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 グランプリファイナル2014、前記事の(前編)に引き続き、男子フリー&ペア&アイスダンスについて書いていきたいと思います。

ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2014/15 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 5位は日本の無良崇人選手です。

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 冒頭は前日転倒した4トゥループ、これをしっかり降りると3トゥループを付けて確実に連続ジャンプにし、次の単独の4トゥループも無良選手らしい豪快なジャンプを決めます。続く3アクセルはさらに完璧で加点2の高評価。前半は申し分のない滑り出しとなりますが、後半一発目の3ループが珍しくすっぽ抜けて1回転に。次の3アクセル+2トゥループはしっかり成功させますが、その後もミスが出てしまい、フィニッシュした無良選手は複雑そうな表情を浮かべました。得点は157.02点でフリー4位でしたが、ショートから順位を上げることはできず、5位で初のファイナルを終えることとなりました。
 前半の4回転2本、そして代名詞の3アクセル2本は素晴らしく、それだけに3ループ、3サルコウからの3連続ジャンプといった比較的基礎点の低いジャンプでのミスが非常にもったいなかったですね。また、無良選手自身が全体的にスピードが無かったとおっしゃっていたように、無良選手本来の躍動感や生き生きとした感じは薄かったかなと感じました。もっと良い時は男らしい力強さやこちらが気圧されるようなパワフルさに溢れた演技をするので、今回は少し大人しめだったかなと思いますね。
 ですが、得点源となる大技はしっかり成功させて、昨季からの成長を今大会でも充分に見せてくれた無良選手。世界選手権代表が懸かった全日本選手権は身体的にも精神的にもさらにシビアな試合になると思いますが、ファイナルの経験が無良選手にとって大きな強みとなるのではないでしょうか。無良選手らしい演技が見られることを楽しみにしています。


 日本の町田樹選手はSP2位から順位を大きく下げて、6位となりました。

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 冒頭は大技4トゥループでしたが、回転不足で降りてきてしまい転倒となります。さらに2本目の4トゥループもステップアウトで失敗。3アクセルも1回転になってしまうなど、ミスを連鎖させてしまいます。後半に入っても調子を取り戻すことはできず、3ループと3アクセルで転倒するなどミスが相次ぎ、演技を終えた町田選手は呆然とした表情を見せました。得点は128.31点でフリー6位、総合でも6位に留まりました。
 目を疑ってしまうようなミスの連続でまさかの演技でした。4回転のミスはともかく、得意の3アクセルが2本とも決まらなかったり滅多に失敗することのない3ループで転倒したりと、町田選手らしからぬ内容で彼に何が起こったのだろうとさえ思ってしまいました。フリー後のインタビューで町田選手はコンディションは心身ともに良かったと話していて、実際のところどうだったのかは本人しか分からないのですが、ショート前の公式練習に関しては“絶望的なコンディション”だったということもあり、やはり何かしら調整がうまくいっていない部分はあったのかなと想像します。メンタル面ではもう3度目のファイナルで多くの経験を積んでいますし、ファイナルだからという特別な心理状態などはなかったんじゃないかなと思うのですが……。
 ただ、気になったのはいつもの町田選手とは微妙に発言の温度が違ったかなという点で、たとえSPで失敗があったとしても自分を鼓舞するように強気な言葉を発することが町田選手は多かったように思うのですが、今回のSPの後はどことなくいつもより覇気が感じられないなという印象で、コンディションが悪くてもSPで2位になれたということをあまり大きな自信に結びつけられていないような、そんな雰囲気を感じました。そこまで考えるのは私の思い上がりなのかもしれませんが、ちょっとそのあたりで町田選手らしくなさが気になりましたね。
 もちろん精神面とは別に、フリーの「交響曲第9番」があまりにも難度の高いプログラムだからという理由もあると思います。コンディションが万全の状態でも滑り切るのは難しいと町田選手本人がおっしゃっているくらいですし、フリー後のインタビューでも「プログラムの壁に跳ね返された」と言っていて、改めてこれは本当に大変なチャレンジなんだなと思い知らされましたね。素人目に見ていても音楽に遅れずついていくだけで大変そうですし、しかもジャンプとジャンプのあいだにつなぎがたっぷり盛り込まれていて、一つジャンプミスをしてしまうと次のジャンプまでに立て直す余裕もないような密度の濃さなので、ミスが次のミスを呼び込むかのように負のスパイラルに陥ってしまったのかなと思いますね。
 あと、全くの余談なのですが、今回3度目のファイナルでまたもや表彰台に届かなかった町田選手を見て、つくづく町田選手はファイナルとの相性が良くないんだなと考えてしまいました。1度目の時はともかくとして、2度目だった昨年も充分メダルは狙える実力がありましたし、もちろん今年も言わずもがなです。にもかかわらずなかなかメダルに縁がないというのは、こんな安易な言葉で片付けてしまってはいけないとは思うのですが、“相性の悪さ”というワードが頭に浮かんでしまいました。町田選手のみならず、幾度もファイナルには出場しているのにそこでの良いイメージがあまり無い選手というのはいるもので、たとえば安藤美姫さんは世界選手権では2度も優勝しているのに、ファイナルには6度出場して銀メダルを一つ獲得しただけという相性の悪さです。反対にファイナルでの活躍がひときわ目立つ選手もいて、女子では今大会も銅メダルを獲得したアシュリー・ワグナー選手はファイナルでは既にこれで3つ目のメダルですが、その一方で世界選手権ではまだ表彰台経験はありませんし、男子では織田信成さんがファイナルに5度出場して4つのメダルを手にしていますが、世界選手権ではこちらもメダルには手が届きませんでした。なので町田選手も、ファイナルにトラウマがあるわけではないでしょうが、どうも相性的に合わないのかななどということを感じてしまいました。
 話を元に戻しますと、今回のフリー演技は残念でしたが、それだけのリスクをはらみながらも挑戦する町田選手の姿勢が私は好きですし、羽生選手がジャンプの限界に挑戦することでフィギュアスケートの可能性を広げているのだとすれば、町田選手は表現の限界に挑戦することでフィギュアスケートの可能性を広げてくれる存在なのだと言えると思います。この「交響曲第9番」はまさに表現の限界を押し上げる素晴らしいプログラムですし、完成した時には間違いなく後々語り継がれるような傑作になるだろうという形は見えているので、全日本選手権で今回のリベンジを果たせること、そして世界選手権に繋がることを心から願っています。



