ジャパンオープン2014&その他の国際大会について

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 去る10月4日、さいたまにてジャパンオープン2014が開催されました。この記事ではそのジャパンオープンについて取り上げるとともに、グランプリシリーズの行方を占う前哨戦となる9月から10月にかけて行われた国際大会についても書いていきたいと思います。


《ジャパンオープン2014》

 10月4日に行われたジャパンオープンは日本、北米、欧州の3チームに分かれて順位を争う団体戦。各チーム男女2名ずつによって構成され、フリー演技のみを行い、各選手のスコアの総計で順位を決します。
 その結果、551.95点で欧州チームが優勝、2位が522.09点の北米チーム、日本チームは512.24点で3位となりました。

Kinoshita Group Cup Japan Open 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 ここからは各チームごとにざっくりと感想を書いていきます。


●日本チーム

 日本チームは残念ながら3連覇を逃す結果となりました。出場したのは小塚崇彦選手、無良崇人選手、村上佳菜子選手、宮原知子選手の4人。良い滑り出しとなった選手、そうでない選手と、はっきりと明暗が分かれてしまいましたね。
 最も良かったのは、チーム最年少の宮原知子選手。女子選手6人中、2位で、また、公式スコアでないものの、131.94点という自己ベストをマークしました。全てのエレメンツで加点が付き、ひとつもミスといえるミスが無いというのが素晴らしかったですね。特にジャンプは安定感抜群で、大技の3ルッツ+3トゥループ、後半に組み込んだ2アクセル+3トゥループなど、難しいコンビネーションジャンプも完璧でした。プログラムは「ミス・サイゴン」ということで、アジアンな雰囲気漂う音楽の世界観を繊細に、丁寧に演じていましたね。これくらいの演技がグランプリシリーズの2大会でもできれば、宮原選手が目標として掲げるファイナル進出も見えてくるでしょうし、さらにその先にも大きく道が開けてくるのではないかと思います。でも、まだシーズンは始まったばかりですから、ゆっくりじっくりと、気持ちを高めていってほしいですね。
 村上佳菜子選手は114.38点で4位でした。プログラムの前半は好調な滑り出しで、苦手としている2アクセルからのコンビネーションジャンプも見事に決まり、安定していました。ただ、後半は3フリップがシングルになったり、軽微な回転不足を取られたりと、少し失速気味になりましたね。その分、満足のいく演技とはなりませんでしたが、村上選手自身も大会後のコメントでおっしゃっていたように、昨季のジャパンオープンと比べればだいぶ良かったですし、初戦としてはまずまずの出来だったと思います。焦らずマイペースに、課題を修正していってほしいですね。
 無良崇人選手は、男子の3位、146.41点でした。フリーには2本の4トゥループを組み込んでいて、1本目は完璧に決まりましたが、2本目は乱れ、コンビネーションにできませんでした。後半にも小さなミスがありましたが、得意としている3アクセルは2本とも素晴らしく、ジャンプ全体を見れば安定している方だったと思います。プログラムは「オペラ座の怪人」でしたが、正統派のファントムという感じでしたね。まだ、演技全体としては迫力に欠けるかなとも感じましたが、これからどんどん磨かれていくとより力強いファントムになっていくでしょうし、楽しみです。
 小塚崇彦選手は、本人いわく“スケート人生最悪の出来”で、得点は119.51点で6位。2本の4回転、3アクセルを含め、ほとんどのジャンプが何か噛み合っていない感じで、大崩れしてしまいましたね。シーズン初戦とはいえここまで崩れてしまうのはとても珍しいことなので、ちょっと心配もあるのですが、逆にこれがGPシリーズじゃなくて良かったという見方もできると思うので、気持ちを切り替えて次戦に臨めるといいなと願っています。


