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世界選手権2017・女子フリー&ペア―エフゲニア・メドベデワ選手、世界最高得点で2連覇(前編)

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 ヘルシンキで行われた世界選手権2017。この記事では女子のフリーについてまとめていきます。なお、女子のショートプログラムについてはこちらをご覧ください。
 女子を2年連続で制したのはロシアのエフゲニア・メドベデワ選手。フリーとトータルの世界歴代最高を更新する会心の演技で2度目の栄冠をつかみました。そして、2位はカナダ女王のケイトリン・オズモンド選手、3位もカナダのガブリエル・デールマン選手とカナダ勢が続きました。
 一方、ペアは中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組が初優勝を果たしています。

ISU World Figure Skating Championships 2017 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを獲得したのはディフェンディング・チャンピオンのエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 冒頭は大技3フリップ+3トゥループ、これを片手を上げて跳びショート同様に完璧に成功させると、続く3ルッツも片手を上げた空中姿勢で高い加点を獲得。中盤のステップシークエンスでは9人のジャッジのうち8人が最高の加点3を与えるという高評価。後半に入っても勢いは全く衰えず、3ループ、3フリップ、2アクセルからの3連続コンビネーションと相次いで成功。そして後半の鍵となる3サルコウ+3トゥループもパーフェクトに着氷。最後の2アクセルも難なくこなすと、ストーリー性豊かなプログラムを最後まで情熱的に演じ切りました。得点は154.40点と自身が持つ世界最高を塗り替え、トータルでも世界最高の233.41点をマークし、圧倒的な大差で2連覇を達成しました。
 メドベデワ選手が連覇するであろうという大会前の予想どおりの展開となったわけですが、多くの人々から予想されていること、つまり期待されていることをそのとおりに成し遂げることほど困難なことはありません。それがなぜメドベデワ選手にはあんなにもさらりといとも簡単にこなせてしまうのか。もちろん日々の練習、努力の賜物であることは間違いありませんが、たとえば10回中1回しか失敗しない選手がいるとして、その1回を練習でするか、本番でするかとでは全く違うもの。メドベデワ選手には試合での並々ならぬ集中力だったり、氷に乗っている時と乗っていない時のメンタルコントロールの違いだったり、完璧を求められるところで完璧を貫き通し、勝つべきところで勝つために必要な何かが備わっているような気がします。
 オリンピックまでは1年を切っていますが、メドベデワ選手がこのまま独走するのか、それを阻む選手が出てくるのか、それはまだわかりません。彼女自身も連覇を達成したからといって微塵も油断はしないでしょうし、来季はさらに自分自身を高めてくるのではないかと思います。今から来季が楽しみですね。世界選手権2連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのはカナダのベテラン、ケイトリン・オズモンド選手です。

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 まずは得点源の3フリップ+3トゥループを高い跳躍と大きな幅で跳び切って1.4点の加点を得ると、続く2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプの着氷でわずかに乱れますがこらえて最小限のミスに抑えます。直後の3ルッツは問題なく下りて上々の前半とします。今季課題となっている後半、最初のジャンプは3ループでしたがパンクして2回転に。しかし次の3フリップはパーフェクトに成功させると、3サルコウ、2+2+2と次々クリーンに着氷。終盤のステップシークエンスではレベルこそ3でしたが、スピード感のあるエネルギッシュな滑りで観客を魅了。演技を終えたオズモンド選手は表情に達成感を漂わせました。得点は自己ベストの142.15点、トータル218.13点で2位となりました。
 フリーの特に後半で崩れるパターンが今季は多かったオズモンド選手。今大会も後半最初の3ループが失敗となっていつもの負のスパイラルに陥ってしまうのかという思いがよぎりましたが、全く引きずることなく演技を立て直しました。今シーズン経験してきた様々な失敗も、昨季までの怪我で苦しんだ日々も、全てがオズモンド選手の肥料となってこの日に繋がったのかなと思いますし、キス&クライでの溢れんばかりの笑顔からいろんな感情が伝わってきて見ているこちらも思わず感慨深くなりましたね。
 今シーズンをステップの1年として、オリンピックが控える来季はさらに飛躍し、オズモンド選手の笑顔が輝くことを願っています。


 3位となったのはこちらもカナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 冒頭はショートで極めて高い評価を得た3トゥループ+3トゥループ、これをまたもや完璧に成功させてショートと同じく2.1点の加点を得ます。続く3ルッツ、3フリップも完璧に着氷。後半に入ってもジャンプを全て予定どおりに下り、最後の2アクセルのランディングが多少乱れたほかはミスらしいミスなく滑り切り、フィニッシュしたデールマン選手は歓喜を爆発させました。得点は自己ベストを一気に12点以上更新する141.33点でフリーも3位、総合3位で初めての銅メダルを手にしました。
 今シーズンはぐっと安定感が増して存在感を強めていたデールマン選手ですが、まさか一気に世界の表彰台にまで到達するとは素晴らしい演技を見せた四大陸の後でさえ予想もしませんでした。以前と何が変わったのか、きっかけとなるような出来事があったのかどうかはわかりませんが、何よりもコツコツと積み上げた成果がこの大舞台で結実したということなのでしょうね。
 トップスピードのまま跳び上がってその勢いを殺すことなく下りてくるデールマン選手のジャンプは、見ている方も胸がスッとするような痛快で気持ちの良いジャンプですし、年々磨かれているスケーティングから繰り出される演技面も明らかな成長を感じさせて、日本勢にとってはまた一人恐ろしい選手が覚醒してしまったなという感じですね。世界のメダリストとなったデールマン選手が来シーズンどんな姿を見せてくれるのか、今まで以上にプレッシャーがかかり真価が問われるシーズンになりそうですね。


