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各選手の15/16シーズンの新プログラムについて・その③

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 アイスショーシーズンもそろそろ終盤に突入し、現役選手たちは試合モードに入りつつあると思いますが、日本の選手を始めとするスケーターたちの新プログラム情報をお届けします。



 まずは上の写真でもお分かりのとおり、無良崇人選手のプログラムについてです。無良選手は6月に行われたアイスショー「Dreams on Ice」で新ショートプログラム「黒い瞳」を披露しましたが、フリーに関しては未発表のままでした。ですが、8月に行われた浅田真央選手がホストのアイスショー「THE ICE」にて新フリーを発表。プログラムはシルク・ドゥ・ソレイユの「O」であることが分かりました。
 「O」といえば鈴木明子さんがパーソナルベストをマークした代表作として知られていますが、あの壮大でファンタジックな音楽を男らしく硬派なイメージの強い無良選手がどう演じるのか楽しみですね。SPの「黒い瞳」もそうですが、これまでの無良選手のイメージを良い意味で裏切る、新たな分野に挑戦しようとしているんだなというのが選曲から伝わってきます。プログラムの振り付け師もSPがアイスダンスの五輪チャンピオン、チャーリー・ホワイト選手ですし、フリーはあのジェフリー・バトルさんということで、全く新しいコラボレーションですから、今までと一味違った無良選手の姿が見られるでしょうね。


 そして、昨シーズン大きく飛躍した村上大介選手も新プログラムを発表しています。

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 村上選手も「Dreams on Ice」で新プログラムを初披露し、その際の記事で新フリー「彼を帰して ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」を発表、というふうに書いてしまったのですが、正しくはこちらはショートプログラムで、フリーはミュージシャンのYOSHIKIさんの「Anniversary」であることを7月に村上選手自身が公式サイトで発表しています。「Anniversary」はYOSHIKIさんが1999年の今上天皇の即位10年を祝う祭典のために作曲した奉祝曲。私自身は聴いたことがないのでどういう曲かよく知らないのですが、ネット上にアップされている練習動画を見ると、ピアノ曲でドラマチック&ダイナミックな良いプログラムになりそうですね。SPの「彼を帰して」もバラード曲ですから、ショート、フリーともに比較的エレガンスな感じで、村上選手の活発なイメージと比べると新鮮味があります。楽しみですね。


 また、すでにフリープログラムを発表している羽生結弦選手は練習拠点のトロントで練習の模様を公開し、その場でショートプログラムの演目を発表。14/15シーズンのSP「バラード第1番」を引き続き使用することを明かしました。
 個人的にはショートも新しいプログラムを見たかったなと思いますが、羽生選手は「パリの散歩道」を2季続けて演じることでプログラムを磨き上げていった過去がありますし、今回もそういったパターンなので驚きはないですね。昨シーズンは初戦の負傷によって当初の予定のジャンプ構成が組めなかったということもありますし、今季こそ本来の形の「バラード第1番」をということなのかもしれません。振り付けなど変更される部分があるのかどうかはまだ分かりませんが、さらに洗練されて昨季以上のプログラムになることを願っています。


 ここからは海外選手の新プログラムについての情報です。

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 1発目はソチ五輪女王のロシアのアデリナ・ソトニコワ選手。SPは「Latina」、フリーは「Je suis malade」です。
 ショートの「Latina」は「THE ICE」で披露されたプログラムで、私自身はまだその演技を見ていないのでどういう音楽かは知らないのですが、タイトルから想像するに情熱的な感じなのでしょうか。
 一方、フリーはフランスの歌手セルジュ・ラマが1973年に発表したフランス語の楽曲で、のちにさまざまな歌手にカバーされています。ソトニコワ選手が使用するのはベルギー出身の歌手ララ・ファビアンが歌うバージョンで、本来は14/15シーズンに予定していたものを持ち越すということになります。この曲は日本ではそこまで知られていませんが、かつては皇帝エフゲニー・プルシェンコ選手もエキシビションで使用していますし、ヨーロッパではスタンダード・ナンバーなんですね。“Je suis malade”=私は病気というタイトルのとおり、恋の病に苦しめられる様子を描いた大人の恋の歌で、昨季の負傷休養から復帰するソトニコワ選手がこの新しいプログラムでどんなものを表現してくれるのか、今からわくわくしますね。


