四大陸選手権2018・男子&ペア―金博洋選手、300点超えで初優勝(後編)

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 四大陸選手権2018、男子&ペア編の後編です。なお、前編はこちらからご覧ください。

ISU Four Continents Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子の6位となったのはウズベキスタンの実力者、ミーシャ・ジー選手です。

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 SPは冒頭の3アクセルをクリーンに決めますが、3+3はファーストジャンプの3ルッツの踏み切りのエッジが不正確とされわずかに減点、さらに足替えキャメルスピンではぐらつく場面がありこちらも減点と、細かな減点が重なり82.27点と得点は伸び切らず8位にとどまります。
 フリーはまず得点源の3アクセル+1ループ+3サルコウ、これをパーフェクトに決め1.57点の加点を得ます。続く単独の3アクセルは若干こらえてマイナス。3フリップはクリーンに着氷します。後半は3+3を鮮やかに成功させると、3ルッツ、3ループ、2アクセル+2トゥループ、2アクセルと全て成功。ステップシークエンスやコレオシークエンスでは高い加点も稼ぎ、166.69点でフリー7位、総合6位と自己最高位で7度目の四大陸を終えました。
 今季は好調をキープし続けているジー選手。今大会も最小限のミスのみでいつもどおり安定感のある演技でしたね。珍しくスピンでの取りこぼしが目立ちましたので、そういた細部の綻びをしっかり修正して、五輪ではジー選手のキャリアベストの演技が見られることを祈っています。


 7位はカナダのベテラン、ケビン・レイノルズ選手です。

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 SPは「モーニン」。2本の4回転を組み込み、最初の4サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で両足着氷となります。次いで3アクセルはしっかり着氷。4トゥループからの連続ジャンプは4トゥループでステップアウトし単独に。ステップシークエンスやスピンでは目立った取りこぼしなくまとめましたが、ジャンプミスが響き74.65点で13位と出遅れます。
 フリーは「アルバム「The Armed Man」より」。冒頭は4サルコウ、大きな乱れなく下りますがアンダーローテーションの判定。次の4トゥループは回り切って着氷。さらに大技4サルコウ+3トゥループ+3ループに挑み、ファーストジャンプは回転不足だったもののサードジャンプまでしっかり跳び切ります。後半最初の3アクセルはこちらもアンダーローテーションに。4トゥループ+2トゥループは成功させ、3+2、3ルッツ、3サルコウと後半をほぼノーミスでクリア。フィニッシュしたレイノルズ選手は感極まった表情を浮かべ、力強く拳を握り締めました。得点は166.85点とシーズンベストをマークしフリー6位、総合7位と大きく順位を上げました。
 今大会をもって現役を引退することを発表していたレイノルズ選手。その並々ならぬ想いが込められたショート、フリーは完璧ではありませんでしたが、終始彼らしさに満ち溢れたものでした。特にフリーは4回転が敬遠されていた時代から4回転を果敢に跳び続けてきたレイノルズ選手らしく4回転を4本組み込み、そのうちの1本は4+3+3という最高難度のコンビネーションとして挑みました。近年は4回転の回転不足が多くなり苦労していたとはいえ、4回転の第一人者であるレイノルズ選手だからこその自信、矜持、凄みを感じさせられましたし、稀代の4回転ジャンパーとして時代を切り拓いてきたレイノルズ選手らしさを最後まで貫いた演技だったなと思いますね。
 今後彼がどういう道を歩むのかはわかりませんが、さまざまな挫折や怪我を乗り越えてきたレイノルズ選手ならばどんな道を選んでも力強く前進していけるのではないでしょうか。今までたくさんの素晴らしい演技の数々をありがとうございました。


