カナダ選手権2018―史上初の快挙達成

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 2018年1月8日から14日にかけて、カナダ選手権2018が行われました。カナダ選手権も全米選手権同様、シニアやジュニア、ノービスを一気にまとめて行うので、シニアの試合が実際に行われたのは12日と13日の2日間のみになります(14日はエキシビションのみです)。この記事ではそのシニアの結果のみお伝えします。

2018 Canadian Tire National Skating Championships この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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《男子シングル》


 男子を制したのはベテランのパトリック・チャン選手です。SPは4トゥループで転倒し波乱の幕開けに。3+3は決めますが、苦手の3アクセルは着氷で乱れ、順位としては首位だったもののスコアは90.98点と伸び悩みます。フリーは冒頭の2本の4トゥループを最小限のミスに抑え成功。しかし2アクセルを3本跳んでしまう珍しいミスもあり、得点は自己ベストより20点以上低いスコアにとどまります。それでも他を寄せつけることなく史上初となる10度目の優勝を果たしました。
 GP初戦のスケートカナダ後は、出場予定だったNHK杯を辞退して練習拠点での調整に集中してきたチャン選手。ただ、今大会も鬼門の3アクセルが振るわず、調整に全力を注いできた成果が全て出し切れたのかどうかはわかりませんが、五輪での集大成の演技に向けてまずは一歩前進したのかなと思いますね。五輪の男子フィギュア個人戦までは約1か月、短いといえば短いですが、1か月あればできることも多いと思いますので、チャン選手らしい息を呑むような美しいスケーティングと目が離せない演技が五輪で見られることを楽しみにしています。

 2位に入ったのはキーガン・メッシング選手です。SPは4トゥループこそ入りませんでしたが、全てのエレメンツを加点が付く出来でまとめ、3位と好位置につけます。フリーも1本目の4トゥループでは転倒。しかし2本目の4トゥループはしっかりコンビネーションにして成功。3アクセルも2本とも決め(1本は3連続ジャンプで、最後のジャンプで乱れたためGOEではマイナス)、フリーも3位、総合では2位となり、五輪代表を引き寄せました。
 混戦となった五輪代表2枠目を射止めたメッシング選手ですが、ショート、フリーともにミスを引きずらなかったのが勝因と言えるでしょうか。また、元々ジャンプの質は高いですから、そういった部分でメッシング選手より下位だった4回転を得意としている選手たちを上回れたのかなと思います。今までカナダ選手権では5位が最高だった彼が2位になるとは少し意外でしたが、今季はシーズン初戦のオータムクラシックで3位、NHK杯でも5位と健闘を見せていましたから、シーズン前半の良い流れをこのカナダ選手権にうまく繋げたという印象ですね。

 3位は若手のナム・グエン選手です。SPは3ルッツでの転倒があり5位と出遅れ。フリーは中盤の4トゥループで転倒した以外は全てのエレメンツで加点を引き出し2位と追い上げましたが、トータルではメッシング選手の得点には約1点届かず、惜しくも3位でした。
 ショート、フリーともに4回転や3アクセルはおおむね安定していたグエン選手。それだけにショートの3ルッツやフリーの4トゥループの転倒がもったいなかったですね。結果的にメッシング選手とは1点差しかなかったからこそ余計にそう思えるのですが、どちらのジャンプも成功と紙一重という感じだったので、ちょっとしたミスと言えばちょっとしたミスだったのが、転倒したことによってGOEでマイナスになるだけなく、演技全体からも1点引かれてしまうわけですから、本当に惜しかったです。ただ、ここ最近は苦戦が続いていたことを考えると、この試合にきっちり合わせて一定の成果を出せたと思うので、収穫の多い試合だったのではないでしょうか。