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 現世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手はSPが「マラゲーニャ」、フリーが「映画『野郎どもと女たち』より」だそうです。
 「マラゲーニャ」はフィギュアファンにとってはもうおなじみ中のおなじみの楽曲。キューバ出身の音楽家エルネスト・レクオーナが作曲したスペイン風楽曲で、異国情緒漂う世界観が魅力的です。スペイン人のフェルナンデス選手が演じるのにまさにぴったりな選曲と言えます。ただ、オーソドックスな「マラゲーニャ」ではなく、スペインを代表するギタリスト、パコ・デ・ルシアとスペインを代表するテノール歌手、プラシド・ドミンゴが演奏、歌唱するバージョンだそうで、今まで見たことのない新しい、フェルナンデス選手ならではの「マラゲーニャ」になりそうですね。
 フリーはブロードウェイ・ミュージカルを映画化した作品のサウンドトラックを使用したプログラム。ニューヨークを舞台に賭博師たちの賭けを描いたコメディで、映画版ではマーロン・ブランドやフランク・シナトラなどそうそうたる面々が出演しています。これまでも「チャップリン・メドレー」や「Satan Takes a Holiday」などコミカル色の強いプログラムをたびたび演じてきたフェルナンデス選手ですが、この新フリーもそういった系統に位置しているのかもしれません。これまでのコミカル系のプログラムとどういった感じで違っているのか、どんな空気感の違いがあるのか、注目して見たいなと思います。


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 現アメリカ女王のアシュリー・ワグナー選手はSPが「Hip Hip Chin Chin」、フリーが昨季と同じ「映画『ムーラン・ルージュ』より」であることを自身のツイッターなどで明かしています。どちらも振り付けはシェイ=リン・ボーンさんです。
 ショートはサンバ。作詞・作曲はドイツ出身のジャズ・バンド、クラブ・デ・ベルーガで、You tubeで聴いてみたのですが、太鼓やドラムのリズムがとてもノリノリで、サンバというのは珍しいですし、ワグナー選手にとっても新しいジャンルの曲ですが、リズム感の良いワグナー選手なら滑りこなせそうな音楽だなと思います。また、大人のための音楽という印象もあって、ベテランの彼女にぴったりだなと感じますね。ボーカル入りの曲ですが、全面ボーカルというよりタイトルにもなっている“Hip Hip Chin Chin”というフレーズをところどころで繰り返すという感じなので、たぶんそのままボーカル入りを用いるのではないかと思います。
 フリーは昨シーズンと同じですが、さらにブラッシュアップできると判断しての選曲なのでしょうね。昨シーズンの序盤でこのフリープログラムを見た時は、見ているこちらがボーカル入りプログラムにまだ慣れていないということもあってしっくり来ませんでしたが、シーズンの終盤では見事に自分のものにして歌声とも一体化していました。ワグナー選手にとてもよく合っているプログラムだと思いますので、さらなる進化を期待したいですね。


 中国のエース、閻涵(ヤン・ハン)選手はショートがジャズのスタンダード・ナンバー「シング・シング・シング」、フリーが「映画『ロミオ+ジュリエット』より」であることを発表済みです。SPはジャズとのことですが、昨季のフリーもジャズの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」だったので得意分野と言えるでしょうか。ただ、新鮮味はあまりないので、同じジャズでもどう演じ分けて新鮮味を感じさせるかがポイントとなりそうですね。そして、フリーは1996年公開のレオナルド・ディカプリオ主演の『ロミオ+ジュリエット』のサントラ。かつて羽生結弦選手が演じ、初めての世界選手権のメダルを取ったことで有名な伝説的プログラムですが、そのあまりにもインパクトの強い作品をどう閻選手が自分のものにするか楽しみです。失礼ながらロミオのイメージと閻選手のイメージがうまく結びつかないのですが、閻選手のインタビューによると「新しいものにトライしたい」ということのようですし、今までと違うことをやろう、新境地を開拓しようとする閻選手の気持ちはよく分かりますね。未知数ではありますが、楽しみにしています。


 カナダの現チャンピオン、ナム・グエン選手はSPが「映画『キリング・フィールド』より」、フリーがバッハの「パッサカリアとフーガ」という、こちらも新たなチャレンジを見せています。SPの映画はシリアスな戦争映画ですし、フリーはバロック音楽の巨匠バッハの重厚な楽曲ですから、昨季とは全く違った選曲ですね。昨シーズンはシニア1年目ということもあって等身大の明るさや元気の良さを前面に押し出していた感じがしましたが、今季は2年目ということでがらりとイメージを変え、思い切って大人路線にチャレンジしてきた印象があります。1年目から十分な活躍を見せたグエン選手ですが、2年目は一体どんなシーズンを送るのか、とても楽しみですね。


