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全日本選手権2018・男子&ペア―宇野昌磨選手、貫録の3連覇(後編)

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 全日本選手権2018、男子&ペア編の後編です。なお、前編はこちらのリンクからご覧ください。

第87回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子の6位となったのは中学3年生の鍵山優真選手です。

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 SPは「映画『マスク』より」。冒頭は得点源の3アクセルをきっちり決めると、次いで3フリップも成功。後半に3+3のコンビネーションを入れ、ファーストジャンプのルッツの踏み切りが不正確だったため加点はあまり伸びなかったものの成功。スピンは全てレベル4とそつのなさを見せ、74.51点で6位に食い込み、中学生にしてフリー最終グループ入りを決めます。

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 フリーは「テレビドラマ『龍馬伝』より」。まずは3アクセルからの連続ジャンプ、これをしっかり下りると、次ぐ2本目の3アクセルは着氷で氷に手をついたものの何とかこらえ最小限のミスにとどめます。次いで3フリップ、3ループと単独のジャンプをクリーンに成功。後半は3+3が若干着氷を乱しますが、3ルッツ、最後の2アクセル+1オイラー+3サルコウはスムーズに決め、スピンはショート同様に全てレベル4を揃え、141.85点でフリーも6位、総合6位と初出場にして入賞を果たしました。
 今季ジュニアの国際大会デビューを迎え、さっそくJGPのアルメニア大会で銀メダルを獲得するなど、大いなる可能性を感じさせてくれた鍵山選手。今大会もその存在感は光っていて、4回転こそまだ持っていないものの、確実性の高いジャンプとスピン、そして何より振り付けをこなすのではなく、体が自然に動いているかのような身のこなしのナチュラルさはとても魅力的で、紛れもなく類い稀な才能の持ち主であることを感じさせられました。もちろんまだまだ選手としてのキャリアはスタートしたばかりですから、これからどんなふうに成長していくかは未知数ですが、ぜひ楽しみにしたいですね。


 7位は全日本ジュニア王者の壷井達也選手です。

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 SPは「Your Song」。冒頭は3アクセル、しかし着氷でステップアウトしてしまいます。直後の3フリップはクリーンに成功。後半の3+3はファーストジャンプのルッツの踏み切りのエッジが不正確と判定され、わずかに減点。スピンでも取りこぼしがあり69.95点で11位となります。

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 フリーは「交響曲第9番“新世界より”」。まずはショート同様に3アクセル、回転は充分でしたが惜しくも転倒します。ですが、直後の3アクセル+2トゥループは完璧に成功。さらに3フリップ、3ループと相次いで下ります。後半は最初の3ルッツを決めると、3+3、2アクセル+1オイラー+3サルコウも鮮やかに成功。スピンは全てレベル4ときっちりまとめ、144.92点でフリー5位、総合7位と順位を上げました。
 全日本ジュニアで優勝し、世界ジュニア選手権代表に内定している壷井選手。そういった意味でほかのジュニア勢よりは重圧から解放された心持ちで臨めたのではないかと想像しますが、壷井選手らしいのびやかなスケーティングと、そこから流れの中で繰り出される軽やかなジャンプが存分に発揮されていて良かったですね。
 今季はJGPに派遣されず悔しい思いもしたでしょうから、全日本ジュニア王者として自信を持って、世界ジュニアでも堂々とのびのびと演技してほしいと思います。


 8位は全日本ジュニア4位の木科雄登選手です。

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 SPは「Ameksa」。冒頭は3アクセル、これをきれいに成功させて好スタートを切ると、続く3フリップも問題なく着氷したものの、踏み切りのエッジが不正確となり若干の減点に。後半の3+3はジャンプとジャンプのあいだにターンが入ったため、こちらも減点。しかし大崩れすることなく演技をまとめ、72.96点で8位につけました。

