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全日本選手権2016・女子&ペア―宮原知子選手、大差で3連覇(前編)

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 大阪にて行われた全日本選手権2016。女子&ペア編ですが、この記事では女子の1~6位の選手までを取り上げます。なお、男子&アイスダンス編はこちらをご覧ください。
 優勝したのは一昨年、昨年とこの大会を制しているディフェンディングチャンピオン宮原知子選手。圧倒的な強さで3連覇の偉業を成し遂げました。2位には昨年の銀メダリストである樋口新葉選手が入り、3年連続で表彰台に立ちました。3位は今季躍進している三原舞依選手で、GPでの勢いそのままに全日本初表彰台となりました。
 ペアは須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組が制し、2連覇を達成しています。

第85回全日本フィギュアスケート選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 3年連続で女子を制したのはGPファイナル2016銀メダリストの宮原知子選手です。

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 SPはまず得意の2アクセルをきっちり決めて好調な滑り出し。続くステップシークエンスは軽やかかつ丁寧な滑りでレベル4を獲得。後半に2つのジャンプ要素を組み込み、まず最初の3ルッツ+3トゥループをしっかりと回り切って着氷。さらに3ループもクリーンに下り、安定感抜群のスピンも全てレベル4と隙の無い演技を披露。フィニッシュした宮原選手は満面に笑みを浮かべました。得点は参考記録ながらパーソナルベストを上回る76.49点をマークし、堂々の首位発進となります。

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 フリーはまず3ループを難なく下り、続いて得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプの着氷でバランスを崩し珍しくステップアウトします。しかし、直後の3フリップは若干耐えながらもクリーンに着氷。基礎点が1.1倍になる後半、最初の3ルッツからの3連続ジャンプはルッツがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されますがジャンプ自体は良い流れでスムーズに成功。続いて2アクセル+3トゥループはパーフェクトに着氷。残りの3サルコウ、2アクセルもきれいに成功させ、ダイナミックなプログラムの世界観を全身で生き生きと表情豊かに演じ切りました。得点は138.38点でフリー1位、総合1位と完全優勝で3連覇を飾りました。
 フリーは珍しくステップアウトするミスがありましたが、ステップアウトという些細なミスでさえ珍しいと思わせてしまうのが、“ミス・パーフェクト”の宮原選手の凄さを物語っています。3連覇という期待が懸かる中で、さらに濱田美栄コーチからも「狙って勝つ」ということを言われていたそうですから、ただ自分の演技に集中するだけではなくあえてプレッシャーを作った状況であの確実に勝てる演技ができたというのは素晴らしいですし、宮原知子という選手が勢いのある若手ではなく、日本女子のエースとして「勝って当然」の領域まで足を踏み入れているのだということを、今回の演技と3連覇という結果によって改めて感じさせられました。
 今後の宮原選手は2月の四大陸選手権とアジア冬季大会の2連戦、3月の世界選手権という厳しいスケジュールを戦い抜かなければいけないわけですが、体調にだけは気を付けて頑張ってほしいですね。全日本3連覇、おめでとうございました。


 2位は今季シニアデビューの樋口新葉選手です。

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 SP冒頭は2アクセルをクリーンに決めて良い流れを作ります。2つのスピンとステップシークエンスを挟んで後半、得点源の3ルッツ+3トゥループを完璧に成功。続く3フリップはエッジエラーを取られたものの着氷、ランディングともに綺麗にまとめ、ラストはレイバックスピンで演技を締めくくった樋口選手は安堵したような笑みを浮かべました。得点はこちらも非公式ながらパーソナルベストを上回る68.74点で3位と好発進します。