 こちらも本格的なシニア参戦としては2年目となるアメリカのポリーナ・エドマンズ選手は、SPにベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」、フリーに「映画『風と共に去りぬ』より」を使用することが判明しています。ショートの「ピアノソナタ第14番」はいわゆる「月光ソナタ」で、ベートーヴェンのピアノソナタの中でも特に有名なものの一つ。フリーもアメリカ映画の代表選手という感じで、今までのエドマンズ選手の可愛らしかったりダンサブルだったりというのとはまた違った、大人っぽい選曲となっていますね。「月光ソナタ」はしっとりと悲哀を感じさせますし、一方で「風と共に去りぬ」はオーケストラが奏でる壮大な曲想が印象的な作品で、それぞれに全く異なるイメージで、エドマンズ選手の演じ分けに注目です。


 負傷によって14/15シーズンはフル休養したカナダの前女王、ケイトリン・オズモンド選手は、SPがシンディ・ローパーが歌う「ラ・ヴィ・アン・ローズ」、フリーが「アストル・ピアソラ・タンゴ・メドレー」という14/15シーズンに予定していたものと同じプログラムです。シャンソンの名曲「ラ・ヴィ・アン・ローズ」は定番中の定番ですが、シンディ・ローパーが歌うバージョンということでエディット・ピアフバージョンやルイ・アームストロングバージョンとも違う独特な雰囲気があるでしょうから、楽しみですね。フリーはピアソラのタンゴ・メドレーで、これまでも抜群のリズム感を活かしたノリノリ系のプログラムを多く演じてきたオズモンド選手らしく、ダンス能力を十二分に発揮できるプログラムでしょうね。ただ、マンボやミュージカル音楽とは異なる大人の哀愁を漂わせるのがタンゴですから、1年の負傷休養を経て復帰する彼女がどんなふうに変化しているのか、期待したいと思います。


 同じくカナダのアレーヌ・シャルトラン選手はSPが「映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』より」、フリーは「映画『風と共に去りぬ』より」とのことです。SPで使用されるサントラの映画は、ドイツ出身のコンテンポラリー・ダンスの振付家ピナ・バウシュの姿を追ったドキュメンタリー作品。フィギュア界ではまだそんなに使用頻度は高くないですが、13/14シーズンにアメリカのジェレミー・アボット選手がSPで劇中曲を使用したのが個人的には印象に残っています。クラシックでもなくミュージカルでもなく、コンテンポラリー・ダンスらしい音楽だと思うので、シャルトラン選手にとっても新しいジャンルですね。そしてフリーは『風と共に去りぬ』のサントラを使用ということで、エドマンズ選手と丸かぶりですが、選手には申し訳ないですがそれぞれを比べながら見る楽しみもありますし、全く異なる個性を持った選手が同じ作品・テーマの下に表現したらどうなるんだろうという楽しみ方もあるので、注目ですね。


 アメリカの実力者、コートニー・ヒックス選手はSPで「奇跡の始まり」、フリーで「映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』より」を演じるそうです。ショートはイギリス出身のロック・ミュージシャン、ピーター・ガブリエルの楽曲で、頻繁にというほどではありませんが、しばしばフィギュア界でも使われていますね。フリーはエリザベス1世を描いた映画のサントラ。昨季のフリーも映画音楽だったヒックス選手ですが、ダイナミックさや重厚さの表現に長けている選手ですから、エリザベス1世をうまく演じるんじゃないかと思います。


 シニア参戦2年目となるロシアのアディアン・ピトキーエフ選手は、SPが「Pain/Appassionata」、フリーが「映画『ミッション』より」という演目。SPは日本の作曲家、はまたけしさん制作の楽曲と、ニューエイジ・ミュージックのデュオ、シークレット・ガーデンの楽曲を組み合わせたプログラム。フリーはフィギュア界定番の映画音楽で、決して若いスケーターが表現するのに容易い作品ではないと思いますが、男子選手ながら優雅かつ繊細なオーラを漂わせるピトキーエフ選手のイメージには何となくしっくり来ますね。


 さて、ここからは今シーズン本格的なシニア参戦を果たす4名の新プログラム情報を一気にご紹介。
 まずは2015年世界ジュニア女王のロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。SPは「映画『白夜の調べ』より」、フリーは「Dance For Me Wallis 映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』より/Charms 映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』より」です。ショートは1978年に公開された日本とロシアを舞台にした日本映画のサントラで、若い選手が演じるにしては珍しいマニアックな選曲ですね。フリーも映画音楽ですがこちらは2012年公開の最近のもの。歌手のマドンナが監督を務めた映画で、イギリス国王と一般のアメリカ人女性との恋の実話を描いています。ロマンティックな恋愛映画ですから、初々しくて可愛らしいメドベデワ選手にはぴったりでしょうね。