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 フリーは「映画『アンタッチャブル』より」。まずは得点源の3アクセル、若干こらえながらも何とか成功させます。続く2本目の3アクセルは転倒で、コンビネーションにならず。次いで3ルッツはクリーンに着氷させます。後半は最初の3+3を下りると、2アクセル+1オイラー+3サルコウも成功。3フリップ、3+2も下り、141.39点でフリー7位、総合8位と入賞しました。
 今季JGPで表彰台に立ち、飛躍を遂げた木科選手。今大会もミスはありながらもミスを引きずらない強さを見せ、また、表現面でも端正さもありつつも個性的な表情も垣間見せていて、今後が楽しみなスケーターだなと感じました。現在木科選手は高校2年生ですので、ここからさらにステップアップするためにはやはり4回転の習得が必須になってくるのかなと思うので、そのあたりの進化に注目していきたいですね。



 ここからはペアです。

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 ペアは2組が参加した中で、1組がフリーを棄権し、最終的には1組のみという少しさびしい試合内容となりました。その中で昨年に続き2連覇を達成したのが、平昌五輪にも出場した須崎海羽&木原龍一組です。

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 ショートは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツを成功させると、3ツイストはレベル1で減点を受けたものの、リフト、スロー3サルコウも決め、スピンでわずかにミスを犯しましたが、その後は大きなミスなく滑り切り、非公式ながら自己ベストの59.03点で首位発進します。フリー冒頭は3ツイスト、減点となりますがレベル2でまとめます。続くソロジャンプの3ルッツは下りますが、次いで3トゥループで転倒してしまいコンビネーションにできず。さらに直後のスロー3フリップも転倒となります。後半のスロー3サルコウでも転倒があり、演技を終えた二人は悔しさを滲ませました。
 今季はオフシーズンの木原選手の肩の怪我もあり、ここまでなかなか実力を発揮し切れていない感はありますが、ショート、フリーともにサイドバイサイドの3ルッツが入ったことは大きな収穫ではないかなと思います。あとは得点源となる3ツイストとスロージャンプがより安定するともっともっとスコアもアップしてくると思いますので、次戦に向けて充実した調整、練習ができるといいなと思いますね。全日本優勝、おめでとうございました。



 さて、ここからは男子とペアの主要国際大会派遣選手について、ざっくりとまとめていきます(敬称略)。その前に、代表選考基準をおさらいです。


《世界選手権代表選考基準(男子シングル)》

① 全日本選手権大会優勝者を選考する。
② 以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して 1 名選考する。
 A) 全日本選手権大会 2 位、3 位
 B) ISU グランプリファイナル出場者上位 2 名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 3 名
③ 以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、① ② で選考された選手を含め 3 名に達するまで選考する。
 A) ② の A) から C) に該当し、② の選考から漏れた選手
 B) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 3 名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3 名


《世界選手権代表選考基準(ペア)》

以下のいずれかを満たす者から国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
 A) 全日本選手権大会優勝組
 B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3組
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3組
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3組


《四大陸選手権代表選考基準(男子シングル)》

全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本選手権大会 10 位以内
 B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 6 名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 6 名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 6 名


《世界ジュニア選手権代表選考基準(男子シングル)》

① 全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。
② ジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、① で選考された選手を含め2名に達するまで選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権大会 2 位、3 位の選手
 B) ISU ジュニアグランプリファイナル出場者
 C) 全日本選手権大会参加者のうち上位 3 名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 3 名
 E) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3 名