 4位はエラジ・バルデ選手。SPは4回転なしの構成で臨み、クリーンに演じ切って4位。フリーも4回転はなく、3アクセルは2本とも成功。しかし後半のジャンプで細かなミスが散見され点数を伸ばし切れずフリーも4位、総合4位と表彰台には及びませんでした。
 5位はベテランのケビン・レイノルズ選手。SPは大きなミスなく滑り切って2位と好発進。しかしフリーは序盤に固めた3本の4回転―4ループ、4トゥループ、4サルコウ+3トゥループ―でミスを連発。後半もミスが重なり、フリー6位、総合5位と順位を落としました。
 6位はジュニアのジョセフ・ファン選手。SPは4+3とと3アクセルを完璧に決めたものの、3ルッツが2回転になり規定違反で無得点となったことによって8位にとどまります。フリーも4トゥループでの転倒こそありましたが、大崩れすることはなく演技をまとめて5位、総合6位と躍進しました。
 7位はシニア1年目のローマン・サドフスキー選手です。ショートは4回転2本を組み込み、どちらもミスはありましたが何とか着氷。しかし3アクセルは回転不足で転倒し7位に。フリーも4トゥループでの転倒など細々とミスがあり8位、総合7位と順位を上げることはできませんでした。
 8位はリアム・フィラス選手。ショートは全ジャンプで減点があり9位。フリーもジャンプは全体的に不安定な着氷が続きましたが、何とか踏ん張ってフリー7位、総合8位と一つ順位を上げました。


《女子シングル》

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 女子のチャンピオンとなったのは世界選手権2017銅メダリストのガブリエル・デールマン選手です。得点源の3+3を完璧に決めると、3ルッツ、2アクセルもクリーンに下り、非公式ながら77.88点という極めて高いスコアで首位に立ちます。フリーもショートからの流れをそのまま引き継ぎ、3+3始め全てのジャンプをノーミスで着氷。151.90点という驚異的な得点を叩き出し、2度目の優勝に花を添えました。
 好演技をした選手には気前良く加点や演技構成点を与えるのが国内大会というものですから、229.78点というトータルスコアは突拍子もない印象を受けるものの、決して驚くべきものではないのかなと思います。それはさておいて、ジャッジが大盤振る舞いをしたくなるほどデールマン選手の演技が素晴らしかったのは間違いなく、229.78点とはいかなくとも、オリンピックでもこの演技ができれば充分にメダル争いに加われるのではないかと想像します。今季苦戦していたフリーを昨季の「ラプソディー・イン・ブルー」に戻すことで昨季終盤の輝きを取り戻したデールマン選手が、五輪でさらに加速するのかどうか、注目ですね。

 銀メダルを獲得したのは世界選手権2017銀メダリストのケイトリン・オズモンド選手。SPは冒頭の3+3が単独の3フリップに。続く3ルッツに急遽2トゥループをつけてカバーし、その後のエレメンツは落ち着いてこなしましたが、デールマン選手には及ばず2位発進。フリーはショートで失敗した3+3を決め、2アクセル+3トゥループ、3ルッツと得点源のジャンプをクリーンに下りて波に乗るかに見えましたが、課題の後半でミスを連発。フリーも2位で逆転優勝はなりませんでした。
 オズモンド選手の代表作であるショートから珍しくほころびが見え、さらに鬼門となっているフリーの後半ではやはりミスが重なり……と、オズモンド選手にとっては五輪に向けて課題が如実に露わになった試合でしたね。一つ一つの要素の質の高さ、演技構成点での評価の高さは変わりませんが、五輪の表彰台というのを考えるとフリー後半のスタミナ切れはやはり重い課題かなと思いますので、これからの約1か月間で彼女がいかに壁を乗り越え、仕上げてくるかに期待ですね。

 3位は若手のラーキン・オーストマン選手です。ショートは2つのジャンプでミスがあり6位と出遅れ、フリーも転倒を含むミスが複数ありましたが、それでもフリー3位、総合3位と挽回し、五輪の切符をつかみました。
 今季スケートカナダでGPデビューしたばかりの選手ですが、4年に1度の五輪のチャンスを見事に活かしましたね。ほかの選手たちのミスに助けられたという面もありますが、そうした接戦を勝ち抜けた経験というのは今後の彼女のキャリアにおいても記念碑的なものになるのかなと思います。

