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全日本選手権2015・男子&アイスダンス―羽生結弦選手、高得点で4連覇(後編)

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 全日本選手権2015、男子とアイスダンスの内容、結果についてお伝えする記事の後編です。前編はこちらをクリックしてご覧ください。

第84回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子の6位となったのは全日本ジュニア王者、山本草太選手です。

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 SPの演目はフラメンコ「ポエタ」。まずは大技3アクセルでしたが、回転は十分だったものの転倒してしまいます。さらに後半に4トゥループを組み込みましたが、こちらは2回転となり規定により無得点に。最後の3+3もセカンドジャンプが回転不足で減点となり、全てのジャンプでミスが出てしまいました。得点は62.92点で11位に留まります。
 フリーはチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」。まずは前日失敗した3アクセル、今度も回り切ってはいましたが転倒で大きくマイナスとなります。続く4トゥループも転倒で厳しい序盤となりますが、前半最後の3ルッツはクリーンに決めて後半に向かいます。後半最初の3アクセルからの連続ジャンプは着氷ミスがありつつも最小限のミス。その後は3+3、3+1+3を含む難構成をしっかりこなし、全日本ジュニア王者の底力を見せつけました。得点は152.23点でフリー5位、前年と同じ総合6位でフィニッシュしました。
 今シーズンは大技の4トゥループ、3アクセルの安定に苦しみ、なかなか思ったような演技ができていない山本選手。ですが、フリーではそのほかのエレメンツをしっかりと揃えて、やはり並のジュニア選手ではない気持ちの強さ、大物感を感じさせられましたね。表現面でもシニア選手のような迫力、魅せる力が備わってきて、このあとのシーズンがますます楽しみになりました。世界ジュニア選手権では思い切った演技で、納得してシーズンを終えられるよう願っています。


 7位に入ったのは村上大介選手です。

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 ショートはまず得点源となる4サルコウをきっちり決め、しっかり加点も稼ぎます。さらに3アクセルも問題なくクリーンに下りて完璧な前半。後半は3ルッツ+3ループの高難度2連続3回転の予定でしたが、ファーストジャンプの着氷で詰まったためセカンドジャンプを2トゥループに。全て予定どおりとはいきませんでしたが、村上選手らしい安定したジャンプと美しい滑りを披露しました。得点は83.49点で4位につけます。
 フリーもまずは4サルコウからでしたが、これがすっぽ抜けて2回転となるミス。ですが、続く2本目の4サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)を取られながらも何とか着氷し2トゥループを付けて連続ジャンプとします。しかし、次の3アクセルで転倒すると、後半の3アクセル、3フリップなど、ほとんどのジャンプでミスが出てしまい、ステップシークエンスでも村上選手本来の滑らかな身のこなしが見られず、演技を終えた村上選手は肩を落としました。得点は131.07点でフリー8位、総合7位に順位を落としました。
 ショートでは実力を発揮し好位置につけた村上選手ですが、フリー当日の午前の公式練習で滑走中に羽生選手と接触。激しい衝突ではなかったためお互いすぐに立ち上がって大きな問題は無いように思われましたが、フリー後のインタビューで左膝を痛めていたことを明かしました。村上選手は公式練習のどの段階で痛めたとは明かしませんでしたが、演技では最初は普通にジャンプが跳べていたのが、途中から明らかに顔をしかめ片足をかばうような滑りに変わりました。村上選手自身は3アクセルの転倒で痛みが再発しパニックになったと話しましたが、以前も演技中に肩を脱臼している村上選手ですから、なぜこんなにも彼に不運が重なるんだろうと辛くなりますね。とにかく今はこの負傷が重傷でないことを祈るばかりです。


 8位には西日本選手権2位の日野龍樹選手が入りました。

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 SPは「アルメニアン・ラプソディ」。冒頭は3サルコウ+3トゥループを確実に決めると、3アクセルも丁寧に着氷。後半の3ルッツも成功させ、全てのエレメンツで加点を得る会心の滑りとなり、フィニッシュした日野選手は力強く拳を握り喜びを噛みしめました。得点は非公認ながらも自己ベストを上回る74.03点で7位と好発進します。
 フリーは「映画『キング・アーサー』より」。まずはショートでは入れなかった大技4トゥループ、これは回転不足で転倒となってしまいます。ですが、続く3アクセル+3トゥループ、3ルッツ+2トゥループと基礎点の高い得点源となる連続ジャンプ2つを完璧に成功させて立て直します。後半にも3アクセルを組み込み、こちらは着氷後にエッジが氷に引っかかり転倒というアンラッキーな形となったものの、その後は大きなミスなく演技をまとめました。得点は139.14点でフリーも7位、総合では8位となりました。
 昨シーズンから本格的にシニアに移行した日野選手。シニアに上がってからはなかなか思ったような演技ができず苦戦続きでしたが、今大会は多少なりとも消化不良を解消する演技になったんじゃないかなと思いますね。4トゥループはまだ習得中という感じですが、3アクセルはかなり質も良くなっているように見えますし、今回の経験を自信にしてこれからも焦らずじっくり実力をつけていってほしいですね。



 ここからはアイスダンスについて。

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 優勝したのは今季新たにカップルを結成した村元哉中&クリス・リード組です。

