた。行政が簡単に決断できる話ではない。十分な議論がなく、知らないうちに(木々が)切られる事態は避けるべきだ」と警鐘を鳴らす。

北陸中日新聞 2013年4月26日 朝刊

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そして、市民団体も立ち上げられ、県に計画の見直しを申し入れましたが……。


中央公園整備 県、「伐採」変更せず  市民団体に回答 17日現場封鎖

 樹木の伐採中止などに反対の声が上がる金沢市広坂の中央公園の整備計画をめぐり、石川県は十三日、計画見直しを求める市民団体の申し入れについて、谷本正憲知事名で回答した。変更はせず、従来の主張を繰り返す内容。都市公園には多面的な機能があり、意見を聞いて十年にわたって検討したと強調した。また十七日から芝生広場が封鎖されることも明らかになり、本格的な工事に向けた準備を加速させた。
 計画では、イベント時の使い勝手向上や県周辺施設と一体化させた活用を目指し、来年一月まで工事を続ける。大小六千本のうち四十五本を切り、衰退した芝生に替わってアスファルト舗装をする。
 市民団体「中央公園の緑を守る会」は一日と九日に県庁を訪れ、(1)工事開始日(八日)の変更(2)伐採中止(3)舗装化の中止(4)県民からの意見聞き取り(5)整備内容の再検討-を求めた。県によると、回答は十三日午後五時ごろ、メールで代表の熊野盛夫さん(43)へ送った。
 回答では伐採について「改修に支障となる樹木に限り予定している」「旧制第四高等学校由来の樹木やシンボル的な大木を含め、多くはそのまま残す」と明記。芝生広場のクスノキやケヤキの大木、石川四高記念文化交流館周辺は守るという。
 舗装化に関しては「災害時における避難場所や天候に左右されにくいイベント会場としての機能向上を図り、バリアフリーにも配慮」すると説明した。
 経緯として、二〇〇三年度に地元関係者をはじめ都市計画や造園、生態学などの学識経験者、一般公募した県民で構成された委員会で検討、現在の方向性が示されたと紹介。意見聴取の場を設ける可能性を否定した。
 「新たな都心の賑(にぎ)わい創出に向け、これまでの中央公園と異なる魅力ある緑の空間に再生することが、多様なニーズにお応えできる整備内容と考えております」と結んだ。
 一方、県公園緑地課は十三日午後四時から、立ち入り禁止を知らせる看板の設置を始めた。期間は十七日~来年一月三十一日で、芝生広場を含めた大半がフェンスで囲まれる。十三日付でホームページを更新し、経緯や狙いなどを詳細にまとめた。

核心ごまかし

<中央公園の緑を守る会の熊野代表の話> (工事の変更要請で)県庁に出向いた際に受けた説明と何ら変わっていない。県民の意見聴取を求めたが、四十五本伐採するなど細かい内容は説明しておらず、核心をごまかしている。

北陸中日新聞 2013年5月14日 朝刊

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公園の再整備には、こんなところからも反対の声が。


中央公園整備 「園児遊び場失われる」  金沢の幼稚園 計画変更要望へ

 石川県が樹木の伐採や芝生広場の透水性舗装などを計画する金沢市広坂の中央公園整備事業で、公園を日常的に利用している市内の幼稚園から「子どもたちの貴重な遊び場が失われる」と計画変更を求める声が上がっている。木陰があり、土や芝生の上を走り回れる公園の大切さを訴え「保育環境に対する県の考え方を聞きたい」と要望する。
 公園まで歩いて十分程度の長町幼稚園では普段からよく中央公園に出掛けていた。土と芝生の広場では転ぶことを気にせずに思いっきり走り回り、地面の虫を追いかけた。木陰が豊富で夏でも過ごしやすく、金沢城公園に出掛けても弁当は中央公園でとるほど親しんでいたという。
 県の計画を知ったのは、本紙が樹木四十五本の伐採予定などを報じた四月末になってから。保護者からも「なぜ」という声が相次ぎ、園の玄関前に記事や写真を掲げた。市民団体「中央公園の緑を守る会」が実施する書名にもほとんどの保護者が協力したという。
 主任の松井恭美さんは「根っこのでこぼこや土の感触がみんな大好き。自然の教材にあふれた今の公園が一番すてきだし、大切であることを分かってほしい」と訴える。
 十五日には立ち入り禁止前の公園を最後に楽しもうと散歩に訪れ、樹木に耳を当てた。園児は「木は生きているね」と話していたという。
 清泉幼稚園の新谷裕美園長も「転んだ時のダメージや夏場の照り返しを考えると、舗装された公園は利用しにくい」と疑問を投げかける。街なかの幼稚園にとって木や土と触れられる環境は貴重だとし「県がどんなふうに保育環境を考えているのか聞いてみたい」と話している。

