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ロシア選手権2016について

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 全日本選手権より一足先に行われたロシア選手権2016。国際大会も含め、世界一熾烈といっても過言ではない大会ですが、見どころの多い凄い試合(特に女子)となりました。大会が行われてからかなり時間が経ってしまいましたが、改めてロシア選手権を振り返り、ざっくりと感想を書いていきたいと思います。

Онлайн-табло соревнований この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます(ただしロシア語です)。

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 まずは世界一層の厚い女子から。
 優勝したのは今シーズン、GPファイナルを制覇するなど快進撃を続けているシニア1年目のエフゲニア・メドベデワ選手。SP、フリーともに1位、一つの綻びもない完璧な演技で初のロシア女王となりました。また、得点は234.88点と非公式ながら韓国のキム・ヨナさんが保持する世界最高得点を上回り、シニアデビューシーズンとは思えない圧倒的な強さを再び発揮しました。シニア1年目での優勝というのは、昨季のエレーナ・ラディオノワ選手もそうですし(GPデビュー自体は13/14シーズン)、エリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手もそうだったので珍しいことではないですが、やはりここまで一気にスコア、評価が上がって優勝するというのは、ソチ五輪シーズンのユリア・リプニツカヤ選手以上の急激ぶりですね。もちろんメドベデワ選手はフリーに2度の3+3を組み込むなどレベルの高い選手であることは間違いないですが、3アクセルや4回転を跳んでいるわけではなく、抜きん出てレベルが高いというわけではありません。その中での国際大会、国内大会でのこの得点傾向というのは疑問符も付きますね。ただ、メドベデワ選手が素晴らしい選手であることに疑問の余地はなく、あとはこの勢いがどこまで続くのか、今季はこのまま突っ走れるでしょうが、来季以降はどうなのか、今から気になるところですね。

 銀メダルを獲得したのは昨季のチャンピオン、エレーナ・ラディオノワ選手。今季序盤はジャンプの不調に苦しんだラディオノワ選手ですが、徐々に調子を取り戻し見事に今大会に合わせてきましたね。スコアではメドベデワ選手に大差をつけられてしまいましたが、ショート、フリーともに2位で文句なしの内容でしたし、この厳しいロシア女子の中でジュニア時代からずっと表彰台に乗り続けているという安定感は間違いなくピカイチだと思います。
 3位はアンナ・ポゴリラヤ選手。意外な気もしますがこれがロシア選手権初表彰台。今シーズンはGPで苦戦し、特にNHK杯ではSPで3度転倒するというまさかの演技で悔しい思いをしたと思いますが、そこから約1か月でしっかり気持ちもジャンプも立て直してきましたね。

 4位、5位はジュニアGPファイナルで金銀のポリーナ・ツルスカヤ選手、マリア・ソツコワ選手が実力を発揮して、シニア勢に迫る200点台をマーク。
 そして6位は今季競技復帰したソチ五輪女王、アデリナ・ソトニコワ選手。ショートで1度、フリーで2度の転倒があり、それでも高い演技構成点をマークしたものの、表彰台に迫ることはできませんでした。浅田真央選手もそうですが、やはり復帰したばかりのシーズンというのは難しいもの。ソチ五輪女王といえども今の状態では、群雄割拠のロシア女子の中で勝ち抜くことは厳しかったですね。
 7位のユリア・リプニツカヤ選手はショートでノーミスの演技を見せて3位と好発進しましたが、フリーでは細かなミスが重なった上、コンビネーションジャンプが1つしか入らず10位、総合7位と崩れてしまいました。身体的な変化の真っただ中にいるリプニツカヤ選手。少しずつ良くはなっていると思うのですが、まだ本当の安定を得るまでには時間がかかりそうです。GP後にコーチを変更してすぐの今大会だったので、新たなコーチとともに技術を見直して積み上げていくのは、これからですね。

 そして、昨シーズン圧倒的な強さを誇り世界女王となったエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手は8位に終わりました。ショート、フリーともに3アクセルを組み込み、全選手中最もハイレベルなジャンプ構成で挑んだトゥクタミシェワ選手ですが、残念ながらその試みは成功しませんでした。今季はシーズン序盤からなかなかジャンプが揃わず、特に代名詞の3アクセルは減点の付かない成功というのが1度しかなく、その3アクセルのミスがほかのエレメンツにも影響しているなというのがうかがえたのですが、3アクセルを跳ばないという選択肢もある中、それでもショートとフリー両方でチャレンジしたという心意気は素晴らしいなと思います。今シーズンの勝負だけではなく、将来的なことも見据えた上で、3アクセルに粘り強く挑み続けているのだと思いますが、以前も大きな挫折から這い上がったトゥクタミシェワ選手ですから、今季の苦い経験もきっと糧にしてまた彼女らしい演技を見せてほしいですね。