●欧州チーム

 欧州チームで最も良い演技をしたと言えるのは、やはり女子で1位、136.46点の高得点を叩き出したロシアのエレーナ・ラディオノワ選手ですね。3ルッツ+3トゥループ、3+1+3などを含む難しいジャンプ構成を難なくこなし、また、柔軟性を生かしたスピンでもきっちり全てレベル4を取っていて、隙のない演技を披露しました。プログラムもラフマニノフを使ったもので、昨季と比べるとぐっと大人っぽいプログラムになったわけですが、変に違和感も無く彼女によく合っていましたね。
 同じくロシアのアンナ・ポゴリラヤ選手は、出場を取りやめたユリア・リプニツカヤ選手に代わっての急遽の出場となりました。が、122.52点で3位と、安定した演技を見せてくれました。3フリップでエッジエラーを取られたり、2アクセルがシングルになったりと、細かなミスはありましたが、全体的には落ち着いて見ていられましたね。
 スペインのハビエル・フェルナンデス選手は155.47点で男子の2位。本来は4回転を3つ入れる構成でしたが、実際に成功させたのは1本。また、ほかのジャンプでもちょこちょこミスが散見され、同じ種類のジャンプの繰り返しで1つがノーカウントになるなど、精彩を欠きました。スピンでも取りこぼしが多くあり、まだ少し仕上がりには時間がかかるのかなと感じました。
 昨季をもって引退したチェコのトマシュ・ベルネルさんはプロスケーターとして参加、137.50点で4位でした。引退したとはいってもついこのあいだまで現役だったので、しかも大会の会場が現役最後の試合となった世界選手権2014が行われたのと同じさいたまスーパーアリーナとあって、なんだか不思議な感じがしましたね。


●北米チーム

 チームをリードしたのは今シーズンの休養を表明しているカナダのパトリック・チャン選手。178.17点という他選手を圧倒するスコアで1位となりました。ジャンプ的には休養中ということもあってか、4回転は1本のみという難度を抑えた構成でしたが、その分全体のバランスに優れていて、プログラムの世界に浸れましたね。もちろん、本気の競技会のピリピリした緊張感や結果を求められる場面ではないので、そういった場での演技とは比べるべくもないのですが、良い意味で力が抜けていてナチュラルな演技だなと感じました。音楽はショパンセレクションで、このために作ったんですかね。この大会だけだともったいないような、真剣な試合でも見てみたいなと思いますね。
 ジャパンオープンではおなじみとなっているカナダのジェフリー・バトルさんは、136.08点で5位。ジャンプでは複数ミスが出てしまいましたが、決まったジャンプは現役時代と変わらず美しく、スケーティングも現役選手を凌駕するものがあって、素敵でした。
 アメリカの長洲未来選手は、106.85点で5位となりました。ジャンプ構成は久しぶりに3+3を組み込み、2アクセル+3トゥループも跳ぶなど、意欲的な内容。そのほかにも、転倒してしまったものの長らく構成から外していた3サルコウも取り入れていて、攻めていましたね。大きなミスといえるのは3サルコウくらいで、全体的にまとまった演技となり、長洲選手自身も小さくガッツポーズをするなど手ごたえを得ていたようでした。ただ、得点はあまり伸びず、長洲選手はキス&クライで何度も「Why?」と口にしていました。確かに、演技の印象と実際の得点が乖離していて、もう少し得点が出ても良かったのではないかと感じました。3サルコウはともかく、きれいに決まったように見えたコンビネーションジャンプでも細かな回転不足を取られていて、あとはスピンのレベルの取りこぼしなどが響いた形ですね。ただ、演技そのものの完成度はこの時期としては高いですし、ジャッジの評価にはがっかりさせられたでしょうが、こういった取り組みを続けていけば評価もちゃんと高まっていくと思うので、気持ちを取り直して頑張ってほしいですね。
 アメリカのアシュリー・ワグナー選手は、100.99点で6人中最下位となってしまいました。転倒を連発するとかジャンプが抜けまくるとか、分かりやすい失敗が重なったわけではないのですが、アンダーローテーションが多く、スピンもレベル2ばかりということで、ワグナー選手らしくない演技でしたね。彼女らしいエネルギッシュさや勢いもあまり感じられず、集中しきれなかったのかなという感じもしました。ですが、ベテランですからGPシリーズにはきっちり合わせてくるだろうと思います。