 カザフスタンの有望株、エリザヴェート・トゥルシンバエワ選手のSPは「悲しみのクラウン」、フリーは昨季と同じ「パパ、見守ってください 映画『愛のイエントル』より」。SPは韓国のキム・ヨナさんがソチ五輪シーズンのSPに使用したことで記憶に新しい楽曲。15歳のトゥルシンバエワ選手には少し大人っぽい気もしますが、あえて背伸びしてということなのでしょう。その一方、フリーは昨季からの持ち越しで滑り慣れているものを使用することで最初から安心感や自信を持って演じられるでしょうから、ショートとフリーでうまくバランスを取っているんですね。


 初挑戦の2015年全米選手権でいきなり3位に入り一躍脚光を浴びたカレン・チェン選手は、SPが「誰も寝てはならぬ オペラ『トゥーランドット』より」、フリーが「ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」だそうです。ショートは王道のオペラの劇中曲でかなり重厚で、しかもテノール歌手ルチアーノ・パバロッティのボーカル入り。ベテランの選手でも表現するのはそれなりに難しい楽曲だと思いますが、思い切った背伸びですね。フリーはとても親しみやすいミュージカル音楽なので、演じるにあたってもやりやすいのではないかなと思います。


 最後は同じくアメリカのハンナ・ミラー選手、18歳。SPは「Rich Man's Frug 映画『スイート・チャリティー』より/Big Spender 映画『スイート・チャリティー』より」、フリーは「プッチーニ・メドレー」とのことです。SPは以前オズモンド選手が演じていて、けっこうノリノリな感じのアクティブな楽曲でしょうか。フリーはイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのメドレーで、どの作品・楽曲が用いられるか詳細は分かりません。ジュニア時代はジュニアGPファイナルの出場経験もあり、期待されながらもシニアではなかなか芽が出なかったミラー選手ですが、満を持してのシニアGP参戦という感じで楽しみですね。



 ということで、この記事は以上になります。ざっと今回の記事に限らず新プログラムを見渡して見て気付いたのは、今季はプッチーニが特に人気ということでしょうか。浅田真央選手のフリー「蝶々夫人」を始め、宇野昌磨選手のフリーも「トゥーランドット」ですし、アメリカのマックス・アーロン選手のSPも「トゥーランドット」。この記事内で紹介したチェン選手はSPが「トゥーランドット」、ミラー選手はフリーがプッチーニのメドレーということで、例年よりもプッチーニ作品が多いような気がします。名作を多く残しているプッチーニは元々フィギュア界の大定番ですが、今季はそれと比べても多めな感じがして、14/15シーズンは「オペラ座の怪人」が一大ブームでしたが、15/16シーズンは“プッチーニ・ブーム”と言えそうですね。
 今後もまだプログラムを発表していない選手の新プログラム情報をまとめてお伝えしたいと思います。では。


:無良選手の写真、フェルナンデス選手の写真は、フィギュアスケート専門誌「International Figure Skateing」の公式フェイスブックページから、村上選手の写真は村上選手の公式インスタグラムから、ソトニコワ選手の写真、ワグナー選手の写真は、フィギュアスケート情報ウェブサイト「Absolute Skating」の公式フェイスブックページから引用させていただきました。

【参考リンク】
Skating's biggest stars heat up Asada's 'THE ICE' 「THE ICE」について報じた記事で、無良選手、ソトニコワ選手、ワグナー選手のプログラムについての言及があります。
Han Yan aims to make history for China 閻選手の近況について報じた記事です。
Nguyen adds maturity, second quad to arsenal グエン選手の近況について報じた記事です。
Edmunds to channel iconic O'Hara in new free skate エドマンズ選手の近況について報じた記事です。
Welcome back: Osmond returns after lost season オズモンド選手の近況について報じた記事です。

【ブログ内関連記事】
羽生結弦選手、15/16シーズンのフリープログラムを発表&新プログラム情報① 2015年6月19日
浅田真央選手、15/16シーズンのプログラムを発表&新プログラム情報② 2015年7月2日
各選手の15/16シーズンの新プログラムについて・その④ 2015年9月27日
by hitsujigusa | 2015-08-13 01:25 | フィギュアスケート(大会関連)