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NHK杯2018・女子&ペア―紀平梨花選手、GPデビュー戦で初優勝

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 グランプリシリーズ18/19第4戦、NHK杯が日本の広島市で行われました。この記事では女子とペアについてお伝えします。
 例年以上のハイレベルな戦いだった女子のチャンピオンとなったのは、この大会がGPデビューの紀平梨花選手。フリーは3アクセル2本を含む高難度のプログラムを完璧に演じ、日本勢初のGPデビュー戦にして優勝の快挙を達成しました。2位は日本のエース、宮原知子選手。こちらもほぼノーミスの演技でファイナルの切符をたぐり寄せました。そして3位は元世界女王、ロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手となっています。
 ペアはロシアのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組が制し、GP2連勝でファイナル進出を決めました。

ISU GP NHK Trophy 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女王となったのは今季シニアデビュー、日本の紀平梨花選手です!

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 SPは「月の光」。冒頭は代名詞の大技3アクセル、しかしいつもよりスピードや高さが足りず回転不足で転倒します。直後の3フリップ+3トゥループはクリーンに着氷。さらに後半の3ルッツも鮮やかに決め、ステップシークエンスやスピンでも目立った取りこぼしなく巻き返しますが、フィニッシュした紀平選手は笑みを浮かべながらも悔しそうに顔をしかめました。得点は69.59点で5位につけます。

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 フリーは「Beautiful Storm」。冒頭は3アクセルからのコンビネーションジャンプ、ファーストジャンプの3アクセルをしっかり跳び切ると、続いて3トゥループに繋げ、クリーンに成功させます。さらに単独の3アクセルを続け、こちらも完璧な跳躍と着氷で成功。次いで3ループも難なく下ります。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、3+2を決めると、3フリップ、レイバックスピンを挟んで、3+2+2、そして一番最後のエレメンツとして残した3サルコウも軽やかに着氷。演技を終えた紀平選手はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はパーソナルベストの154.72点でフリー1位、トータルでは224.31点とこちらももちろん自己ベストとなり、SP5位からの逆転優勝を果たしました。
 GPデビュー戦にしてあまりにも衝撃的なジャンプと演技を世界に知らしめた紀平選手。GPデビュー戦での優勝は男女通じて日本勢としては初めての快挙となりますし、スコアに関しても、トータルスコア、フリースコアともに今季世界2位の高得点となります。フリーの驚異的な演技によって世界に一躍その名をとどろかせた紀平選手ですが、SPは少し3アクセルの踏み切りのタイミングが早くなっていたそうで、回転不足で転倒。しかしフリーではきっちり修正し、見事に2本ともクリーンに成功させました。しかもただ着氷するだけではなく余裕を持って下りているというのが素晴らしいところで、男子選手でもあんなに美しく3アクセルを跳べる人というのは稀有なのではないでしょうか。女子選手にとって3アクセルというのは諸刃の剣でもあると思ってきましたが、彼女の3アクセルを見る限り、そんな不安定さや危うさは全くなく、まるで何でもないことのようにサラッと跳べていて、それだけ紀平選手の身体能力が高いということなのでしょう。また、ショートからフリーに向けて一日で完璧に修正したように、基本的な3アクセルの跳び方が体に染み込んでいて、ミスがあったとしても短時間で修正できるくらい完全に自分のものにしているんだなというのが改めて感じられ、感嘆させられました。もちろん、3アクセル以外のジャンプ、スピン、ステップ、つなぎと、演技全体の質も高く、全ての面において世界トップレベルで戦える選手であることを今回証明しました。今後さらにプログラムが磨かれていくことで、ますます進化していくであろうことを思うと、今から楽しみでなりません。
 紀平選手の次戦はGP最終戦のフランス大会。前世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手と相対することになりますが、今の紀平選手なら充分に勝てると思いますので、気負いすぎずに、今大会のようにのびのびと滑ってほしいと思います。NHK杯優勝、おめでとうございました。


 銀メダリストとなったのは世界選手権2018銅メダル、日本の宮原知子選手です。

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 SP冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って着氷すると、次いで得意の2アクセルも問題なし。後半の3ループも軽やかに下り、終盤のステップシークエンス、レイバックスピンではジャッジから軒並み加点4~5の高評価を引き出し、演技を終えた宮原選手は満面に笑みを浮かべました。得点はパーソナルベストとなる76.08点で2位と好発進しました。