《ネーベルホルン杯》

 9月24日から27日にかけてドイツのオーベルストドルフにて行われたネーベルホルン杯。グランプリシリーズに出場する選手も多く参加しました。

Nebelhorn Trophy 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子を制したのは昨季ブレイクしたアメリカのジェイソン・ブラウン選手。パーソナルベストに近いスコアでの優勝となりましたが、フリーでは細かなミスが複数あったようですね。2位に入ったチェコのミハル・ブレジナ選手は、ショート、フリーともに4回転でのミスがあり、あまり点が伸びませんでした。3位のロシアのベテラン、コンスタンティン・メンショフ選手は、ショートでもフリーでも4回転を1本ずつ成功させましたが、そのほかのジャンプでミスが見られ、得点を積み重ねることができませんでした。
 日本勢で唯一出場した日野龍樹選手は10位となりました。ショートは2度の転倒があり、12位発進。フリーは冒頭の4回転で転倒し、その後は立て直したものの、終盤の3フリップやスピンのレベルの取りこぼしなどミスが響き、大きく順位を上げることはできませんでした。本来はもっとポテンシャルの高い選手だと思うので、それが出せなかったのは残念ですが、シーズンは始まったばかりですから、この経験を次の試合の糧にしていってほしいなと思います。


 女子ではロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手が優勝。得点も190点台とさることながら、内容的にも大きなミスはなく、好調なスタートでしたね。2位は同じくロシアのアリョーナ・レオノワ選手で、こちらも全体的にまとまりのある演技でトータル186.71点を獲得。2012年の世界選手権の時にマークした自己ベストを上回る、新自己ベストとなりました。3位はアメリカ女王、グレイシー・ゴールド選手。実力を発揮できれば優勝に最も近いと思われましたが、ショート、フリーともに本来持っている3+3を成功させることができず、3位となりました。


 ペアでは2シーズンぶりの実戦復帰となったロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組が優勝。ショートはマイナス要素の無いほぼ完璧な演技、フリーではジャンプでミスが複数ありましたが、それでも2位を大きく引き離す高得点でショート、フリー両方で1位の、完全優勝を果たしました。久しぶりの競技会でしたが、こうしてちゃんと合わせてくるところはさすが経験豊富なベテランペアらしいなと感じましたし、グランプリシリーズがさらに楽しみになりましたね。2位は同じくロシアのエフゲニア・タラソワ、ウラジミール・モロゾフ組。こちらもショートで予定どおりの演技をこなし2位発進、フリーではいくつかミスがあったものの、ショートのアドバンテージを守り切りました。3位のアメリカのアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組は、ショートから複数ミスが出てしまい、自己ベストからは遠い得点となりました。
 ペア結成2シーズン目となる日本の高橋成美、木原龍一組は、134.59点で7位となりました。ショートでもフリーでもジャンプにミスがあり、得点を伸ばせませんでしたが、フリーでは2本のスロージャンプが2本とも決まっていて、良いところも表れたのかなと思います。次はスケートカナダオータムクラシックに出場する2人。1戦1戦、じっくりと取り組んでいってほしいですね。


 アイスダンスは、世界選手権2014の銀メダリストであるカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組が優勝。優勝はしましたが、スコア的にはパーソナルベストまでまだ10点ほどあるので、これからに期待ですね。2位はこちらも実力者のアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。ショートはレベルの取りこぼしがあり2位に甘んじましたが、フリーは盛り返して自己ベストとなる100.93点をマーク。僅差での2位となりました。3位はドイツのネッリ・ジガンシナ、アレクサンダー・ガジー組。フリーではツイズルでのミスがありましたが、ショートからの点差を活かして表彰台を守りました。



《フィンランディア杯》

 フィンランディア杯は10月9日から12日にかけて行われました。当初のエントリーでは羽生結弦選手も出場する予定となっていましたが、腰痛のため欠場することとなりました。

