全日本選手権2014・男子&アイスダンス―羽生結弦選手、圧巻の3連覇(後編)

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※2015年1月26日、リード&リード組の世界選手権派遣についての追記と最低技術点についての訂正をしました。

 全日本選手権2014、男子&アイスダンスについての記事の(後編)です。(前編)からの続きですので、ぜひ(前編)もご覧下さると流れが分かりやすいかなと思います。

第83回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位は全日本ジュニア銀メダリスト、ジュニアGPファイナル銀メダリストの山本草太選手です。

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 SPはラフマニノフの「ピアノ協奏曲」。得点源の3アクセルは空中で回転が解けてしまい、2アクセルのダウングレード(大幅な回転不足)で降りてきてしまいます。しかし、その後のジャンプに影響を及ぼすことなく、3+3、3ルッツとクリーンに決めていき、ステップシークエンス、スピンも安定してこなし、総合力の高さを見せました。得点は67.19点で7位につけます。
 フリーも大技3アクセルに果敢に挑みましたが、回転こそ認定されたものの転倒。ですが、次の3+3をきっちり成功させると、3+2、2アクセル+1ループ+3サルコウなどコンビネーションジャンプは全て決め、最後の2アクセルでの失敗する場面はありましたが、大崩れすることなく演技をまとめました。得点は139.61点でフリー6位、総合6位で2度目の全日本を終えました。
 3アクセルは一度も成功しませんでしたが、大崩れさせない安定感はやはり14歳とは思えない落ち着きぶりで、全日本特有の空気に飲まれることなく本領を発揮していて素晴らしかったですね。
 3月には初めての世界ジュニア選手権に挑むことになる山本選手。次こそ3アクセルも決めて、悔いのない演技ができることを祈っています。


 7位に入ったのはNHK杯2014で優勝した村上大介選手です。

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 SPの冒頭は全選手中唯一の4サルコウ+2トゥループの連続ジャンプから、これを完璧に成功させて波に乗ると、続く3アクセルも着氷。後半の3フリップも難なく決めて、重厚な旋律に合わせ「ロクサーヌのタンゴ」を情熱的に演じ切り、フィニッシュではガッツポーズ。ただ、得点は81.28点と思ったほど伸びず、4位発進となります。
 表彰台を狙える位置で迎えたフリーは最終滑走。まずは練習から安定感抜群だった4サルコウからでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。さらに2本目の4サルコウも同様に転倒し単独ジャンプとなります。それ以降も3アクセルが2本ともミスジャンプとなり、終盤は何とかこらえて巻き返しましたが、本来の力を発揮できず、得点は120.80点でフリー8位、総合7位と順位を下げてしまいました。
 ショートは多少なりとも緊張はあったと思いますが、自信を持って滑っているんだなというのが感じられて、優勝したNHK杯からうまく調整してきたことを匂わせました。ですが、フリーは24人中24人目の滑走という最もストレスとプレッシャーを強いられる場面で、しかもメダルに手が届く位置にいるがゆえの怖さというのもあったんじゃないかなと想像します。でも、そういった緊張感を味わえるのも村上選手が全日本の表彰台を争えるレベルまで達したからこそだと思いますし、NHK杯で優勝して、全日本で7位になって、ようやく本当の意味でトップスケーターに向けての村上選手の戦いが始まるのかなという気がします。
 四大陸選手権では全日本のリベンジをして、心からの笑顔が見られることを楽しみにしています。


 8位は今季本格的なシニアデビューの田中刑事選手。

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 ショートは4回転を外した構成で臨んだ田中選手。冒頭は3アクセルでしたが、着氷で大きく乱れ不完全なジャンプとなってしまいます。続く3+3はきっちり成功させたものの、後半の単独の3ルッツが2回転になり全くの無得点となる大きなミス。また、スピンでの取りこぼしもあり、もったいない内容となりました。得点は62.83点で9位に留まります。
 フリーでは冒頭に大技の4サルコウに組み込みましたが、惜しくも転倒となります。続く3アクセルは完璧に成功させたものの、その後のジャンプでも3回転が2回転になるミスが複数あり、また、スピンでのレベルの取りこぼしもあり、SP同様課題の残る演技となりました。得点は124.60点でフリー7位、総合8位でフィニッシュしました。
 フリーの後、田中選手は2014年を振り返って「思いつく限り悪いことしか浮かばない」と話し、複雑な心中を吐露しました。田中選手にとって2014年はジュニアとしてのラストイヤーでもあり、シニアとしてのデビューイヤーでもありました。11月には中国杯でシニアGPデビューも果たしましたが、昨季後半からの苦しい流れを断ち切れていないのかなという印象で、我慢の時期なんだろうなと思います。ですが、成功率が高くない中でも4サルコウをプログラムに取り入れるなど将来を考えての挑戦もしていて、今はまだいろんな取り組みがなかなか噛み合っていない様子ですが、実を結ぶ時がやって来るのを信じて頑張ってほしいですね。



