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平昌五輪・アイスダンス―ヴァーチュー&モイア組、世界最高得点で金メダル

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 平昌五輪が熱狂の中、終了しました。ですが、当ブログではまだまだアップできていない記事がたくさんありますので、できる限り早く掲載していきたいと思います。
 アイスダンスを制したのはバンクーバー五輪金メダリスト、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。すでに輝かしい経歴を持つ彼らに、また一つまばゆい勲章が加わりました。そして銀メダルを獲得したのは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組、3位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 2度目のオリンピックチャンピオンになったのは世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。

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 SDはまずホールドなしのステップシークエンスを完璧にこなしレベル4を獲得すると、続いて団体戦では取りこぼしのあったパターンダンスも確実にレベル4。さらにパーシャルステップシークエンス、ツイズルとノーミスを揃え、最後のリフトもパーフェクトで、全ての要素でレベル4という圧巻の演技。自身が持つ世界最高得点を塗り替える83.67点で堂々の首位発進を果たします。FDは冒頭のリフトで観客をプログラムの世界観に引き込むと、次いでツイズルもしっかり音に合わせてレベル4。その後も華麗なエッジワークでどんどんスピード感とスケール感を増していき、その中で正確無比なエレメンツを披露して確実にレベル4を並べ、フィニッシュしたヴァーチュー&モイア組は感極まった表情を見せました。得点はパーソナルベストの122.40点でフリーは2位でしたが、トータルでは世界最高得点の1位でバンクーバー五輪以来2度目となる金メダルを手にしました。
 ショート、フリーを通してまさに圧巻としか言いようのない演技でしたね。決してプレッシャーがなかったわけではないでしょうし、金メダルというのを意識しないわけにはいかなかったでしょうが、頭は冷静に、しかし心は情熱的にというのが激しくアグレッシブな滑りから感じられて、魅せられました。また、2シーズンの休養を経て、昨季復帰してからの金メダルですから、若く勢いのままに取ったバンクーバー五輪の金メダルとはまた違う、思い入れの深い金メダルになったのではないでしょうか。
 3月の世界選手権に出場するのかどうかはまだわかりませんが、ひとまずはゆっくり休んで疲れを取ってほしいですね。平昌五輪優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはGPファイナル王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。

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 SDはパターンダンスから幕を開けましたが、その前にパパダキス選手の衣装のホックが外れてしまうというアクシデントが発生。しかし二人は演技を続行し、パターンダンス、ノンホールドのステップ、ツイズルと確実にレベル4を獲得。後半のパーシャルステップシークエンスはレベル3にとどまり、終盤のリフトはレベルは4でしたが加点は思ったほど稼げず。得点はパーソナルベストに迫る81.93点で首位と僅差の2位につけました。FD冒頭はツイズルから、二人の動きをぴったり合わせてレベル4を得ます。さらにリフト、ステップと全てのエレメンツを流れの中で、ベートーベンの「月光」に溶け込ませるように演じ切り、演技を終えた二人はこみ上げてくるものをこらえるような表情を見せました。得点は自身が持つ世界最高得点を更新する123.35点でフリー1位、しかしトータルでは惜しくもバーチュー&モイア組に届かず2位となりました。
 SDはパパダキス選手の衣装がはだけるというまさかのアクシデントがあり、その影響なのかどうかはわかりませんが、特に動きが激しくなり胸が露出した最後のリフトはGOEで加点3をつけるジャッジがいる一方、加点1に抑えたジャッジもいて、そのあたりの採点の意味というのが気になりましたね。しかし一夜明けたフリーは気持ちを切り替えて改めて集中し直していて、まさに“月光”の光景が目に浮かぶような静けさと激しさが合わさった滑りは思わず息をするのも忘れてしまうような美しさでした。
 トータルスコアでは惜しくも頂点には及びませんでしたが、ショートもフリーも演技構成点はヴァーチュー&モイア組を上回ってトップで、それだけにショートのあのトラブルというのが得点に響いてしまった可能性を思うと惜しまれるのですが、22歳と23歳というまだまだ若いカップルで、技術的にも表現的にもこれからより一層進化していくことは間違いないと思いますので、今後パパダキス&シゼロン組がどんなふうに世界のアイスダンス界をリードしていくのか、楽しみですね。


 3位は世界選手権2017銅メダリスト、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。

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 SDは全てのエレメンツを安定して大きなミスなくこなしましたが、序盤のパターンダンスがレベル2にとどまる取りこぼしがあり、77.73点で4位発進となります。表彰台を狙うフリーは冒頭のスピンでレベル4を獲得すると、ステップ、リフトとミスらしいミスなくのびやかに要素をクリア。代名詞となっている得意のツイズルでもほぼ全てのジャッジが加点3をつける圧巻の出来で、ローテーショナルリフトがレベル3になった以外はレベル4を揃え、演技を終えた二人は信じられないといった表情を浮かべた後、笑顔で観客の拍手喝采に応えました。得点は自己ベストに0.4点と迫る114.86点でフリー3位、総合3位に順位を上げ、初めての銅メダルを獲得しました。
 ショートは4位と若干ではあるものの出遅れてしまい、表彰台に向けて背水の陣で迎えたフリー。シブタニ兄妹らしい確実性の高い技術力と、兄妹ならではの一心同体ぶりが全て発揮された滑りでしたね。最近はGPファイナル、全米選手権とフリーで順位を落とすという試合が続いていましたので、今回のフリーももの凄い重圧と緊張だったと思うのですが、自分たちの演技に集中し二人らしさを取り戻しましたね。
 シニアデビューシーズンから世界のトップレベルで活躍しているカップルなので、ベテランのような雰囲気も漂う二人ですが、まだ23歳と26歳でのびしろも大きいと思いますから、これからのさらなる躍進に期待したいですね。


