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平昌五輪・団体戦(男子フリー)―パトリック・チャン選手、シーズンベストで1位

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 世界最強国を決める団体戦。この記事アップの時点ですでに個人戦が始まってしまっていますが、この記事では少し駆け足に団体戦の男子フリーの結果を書いていきたいと思います。なお、団体戦のルールについては、こちらの記事をご覧ください。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 1位となったのはカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 まずはショートで失敗した4トゥループ+3トゥループ、これを今度は完璧に決めて2.14点の加点を得ます。次いで単独の4トゥループも成功し、最高の滑り出しを見せます。しかし直後の3アクセルはパンクして2アクセルに。コレオシークエンスを挟んで中盤、3ルッツ+1ループ+3サルコウはパーフェクト。そして後半、課題の3アクセルはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。3ループも乱れます。その後の2つのジャンプはクリーンに下りて、代名詞のステップシークエンスではほとんどのジャッジから加点3を獲得しました。得点は179.75点とシーズンベストをマークして1位となりました。
 SPでは転倒した4トゥループを完璧に決めたことで流れをつかんだという印象でしたね。あとは苦手の3アクセルの問題のみ、という感じがしますが、最後の最後までチャン選手にとっては3アクセルが鬼門であり続けていて、だからこそ個人戦では3アクセルの壁も乗り越えて久しぶりのチャン選手の満面の笑みを見たいなと思いますし、3アクセルさえクリアできればきっとそういう光景が見られるのではないでしょうか。


 2位はOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は大技の4ルッツ、回転は回り切っていましたがこらえきれず転倒します。続いて4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)で着氷ミスと不穏な出だしに。ですが、直後の3アクセル+2トゥループはクリーンに決めます。後半最初は2本目の4トゥループ、着氷はしますがセカンドジャンプには繋げられず、単独ジャンプの繰り返しということで基礎点としては減点に。続く3アクセルは完璧で2.29点の加点。さらに3+1+3、3ルッツ、2アクセルと終盤はきれいなジャンプを続け挽回しました。得点は自己ベストから12点ほど低い173.57点で2位となりました。
 ショートでは致命的なミスを連発してまさかの8位に沈んだコリヤダ選手。中2日でどれだけ修正してきたかが注目点でしたが、今回はまだその課題をクリアし切れなかったのかなという感じですね。技術的に何かがずれているのか、それとも精神的な影響なのかはわかりませんが、3アクセルを始めとした3回転ジャンプは全てクリーンに決まっているところを見ると、4回転だけ感覚がつかみ切れていないのかもしれません。こういった姿は今季のほかの試合でもあったので珍しいことではありませんから、うまく調整して16日の個人戦のショートに繋げてほしいですね。


 3位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 冒頭は大技の4ルッツではなく、2アクセルでまずは無難にスタート。続いて高難度の3フリップ+3ループを完璧に跳び切って1点以上の加点を得ます。直後の2アクセルも問題なく成功。後半は得点源の3アクセル+2トゥループ+2ループからで、これを確実に成功。続く2本目の3アクセルも着氷させると、3+3、3サルコウも着氷。最後の3ルッツはわずかに回転が足りませんでしたが、終盤のコレオシークエンス、2つのスピンでは全て加点1以上と高い質を揃え、演技を終えたリッポン選手はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はパーソナルベストまで約9点の172.98点で3位とチームに貢献しました。
 この演技が五輪初演技となったリッポン選手。近年フリーの冒頭でほぼ毎試合挑んできた4ルッツこそ回避しましたが、その分演技全体の完成度は非常に高く、個人戦を前にこの演技ができたことでさらに自信を深められるでしょうね。表彰台争いに加わるのは難しいでしょうが、これが最初で最後の五輪になるであろうリッポン選手にとって、ベストを出し切り、プログラムの世界を観客に伝えることこそが最大の目標になるのではないかと思うので、個人戦もリッポン選手らしい演技を見せてほしいですね。


 4位はイタリアの新星、マッテオ・リッツォ選手です。

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 まずは得点源の3+3、これをスムーズな流れで決めて1.2点の加点を獲得。3アクセル+2トゥループ、3ルッツも完璧に下りて、それぞれ1点以上の加点を得ます。後半最初は2本目の3アクセルでしたが、これはアンダーローテーション(軽度の回転不足)に。しかし、直後の3+1+3はクリーンに決め、残りの3ループ、2つの2アクセルも成功。フィニッシュしたリッツォ選手は破顔しました。得点は156.11点とパーソナルベストには約1点及びませんでしたが、4位と健闘しました。
 ショートに続いて出場したリッツォ選手。ショートも自己ベストに近いスコアで本領を発揮しましたが、このフリーも本当に安定していましたね。緊張で身体が硬くなるとか演技が縮こまるといった感じがほとんどなくて、最初から最後までのびやかでした。4回転こそ持っていない選手ですが、くせのないジャンプは加点もつきやすいですし、ステップやスピンも安定していますので、今後がますます楽しみになりました。まずは個人戦でも団体戦のような、もしくはそれ以上の会心の演技を期待したいと思います。


 5位は日本の田中刑事選手です。

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 まずは得点源の4サルコウでしたが、パンクして2回転になります。次いで2本目の4サルコウ、こちらも回転できず2回転と大きなミスが続きます。直後の3アクセルはクリーンに下りて1.57点の加点。そして後半、鍵を握る4トゥループは転倒。3アクセルからの3連続は最後が1回転になります。3+3はクリーンに下り、終盤の2つの単独ジャンプも軽やかに決めますが、基礎点の高いジャンプのミスが響き、148.36点で5位にとどまりました。
 五輪初演技だった田中選手ですが、その緊張感がジャンプの感覚を狂わせてしまったのか今季成功率が高まっていた4サルコウが全く形になりませんでしたね。全日本選手権、四大陸選手権で決めた後半の4トゥループもうまくはまらず、やはり五輪の雰囲気に飲まれてしまったのかなという印象を受けます。田中選手本人は4サルコウの失敗について、直前の6分間練習で決まらずイメージが悪くなったことを原因として挙げているので、いつもどおりの感覚さえつかんで、落ち着いてやれれば個人戦は問題ないのではないかと思います。この失敗はさっぱり忘れて、個人戦のショートではまっさらな気持ちで挑戦者として思い切り演技してほしいですね。



 団体戦男子フリーが終了し、順位は以下のようになりました。


1位:カナダ 55ポイント
2位:OAR 48ポイント
3位:アメリカ 44ポイント
4位:イタリア 42ポイント
5位:日本 38ポイント



 カナダがどんどん2位以下に差をつける一方、日本のメダルはかなり厳しい状況になりましたね。男子フリーに出場した田中選手の実力を考えると、イタリアのリッツォ選手を上回る力は充分にあったと思うので、最下位の5位となってしまったのは少し予想外でした。


 次はいよいよ団体戦最後の記事、女子フリー&アイスダンスフリー編です。早足な感じの記事になってしまって申し訳ないですが、ぜひ次もご覧下さると幸いです。


:記事冒頭の日本チームの画像、コリヤダ選手の画像、リッツォ選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、チャン選手の画像、リッポン選手の画像、田中選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-15 01:20 | フィギュアスケート(大会関連)