北陸中日新聞 2013年5月19日 朝刊

◇◇◇◇◇

私自身は県の計画の何もかもがだめだとは思いません。
県は、雨天時に土がぬかるんでどろどろになることや、段差があってバリアフリーの観点から使い勝手が悪いことなどを問題点として挙げていますが、たしかにそういう点ではうなずける部分もあります。

それでも再整備には疑問を感じてしまいます。
私がこれはどうなの?と感じたのは以下の2点。

①イベント運営における使い勝手を優先
②市民、県民の意見聴取の必要

①については、県の目があまりにもイベント運営とか見栄えの良さとかにばかり向いていて、「公園」という場所のもうひとつの働きを忘れているんじゃないかなということ。
公園でイベントを開催するのが悪いわけじゃありません、もちろん。今までもイベントは行われてきたし、私自身それで楽しんだ経験があるし。
でも、イベントが開催されるのは時々。
一方、市民の憩いの場所、子どもの遊び場として使われるのが日常。
イベント時の使い勝手を考えるのも大切だけど、日常的に利用する人々にとっての「使い勝手」を考えるのも大切なんじゃない?
と思うわけです。

上に幼稚園が計画変更を求めているという新聞記事を掲載しましたが、私も小学校時代に遠足で中央公園に行き、土の上に座ってお弁当を食べたり走り回ったりした記憶があります。
「花岡ちゃん」の中でも、花岡ちゃんや簑島さんたちが芝生の上に直接座ったり寝転がったりしている絵が多くあります。
舗装されればこういうことはしにくくなってしまいますね。

現在の中央公園の俯瞰写真
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改修後の中央公園の平面図
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改修後のイメージ図はこんな感じ
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たしかに整っていてきれいではあるけど。
普段から利用している人々が、「良い」「好き」と言っている部分がことごとくなくなっている感じ。
公園ってなにより日常使いする人々のためのものであるべきと思うから、市民の声をもっと聴いてほしい。

そこで出てくるのが②の問題。
市民団体が市民の意見聴取の場を設けてほしいと県に要望しましたが、残念ながら今のところ実現せず。数千人分の署名も提出しているようなのですが、それでも「計画変更なし」の一点張りの県の頑なさにはがっかり。

これまで県議会で発言したり、有識者や一般公募の人たちで構成された委員会で話し合ったりと、けっこう前から構想はあったようです。それを根拠に県は「十分検討した」という姿勢です。逆に言えば、
「にもかかわらず、新聞報道されるまで地元の人間のほとんどが、この計画について全く知らなかったというのはどういうことだろう?」
という疑問をおぼえます。
県のホームページにこの計画のプランが掲載されたのも、報道の後ですし。
せめて1年前からでも、「こういう計画があるよー」っていうことを広くお知らせしていれば、ここまで反発が大きくなることもなかったんじゃないかな。
そして今からでも、市民の声に耳を傾けてくれてもいいのにと思います。
別に悪いことしてるんじゃないんだから、もっと堂々と、しっかりと、反対の声に向き合ってくれてもいいんじゃない?