 4位はアメリカのチャンピオン、カレン・チェン選手です。

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 まずは大技3ルッツ+3トゥループをしっかり回り切って下り1.2点の加点を獲得。続けて3フリップも成功させ最高の形でスタートを切ります。後半に5つのジャンプを固め、最初の2アクセル+1ループ+3サルコウを美しい流れで成功。3ループと3サルコウ+2トゥループもクリーンに下りて波に乗るかに見えましたが、続く3ルッツは回転不足で転倒します。最後の2アクセルも着氷が乱れますが、最後は柔軟性を活かしたしなやかなスパイラルを含むコレオシークエンス、回転速度と美しいポジションが特徴的なレイバックスピンで締めくくり、チェン選手は苦笑いを浮かべました。しかし得点は自己ベストを8点以上更新する129.31点をマークし、総合4位と初めての世界選手権で好成績を収めました。
 終盤でミスが重なってしまったのはもったいなかったですが、そのこともほとんど気にならないくらい演技全体の勢いや雰囲気の良さが印象に残りましたね。今季はショートもフリーもチェン選手の年齢からすると少し背伸びしているのかなという選曲でしたが、それが見事にピタリとハマり彼女の新たな魅力を引き出していて、プログラムの成功とも言えそうです。もちろんそれ以上にチェン選手自身のメンタル面の成長もうかがえて、全米女王として初めて臨んだ四大陸で12位に沈んでから短期間でまるで別人のように仕上げてきたのを見ると、四大陸での失敗があったからこそ一皮剥けて選手としても一段レベルを上げられたのかなと思います。
 アメリカの女子は本当に層が厚いのでチェン選手にとってもまだまだ難しい局面が続くでしょうが、この経験を活かして来季も頑張ってほしいですね。


 5位となったのは日本の新星、三原舞依選手です。

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 まずは得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをいつもどおりの軽やかさで成功させて加点1.3を獲得すると、続く3フリップ、2アクセルも危なげなく着氷。後半に入るとますます勢いを増し、2アクセル+3トゥループ、3+2+2と重要なコンビネーションジャンプを相次いで成功。終盤の2つの3回転ジャンプもクリーンにまとめ、フィニッシュした三原選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点はパーソナルベストの138.29点でフリー4位、総合5位とショートの15位から大幅に順位を上げました。
 SPは予想外のミスで思いがけず下位に沈んだ三原選手でしたが、元々練習は絶好調だったのでフリーは本来の姿がようやく見られたという感じでしたね。三原選手の今シーズンを振り返ると、まず9月のネーベルホルン杯での優勝から始まって、GPスケートアメリカでの3位、全日本での3位、そして四大陸では日本女子史上4人目の200点超えでの優勝と順調そのもののシーズンを送ってきました。最後にまさかの落とし穴があったわけですが、それさえも自分の力で跳ね除けてさらなる歓喜をつかんだのは素晴らしいとしか言いようがなく、シニア1年目でこの活躍は称賛しかないですね。
 オリンピック出場を目指す来季は今季以上に厳しい戦いを強いられるでしょうが、「滑れる幸せ」を感じながら演じた今回のフリーのように、自身の原点、初心を忘れず三原選手らしさを貫いてほしいなと思います。


 6位に入ったのは元世界女王、イタリアのカロリーナ・コストナー選手です。

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 最初のジャンプは得点源の3トゥループ+3トゥループでしたが、着氷で若干乱れて減点を受けます。続く3フリップ、3ループはクリーンに成功させすぐに立て直します。中盤のステップシークエンスは加点1.7点の高評価で勢いに乗って後半に向かいましたが、3ループからの連続ジャンプは1+2に、2アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプが2回転にとミスが重なります。その後は目立ったミスなく深遠な世界観のプログラムを演じ切り130.05点でフリー5位、トータル5位とショートから順位を上げました。
 ショートもフリーも大きくリズムを乱すというようなことはありませんでしたが、多少ブランクの影響もあったのか細かなジャンプのズレを完全には修正し切れなかったのかなという印象を受けます。ただ、ミスがある中でも演技構成点では9点台が普通に出る選手なので、来シーズンもやはり怖い存在だなと思います。今季は復帰戦となった12月のゴールデンスピンからしっかりとした練習の跡というのがうかがえましたし、復帰シーズンだからと焦ったり気負ったりする感じもなくほどよい余裕を漂わせた佇まいで、ベテランならではの強みを感じさせられました。来シーズンはどんなプログラムでどんな演技を見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。



 さて、前編はここまで。残りの女子選手とペアについては後編に続きますので、しばらくお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット写真はマルチメディアサイト「Newscom」から、それ以外の写真は全てスポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-04-03 01:55 | フィギュアスケート(大会関連)