 4位は2016年のカナダ女王、アレーヌ・シャルトラン選手です。ショートはコンビネーションが入らなかった上に2度の転倒もあり9位と大幅に出遅れ。フリーも転倒があり、コンビネーションが一つしか入らなかったこともあって、フリー4位と追い上げましたが総合4位と表彰台には立てませんでした。
 5位はオーロラ・コトップ選手。SPは3+3と3ループで2度転倒し14位と下位に沈みます。フリーは3+3は組み込まず、さらに7つのジャンプ要素のうち5つを前半に跳ぶ構成で確実にジャンプをこなし、フリー5位、総合5位と一気に順位を上げました。
 6位はキム・デグイーズ=レヴェイエ選手です。ショートは転倒が1つあり11位に。フリーもミスはちょこちょことありましたが、転倒やパンクはなく滑り切り6位、総合6位となりました。
 7位はミシェル・ロン選手。ショートは細かなミスはあったものの、ステップシークエンスではレベル4を獲得するなど本領も発揮し、4位と好発進。しかしフリーはパンクや転倒など大きなミスが相次ぎ8位、総合7位と順位を落としました。
 8位はアリシア・ピノー選手。ショートは単独の3ループが1回転になり規定違反で0点になったため12位。フリーは大きなミスなく演じ切り7位、総合8位と追い上げました。


《ペア》

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 ペアで前人未到の7連覇を達成したのはメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPは今季苦戦していたサイドバイサイドの3ルッツを決め非公式ながら自己ベストを上回る得点で首位に立ちます。フリーもサイドバイサイドの3ルッツをこらえて最小限のミスに抑え、大技のスロー4サルコウは転倒に終わったものの、その後はミスらしいミスなく圧巻の滑りを見せフリー1位、トータルでは2位に20点以上の差をつけ7連覇しました。
 シーズン前半は特にサイドバイサイドジャンプで苦労する姿が多く見られたデュハメル&ラドフォード組ですが、今大会はしっかり修正してきましたね。かつて世界の舞台で快進撃を続け世界選手権を連覇した時のことを考えると、今回の演技内容はようやく彼ららしい滑りが見られたという印象で決して驚くべきものではありませんが、なかなか理想的な演技ができなかった時期を乗り越えてですから、感慨深い優勝なのではないでしょうか。この好調を維持して五輪でも優勝争いに加わってほしいですね。

 2位はジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組です。SPはサイドバイサイドの3サルコウで転倒したものの、ほかの要素は全てレベル4に揃えて2位と好発進。フリーはサイドバイサイドの3ルッツで若干減点はありましたが、そのほかのエレメンツは全て加点の付く出来で、しかも軒並みレベル4を揃え、フリーも2位、総合2位で五輪代表の切符を手にしました。
 ショートで転倒があったとはいえ、今大会のセガン&ビロドー組は全体的に安定感が際立っていましたね。特にショート、フリーともに全てレベル4というのはお見事としか言いようがありません。昨年はセガン選手が脳震盪を起こしたことによってカナダ選手権は欠場せざるをえませんでしたから、今年のカナダ選手権は今まで以上に思い入れもひとしおだったのではないでしょうか。高い技術力を武器に、セガン&ビロドー組が五輪でどこまで上位に食い込んでくるのか、楽しみです。

 3位はカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組です。ショートは3ツイストやスピンでレベルの取りこぼしがあったものの目立ったミスなくまとめて3位。フリーも2アクセル+1ループ+3サルコウの3連続ジャンプでアンダーローテーション(軽度の回転不足)があった以外はミスなくクオリティーの高い演技を披露し、フリーも3位、総合3位で昨年に続き銅メダルを獲得しました。
 順位としては昨年と同じ3位ですが、昨年はセガン&ビロドー組が不在の中での3位だったので、世界選手権の代表からは惜しくも漏れてしまいました。ですので、ベストメンバーが揃った中での今年の3位は、昨年とはまた違った意味合いのある3位と言えますね。