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 フリーはまず3ルッツ+3トゥループから、これをパーフェクトに着氷して1.4点の加点を獲得。さらに3ループも1.4点の高加点で最高のスタートを切ります。しかし中盤の3サルコウがダウングレード(大幅な回転不足)での着氷で転倒と珍しい形でミス。後半に入り最初は2アクセルを難なく下りると、2本目の3ルッツ+3トゥループも完璧な成功で1.4点の加点。終盤の3フリップは踏み切りが不正確となったものの加点が付く出来でまとめ、最後の2アクセルからの3連続ジャンプもクリーンに成功。中盤の転倒を忘れさせるような挽回を見せ、130.75点でフリー4位、総合2位と順位を上げました。
 今季の樋口選手はしばしばジャンプのパンクがありもったいない取りこぼしをするというパターンが散見されたのですが、今大会もフリーの転倒はあったとはいえ課題だったパンクはなく、2年連続で全日本の表彰台に乗っている実力者の底力を見せつけましたね。今大会の結果によってシーズン後半の主要国際大会への派遣も決まった樋口選手ですが、個人的に期待することとしてはGPから今大会にかけて樋口選手らしい躍動感というのは抑え気味な気がするので、今シーズン手に入れた女性的な柔らかい表現に加え、本来の樋口選手の持ち味であるダイナミックな表現がさらに表れると良いなと思います。


 銅メダルを獲得したのはこちらも今季シニアデビューの三原舞依選手。

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 SPはまず得意の3ルッツ+3トゥループを軽やかに成功。後半の2アクセル、そして最後の3フリップと全てのジャンプをクリーンに下り、フィニッシュした三原選手は満足そうな笑顔を見せました。しかし得点は思ったほど伸びず65.91点で5位となります。

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 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループから、これをショート同様パーフェクトに決めて1.4点の高い加点を得ます。さらに3フリップ、2アクセルと次々ジャンプを成功させます。後半もまずは2アクセル+3トゥループを決めると、3ルッツからの3連続ジャンプもクリーンに着氷。終盤の3サルコウ、3ループと全く危なげなく下り、演技を終えた三原選手は控えめながらガッツポーズで喜びを露わにしました。得点は132.26点でフリー2位、総合3位と順位を上げ、全日本初表彰台となりました。
 GP同様に微塵も失敗する気配のない安定感抜群の演技で、まるでリプレイ映像を見ているかのような気分にさえなりました。普通なら初めての世界選手権の出場権が懸かる特別な試合で緊張して縮こまってしまってもおかしくないと思うのですが、そんなプレッシャーなどまるで感じていないような、むしろこの状況を楽しんでいるかのようなのびやかさで、これはやはり彼女が昨季難病を経験して滑れない時期があったというのが影響しているのでしょうね。これから未知の世界に足を踏み入れることになる三原選手ですが、シーズン前半と同じように三原選手らしくのびのびと演技できればおのずと結果もついてくると思うので期待したいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのは世界ジュニア2016女王の本田真凛選手です。

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 SPは「スマイル」。まずは得意のレイバックスピンで幕を開け、続いて得点源の3フリップ+3トゥループを完璧に下ります。中盤のステップシークエンスはレベル2にとどまりますが、後半の3ループ、2アクセルと確実に成功。フィニッシュした本田選手は感極まった様子で目に涙を浮かべました。得点はシーズンベストの67.52点で4位と好位置につけます。

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 フリーは「映画『ロミオとジュリエット』より」。まずは単独の3ルッツを踏み切り、ランディングともに完璧に成功。続いて3フリップからの2連続3回転でしたが、これは3フリップがパンクして1回転となり単独に。後半に5つのジャンプ要素を固め、まずは2アクセル+3トゥループ+2ループを決めると、次の3サルコウに急遽3トゥループを付けて序盤のミスをリカバリー。その後の3つのジャンプは予定どおりに着氷し、演技後はホッとしたような笑顔を見せました。得点は128.59点でフリーは5位、総合ではショートから変わらず4位で全日本自己最高位を更新しました。
 12月上旬のジュニアGPファイナルをインフルエンザで欠場した本田選手。体力回復が最大のポイントとなっていましたが、短期間でよくここまで戻してきたなと感嘆させられる演技でした。まだこれでも本田選手の本来の出来とは言えないと思いますが、万全じゃない状態でも世界ジュニアの切符獲得に向けてやれるだけのことをやろうという戦う気持ちの見える滑りでした。シーズン前半は本田選手にとって苦しい試合が多かったでしょうが、世界ジュニアではジュニアの集大成として悔いのない演技ができるよう願っています。


 5位となったのは本郷理華選手です。

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 SP冒頭は得意の3フリップを確実に着氷。レベル4のスピン2つを挟んで後半、3トゥループ+3トゥループをパーフェクトに成功させると、最後の2アクセルも問題なし。終盤のステップシークエンスとスピンもレベル4でまとめ、本郷選手らしい壮大さと新たな魅力となったエレガンスさが融合した表現で観客を沸かせました。得点は69.20点で2位と好発進します。