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 フリーはまず3サルコウをきっちり下りると、続いて3ルッツ+3トゥループも成功。コンビネーションスピンを挟んで3ループも難なく決めます。そして後半、まず単独の3ルッツを決めると、2アクセル+3トゥループをクリーンに着氷させたかに見えましたが、2アクセルがアンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。終盤に3+2+2も最後の2ループが同じくアンダーローテーションとされます。しかし、滑りの勢いは衰えず、最後の2アクセルも問題なくクリアし、いつもどおりの安定感を発揮しました。得点は143.39点でフリー2位、総合2位で銀メダルを獲得しました。
 2位と好発進したショートは、宮原選手自身が「驚いた」と話したくらい、最初の3+3が完璧に決まり、そこから波に乗ってジャンプもスピンもスケーティングも、全てがパーフェクトにハマりました。「小雀に捧げる歌」の音楽表現としても、これぞエレガンスの極みと言いたくなるような、優雅な演技とはどういうものであるのか、そのお手本といっても過言ではない美しい演技で、うっとりさせられましたね。フリーも冒頭からフィナーレまで流れを途切れさせることなく、“ミス・パーフェクト”の名にふさわしい揺るぎない演技を披露しました。が、思ったほどスコアは伸びず、フリーのシーズンベストを更新することはできませんでした。その要因となったのが、ルッツのアテンション(踏み切りのエッジの不正確さ)と2つのアンダーローテーションなのですが、前者に関しては、宮原選手がルッツで踏み切りのエッジの甘さを指摘されるというのはほとんど見たことがなかったので驚きましたが、ルッツを得意としている選手なのであまり気にするところではないでしょう。一方、後者は長年課題としている回転不足を再び取られたということになりますが、今までたびたび見られた連続ジャンプの2つ目の3トゥループの回転不足とは少し質が違うもので、得意の2アクセルと3連続ジャンプの最後の2回転なので、こちらもそんなに深刻にとらえることではないのかなという気もします。基本的には今季の宮原選手のジャンプは確実に昨季より質が良くなっていると思いますし、ただ、その時の精神状態によって多少動きが硬くなってしまう場合もあるでしょうから、できるだけ回転不足にはとらわれず、やはりのびのびと滑ることが結果的にジャンプの質向上にも繋がっていくんじゃないかなと感じますね。
 スケートアメリカ優勝&NHK杯2位の結果によって、4年連続でのファイナル進出を決めた宮原選手。ファイナルでも納得のいく演技ができるよう祈っています。


 3位はロシアのベテラン、エリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手です。

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 ショート冒頭は大技3アクセル、これを完璧に決め2.06点の加点を得ると、続く3トゥループ+3トゥループも軽快に成功。後半の得意の3ルッツも余裕のある跳躍と着氷で、フィニッシュしたトゥクタミシェワ選手は破顔しました。得点はシーズンベストとなる76.17点でトップに立ちました。
 フリーもまずは3アクセルから、着氷でオーバーターンが入ったものの回転に問題はなく、最小限の減点にとどめます。続いて3ルッツ+3トゥループ、3ルッツと鮮やかに成功。後半に入って2アクセル+3トゥループを決めると、3ループ、3サルコウと中盤のジャンプも次々着氷。最後の2アクセルからの3連続ジャンプも問題なく下り、ショートに続き演技後は笑顔を見せました。得点はパーソナルベストの142.85点でフリー3位、総合3位と順位は落としたものの、しっかり表彰台をキープしました。
 2週間前のスケートカナダで3アクセルを決め、復活優勝を果たしたトゥクタミシェワ選手。今大会もその好調は維持されていて、順位としては3位でしたが、スコアはスケートカナダより上昇、演技内容もさらに良いものになっていましたね。何が彼女を変えたのかはわかりませんが、今季のトゥクタミシェワ選手の演技、演技以外のところでの表情を見ていても、周りのことに左右されない余裕と自信が満ち溢れているのを感じます。普段の練習から充実しているからこそいざ試合となっても落ち着いていられるのだと思いますが、そうは言っても試合というのは緊張するでしょうから、経験と年齢を重ねたからこそ、あれだけの精神的な余裕を持っていられるのだろうと想像します。そういった姿からは、ほかのロシアの若手選手にはない空気感を感じられて、以前よりもいっそう魅力的なスケーターになったなと感慨深く思いますね。
 今大会の結果により4年ぶりのファイナルの切符を手中に収めたトゥクタミシェワ選手。4年前は優勝という最高の結果を得て、さらにシーズン後半に向かって加速していった印象がありますが、今年のファイナルはどうなるのか、楽しみです。


