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世界国別対抗戦2015―アメリカ、僅差で2連覇(男子SP&ペアSP)

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 前記事に引き続き、世界国別対抗戦(ワールド・チーム・トロフィー)2015についてお伝えしていきます。今回は男子ショートプログラムとペアショートプログラム編です。なお、この大会のルール、システムについてはこちらの記事をご覧ください。

ISU World Team Trophy 2015 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子SPで1位となったのは日本の羽生結弦選手です。

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 冒頭は大技の4トゥループ、これをパーフェクトに成功させて2.71点の高い加点を得ます。続く2つのスピンは最高難度のレベル4を獲得した上に1点以上の加点。後半に入り最初の3アクセル、こちらも問題なくクリーンに決めます。そして今シーズン苦しんでいる3ルッツからの2連続3回転でしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まり、強引に3トゥループを付けたものの回転不足で転倒となります。しかしそこからすぐ立て直し、ステップシークエンス、スピンはレベル4。ショパンの「バラード第1番」を緩急豊かに演じ切りました。得点は96.27点でシーズンベストを更新、1位に立ちました。
 4トゥループ、3アクセルは申し分のない美しいジャンプでしたが、今季鬼門となっている3ルッツがまたもや壁となってしまいましたね。先月の世界選手権では完璧に成功させていて、会場入りしてからもほとんど失敗がなかったということでしたが、羽生選手はミスの原因についてスピードの問題を挙げ、ジャンプを跳ぶ前にターンやクロスが入っているためスピードを上げる機会が3歩しかなく、少ない歩数でトップスピードに持っていく技術がまだないと話しました。すごく論理的な説明でとても分かりやすいのですが、こうした技術的なことを聞くと、ひとえにジャンプを跳ぶといっても素人目には分からないような工夫がさまざま施されていて、ものすごく難しいことをしているんだなと改めて実感しますね。


 2位は中国のエース、閻涵(ヤン・ハン)選手です。

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 まずは代名詞の3アクセル、これをいつもどおりの猛スピードと飛距離で跳び、加点2.29点の高評価となります。続いて大技の4トゥループでしたが、こちらは着氷が乱れて大幅に減点。しかし、後半の3+3は確実に決めて、大きな取りこぼしなく演技を終えました。得点は87.13点で2位となりました。
 羽生選手にとって3ルッツが鬼門なように、閻選手にとっては4トゥループが泣きどころとなっていますね。回転不足というのはほとんどないにもかかわらずミスしてしまうというのは、着氷のタイミングや感覚の問題なのでしょうか。もちろんシーズン初戦のアクシデントの影響もあるでしょうが、これが決まると自己ベスト更新も十分に可能だったと思うので惜しかったですね。


 3位はアメリカチャンピオンのジェイソン・ブラウン選手です。

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 冒頭は得点源となる3アクセル、着氷で若干詰まり気味になりますがミスなくまとめます。続く3フリップ+3トゥループもしっかりクリア。後半の3ルッツも難なく決めました。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃え、特に得意のステップシークエンスは独創的なフットワーク、振り付けと抜群のリズム感で会場を盛り上げ、全選手中トップとなる1.7点の加点を獲得しました。得点は86.48点、ソチ五輪でマークした自己ベストを上回りました。
 ブラウン選手らしい、ユーモア溢れる軽快な演技でした。その中でも多彩なつなぎがプログラム全体に散りばめられていて、最初から最後まで目が離せない見どころ満載のプログラムで、この半年間毎回楽しませてもらいましたね。


 4位は日本チームのキャプテン、無良崇人選手。

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 まずは大技の4トゥループ+3トゥループから、4回転の着氷で片手を氷に付きますが、何とか3回転をつけて予定どおりの連続ジャンプにします。続く3アクセルも着氷で乱れたもののかろうじて成功。後半の3ルッツはきれいに降り、ところどころミスはありつつも、大崩れすることなく手堅く演技をまとめました。得点は82.04点となりました。
 世界選手権ではまさかの演技で際どいフリー進出となった無良選手。今大会はそれから3週間ほどしかない短期間での調整となったわけですが、不完全ながらもリベンジできたんじゃないかなと思います。表現的にも縮こまった感じがなく、無良選手らしい豪快さが表れていましたね。


 5位はロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 冒頭は今季高い確率で成功させている4トゥループ+3トゥループの連続ジャンプでしたが、ファーストジャンプが3回転となり、3+3となります。後半の3アクセル、3ループは確実に決めましたが、4回転のミスが響き、79.09点とスコアは伸び切らず、5位に留まりました。
 4回転が入らないミスこそありましたが、プログラムの流れとしては途切れることなく世界観を存分に見せてくれましたね。この「死の舞踏」もこれで見納めになると思いますが、ボロノフ選手の雰囲気にハマっていて私はとても好きでした。そもそも「死の舞踏」という曲自体が好きなのでえこひいきが入ってるかもしれませんが、特徴的な振り付けで奇怪な空気感をうまく作り出していて、ロシアのスケーターならではの影を湛えた感じが音楽とピッタリ合わさっていたように思いますね。