 8位は同じくカナダのエラジ・バルデ選手です。

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 SP「サウンド・オブ・サイレンス」。まず冒頭の3フリップを決めると、次の3アクセルも着氷。後半の3+3も成功させてミスらしいミスなくまとめて75.17点で12位につけます。
 フリーは「I've Been Loving You Too Long/Get Up Offa That Thing/Coming Home/Uptown Funk」。まずは得点源の3アクセル+2トゥループをクリーンに下りて1点の加点を獲得。続く単独の3アクセルも軽やかに決め1.29点の加点を得ます。中盤の3ループは若干着氷でバランスを崩しかけますが、後半最初の2アクセル+3トゥループはクリーンに着氷。さらに3ルッツ+1ループ+3サルコウ、3ルッツ、3フリップ(踏み切りのエッジが不正確なためわずかに減点)、2アクセルと目立ったミスなく全てのジャンプを跳び切り、エレメンツ以外の場面ではバルデ選手らしいノリの良さと盛り上げ方で観客を沸かせ、演技を終えたバルデ選手は歓喜を爆発させました。得点は自己ベストまで0.77点の163.03点でフリー8位、総合8位となりました。
 昨年の9月上旬、練習中に転倒し頭を打ち脳震盪を起こしたバルデ選手。その影響もあってシーズン前半の試合は欠場せざるをえず、五輪代表を決める1月のカナダ選手権がシーズン初戦となりました。そのカナダ選手権は4位となり残念ながら五輪には届きませんでしたが、困難を乗り越えたからこその滑る喜びが今大会の演技にも表れていたような気がしましたね。
 バルデ選手は今シーズンをもって引退するとのことで、この四大陸が最後の試合となる可能性が高いのかなと思いますが、エキシビションには欠かせない選手として知られるエンターテイナーの彼が試合でもまさに彼らしい演技を最後に見せたことが本当に印象深かったですね。これからもスケートに大いに関わって、フィギュア界を別の形で盛り上げてほしいと思います。


 日本の無良崇人選手は12位となりました。

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 ショート冒頭は今季鬼門となっている4トゥループでしたが、パンクして2回転となり規定違反のため無得点になります。続く得意の3アクセルはダイナミックな跳躍で1.86点の加点。後半の3+3も決めますが、4回転のミスが致命的となり76.66点で10位にとどまります。

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 フリーもまずは4トゥループからでしたが、再びパンクして2回転に。直後の2本目の4トゥループは何とか回り切りますがステップアウト。3ループは難なく下ります。後半は確実に決めたい3アクセルから、これをコンビネーションで決めますが、2本目の3アクセルは着氷で乱れ。3+1+2は大きなミスなくこなし、3サルコウ、3ルッツと終盤にかけて尻上がりにジャンプを成功させましたが、精彩を欠いた内容に無良選手は顔を曇らせました。得点は148.75点でフリー11位、総合12位に沈みました。
 ショート、フリーともに4回転が決まらず本領を発揮できなかった無良選手。今大会を総括して無良選手は「4回転に翻弄された」という言葉を残しましたが、その言葉は今シーズン全体についても言えることなのかなと思います。世界の男子フィギュア界が4回転多種類時代に突入している中で、無良選手も元々持っている4トゥループに加え4サルコウにも取り組んできたわけですが、種類を増やすことで演技全体のバランスが崩れ、完成度が低くなり、4回転を1種類に絞っても負の連鎖から抜け出せていないような印象を受けました。4回転とどう向き合っていくかというのは難しいところですが、来季は無良選手の笑顔がもっともっと試合で見られるといいなと願っています。



 ここからはペアの結果です。

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 優勝はアメリカのタラ・ケイン&ダニエル・オシェア組です。ショートは減点なくすべてのエレメンツをこなしますが、3ツイストやサイドバイサイドジャンプであまり加点を稼げず、それでもパーソナルベストをマークして3位と好位置につけます。フリーは2アクセルからの連続ジャンプが単独になるミスはあったものの、そのほかの要素は全てクリーンに決め、しかも3ツイスト以外は全てレベル4と安定感を発揮し、自己ベストを約5点更新してフリー1位、総合1位となり、逆転で四大陸の頂点に立ちました。
 数週間前の全米選手権では2位となって惜しくもオリンピックの代表には選ばれなかったケイン&オシェア組。しかし世界選手権の代表には選出されていて(アメリカのペアの代表枠は、五輪が1枠、世界選手権が2枠のため)、この四大陸は3月の大舞台に向けてジャッジへアピールする重要な機会でもありました。そうした意味でこの優勝は本当に意義深いのではないかと思いますね。内容的にも手応えのつかめる演技だったでしょうし、今回のような演技をぜひ世界選手権でも楽しみにしたいですね。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。

 2位は同じくアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組です。SPは全要素をクリーンに成功させて自己ベストを更新して首位発進。しかしフリーはスロージャンプやサイドバイサイドの3+2+2のジャンプなど大技を決める一方で、細々としたミスや取りこぼしも散見され、自己ベストは上回ったもののフリー2位、総合2位とトップの座を守り切れませんでした。
 フリーの出来次第では初優勝の可能性も十二分にあっただけに、ちょっとしたミスの重なりがもったいないなと思うのですが、結成してまだ2季目のペアですから、今後の伸びしろ、レベルアップに期待ですね。