《世界選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、羽生結弦
ペア:須崎海羽&木原龍一組


《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、友野一希
ペア:須崎海羽&木原龍一組


《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:壷井達也、島田高志郎
ペア:三浦璃来&市橋翔哉組


《冬季ユニバーシアード代表》

男子シングル:友野一希、中村優、佐藤洸彬




 まずは世界選手権代表について。
 男子は3枠ですが、まずは全日本を制した宇野選手が問答無用で1人目として選出です。
 そして2人目。各選考基準において「上位」と書かれている項目に関しては、対象年齢に達していない選手や対象資格を持っていない選手、また、選考済みの選手を除外した上で繰り上げて対象とすると説明書きがなされているので、①ですでに選考済みの宇野選手を除き、さらには自ら辞退した高橋大輔選手を除いて対象になる選手を挙げていくと、Aは田中選手、Bは該当者なし、Cは羽生選手、田中選手、友野選手となります。ということで、2項目に該当する田中選手が必然的に2人目として選出という感じでしょうか。
 次いで3人目です。③のAに当てはまるのは羽生選手と友野選手、Bは羽生選手、須本光希選手、山本草太選手、Cは羽生選手、友野選手、島田選手という顔ぶれです。3項目全てに該当するのは羽生選手のみで、やはり羽生選手が圧倒的に3人目として相応しいということになりますが、本来は代表に選ばれるためには最終選考会である全日本への参加は必須です。しかし、過去に世界選手権3位以内になったことがある選手が、怪我などのやむをえない理由で不参加となった場合、怪我などの事情が発生する前のその選手の成績を選考基準に照らし合わせて選考することがあるとしており、そうした救済措置で昨季、一昨季同様、羽生選手が3人目として選出となったわけですね。
 一方、ペアは4項目に当てはまるペアの中から国際的な競技力を考慮して、総合的に選考されることとなっており、必然的にエースの須崎&木原組が選出となりました。


 四大陸選手権は世界選手権より選考基準は緩くなっていますが、世界選手権に出場する宇野選手、田中選手ともに四大陸へも出場意思を示したということで選出。そして、全日本4位で惜しくも世界への切符を逃した友野選手が、順当に3人目として選出されました。
 ペアは国際的な競技力を考慮し、総合的に判断するという文言のみで、こちらも世界選手権代表の須崎&木原組が同様に選出となりました。


 世界ジュニアの男子は2枠。ということで、1人目は全日本ジュニア金メダルの壷井選手がすでに決定となっています。
 ということで、全日本の結果を受けて選考されるのは1人のみとなるわけですが、その②のAに該当するのは佐藤駿選手と島田選手、Bは島田選手、Cは島田選手、鍵山選手、木科選手、Dは須本選手、島田選手、鍵山選手、Eは島田選手、須本選手、鍵山選手となります。これら全5項目に唯一該当するのは島田選手のみということで、やはり圧倒的に島田選手が優位、世界ジュニア代表2人目として最も相応しい選手と言えますね。
 他方、ペアはシニア同様、国際的な競技力を考慮し、総合的に判断するとなっていますが、今季は全日本ジュニアでペアが開催されなかったので全日本王者が存在せず、その中でシニアの全日本に参加したもののフリーを棄権した三浦&市橋組が、3年連続で世界ジュニア代表に選ばれました。三浦&市橋組は今季のJGPでも最高4位と健闘していますし、国内では西日本ジュニア選手権で優勝しており、このペア以外には派遣されるべきペアはいないと言えますね。


 そして、今季は3月に学生のオリンピックと呼ばれるユニバーシアードの冬季大会が開催されるということで、その代表選手もともに発表。ペアの派遣はありませんが、男子は3選手が選ばれました。ユニバーシアードは17歳以上23歳未満の大学生もしくは大学院生が対象で、派遣希望がある選手、すでに候補選手の手続きを終えている選手といった条件を満たした中から選出。ということで、それぞれ大学生で派遣希望を示し、全日本の上位に入った友野選手、中村選手、佐藤選手が派遣される運びとなったものと思われます。



 全日本2018、男子&ペアの記事は以上です。男子は入賞8選手中、4選手がジュニアという2004年以来のジュニア勢躍進の大会となりました。ジュニアの選手がこれだけ活躍するということは将来の日本男子フィギュア界のことを思うと喜ばしいことですし、どんどん強い先輩たちを追いかけ、追いつき、追い越していって、層が厚くなっていくといいなと思いますね。
 さて、全日本2018の記事はようやくでこれで全て終了です。年をまたいでしまって申し訳ないですが、これからもお暇な時にでものぞいていただけると嬉しく思います。では。


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by hitsujigusa | 2019-01-07 17:34 | フィギュアスケート(大会関連)