Finlandia Trophy Espoo 2014 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子はロシアのセルゲイ・ボロノフ選手が優勝。SPでは4回転が入らなかったものの、フリーでは1本をきっちりと成功させ、ミスの少ない演技を見せました。ただ、今季から導入された、同種類のダブルジャンプは3回以上跳んではならないという新しいルールに引っ掛かり、3連続コンビネーションジャンプが丸々ノーカウントになってしまったため、思った以上に点が伸びなかったのはもったいないところでした。新ルールの怖さを思い知らされましたね。2位となったアメリカのアダム・リッポン選手は、ショートで大きなミスが2つあり出遅れましたが、フリーでは挽回し、演技直後は納得の表情。ただ、フリーは4回転が入っていなかったので、今後そのあたりをどうしていくかという戦略的部分が気になりますね。3位はロシアのアレクサンドル・ペトロフ選手。現在は主にジュニア選手として活躍していて、今季もジュニアGPファイナルへの進出がすでに決まっています。そのため、ジュニアより演技時間が長くなるフリーの後半はさすがに疲労の度合いが濃く、ジュニアらしさが所々に見られましたが、それでもショート、フリーともに大きなミスなく終えていて、自己ベストにきわめて近い得点をマーク。ジュニア界のトップスケーターとしての実力を見せつけました。


 女子では、ネーベルホルン杯に続きエリザベータ・トゥクタミシェワ選手が大差をつけて優勝。得点は193.31点で、高得点だったネーベルホルン杯からまた上げてきたというのが凄いところですが、演技内容を見てもやはり安定していて圧倒させられる滑りでした。11/12シーズンにシニアデビューし、GP2大会優勝という華々しいデビューを飾ったトゥクタミシェワ選手ですが、その後はシーズンを追うごとに成績が下降、ジャンプも安定感を欠くように。その主な原因と考えられるのが身体の成長ですが、身長が伸び、華奢だった体型も徐々に女性らしくふくよかなものになっていったことが大きく影響したものと思われます。しかし、現在の彼女はぐっと身体が締まり、シニアデビューした頃に近くなっています。そのおかげか、演技中の動きも昨季と比べてずっとキレキレで、ジャンプにもシャープさが戻ってきています。トゥクタミシェワ選手が彼女らしい輝きを取り戻し、力が拮抗している女子フィギュア界を掻き回す存在になってくれれば、14/15シーズンの女子フィギュアがさらにおもしろいことになるんじゃないかという気がします。ただでさえロシア勢が中心となることが予想されている中で、トゥクタミシェワ選手が復活すれば日本勢にとっては更なる脅威ですが、誰が今季の主役に躍り出るのか、先の読めなさは楽しみでもありますね。
 2位はアメリカのサマンサ・シザリオ選手。SPはジャンプとスピンでミスが出て5位と出遅れましたが、フリーではミスを最小限に抑えた演技で立て直し、表彰台に上がりました。気になったのはスピンで、レベル2とか3ばかりなので、その点は今後の課題になってくるでしょうね。
 3位に入ったのは日本の本郷理華選手。ショート、フリーともに致命的なミスというのはなく、ある程度まとまっていたのが良かったですね。細かなミスは複数ありましたが、さほど深刻なものではないと思うので、次に向けてまた頑張ってほしいです。そんな本郷選手、当初はGPシリーズ1大会のみの出場でしたが、ほかの選手の出場取りやめなどによって、ロステレコム杯の出場も追加されました。2大会も本郷選手が見られるというのは嬉しいですし、チャンスが回ってきたわけなのでぜひ活かしてほしいとは思いますが、あまりGPということは意識せず、これまでの大会と同じように臨めることを祈っています。


 アイスダンスを制したのはロシアのアレクサンドラ・ステパノワ、イワン・ブキン組。シニア2年目となる若いカップルですが、フリーとトータルで自己ベストを更新しました。2位はドイツのネッリ・ジガンシナ、アレクサンダー・ガジー組で、ネーベルホルン杯に続いての表彰台。ツイズルやステップでミスがあり、得点的にはネーベルホルン杯より下げる結果となりました。3位となったのはアメリカのアナスタシア・カヌーシオ、コリン・マクマヌス組。こちらもフリーとトータルでパーソナルベストをマークしています。



 さて、いよいよGPシリーズ初戦、スケートアメリカが来週末に迫り、カウントダウンが始まっているような感覚ですね。ジャパンオープン、そしてその他の国際大会もどんどん消化されていき、出場した選手たちはそれぞれのスタートを切っています。それがどのようにGPシリーズ、ひいてはその先に繋がっていくのか……。シーズン始めの国際大会には、GPとはまた違った見方、楽しみがあるなと改めて感じました。では、また。


:記事冒頭の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-10-16 03:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)