 3位は北朝鮮のリョム・テオク&キム・ジュシク組です。ショートは3ツイストやステップシークエンスのレベルは2どまりでしたが、GOEでのマイナスなくまとめ、わずかながら自己ベストを塗り替えて4位。フリーはサイドバイサイドの2アクセルで転倒、スロー3ループでの着氷の乱れがあったものの、そのほかのエレメンツではおおむね高い加点を積み重ね、自己ベストに極めて近いスコアでフリー3位、総合3位となり、北朝鮮のフィギュア選手としては初めての、ISU主催の国際大会でメダルを獲得するという歴史的快挙を成し遂げました。
 政治的なことで何かと話題になっているリョム&キム組ですが、実力は間違いなくハイレベルなものを持っていますね。今大会は中国勢は不在だったとはいえ、北米の実績のあるペアを押しのけての銅メダルですから、技術的にはもちろん、精神的にもタフなんだなと思います。五輪でもベストを尽くして、台風の目のような存在になってほしいですね。


 以下、4位はカナダのリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、5位はアメリカのディアナ・ステラート&ネイサン・バーソロメイ組、6位はオーストラリアのエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組、7位はカナダのカミーユ・ルエ&アンドリュー・ウルフ組となりました。


 全日本王者の須崎海羽&木原龍一組は8位に入りました。

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 SPは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツで着氷が乱れ、3ツイストもレベル1とミスが続きますが、そのほかのエレメンツでは加点を獲得し、パーソナルベストを6点以上上回る56.95点で7位につけます。フリーは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツが回転不足になり着氷もステップアウト。次いで3ツイストもキャッチが乱れるなどミスが続きます。その後も2つのスロージャンプやサイドバイサイドの3連続ジャンプなどがクリーンに決まらず、それでも100.32点で自己ベストを約5点更新し、フリー8位、総合8位で2度目の四大陸を終えました。
 ショート、フリーともに複数のミスはあったのですが、大きなミスというよりは惜しいミスという感じなので、一つの経験として収穫の多い試合になったのではないでしょうか。何よりも五輪に向けてパーソナルベストを更新できたことは自信にしてほしいなと思いますし、団体戦でも個人戦でも二人の力を思い切りぶつけてほしいですね。


 全日本3位の三浦璃来&市橋翔哉組は10位となりました。

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 SPは冒頭の2ツイストでレベル3を獲得しますが、キャッチで若干もたついたためGOEでは減点。サイドバイサイドの3トゥループはクリーンに決めますが、デススパイラルではうまく回転ができず無得点になるミスもあり、自己ベストに及ばず10位発進に。フリーは2ツイストを確実に成功させ加点も獲得。しかしサイドバイサイドの3トゥループは回転不足で転倒してしまいます。その後も細々としたミスがあり思ったように得点を伸ばせず。しかしわずかに自己ベストを更新してフリーも10位、総合10位でした。
 今季はシーズン前半はジュニアとしてジュニアGPに参加しながら、シニアの国際大会にも挑戦した三浦&市橋組。四大陸はもちろん初出場でしたが、今まで出場してきたどの国際大会とも違う感覚、雰囲気があって緊張感もあったのではないかなと想像します。ミスの多い演技とはなってしまいましたが、この経験を活かして世界ジュニア選手権では納得のいく演技ができるよううまく調整してほしいですね。



 四大陸2018、男子&ペア編は以上です。男子に関しては出場選手の年齢層が比較的高めで、その中でもジー選手やレイノルズ選手、バルデ選手のように今季で引退する選手も多く、五輪シーズンならではですが、例年とは違う雰囲気も感じました。五輪を控える選手たちにとっては改めて現時点での自分の状態を見つめ直す良い機会になったのではないかと思いますし、四大陸の演技が五輪に繋がることを願いたいですね。
 その平昌五輪はいよいよ6日後の2月9日に開幕。フィギュアスケートは、開会式当日の9日の午前から団体戦が始まり、11、12日と3日かけて世界最強国の称号を競う試合が続きます。そして、14、15日にペア、16、17日に男子、19、20日にアイスダンス、21、23日に女子、25日にエキシビションが行われます。当ブログでもできるだけ早めに、随時記事をアップしていく予定ですので、ぜひご覧ください。では。


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by hitsujigusa | 2018-02-03 17:50 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)