《アイスダンス》

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 8度目の優勝を果たしたのはテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは全てのエレメンツでレベル4を獲得し断トツの首位に立つと、FDも全てレベル4という完全無欠の演技で他のカップルを寄せつけることなく頂点を射止めました。
 何も言うことなしという演技内容ですね。オリンピックに向けて着々と準備を進めていて、このカナダ選手権も一つの通過点として、五輪へのステップアップとしてさらなる進化を見せつけました。五輪ではフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組との一騎打ちとなると思いますが、怪我なく無事に五輪の舞台で集大成の演技が見られることを祈っています。

 2位に入ったのはパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組です。SDではパターンダンス以外全てレベル4とヴァーチュー&モイア組にも負けず劣らずレベルの高い滑りを披露し2位につけます。FDではツイズルで女性のギレス選手がよろめくシーンがありレベル2どまりに。そのほかのエレメンツはまとめフリーは3位でしたが、総合では3位のカップルを約1点差でかわし自己最高位タイの2位でフィニッシュしました。
 ツイズルはアイスダンスの技の中でも最もミスを犯しやすい場面なので、今後に深刻な影響を及ぼす失敗の形ではないと思うのですが、むしろここでミスをしたことで五輪ではより注意を向けられるでしょうから、そういった意味でポジティブにとらえることもできそうですね。何よりSDで素晴らしい演技をしたことが自信になると思いますから、五輪ではフリーも納得のいく演技ができるよう頑張ってほしいですね。

 3位はケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組です。SDはツイズルで男性のポジェ選手が転倒するというまさかのミスがあり4位と出遅れ。FDはそのツイズルもしっかり修正し、軒並みレベル4を揃えて2位と挽回しましたが、ショートの点差が響き総合では惜しくも3位でした。
 このウィーバー&ポジェ組にしても上述したギレス&ポワリエ組にしてもそれぞれツイズルでのミスがあったわけですが、それくらい五輪の切符が懸かるカナダ選手権というのは尋常ではない緊張感があったのだろうなと想像します。普段起こらないようなことが起こってしまう舞台と言えますが、その意味では五輪はそれ以上の魔物が住んでいる場所だと思いますので、今回の経験を財産として五輪では悔いのない演技ができるよう願っています。



 カナダ選手権の結果は以上ですが、この結果を受けて選出されたシーズン後半の主要国際大会の代表選手をまとめます(敬称略)。


《平昌五輪代表》

男子シングル:パトリック・チャン、キーガン・メッシング
女子シングル:ガブリエル・デールマン、ケイトリン・オズモンド、ラーキン・オーストマン
ペア:メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組、カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組
アイスダンス:テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組

《世界選手権代表》

男子シングル:パトリック・チャン、キーガン・メッシング
女子シングル:ラーキン・オーストマン、ガブリエル・デールマン、ケイトリン・オズモンド
ペア:メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組、カーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組、ジュリアン・セガン&シャルリ・ビロドー組
アイスダンス:パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組、テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組

《四大陸選手権代表》

男子シングル:エラジ・バルデ、ナム・グエン、ケビン・レイノルズ
女子シングル:アレーヌ・シャルトラン、ミシェル・ロン、アリシア・ピノー
ペア:リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、シドニー・コロジー&マキシム・デシャン組、カミーユ・ルエ&ドリュー・ウルフ組
アイスダンス:サラ・アーノルド&ウィリアム・トーマス組、ヘイリー・セールズ&ニコラス・ワムスティーカー組、カロラーヌ・スシース&シェーン・フィラス組




 五輪、世界選手権に関してはカナダ選手権の表彰台そのままのメンバーですね。非常に明快で疑問の余地のないベストな選出と言えます。一方で四大陸選手権はそれらの大会から漏れた選手たちによって構成されています。



 世界最強と言っても過言ではない層の厚さを誇るカナダチーム。五輪では個人戦でのメダルはもちろん、団体戦での金メダルも十二分に狙えるメンバーだと思いますから、そちらも非常に楽しみです。では。


:記事内の画像は全て、フィギュアスケート情報サイト「Golden Skate」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-01-18 16:03 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)