 さて、ここからはペアについてです。

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 優勝したのはカナダのメーガン・デュアメル、エリック・ラドフォード組です。SPは全てのエレメンツに高い加点が付くほぼノーミスの演技で首位発進すると、フリーはサイドバイサイドの3ルッツでミスがあったものの、大技のスロー4サルコウを成功させるなどハイレベルな演技を見せ、自己ベストを大きく更新する得点をマークし、4度目のファイナルで初の頂点に立ちました。
 すでに世界選手権では2つの銅メダルを獲得しているデュアメル&ラドフォード組ですが、意外なことにGPシリーズでの優勝経験は昨季まで無く、今年のスケートカナダで初めてGPの金メダルを獲得すると、NHK杯でも優勝して2連勝、そして堂々の優勝候補として乗り込んだファイナルで初表彰台が初優勝という素晴らしいシーズンを送っています。これで今季は出場したすべての大会で優勝していることになりますが、この連勝がどこまで続くのか、全試合で優勝となるのか、注目して見ていきたいと思います。GPファイナル優勝、おめでとうございました。
 2位となったのはソチ五輪銀メダリストのロシアのクセニア・ストルボワ、ヒョードル・クリモフ組。SPは完璧に近い内容で僅差の2位につけると、フリーでもほとんどミスのない演技を披露し、GOEでもデュアメル&ラドフォード組以上に加点を稼ぎましたが、サイドバイサイドのコンビネーションジャンプのミスがあり、また、デュアメル&ラドフォード組の方が高難度のジャンプをこなしたということもあって技術点では後塵を拝し、逆転優勝とはなりませんでした。
 ストルボワ&クリモフ組も優勝してもおかしくないくらいのレベルと質の高い演技でしたが、デュアメル&ラドフォード組は何といってもペアでは珍しい3ルッツや4サルコウを取り入れていますから、それを成功させられてしまうと彼らを上回るのは難しいのかなという感じですね。ですが、ストルボワ&クリモフ組も称賛に値する滑りを見せたことに変わりはなく、このあとのシーズンもこの2組がペアフィギュア界を引っ張っていくことになるでしょうし、世界選手権で再び対戦した時はどんな結果になるのか、今から楽しみですね。
 3位は中国の若手ペア、隋文静(スイ・ウェンジン)、韓聰(ハン・コン)組。ショートはサイドバイサイドジャンプでのミスがあったものの、その他では安定してエレメンツをこなし3位発進。しかし、フリーではツイストがレベル2になったり、コンビネーションジャンプのファーストジャンプが1回転になった上に単独ジャンプになったりという大きなミスもあり、フリー順位は5位となりました。が、SPのアドバンテージが活き、4位のペアと3点差ない中でギリギリ表彰台を守り切りました。
 4年前に1度ファイナルに出場している隋&韓組ですが、まだ19歳と22歳と若いペアですから、安定度という点ではこれからなのかなと思います。それでもファイナルに2度出場してその2度ともでメダルを獲得するというのは、上述した町田選手とは逆に相性の良さを感じます。より安定してエレメンツをこなせるようになれば、世界選手権でもおもしろい存在になってくるかもしれませんね。