などと、長々と書き連ねてきましたが……。
私の個人的な意見を言えば、やっぱり再整備は残念だし、悲しいです。
金沢城公園に「花岡ちゃん」を思わせるものがほとんどない今、私にとって中央公園はより「花岡ちゃん」を感じられる場所です。

県が指摘している「大木の根が露出していて利用上支障となる」「樹木が重なり合って暗く見通しが悪い」といった問題点は、そのとおりなのですが、私なんかはまさにそういうところこそが魅力なのになーと思うのです。
街の中心部でありながら、野性味を感じさせるところ、ちょっとした林みたいな独特の暗さがあるところ、他の公園にはないかけがえのない魅力です。

中央公園の周辺は近年再整備が進んでおり、新たな緑地もつくられました。今も、駐車場であったところが工事中で、広い芝生の広場になるようです。
県は、中央公園周辺の緑地が拡大したから、そちらに緑地の機能を移行して、中央公園はイベント運営の機能を向上させたいと説明しています。また、新たな樹木の植栽をすることも示しています。
でも、これらにも?です。
今ある土の地面をなくして新たに土の地面を作る。今ある大木を切って新しい木を植える。
だったら、今あるものを生かすという方法もあるのに。
緑地の機能はこのまま中央公園に持たせて、イベント開催の機能はしいのき迎賓館周りの緑地に特化させるとか。

と、いろいろ疑問が湧いて出ちゃうのも、県があまりにも説明に消極的だから。
どんどん情報公開をして、「委員会」でどういう話し合いが行われたのか、どういう経過で今の計画内容に最終決定したのか。
そういう諸々のことがわかれば、納得できるかもしれないですし、少なくとも今のモヤモヤ感は晴れると思います。


:文章内において、北陸中日新聞の記事を引用させていただきました。また、中央公園内の写真2点と改修後のイメージ図は石川県ホームページの「中央公園の再整備について」のページから、中央公園の俯瞰写真と改修後の平面図は北陸中日新聞2013年4月26日朝刊の紙面から引用させていただきました。以下に、引用リンク、参考リンクを明記します。

【引用リンク/参考リンク】
石川県/中央公園の再整備について
中日新聞:北陸発:北陸中日新聞から(CHUNICHI Web)

【ブログ内関連記事】
清原なつの『花岡ちゃんの夏休み』―みやもり坂があった頃  2013年5月19日
佐倉統「少数意見の常駐」―中央公園問題小考 2013年5月22日




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# by hitsujigusa | 2013-05-20 03:30 | 漫画 | Trackback | Comments(0)

花岡ちゃんの夏休み (ハヤカワコミック文庫 (JA840))


※5月21日、文章内の変更と、関連リンクを加えました。

【収録作】
「花岡ちゃんの夏休み」
「早春物語」
「アップルグリーンのカラーインクで」
「青葉若葉のにおう中」
「なだれのイエス」
「胸さわぎの草むら」
「グッド・バイバイ」


少女漫画家清原なつのさんの代表作「花岡ちゃんシリーズ」を収めた文庫。

才女を自称するメガネ女子大生花岡数子は、世俗の雑事には無関心、学問に異常な情熱を傾ける変人。そんな花岡ちゃんがひょんなことから出会ったのは、悪魔みたいに頭が切れるとうわさの簑島さん。才女としてのプライドをあっさり打ち砕かれる花岡ちゃんだが、なぜか簑島さんに惹かれていき……。

というお話。
二人の出会いを描いたのが「花岡ちゃんの夏休み」。
二人がさらに接近するのが「早春物語」。
「アップルグリーンのカラーインクで」は、花岡ちゃんの友人美登利が主人公。花岡ちゃんは脇役で登場。
「青葉若葉のにおう中」は、花岡ちゃんそっくりな女子大生宮嶋桃子が登場する話。実質的には花岡ちゃんとは全く関係ない話ですが、一応シリーズに入ります。
「なだれのイエス」はシリーズ完結編。簑島さんが事故に遭って花岡ちゃんが我を失う話。
この5作が「花岡ちゃんシリーズ」ということになります。
(「胸さわぎの草むら」「グッド・バイバイ」は別の独立した短編。)