 4位だったのは日本の三原舞依選手です。

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 SPは「It's Magic 映画『洋上のロマンス』より」。冒頭は3ルッツ+3トゥループ、完璧に成功させたかに見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーションの判定になります。次いで2アクセル、そして後半の3フリップはクリーンに着氷。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と質の高いエレメンツを揃え、演技を終えた三原選手はガッツポーズで達成感を表しました。得点は70.38点で3位と好位置につけます。

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 フリーは昨季と同じ「ガブリエルのオーボエ 映画『ミッション』より」。冒頭はショートで回転不足を取られた3ルッツ+3トゥループ、しっかり跳び切りましたが再び回転不足となります。コレオシークエンスを挟んで2アクセルと3ループは難なく成功。後半に入り3フリップを下り、続いて2アクセル+3トゥループでしたが、3トゥループが2回転になるミス。その後は3+2+2、3サルコウとミスを引きずることなく演じ切り、133.82点でフリー5位、総合4位に入りました。
 細かなミスはあったとはいえ、三原選手らしいのびやかでなめらかな滑り、軽やかなジャンプは発揮されていて、隅から隅まで納得とはいかないでしょうが、GP初戦としてさまざまな収穫のある演技と言えるのではないでしょうか。一方、課題としてはまずは3+3の回転不足ですね。回転不足と言ってもほとんど見た目にはわからないくらいきれいに着氷しているのですが、以前はもっと高い確率で成功させていたことを考えると、今季からのアンダーローテーションの基準の厳格化が影響しているのかなという気もします。これを回り切ったと認められるのとそうでないのとでは点数がかなり違ってきてしまうのが今季からのルールなので、喫緊の課題としてできるだけ早い修正が必要ですね。また、演技全体に関しては、三原選手自身もおっしゃっていたように、少し力強さが足りないかなと感じたので、元々柔らかい表現が持ち味のスケーターではありますが、よりパワフルさもあるといいなと思います。フリーは特にそういった壮大さが求められる音楽でもあると思うので、次戦でそのあたりの改善にも期待したいですね。
 三原選手の次戦はフランス大会。今度はフリー後も満面の笑みが見られることを願っています。


 5位はアメリカの実力者、マライア・ベル選手です。

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 SP冒頭は得意の2アクセルから、これを余裕を持って決めますが、次いで得点源の3ルッツ+3トゥループはセカンドジャンプがアンダーローテーションになり転倒。後半の3フリップはクリーンに成功させ、特にスピンでは軒並み高い加点を積み重ねましたが、ジャンプの転倒が響き、62.97点で7位にとどまります。
 フリーはまず2アクセル+3トゥループを完璧に決めて1.26点の加点を得ると、次の3ループも決め好スタートを切ります。3+2も下りて中盤、単独の2アクセルも難なくクリア。3ルッツからの3連続ジャンプもスムーズな流れで着氷。最後は単独の3フリップ、3ルッツとしっかり下り、柔軟性を活かしたレイバックスピンで演技を締めくくったベル選手は、大きなガッツポーズで歓喜を爆発させました。得点は自己ベストの135.99点でフリー4位、総合4位と大きく順位を上げました。
 ショートは転倒があって出遅れたものの、フリーはまさに会心の出来で久しぶりにベストを出し切れた演技になったのではないでしょうか。今シーズンのベル選手は9月のネーベルホルン杯ではSP70点台でパーソナルベスト、GP初戦のスケートカナダでは国際大会において2季ぶりにトータル190点台をマーク、そして今大会はトータルでのパーソナルベスト更新と、まだ表彰台には立てていないのですが、安定してハイスコアをマークし調子の良さをうかがわせています。演技自体からも充実感が滲み出ていて、今大会のショートも前半に転倒があり、実際は心中穏やかではなかったと思うのですが、そうした動揺を感じさせない後半の滑りになっていて、こういった部分からはベル選手の成長を感じましたね。
 細かなところでの改善部分というのはまだあると思いますが、それらが修正されればさらにスコアアップも望めるでしょうし、世界選手権の代表選考会である全米選手権に向けて着実に前進していけるのではないでしょうか。ベル選手は12月上旬のザグレブで行われるゴールデンスピンにもエントリーしており、この大会を経て全米に臨むことになると思いますが、ぜひ好調をキープして頑張ってほしいですね。


