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 4年に1度の熱い戦いが繰り広げられている平昌五輪。この記事では2月14日と15日にかけて行われたペアの模様をお伝えします。
 類い稀なるハイレベルな試合を制したのは、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。ショート4位からの逆転優勝で、サフチェンコ選手にとっては5度目のオリンピック挑戦にして初めての金メダルとなりました。超僅差で2位だったのは世界チャンピオン、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組、3位は元世界王者、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組となっています。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 五輪王者に輝いたのは世界選手権2017銀メダリスト、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。

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 SP冒頭は得意の3ツイスト、これは完璧な回転とキャッチで全てのジャッジから満点となる加点3を得ます。しかし直後の3サルコウはパンクして2回転に。スロー3フリップはクリーンに成功させ、残りのエレメンツも全てレベル4に加え、高い加点を積み重ねますが、ジャンプミスが響き76.59点で僅差ながら4位にとどまります。
 フリーは冒頭の3ツイストを完璧に決めまたもや加点3を得ると、スロー3フリップも成功。さらに3+2+2も全てのジャンプをしっかり下り、次いで3トゥループも着氷、スロー3サルコウも成功と最高の前半とします。後半は難しいリフト、丁寧なスピンなど全てのエレメンツでレベル4に加え、加点1以上の高い評価。しっとりとしながらもダイナミックな音楽を全身で演じ切り、フィニッシュしたサフチェンコ&マッソ組は感極まった表情を見せました。得点は世界最高得点となる159.31点でフリー1位、逆転で総合1位となり悲願の金メダルを獲得しました。
 SPはソロジャンプでミスが出て上位3組を僅差で追いかける形となり、フリーは最終グループの1番滑走で159点というハイスコアを叩き出し、後続のペアたちにプレッシャーをかけましたね。すでにロビン・ゾルコビーさんとのペアでバンクーバー五輪、ソチ五輪で銅メダルを獲得しているサフチェンコ選手にとっては、金以外のメダルでは意味がないという心情だったと思いますし、僅差とはいえ4位という微妙な位置でフリーを迎えなければいけない状況は、よく言われる「追いかける方が楽」という言葉には全く当てはまらない、大いにプレッシャーのかかるシチュエーションだったと思います。その中でもあの完全無欠の演技ができたのは、サフチェンコ選手にとって初出場だったソルトレイク五輪から数えて16年越しの金メダルへの並々ならぬ想いが、不安も緊張もはねのけたのでしょう。
 そして、その大ベテランの“レジェンド”にしっかりとついていったマッソ選手の努力も尋常ではなかったことと思います。ショートの後は、「アリオナにもう一度銅メダルを持って帰らせるわけにはいかない」と思ったそうで、この二人だからこそ取れた金メダルなのでしょうね。思えばこのペアは14/15シーズンに結成されたばかりで、試合に出始めてからはまだ3シーズンしか経っていないわけですが、何かもっとずっと長い時間、この二人の演技を見続けてきたような気さえしますし、それくらいペアとしてのユニゾン、コンビネーションは結成から数年というのが信じられないほど、素晴らしいペアだなと思いますね。
 五輪の金メダルという最大の目標を達成した二人が、今後どういう道を歩むのかはわかりませんが、間違いなくフィギュアスケート史に残る歴史的な演技だったと思います。平昌五輪優勝、おめでとうございました。


 2位は世界選手権2017金メダリスト、中国の隋文静&韓聰組です。

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 SPはまずソロジャンプの3トゥループから、これを二人ともクリーンに着氷すると、スロー3フリップも成功。さらに3ツイスト、スピン、ステップシークエンスなど、全ての要素をパーフェクトにこなし、自己ベストとなる82.39点で圧巻の首位発進します。
 フリーは代名詞の4ツイストに挑み、レベルは3でしたが1点以上の加点を獲得。しかし3+2+2の3連続ジャンプは男性のセカンドジャンプが1回転になってしまいます。続いて3サルコウは女性の着氷がステップアウトと、ソロジャンプで細かなミスが重なります。しかしその後はクリーンなエレメンツを揃え、特に2つのスロージャンプは抜群の高さとランディングの美しさでどちらも加点2.1点を獲得するなど本領を発揮。演技を終えた二人は満足そうな笑みを浮かべました。しかし153.08点でフリー3位、トータルでは自己ベストでしたがサフチェンコ&マッソ組に0.43点及ばず、超僅差で惜しくも2位となりました。
 たった0.43点で金メダルに届かなかった隋&韓組。ソロジャンプのミスであったりスピンでのレベルの取りこぼしであったり、本当にちょっとしたことなのですが、1位と2位という大きな差に繋がってしまいましたね。今季は世界チャンピオンとしてシーズンを迎え、フリーの世界最高得点(当時)を更新するなど順調に歩みを進めていただけに、ここにきて小さな綻びというのが出てしまったのは惜しまれますが、演技内容としてはサフチェンコ&マッソ組にも負けず劣らずの迫力に満ちたものでしたので、自分たちの演技を誇りに思ってほしいですね。
 今回はあと一歩のところで頂点を逃しましたが、次の五輪は母国開催の北京。まだ若い二人ですから、4年後には主役として表彰台の一番高いところで輝いてほしいと思います。