 男子については以上です。ここからはアイスダンスの結果についてざっくりと。

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 優勝したのは実に7度目の制覇となったキャシー・リード、クリス・リード組です。

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 SDで2位のカップルに差をつけて堂々の首位発進すると、フリーではツイズルでの減点やリフトでの規定違反など多少ミスはあったものの、その他では安定した演技を見せ1位、総合でも1位で2007年、2008年、2009年に達成した3連覇に続く、自身2度目の3連覇を果たしました。
 今季はクリス選手の膝の不具合のこともあって今大会が2試合目ですが、得点的にも全日本におけるパーソナルベストをマークしていますし、着実に向上しつつあるのかなと思いますね。世界選手権出場に関しては最低技術点(ミニマムスコア)の条件を満たしていないため現時点では代表選出とはなっていませんが、年明け以降の国際大会でその課題をクリアできれば出場OKなので、世界選手権でもぜひふたりの息の合った演技を見たいなと思います。
 2位は平井絵己、マリオン・デ・ラ・アソンション組。最終得点ではリード&リード組に10点の差をつけられてしまいましたが、フリーの技術点ではおよそ1点差に迫り、昨季からの成長を見せ4年連続の銀メダルとなりました。
 3位は今季結成した新人カップル、村元哉中、野口博一組。技術点では上位2組には遠く及びませんでしたが、演技構成点では高い評価を受け、結成1年目にして全日本の銅メダルを獲得しました。



 さて、男子&アイスダンスについてはこれでおしまいとなります。ここで今大会は世界選手権2015、四大陸選手権2015、世界ジュニア選手権2015の選考会ということで、それぞれの大会に派遣されることとなった男子&アイスダンスの選手をまとめたいと思います。が、その前に世界選手権代表選手の選考方法をざっとおさらいします。


《世界選手権代表選考方法(男女シングル)》

① 1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
② 2人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して決定する。
 A) 全日本選手権2位、3位の選手
 B) グランプリ・ファイナル出場者(①の選手を除く)上位2名
③ 3人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して決定する。
 A) ②の A)又は B)に該当し,②の選考から漏れた選手と全日本選手権4位~6位の選手
 B) 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディングの日本人上位3名
 C) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコアの日本人上位3名


《世界選手権代表》

男子シングル:羽生結弦、小塚崇彦、無良崇人(当初は町田樹選手が選ばれましたが辞退したため、代わりに無良選手が選出)