 6位は韓国の新星、イム・ウンス選手です。

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 SPは「映画『ある日どこかで』より」。まずは3ルッツ+3トゥループ、ルッツにアテンションがついたもののクリーンに跳び切り1点近い加点を得ます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、3フリップと2アクセルも安定して成功。終盤のスピンでも目立った取りこぼしなくこなし、自己ベストの69.78点で4位と好位置につけます。
 フリーは「映画『シカゴ』より」。まずは得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、3ルッツが若干こらえ気味になったため単独にします。次いで3ループは問題なく成功。続いて3サルコウでしたが、アンダーローテーションで転倒します。後半に入り再び3ルッツ+3トゥループに挑みましたが、着氷が乱れます。その後は2アクセル、3+2+2、2アクセル+2トゥループと次々ジャンプを決めましたが、演技を終えたイム選手は残念そうに肩を落としました。それでも得点は自己ベストの126.53点でフリー6位、総合6位で初めてのGPを終えました。
 今大会がGPデビューとなった昨季の世界ジュニア5位のイム選手。ショートは最高の出来で4位と好発進しましたが、フリーは直前の6分間練習で三原選手とぶつかる場面があり、幸い大きな怪我には繋がらなかったものの、その影響か演技は少し元気さに欠けるものとなりました。ただ、その中でも才能の片鱗は垣間見えて、特に表現面では15歳と思えない妖艶さ、艶やかさを感じさせて、どこか同国の大先輩であるキム・ヨナさんを思わせるスケーターだなと感じました。もちろん技術面も確実性があって、どのジャンプにおいても高い加点が取れる強みがあると思うのですが、今回のフリーの後半のように疲れてくるとクオリティーが落ちるかなという気もしたので、そのあたりは課題となってくるでしょうね。
 次戦は2週連続となるロステレコム杯。調整する時間があまりないので大変でしょうが、今度は笑顔で終われる演技ができるといいですね。



 ここからはペアです。

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 金メダルを獲得したのはロシアのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組です。SPは冒頭の3ツイストを完璧に決めると、続くソロジャンプの3トゥループもしっかり着氷。スロー3ループは余裕のある回転と着氷で高い加点を獲得。デススパイラルがレベル1となる珍しい取りこぼしこそあったものの、シーズンベストで首位発進します。フリーもまずは3ツイスト、確実に成功させると、3+2+2もクリーンに着氷。次いで3サルコウは両者のタイミングが大きくずれたため加点はあまり伸ばせませんでしたが、その後はほとんどのエレメンツを完璧に、高いレベルで揃え、自己ベストの140.66点でフリーも1位、総合でも自己ベストで1位となり、完全優勝でGP2勝目を上げました。
 前週のヘルシンキ大会でGP初優勝したザビアコ&エンベルト組。その勢いのままにNHK杯も他のペアを寄せつけることなく2個目の金メダルを手にし、2度目のファイナル進出を決めました。彼らの演技を見ていると本当に隙がないなという印象で、どこか脆さも感じさせた昨季までとは明らかに違い、自信に満ち溢れているさまが伝わってきます。それでもまだまだ伸びしろのあるペアと言えますので、ファイナルでどんな演技を見せてくれるのか、期待したいですね。NHK杯優勝、おめでとうございました。

 2位は中国の彭程(ペン・チェン)&金楊(ジン・ヤン)組です。ショートは冒頭の3トゥループを2人のタイミングもピッタリに決めると、続く3ツイストも成功。スリー3ループも余裕を持って下り、70.66点で2位と好位置につけます。フリーはまず3サルコウからでしたが、女性が2サルコウになるミス。ですが、直後の3+2は決めます。その後は全てのエレメンツをクリーンにこなし、最後のリフト以外は全てレベル4という精度の高さで、パーソナルベストの136.58点をマークし2位、総合でも2位に入り、こちらもファイナルの切符を獲得しました。
 細かなミスはいくつかありましたが、昨季のシーズン前半と比べると、ずいぶん安定感が増したなという印象を受けます。フリーの演技構成点では1位のザビアコ&エンベルト組にも迫っていて、シーズン後半でさらに飛躍する可能性を予感させるシーズン前半になっていますね。ファイナルでも実力を出し切れれば、初めてのメダルも見えてくるのではないでしょうか。