 4位は全米王者のマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組。SDは最後のツイズルこそレベル3でしたが、それ以外はレベル4かつ高い加点を積み重ね、自己ベストの77.75点で3位と好発進します。FDもまずはツイズルを確実にこなし、次いでスピンやステップも丁寧にクリア。しかし終盤のコレオツイズルでドノヒュー選手が転倒し、規定の回転ができず無得点となる痛いミス。技術点を伸ばせずフリー5位、総合4位と表彰台を逃しました。

 5位はOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組です。SDはツイズルとリフトはレベル4でしたが、それ以外の要素はレベル3にとどまり、75.47点で6位に。FDは冒頭のツイズルをミスなくこなすと、その後も目立ったミスなく情感たっぷりに物語を表現し、111.45点でフリー4位、総合5位と一つ順位を上げました。

 6位はイタリアのベテラン、アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組。SDは後半のステップ以外はレベル4と隙のない演技を見せ、パーソナルベストとなる76.57点で5位につけます。FDも全体を通してスムーズな流れで映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の物語を表情豊かに演じ切りましたが、リフトの時間超過による減点1もあり思ったほど得点を伸ばせず、108.43点でフリー6位、総合6位となりました。

 7位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SDはパターンダンスとリフトでレベル4を獲得しますが、ツイズルでの小さなミスがあり自己ベストから3点ほど低いスコアで8位にとどまります。FDはステップ、スピン、リフトと序盤から順調にエレメンツをこなしましたが、ツイズルでは再びミスがありレベル2に。その後はミスを引きずることなく巻き返しましたが、107.65点でフリー7位、総合7位でソチ五輪と同じ順位となりました。

 8位は同じくカナダのパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組。SDはパターンダンスがレベル2になるなど取りこぼしが目立ち9位。FDはおおむねミスなくクリーンなエレメンツを揃え8位、総合も8位で初めての五輪を終えました。


 日本の村元哉中&クリス・リード組は15位に入り、日本のカップルとして最高位タイをマークしました。

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 SDは冒頭のツイズルをきっちりこなしレベル3を取ると、続く2つのステップ、パターンダンスもレベル3と大きな取りこぼしなくクリア。最後のリフトはレベル4に加え1点以上の加点を得て、63.41点で15位につけます。
 FDもまずはツイズルをクリーンにこなすと、ゆったりしたメロディに乗せてサーキュラーステップシークエンスを優雅かつ丁寧に披露。中盤以降は少しアップテンポな曲調に変わり、それとともに滑りのスピード感もアップ。その中でリフトやスピンを一つ一つ確実に、しかしスピード感を保ってクリアし、レベルの取りこぼしもなく滑り切った二人は表情に充実感を滲ませました。得点は自己ベストに約1点と迫る97.22点でフリー13位、総合15位となり、トリノ五輪の渡辺心&木戸章之組に並ぶ日本勢自己最高位となりました。
 ショート、フリーともに村元&リード組らしさが存分に出た素晴らしい演技でしたね。技術的にもとても安定していて安心感を持って見られたというのもありますが、何より良い演技を届けたいという二人の気持ちがヒシヒシと伝わってくる滑りで、特に坂本龍一さんの音楽を使って“桜”をテーマにしたフリーは、私が日本人だからというのもあるのかもしれませんが、上位のカップルと比べると派手さはないものの、しみじみといいなあと思ってしまう可憐さや清廉さ、繊細さのあるプログラムで、また、結成して3季目とまだ日の浅いカップルではありますが、二人がここまで辿ってきた道のり、物語が感じられる演技で、心に響きました。
 まだまだ村元&リード組の物語は始まったばかりだと思いますし、さらに上のレベルも目指せるカップルだと感じるので、ぜひ次の世界選手権でも力を出し切って笑顔で終わってほしいですね。



 平昌五輪・アイスダンス編は以上です。基本的に目に見てわかる失敗の少ないのがアイスダンスの特徴ですが、さすがにオリンピックとあって経験豊富なカップルでさえも大きなミスをしてしまうという場面がチラホラと散見され、やはり五輪というのは特別なんだなと感じさせられました。その中でもノーミスでショート、フリーを揃えたヴァーチュー&モイア組、パパダキス&シゼロン組というのはトップの中のトップ、まさに別格で、試合とは思えないほどの美しく芸術的な演技を見られたことは至福の時であるとともに、改めてアイスダンスという種目のおもしろさ、魅力を伝えてくれましたね。
 さて、次の記事はいよいよ女子です。しばし記事アップまでお待ちください。


:アイスダンスメダリスト3組の画像、ヴァーチュー&モイア組の画像、パパダキス&シゼロン組の画像、シブタニ&シブタニ組の画像、村元&リード組のSDの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、村元&リード組のFDの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」の平昌五輪特集ページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-27 23:59 | フィギュアスケート(大会関連)