 ここからはアイスダンス。

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 優勝者はカナダのケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組です。ショート、フリーともにほぼパーフェクトな演技内容で、2位以下を寄せ付けることなく大差をつけての初優勝となりました。こちらもペアのデュアメル&ラドフォード組と同様に4度目のファイナルで初表彰台&初金メダルですが、ここまで出場した全ての大会を制覇していて死角がありませんね。
 また、カナダのカップルのファイナル優勝は13年ぶりとのことでアレっと思ったのですが、あのテッサ・ヴァーチュー、スコット・モイアー組は最高2位で1度もファイナルを制したことはないんですね。世界選手権でもオリンピックでも優勝経験のあるカップルなのでとても驚いたのですが、この5年間ずっとアメリカのメリル・デイヴィス、チャーリー・ホワイト組がファイナルに関しては勝ち続けていて、ヴァーチュー&モイアーという五輪金のカップルでさえファイナルの頂には立てずにいたわけですね。ということで、新たなファイナルのチャンピオンが誕生するのも実に6年ぶりということになります。このあとのシーズンもウィーバー&ポジェ組がどんな活躍を見せてくれるのか期待大ですね。ファイナル優勝、おめでとうございました。
 銀メダルを獲得したのはアメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。ショートでは珍しく転倒する場面があり、また、パターンダンスでレベルを取りこぼす部分もあり、首位のウィーバー&ポジェ組に約6点差をつけられての2位となります。フリーは大きなミスこそありませんでしたがフリー2位、総合でも2位でフィニッシュしました。
 GPシリーズのポイントランキングでは1位でファイナル進出を決めたチョック&ベイツ組ですが、SDでは思いがけないミスもあり出遅れてしまいましたね。ですが、FDではしっかり挽回してチョック&ベイツ組らしさを見せてくれたのではないでしょうか。また、金メダルには届かなかったといってもこれが初めてのファイナルですから、初出場で銀メダルというのは本当に素晴らしい結果だと思います。次戦は全米選手権になるでしょうが、初のアメリカチャンピオンに向け好調なシーズンを過ごしているチョック&ベイツ組、シーズン後半も楽しみにしています。
 3位はフランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組。SDはツイズルでのミスや他のエレメンツでもレベルの取りこぼしがあり予想外の5位発進となりますが、FDでは本来の力を発揮して3位、総合3位に順位を上げました。
 シニア2年目となる今季はGP中国杯でいきなりGP初優勝を遂げると、続く母国のエリック・ボンパール杯でも優勝と、2連勝で初のファイナルに進んだパパダキス&シゼロン組。このファイナルではSDでらしからぬミスもありその点では経験の少なさを露呈してしまいましたが、FDではしっかり立て直しましたね。これでフランスのカップルはファイナルの連続表彰台記録を8年連続に伸ばすこととなり、フランスにおけるアイスダンスのレベルの高さを改めて示しました。パパダキス&シゼロン組がフランス選手権、そして欧州選手権とどこまで飛躍を遂げるのか、要注目ですね。



 これで全てのGPファイナルに関する記事は終了です。
 4種目全体を見渡して見ると、アイスダンス以外の3種目でロシア勢がメダルを獲得していて、始まる前から分かっていたことではありますが改めて強かったなーという印象ですね。
 この大会でメダルを手にした選手たちがこのあとのシーズンも順調に活躍するのか、それとも思いがけないダークホースが出現するのか。シーズン後半に向けて、今からドキドキワクワクします。
 次の大きな大会は全日本選手権ですが、その前にジュニアGPファイナルについての記事もアップしようかなと考えておりますので、しばしお待ちくだされば幸いです。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の8:31に配信した記事「羽生が連覇達成、GPファイナル」から、無良選手の写真、町田選手の写真は、スポーツ情報ウェブサイト「スポーツナビ」から、ペアメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の9:40に配信した記事「デュアメル/ラドフォード組がペア初制覇、GPファイナル」から、アイスダンスメダリスト3組の写真は、AFPBB Newsが2014年12月14日の10:08に配信した記事「ウィーバー/ポジェ組がアイスダンス初優勝、GPファイナル」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2014-12-20 01:11 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)