 3位は全米王者のアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組。SPは「Castle」。冒頭の3ツイストを抜群の高さで決め、2.36点という極めて高い加点を稼ぎます。サイドバイサイドの3サルコウは転倒しましたが、スロー3フリップはクリーンに着氷し、リフトやステップシークエンスでも高い加点を獲得。64.75点で4位につけます。フリーは「Wicked Game」。まずは代名詞の3ツイストをショート同様にパーフェクトに決め、2.44点の加点を得ますが、続く2つのソロジャンプでは失敗が重なります。しかしその後は立て直して全要素がレベル4という高い質でまとめ上げ、125.74点でフリー3位、総合3位となり、3年ぶりにGPの表彰台に立ちました。
 3ツイスト、リフトなどで完成度の高さを示した一方、ソロジャンプでのミスが相次ぎ、明確に課題が表れた形となったクニーリム夫妻。逆に言えば、ソロジャンプさえ整えばほかに不安点のないペアでもあり、今後この課題をどう改善していくかに注目ですね。


 全日本王者の須崎海羽&木原龍一組は8位となりました。

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 SPはサイドバイサイドの3トゥループから、これをタイミングも合わせて決めると、3ツイストはレベル1となったものの、スロー3サルコウは何とかこらえて最小限のミスに抑えます。得点はシーズンベストの49.93点で8位につけます。
 フリーはまず3ツイストから、キャッチの問題で若干減点を受けたものの、レベル2とします。次いでサイドバイサイドの3ルッツに挑みましたが、女性のジャンプがダウングレードで両足着氷に。続く3+2+2は2人のタイミングがずれて減点を受けますが大きなミスなく成功。しかし直後のスロー3フリップ、後半のスロー3サルコウは2つとも転倒。そのほかのエレメンツでは全て加点を得ましたが、93.76点でフリーも8位、総合8位と順位を上げることは叶いませんでした。
 前週のヘルシンキ大会に続き2種連続出場となった須崎&木原組。このこと自体も彼らにとっては初めての経験だったわけですが、ヘルシンキから短期間で課題を修正するのはなかなか難しく、ショート、フリーともに満足のいく演技はできなかったのかなと思います。その中でもショートではレベル1だった3ツイストがフリーではレベル2になったり、リフトの安定感だったり、確実に成長がうかがえる内容でもあったので、全日本選手権に向けて、納得のいく練習を積み重ねて最高の演技ができるように頑張ってほしいと思います。



 記念すべき40回目のNHK杯、女子&ペア編はここまで。女子はほかのGPと比較しても非常にハイレベルな戦いとなりましたが、それが実現したのは2人もの3アクセルジャンパー―紀平、トゥクタミシェワ両選手―の存在と、“ミス・パーフェクト”、宮原選手の本領発揮があったゆえですね。
 男子&アイスダンス編に続きます。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、デイリースポーツのニュースサイトが2018年11月11日に配信した記事「全日本女王の宮原知子「負けは負け。もっと強くならないと」NHK杯2位で決意新た」から、紀平選手の画像、イム選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手のSPの画像は、毎日新聞のニュースサイトが2018年11月9日に配信した写真特集「フィギュアスケート NHK杯開幕 宮原は2位 女子SP」から、宮原選手のフリーの画像は、毎日新聞のニュースサイトが2018年11月10日に配信した写真特集「フィギュア NHK杯 初優勝!紀平のフリーやアイスダンス、ペア」から、トゥクタミシェワ選手の画像は、読売新聞のニュースサイトが2018年11月9日に配信した記事「宇野昌磨SP首位、宮原知子2位発進…NHK杯」から、三原選手のSPの画像は、スポーツニッポンのニュースサイト「スポニチアネックス」が2018年11月9日に配信した記事「三原舞依は70・38点で3位「最後まで滑り切れて良かった」」から、三原選手のフリーの画像は、時事通信のニュースサイト「時事ドットコム」が2018年11月10日に配信した写真記事「三原のフリー=NHK杯フィギュア」から、ベル選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、ペアのメダリスト3組の画像は、アメリカの新聞「Watertown Daily Times」のニュースサイトが2018年11月10日に配信した記事「Japanese teenager Kihira wins NHK Trophy on Grand Prix debut」から、須崎&木原組のSPの画像は、「時事ドットコム」が2018年11月9日に配信した写真記事「須崎、木原組の演技=フィギュア」から、須崎&木原組のフリーの画像は「時事ドットコム」が2018年11月10日に配信した写真記事「須崎、木原組=NHK杯フィギュア」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-11-13 20:19 | フィギュアスケート(大会関連)