 6位はカナダ王者のナム・グエン選手。

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 冒頭の3アクセルは完璧な跳躍とランディングでしっかり加点を稼ぎます。後半に2つのジャンプ要素を組み込み、3ルッツ+3トゥループはルッツのエッジが不正確とされ若干減点を受けますが、3フリップは問題なく成功。ただ、スピンでもマイナスとなる部分があり、得点は77.42点とわずかに自己ベストに及びませんでした。
 演技内容は良かっただけに細かな取りこぼしがもったいなかったですね。パーソナルベストは77.73点でしたから、あと本当にちょっとでした。世界選手権でもすでに証明済みなように、試合の雰囲気に飲まれない度胸だったりメンタルの強さはあるので、さらに隙の無い演技ができるようになってくると、一皮も二皮も剥けて手強い選手になりそうだなと感じます。



 ということで、男子SPの順位とポイントをまとめますと、このようになります。


《男子SP》

1位:羽生結弦(日本)、12ポイント
2位:閻涵(中国)、11ポイント
3位:ジェイソン・ブラウン(アメリカ):10ポイント
4位:無良崇人(日本):9ポイント
5位:セルゲイ・ボロノフ(ロシア):8ポイント
6位:ナム・グエン(カナダ):7ポイント
7位:マックス・アーロン(アメリカ):6ポイント
8位:マキシム・コフトゥン(ロシア):5ポイント
9位:フローラン・アモディオ(フランス):4ポイント
10位:ジェレミー・テン(カナダ):3ポイント
11位:ロマン・ポンサール(フランス):2ポイント
12位:宋楠(中国):1ポイント




 続いてはペアのショートプログラムです。
 1位となったのは世界選手権銀メダリスト、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・ツォン)組。冒頭の3トゥループを2人そろってクリーンに決めると、続くスロー3フリップも完璧な跳躍とランディングで1.8点の高い加点。その後のエレメンツもそつなくこなし、71.20点をマークしました。普段私はペアをじっくり見ることがないのでこのSPを見るのも実は今回が最初で最後なのですが、良い意味でペア大国中国の正統派とは違う魅力があっておもしろいですね。ロカビリーバンドのアップテンポな曲を終始ノリノリで演じていて、見ているこちらも楽しくなりました。
 2位は世界チャンピオンのカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組です。全体的にまとまりのある演技を見せましたが、3ルッツが2回転になるミスがあり、68.68点と得点を伸ばすことができませんでした。
 3位はロシアの川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組。序盤のソロジャンプ、ツイストが本来の出来ではなく予定した基礎点を稼げませんでしたが、その後は安定してエレメンツをクリーンにこなしました。
 4位はアメリカのアレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組。ソロジャンプの3サルコウとスロージャンプの3フリップでの小さなミスはありましたが、演技をしっかりまとめ、自己ベストに迫る得点をマークしました。
 5位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組。序盤のソロジャンプでミスがあった以外に目立ったミスはありませんでしたが、終盤のデススパイラルで減点される場面があり、パーソナルベストからは遠い得点となりました。
 6位は今大会がシニアデビューとなった日本の古賀亜美、フランシス・ブードロー=オデ組です。

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 まず最初のエレメンツの2ツイストをきちんと成功させると、続くスロー3ループもクリーンに降ります。ソロジャンプやスピンで減点される部分はありましたが、決めた技では加点もしっかり得て、自己ベストに迫る46.87点をマークしました。
 シニアの日本代表だった高橋成美、木原龍一組のペア解消によって急遽チャンスが回ってきたわけですが、そうした慣れないシチュエーションの中でも落ち着いて安定した演技ができていたと思います。プログラムも日本を舞台に日本人の女性と西洋人の男性のカップルを描いた作品ですから、二人の醸し出す雰囲気とよくマッチしていて良かったですね。


《ペアSP》

1位:隋文静、韓聰組(中国)、12ポイント
2位:メ―ガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組(カナダ)、11ポイント
3位:川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア)、10ポイント
4位:アレクサ・シメカ、クリス・クニーリム組(アメリカ)、9ポイント
5位:ヴァネッサ・ジェームズ、モルガン・シプレ組(フランス)、8ポイント
6位:古賀亜美、フランシス・ブードロー=オデ組(日本)、7ポイント




 男子SP&ペアSP編はこれで終了です。男子フリー&アイスダンスフリー編に続きます。


:記事冒頭のメダリスト3チームの写真、閻選手の写真、ブラウン選手の写真、無良選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、羽生選手の写真、ボロノフ選手の写真、グエン選手の写真は、エンターテインメント情報ウェブサイト「Zimbio」から、古賀&ブードロー=オデ組の写真は、毎日新聞のニュースサイトが2015年4月16日に配信した記事「写真特集:2015フィギュア世界国別対抗戦 羽生エースの決意」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-04-21 01:35 | フィギュアスケート(大会関連)