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 フリーはプログラムを昨季の「リバーダンス」に変更し、まず得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、3フリップの着氷でこらえ気味となったため単独となります。続く3ループは回転が抜けて2回転に。3ルッツは踏み切りが不正確と判定されたものの着氷はしっかりとまとめます。後半に入り最初の2アクセル+3トゥループ+2トゥループは3トゥループがアンダーローテーションとなりますが大きな乱れなく着氷。2アクセル、3+2と終盤のジャンプを予定どおりにこなし、最後の3サルコウに急遽3トゥループを付けて冒頭で跳べなかった分をカバー。代表作である「リバーダンス」の軽快なメロディに乗せて最後までリズミカルに生き生きと演じ切りました。ですが、複数のジャンプミスが響き、得点は125.08点でフリー6位、総合5位と表彰台を逃しました。
 ショートは今季最高の演技で理想的なスタートを切った本郷選手でしたが、フリーは好演技連発の後の最終滑走とあってミスできないという重圧は相当あったのではないかと想像します。フリー序盤は硬さもあって暗雲漂う出だしとなりましたが、最後の3サルコウに3トゥループを付けるという攻めの姿勢からは、最後まで諦めないという本郷選手の意地が伝わってきました。残念ながらシニアに上がって初めて四大陸選手権や世界選手権の切符を逃すという結果にはなりましたが、この気持ちの強さがある限り、来季にも必ず良い形で繋がると思うので、まずは2月のアジア冬季大会で本郷選手らしい演技を楽しみにしたいですね。


 6位に入ったのは全日本ジュニア銀メダリストの白岩優奈選手です。

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 SPは「アイ・ガット・リズム」。まずは3ルッツ+3トゥループを完璧に決めて加点1の高評価を獲得。さらに後半の3ループもクリーンに下りて良い流れでしたが、最後の2アクセルがパンクして1回転となり、規定の回転数を満たしていないため無得点に。そして、プログラムを締めくくるコンビネーションスピンの途中で手袋がスケート靴のエッジに引っかかり落下。スピンも予定していた形にならず0点になり、演技を終えた白岩選手はショックを受けたように肩を落としました。得点は54.30点で17位と大きく出遅れます。

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 フリーは昨季のプログラムに戻した「ナイト・ワルツ/悲しみのクラウン」。冒頭は3ルッツ+3トゥループをパーフェクトに下り1.4点の加点を得ます。次の3サルコウもクリーンな跳躍で1.2点の加点と好調なスタート。後半に5つのジャンプ要素を集め、1つ目は大技3フリップ+3トゥループ、これを完璧に成功。続く3ルッツからの3連続ジャンプなど、全てのジャンプを予定どおりに着氷し、フィニッシュした白岩選手は破顔しガッツポーズを見せました。得点はフリー3位となる131.07点のハイスコアをマーク、トータルでも6位と大きくジャンプアップしました。
 SPは予想外のハプニングがありましたが、そこから1日で見事な切り替えでしたね。今季の白岩選手はシーズン前の怪我で調整が遅れましたが、JGPの2戦目では2位、全日本ジュニアでも2位とシーズンが進むにつれて着実に本来の力を取り戻しつつあって、だからこそショートのミスは悔しかったと思うのですが、フリーでは引きずることなく吹っ切った演技ができていたと思います。1年前はJGP2連勝という勢いそのままに初出場の全日本でもいきなり5位に入りましたが、今季は決して好調な滑り出しというわけではないところから徐々に調子を上げての6位ですから、昨年とはまた違った価値のある6位なのではないでしょうか。この調子で世界ジュニアでもぜひ白岩選手らしい元気いっぱいの演技を見せてほしいですね。



 さて、前編はここまでです。後編に続きます。


:記事冒頭の女子メダリスト3組のスリーショット写真、宮原選手のSPの写真、本郷選手のフリーの写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手のフリーの写真、樋口選手の写真、本郷選手のSPの写真は、デイリースポーツのニュースサイト内の写真特集記事から、三原選手の写真、本田選手の写真、白岩選手の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-12-30 00:38 | フィギュアスケート(大会関連)