 選考方法と照らし合わせますと、①に当てはまる羽生結弦選手は当然のこととして、②③に関してはいろんな選手の名前が浮かぶのでちょっと選ぶ難しさもあるなという感じですね。
 まず②のA)に当てはまるのは全日本2位の宇野昌磨選手、同大会3位の小塚崇彦選手。そして②のB)に当てはまるのがGPファイナル5位の無良崇人選手、同大会6位の町田樹選手です。全日本での結果を重んじるならば準優勝の宇野選手も有力ですが、宇野選手は世界ジュニア選手権に専念するとこのことで世界選手権代表からは外れました。残るは小塚、無良、町田の3選手ですが、やはり群雄割拠の中で全日本3位と大一番での強さを見せつけ、しかも実績だったり経験だったりということも加味するとなると、ベテランの小塚選手が②の中で一歩リードになるのは頷けるかなと思います。
 では、③では誰が挙がるかというと、③のA)に該当するのは宇野選手、町田選手、無良選手、山本草太選手ですが、宇野選手は上述した理由のため、山本選手は世界選手権出場の年齢制限に引っ掛かるため、除外となります。③のB)ですと、日本人1位は羽生選手ですが①で既に選ばれているので外し、日本人2位は町田選手、日本人3位は無良選手となります。そして③のC)でも、日本人1位は当然羽生選手ですが、2位は町田選手、3位は無良選手となっています。ここまでで代表の対象となりうるのは町田、無良の両選手ですが、全日本、ワールドスタンディング(世界ランキング)、シーズンベストスコア全てで無良選手の上に位置している町田選手が必然的に選出されることとなります。ですが、その町田選手が代表を辞退したため、繰り上がりという言い方が正しいかどうか分かりませんが、町田選手と3人目の枠を争った無良選手が代表に選ばれる運びとなりました。
 選出されたからには町田選手にぜひ世界選手権に出場してほしかったので、その点では彼が代表メンバーのリストの中にいないのは残念ですが、無良選手ももちろん力のある選手ですし、町田選手と同世代でジュニア時代から切磋琢磨してきた戦友として、町田選手の想いも携えて頑張ってくれるんじゃないかなと思いますし、羽生、小塚、無良の3選手は間違いなく現時点でベストメンバーと言えるのではないでしょうか。
 一方、アイスダンスの選考方法は詳細な条件や基準といったものはなく、国際的な競技力を考慮して決定するとしています。ですので、通常であれば全日本チャンピオンで数々の一流国際大会に出場してきたリード&リード組が当然選ばれるのですが、現時点では世界選手権出場に必要な最低技術点(ミニマムスコア)をクリアしていないため、アイスダンスの世界選手権代表は未定となっています。
 最低技術点とは何かということを説明しますと、国際スケート連盟が主催する選手権大会やGPシリーズなどでは大会ごとに最低技術点が設定されていて、今季もしくは昨季の国際スケート連盟に認定されている国際大会でその最低技術点をクリアしていないと、大きな大会への出場が認められないというルールです。世界選手権2015におけるアイスダンスの最低技術点はショートダンスが29点、フリーダンスが39点で、両方を満たしていないと出場の資格が得られないわけですが、リード&リード組はまだその最低技術点をクリアしていないので、世界選手権の公式練習初日の21日前までにクリアしなければいけません。リード&リード組は現在ポーランドで行われる国際大会に参加していて、そこで技術点がSD、FDそれぞれで29点、39点を超えることができれば無事世界選手権に出場できることとなります(※2015年1月26日訂正:FDの最低技術点はすでに満たしているので、クリアしなければならないのはSDの最低技術点のみです)。ふたりの本来の力が出せればクリア可能なスコアだと思うので、簡単なことではありませんが世界選手権に繋がるよう祈っています。
 なお、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表も以下のように決まっています。


《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、無良崇人、村上大介
アイスダンス:キャシー・リード&クリス・リード組、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組


《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、山本草太、佐藤洸彬




 全ての代表選手たちにとって満足のいく演技となり、良い結果がついてくることを願っています。
 次の記事では女子&ペアについて書きますので、少々お待ちください。


※以下、2015年1月26日に追記した部分です。

 1月20日、世界選手権2015のアイスダンス代表として、キャシー・リード、クリス・リード組が派遣されることが正式に発表されました。リード&リード組は全日本選手権2014で優勝したものの、世界選手権に出場するために必要なショートダンスの最低技術点を満たしておらず、世界選手権代表は保留となっていました。しかし、1月上旬にポーランドで行われた国際大会、メンターネスレネスクイックトルン杯2015において、世界選手権出場の条件となるSDの最低技術点をクリアしたため、無事世界選手権派遣が決まりました。
 これでリード&リード組は8年連続で世界選手権に出場することとなりました。メンターネスレネスクイックトルン杯ではSD、FDともに目立ったミスなく安定した滑りを見せていて、このあとの大舞台に向け良い調整となったのではないかと思います。リード&リード組の次戦は2月中旬に韓国で開催される四大陸選手権、こちらでも二人らしい演技が見られることを楽しみにしています。


注:男子メダリスト3選手のスリーショット写真、山本選手の写真、田中選手の写真、アイスダンスメダリスト3組の写真、リード&リード組のFDの写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、村上選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、リード&リード組のSDの写真は、毎日新聞のニュースサイトが2014年12月26日配信した記事「写真特集:2014全日本フィギュア 華麗なる戦い」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-01-07 16:25 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)