このシリーズの魅力はなんといっても主人公花岡ちゃん。
花岡ちゃんはヒジョーにまじめに「人生とはなにか」「自分とはなにか」と考えるわけですが、あまりにもそれしか見えなさすぎていておもしろい。
たとえばこんなセリフ。

昔 幼かった頃には―― まったく単純にお嫁にいくことを夢みてた  ところが近頃それがめんどくさくてならん! うっとーしくってならん!  この限りある人生の貴重な時間をなんで赤の他人のためにさかねばならんのじゃ!〉(清原なつの『花岡ちゃんの夏休み』早川書房、2006年3月、10頁)

うーん、たしかにそう言われるとそうなんだが。真理をついているように思えないこともないが。そう言い切ってしまうゴーイングマイウェイな花岡ちゃんがすごい。

しかし、そんな花岡ちゃんの上を行くのが簑島さん。大学生のくせにやたら達観していて、
〈「ものごとはまげて見ナナメから見てホントのことがわかるんだよ」〉(同上、16頁)と、花岡ちゃんに衝撃を与える。
そんな簑島さんに惹かれるうち、自分が低俗なものと決めつけていた恋愛感情に翻弄される花岡ちゃん。二人の恋の行方は……。

◆◆◆◆◆

ところで、「花岡ちゃん」は金沢を舞台にしています。
私hitsujigusaは金沢在住なので、そのこともあって「花岡ちゃん」ファンになりました。

作者の清原さんは金沢大学薬学部の卒業生。
金沢大学のキャンパスはかつて、金沢城跡地にありました。
現在、大学は移転し、跡地は金沢城公園として整備され、大学があったことを思わせるものはほとんどなし。
しかし、唯一「花岡ちゃん」を想起させるものが残っています。
「みやもり坂」です。

完結編「なだれのイエス」では、大学構内にある「みやもり坂」でなだれが発生、簑島さんが遭難するという事故が起きます。
んなばかなとつっこみを入れたくなりますが、実際のみやもり坂がこちら。

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坂の上から見るとこんな感じ。

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伝わりにくいかもですが、けっこう勾配があって、全長150mくらいでうねうねくねっています。
すぐ脇に石垣があって木々が迫っているので、なだれが起きてもおかしくない?とも思えます。

この本の巻末にあるあとがきマンガ「みやもり坂の頃の事~花岡ちゃんの思い出~」で、清原さんはこう綴っています。

北陸なので雪が降り積もると通学ならぬ登城も大変
そんなある日 一番の難所みやもり坂で スキーをしている人を目撃しちゃったのでした  みやもり坂は雪の無い季節には学生たちが自転車で一気登りができるかどうかで脚力自慢をしていた長く急峻な坂でした〉(同上、259頁)

スキーをする人を見たのがきっかけで、「なだれのイエス」を描いたと清原さんは続けています。

今ではみやもり坂という名前はなく、「いもり坂」となっています。
漢字では「宮守坂」と書くようですが、歴史的にはこれを「いもりざか」と読むのが正しいのでしょう。
清原さんはじめ当時の学生たちは、そのまま「みやもりざか」と呼んでいたのですね。

こんなふうに金沢も変わり、「花岡ちゃん」時代の面影も薄れつつあります。

そんななか、「花岡ちゃん」に登場する場所で実在するスポットがもう一つ存在します。
中央公園です。
中央公園は花岡ちゃんや簑島さんたち学生がたむろする場所としてよく登場します。
当時のキャンパスがなくなってしまった今、金沢城公園以上に、花岡ちゃん時代の面影を色濃く残している貴重なスポットといえるかもしれません。
が、そんな中央公園を巡って、今ある問題が生じています。