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 SDは全てのエレメンツを確実にこなし、レベルの取りこぼしもGOEの減点もなく演じ切り、58.36点で首位発進。フリーはツイズルがレベル2となる部分はあったものの、そのほかでは目立ったミスなく演技をまとめ、トップの座を守り切り、初優勝を飾りました。
 1年前はそれぞれ別のパートナーとのカップルで金メダル、銅メダルを獲得したリード選手、村元選手が、今はこうして息の合ったカップルとして全日本チャンピオンになるとは、時の経つのは早いものだと思います。6月に結成してから半年、まだ経験の浅い二人ではありますが、何か以前からこの二人で滑っていたかのような錯覚さえ覚える、カップルとしての違和感のなさ、ナチュラルさがあって素晴らしいユニゾンだと思います。技術的にも表現的にもこれからさらに伸びていく余地のあるカップルなので、四大陸選手権、そしてその先を楽しみに見守りたいですね。初優勝、おめでとうございました。
 2位は平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組。ショートでは少しミスがあり2位発進。フリーでは全てのエレメンツがプラス評価で技術点では村元&リード組を上回る出来。初の頂点には届かなかったものの、5年連続での2位となりました(平井選手は別のパートナーとのカップルで7年連続)。
 3位は森衣吹&鈴木健太郎組。こちらも今季結成したばかりのカップルですが、SD、FDともに3位で初めての表彰台に立ちました。



 ということで、全日本の男子とアイスダンスの大まかな結果については以上です。ここで、男子とアイスダンスの世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表選手を一覧でまとめます。その前に代表選考の基準、条件についてもおさらいしておきます。


《世界選手権代表選考方法(男子シングル)》

① 1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
② 2人目は、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して決定する。
 A) 全日本選手権2位、3位の選手
 B) グランプリ・ファイナル出場者
 C) 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディングの日本人上位3名
 D) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコアの日本人上位3名


《四大陸選手権代表選考方法(男女シングル)》

全日本選手権終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
① 全日本選手権10位以内
② 全日本選手権終了時点での ISU ワールド・スタンディング日本人上位6名
③ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位6名
④ 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位6名


《世界ジュニア選手権代表選考方法(男女シングル)》

① 1人目は全日本ジュニア選手権優勝者を選考する。
② 2人目及び3人目はジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権3位以内の選手
 B) ジュニア・グランプリ・ファイナル出場者
 C) 全日本選手権参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンワールドランキング日本人上位3名
 E) 全日本選手権終了時点での ISU シーズンベストスコア日本人上位3名



《世界選手権代表》

男子シングル:羽生結弦、宇野昌磨


《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、無良崇人、田中刑事
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組


《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:山本草太、中村優、宮田大地
アイスダンス:深瀬理香子&立野在組




 まずは世界選手権から。今季の世界選手権の男子の代表枠は2枠。条件の①②両方に当てはまる羽生選手は大会前からほぼ確定と言われていたのでいわずもがなでしょう。
 そして羽生選手を除いて条件の②に当てはまるのは、全日本2位かつGPファイナル出場者かつワールドスタンディング日本人2位かつシーズンベスト日本人2位の宇野選手、全日本3位かつワールドスタンディング日本人3位の無良選手、GPファイナル出場者かつシーズンベスト日本人3位の村上選手の3名。となると、やはりより多くの条件に合致する宇野選手が必然的に代表選出ということになりますね。
 それにしても今季は男子の枠が2つしかないということで、3枠でも足りないと思うほど層が厚いのに2枠というのはやはり苦しいですね。羽生選手と宇野選手の実力を考えれば、すぐに3枠に戻してくれることは間違いないと思うので、3月の世界選手権は2選手の演技はもちろんのこと、枠取りにも注目したいと思います。
 アイスダンスに関してはどの大会においても国際的な競技力を考慮して選考するという文言になっています。が、世界選手権に出場するためのミニマムスコア(最低技術点)をSD、FDともにクリアしているカップルがいないため、現時点での代表決定は見送られました。ですが、年明け以降の国際大会でミニマムスコアを獲得すればカップルを1組派遣できますので、その際は全日本チャンピオンの村元&リード組が選ばれるものと思います。村元&リード組はNHK杯でFDのミニマムスコアはクリアしているので、あとはSDのみとなります。1月6日からポーランドで開幕するトルンカップにさっそく出場する予定ですので、そこで派遣条件クリアとなることを願っています。

 そして、四大陸選手権に関してですが、全日本の2、3、4位がそのまま派遣される形となりました。今回選ばれた3選手のほかにも、今大会は振るわなかったもののGPで好成績を収めファイナルに進出、ISUの種々のランキングでも上位に入っている村上選手を選出するという選択肢もあったと思うのですが、四大陸の代表選出の場合はファイナル出場者という条件があるわけではないので、その点で村上選手にとっては有利に働かなかったと言えます。また、全日本4位の田中選手もワールドスタンディング、シーズンワールドランク、シーズンベストと全てで日本人上位6位に入っていますから、そのあたりが評価されたのではないかと思います。

 最後に、世界ジュニア選手権は全日本ジュニア王者の山本選手が第一に選ばれました。残りの2枠の条件に山本選手を除外した上で当てはまるのは、②のA)は友野一希選手、宮田選手、B)は該当者なし、C)は中村選手と宮田選手、D)はシニア選手を除くという意味合いで考えて、島田高志郎選手と宮田選手、E)も同様に島田選手と宮田選手となります。ここに挙げた多くの条件に該当する宮田選手はかなり優位に立てますが、中村選手は全日本ジュニアでも5位と表彰台に上がれず、今季は国際大会でも目立った成績は残せていません。が、全日本という大舞台での9位という好成績が効いて、逆転で世界ジュニアの切符を掴みましたね。



 男子&アイスダンス編はここで終了。次は女子&ペア編に続きます。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、写真画像サイト「Newscom」から、山本選手の写真、村上選手の写真、日野選手の写真、村元&リード組のSDの写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、アイスダンスメダリスト3組の写真、村元&リード組のFDの写真は、エンターテインメント情報サイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2015-12-29 03:13 | フィギュアスケート(大会関連)