 続いては男子です。

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 優勝はディフェンディングチャンピオンのマキシム・コフトゥン選手。ショート、フリーともにミスがあり断トツでとはいきませんでしたが、しっかり演技をまとめ3連覇を達成しました。今までもエフゲニー・プルシェンコ選手を始め3連覇以上を成し遂げた選手はいますが、コフトゥン選手は必ずしもそこまで安定感抜群とか王者として君臨しているというようなイメージはないのですが、それでもこの一番大事な試合にしっかり調子を上げてくるピーキングというのはさすがだなと思いますね。
 そして2位に入ったのは20歳の新星ミハイル・コリヤダ選手。SPで完璧な演技を披露してコフトゥン選手と僅差の2位につけると、フリーも最小限のミスに抑えてそのまま初めての表彰台となりました。今季はチャレンジャーシリーズの2試合でメダルを獲得し、GPのロステレコム杯でも会心の演技で5位に入るなど急成長を見せていたコリヤダ選手ですが、今大会で一気に階段を駆け上がりましたね。技術面では何といってもジャンプの質が素晴らしく、ロシア男子の中でも際立って美しいジャンプを跳べる人だと思いますし、表現面でも明確な個性を持っていて見応えのある選手です。ダークホースから一躍ロシア男子のトップレベルにのし上がったコリヤダ選手の今後がますます楽しみですね。
 3位はシニア1年目のアレクサンドル・ペトロフ選手。4回転こそまだ入れていないペトロフ選手ですが、自分が跳べるジャンプを確実に跳ぶ戦略が今大会でも実を結び、見事に初めて表彰台に上りました。

 以下、4位は若手のゴルジェイ・ゴルシュコフ選手、5位は昨季まで4年連続で表彰台を確保し続けていた実力者セルゲイ・ボロノフ選手、6位はジュニアのドミトリー・アリエフ選手、7位は大ベテランのコンスタンティン・メンショフ選手、8位はジュニアのアレクサンドル・サマリン選手となり、ボロノフ選手やメンショフ選手といったベテランが若手の後塵を拝する試合結果となりました。


 次はペア。

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 ロシア王者に返り咲いたのは1年間の休養から復帰したタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組。ノーミスの演技でショート首位に立つと、フリーは複数ミスがあったものの総合得点では2位に10点差以上の差をつけて、他を寄せ付けることなく2年ぶりの優勝を果たしました。今シーズンは復帰したばかりとあって試合をこなしている数は少ないですが、大一番に合わせてくる実力はさすがのソチ五輪チャンピオンですね。シーズン後半、海外強豪勢との対決が楽しみです。
 2位はベテランの川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組。SPは安定感のある演技で2位発進し、フリーはミスが散見されボロソジャー&トランコフ組に差をつけられてしまいましたが、しっかりと3年連続となるメダルを確保しました。
 3位は伸び盛りの若手ペア、エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組。ショート、フリーともに大きなミスなくエレメンツをきっちり揃え、昨季の銀メダルに続いて2度目の表彰台となりました。


 最後はアイスダンスです。

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 優勝はこちらも1年ぶりに競技復帰したエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。SDで首位と僅差の2位発進すると、FDでもそつのない演技で逆転優勝を果たしました。昨シーズンはソロビエフ選手の怪我の影響でこの大会も欠場しましたが、それまでは4連覇していた圧倒的なロシアチャンピオンですから、僅差とはいえ貫録の優勝ですね。
 2位は昨季新たにカップルを結成したヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組。ショートは全てのエレメンツでレベル4を揃える完璧な演技で首位に立ちましたが、フリーではツイズルで取りこぼしがあり順位を下げてしまいました。しかし結成2年目での銀メダル、1年目はまだカップルとして未熟だったところから確実に成長を見せているのではないかと思います。
 3位はアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組。SD、FDともに目立ったミスなく演技を堅実にまとめ、2年連続となる銅メダルを獲得しました。



 さて、ここですでに発表されている欧州選手権、世界選手権の代表をまとめたいと思います(敬称略)。


《欧州選手権代表》

男子シングル:マキシム・コフトゥン、ミハイル・コリヤダ、アレクサンドル・ペトロフ
女子シングル:エフゲニア・メドベデワ、エレーナ・ラディオノワ、アンナ・ポゴリラヤ
ペア:タチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組、クセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組、ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組、アレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組


《世界選手権代表》

男子シングル:マキシム・コフトゥン、ミハイル・コリヤダ
女子シングル:エフゲニア・メドベデワ、エレーナ・ラディオノワ
ペア:タチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組
アイスダンス:エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組、ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ組




 欧州選手権代表はほとんど今大会のメダリストがそのまま当てはめられた形になりましたが、ペアだけは今回クリモフ選手の体調不良を理由に欠場したストルボワ&クリモフ組が代表選出されました。やはりストルボワ&クリモフ組は先月のGPファイナルを制していますし、実力を鑑みた上でそこまでの重症ではないということで選ばれたのだと思います。
 そして世界選手権代表に関しては女子、ペアはそれぞれ3枠ありますが、現時点では今大会の1、2位の選出のみが決定し、3人目については欧州選手権の結果を受けた上で最終決定がなされるそうです。欧州選手権で3人目候補の選手がもし振るわないようなことがあれば世界選手権代表になれない可能性もあり、欧州選手権も緊張感に満ちた試合となりそうですね。



 どのカテゴリーにおいてもレベルの高いロシア。特に女子は国内大会ゆえ得点が高めに出やすいとはいえ1位から5位までが全員200点台となり、どんどんスコアがうなぎ上りしています。シーズン後半を占う意味でも非常に興味深い内容、結果となりました。では。


:記事内の写真は全て、写真画像サイト「Newscom」から引用させていただきました。
by hitsujigusa | 2016-01-14 17:09 | フィギュアスケート(大会関連)