長くなってきたのでここらで一旦記事を終了します。
すみません。
続きは次の記事で。


【関連リンク】
金沢城公園 金沢城公園内の詳しい地図などが載っていますので、参考までに。

【ブログ内関連記事】
清原なつの『花図鑑』―科学的な体と非科学的な心 2015年8月7日




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# by hitsujigusa | 2013-05-19 03:26 | 漫画 | Trackback | Comments(2)

図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)


※2013年5月21日、注を追記し、引用リンクを追加しました。
※2014年7月10日、ブログ内関連記事のリンクを追加しました。


【あらすじ】
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」が存在する2019年。不適切な本の取り締まりのためには武力も辞さない「メディア良化隊」と、本と利用者の自由のために自ら武装した図書館組織「図書隊」は、長く抗争を繰り広げていた。そんな中、自分を助けてくれた図書隊員に憧れて図書隊に入隊した主人公笠原郁は、精鋭部隊といわれる図書特殊部隊配属となるが……。




最近実写映画も公開されて再び注目されている『図書館戦争』。それ以前に、本屋大賞に入賞したりアニメ化されたりコミカライズされたりと、小説界では知らぬ人はいないと言ってもいいくらいの人気作である。
かくいう私もだいぶ前からその存在は知っていたものの、手に取ったのはようやく去年のこと。
関心を抱きつつも尻込みしていた。
その理由はアマゾンのレビュー。
「ライトノベル」「恋愛メイン」みたいな評に、どうも一歩踏み出せずにいた。(というのもライトノベル的なものがあまり得意でないので)

で、2012年、初『図書館戦争』。
面白いじゃないか。レビューに踊らされてはいけないなあと反省。

たしかに恋愛小説の色も濃いが、SFとしてのリアリティもしっかりしている。
図書隊員の装備、訓練、図書隊の組織体制、階級といった基本設定の緻密さ。
抗争では図書隊とメディア良化隊の息詰まる攻防が生々しく描かれる。銃火器がぶっ放され血が流れる、まごうことなき“戦争”である。

メディア良化隊の描き方も実にリアル。現実にこういう組織が存在するわけではないのでリアルというのも変かもしれないが、実際に存在していても不思議じゃないなあと思わせる妙な説得力がある。
そう感じられるのは現代日本の延長にこの作品があるからだろう。
wikipediaでは、メディア良化隊の存在理由となっている「メディア良化法」についてこう書かれている。

〈スキャンダルを追いかけることに血道を上げる余りマスメディアが持つ権力監視機能が機能していなかったことと、国民の政治への無関心が、本来なら成立するはずのないこの法律を成立させた背景にある。〉

これって今の日本の状況そのもの?

作者の有川浩さんは、図書館に掲げられている「図書館の自由に関する宣言」から発想を得て、「図書館の自由に関する宣言が一番ありえない状況で適用されたらどうなるか」と考え、この作品を執筆するに至ったそうだ。
抗争にまで発展するかはともかく、国家権力等によるメディアへの表現規制、なんてのは現実にあるわけで、単なるフィクションだといって笑い飛ばせない部分もある。

と、まあお堅いことばかりを書いてしまいましたが、この作品の一番の魅力はハードとソフトのバランスの良さであると思う。
レビューに書かれるところの「ライトノベル」的な軽さがなければ、こんなに面白い小説にはならなかっただろうし、これほど広まりもしなかっただろう。
SFとして楽しむもよし、恋愛小説として楽しむもよし。
私のようにライトノベル慣れしていない人でも、偏見を持たずぜひ手に取ってみて欲しい良作である。


:文章内のwikipediaからの引用部分は、2013年5月15日9時14分更新の版からのものであり、現在は内容が変更されている可能性があります。以下に、私が利用した版のリンクを貼ります。

【引用リンク/参考リンク】
「図書館戦争」(2013年5月15日(水)09:14 UTCの版)『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 

【ブログ内関連記事】
SF小説・私的10撰 2013年10月6日  有川浩『図書館戦争』を取り上げています。


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# by hitsujigusa | 2013-05-17 16:49 | 小説 | Trackback | Comments(0)