 3位はカナダのベテラン、メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。

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 ショート冒頭の3ツイストはレベル3でしっかりまとめ、続いてこのペアの代名詞でもあるソロジャンプの3ルッツは二人のタイミングはずれたものの大きなミスなく着氷。スロー3ルッツ始め、残りのエレメンツも安定感たっぷりにクリアし、自己ベストに迫る76.82点で3位と好位置につけます。
 フリーもまずは3ツイストをノーミスでこなして好調な滑り出し。次いでソロジャンプの3ルッツはデュハメル選手が着氷で片手をついてしまいます。そして鍵を握る大技スロー4サルコウ、これを完璧に成功させると、3+2+2の3連続ジャンプは二人のタイミングもピッタリに着氷。波に乗った二人はミスらしいミスなくのびやかかつダイナミックな滑りを見せ、フィニッシュでは満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストまで0.48点の153.33点でフリー2位、総合3位で銅メダルを獲得しました。
 ショート、フリーともに減点される要素はあったのですが、それを最小限で抑えたことがメダルに手が届いた要因ですね。シーズン前半は安定感を欠いていたソロジャンプやスロージャンプも転倒、パンクなく揃え、何といってもフリーでは大技のスロー4サルコウに挑み、見事成功。何が何でもメダルが欲しいであろうオリンピックという大舞台でリスクの高い技にチャレンジできる勇気には脱帽ですが、それだけ自分たちの演技に自信もあったのだろうなと思います。
 かつては世界選手権を2度制したペアですから、もちろん理想としては金メダルを取りたかったでしょうが、ショートが終わって3位から9位まで約2点差の中に7組がひしめき合い、フリー次第でどうなるかわからない状況で、自分たちのベストを尽くせた結果の銅メダルは順位以上の価値と深い意味があるのではないでしょうか。演技後の二人の表情にもそれが表れていたような気がしましたね。


 惜しくも4位だったのはOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。ショートは得意の3ツイストはレベル4かつ全てのジャッジから加点3を引き出す完璧な出来。さらにサイドバイサイドの3トゥループもクリーンに跳び切り、スロー3ループも余裕のある着氷でこちらも全ジャッジが加点3の評価。残りの4つのエレメンツも全てレベル4、加点1以上と圧巻の滑りを披露し、自己ベストの81.68点で2位と好発進します。フリーは冒頭に大技の4ツイストを組み込み、見事に成功。しかし続く3サルコウはパンクして2回転に。さらにスロー3サルコウも着氷で乱れます。その後は大きなミスなく立て直したものの、143.25点でフリー4位、総合4位と表彰台には届きませんでした。

 5位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。SPは全てのエレメンツをクリーンに決め、自己ベストにはわずかに及ばなかったもののハイスコアで6位。フリーは大技のスロー4サルコウに挑戦、着氷が大きく乱れ、さらにソロジャンプの3サルコウも2回転にと前半にミスが重なります。後半は前半のミスを引きずることなく巻き返しを見せ、自己ベストまで約3点に迫る143.19点でフリー5位、総合5位と順位を一つ上げました。

 6位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組。SPは3ツイストでわずかなミスがあり加点を伸ばせず、しかし他の要素では軒並み高い加点を稼ぎ、パーソナルベストで7位につけます。フリーはショートでミスを犯した3ツイストも含め、全てのエレメンツをほぼパーフェクトにこなし、こちらもパーソナルベストの142.09点で6位、総合6位となりました。

 7位はOARのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組。ショートはきっちり全てのエレメンツをクリーンに揃え、パーソナルベストで6位。フリーはソロジャンプの3サルコウがダウングレード(大幅な回転不足)となる痛いミスはあったものの、それでも自己ベストをマークして7位、総合でも7位でフィニッシュしました。

 8位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。ショートは課題にしていた冒頭の3トゥループをきっちり決めると、3ツイストはレベル4に加え、加点2という極めて高い評価。スロー3ループも加点2.1点とパーフェクトな演技で、自己ベストの75.58点で5位と好位置につけます。フリーもまずはソロジャンプの3サルコウからでしたが転倒。続く3ツイストはショートに続きレベル4、加点2.1で挽回。次いで3トゥループからのコンビネーションジャンプでしたが、こちらも転倒してしまいます。後半のスロー3サルコウでもミスがあり、全体的に精彩を欠いた演技となり、フリー11位、総合8位に沈みました。


 日本の須崎海羽&木原龍一組はショート21位で残念ながらフリー進出はなりませんでした。

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 ショートは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツを二人ともしっかり着氷。3ツイストはキャッツがもたついてレベル1でしたが、3スロー3サルコウは成功。ほかのエレメンツはレベル4を並べ、団体戦に続いて自己ベストを更新しました。しかし、フリーに進出できる上位16組には届かず、21位でこのペアとして初めての五輪を終えました。
 結果的には個人戦はショートのみで終わってしまいましたが、内容としては今後に向けて手応えの得られる演技だったのではないでしょうか。なかなか二人揃っての成功がなかった3ルッツも成功率が高まってきましたし、リフトやデススパイラルなども確実にレベル4を取れるようになってきたところは昨シーズンと比べて大きく飛躍したと思います。これからの課題として全体的な滑りのレベルアップだったり、さらに一つ一つの要素で高い加点を取れるようにすることだったりとたくさんありますが、本当に息の合ったペアだと思いますので、五輪で得たものを糧にして、次は世界選手権で再びの自己ベスト更新目指して頑張ってほしいですね。



 平昌五輪ペアの記事は以上です。個人的には隋&韓組の演技が好きで、二人の優勝を応援していた部分もあるのですが、結果的には大ベテランのサフチェンコ選手がようやく金メダルに手が届いたということで、本当に良かったなと心から思いますね。そして、どのペアも五輪に向けてしっかりピークを合わせてきたというのが伝わってくる内容で、その中でもミスを最小限に抑えたペアが順当に表彰台に立ちましたね。
 さて、次は男子です。男子の競技が行われてから時間が経っていますので、もう皆さん結果はお分かりだと思いますが、私なりの視点を加えて男子の演技、結果を振り返っていきたいと思います。


:ペアメダリスト3組の画像はマルチメディアサイト「Zimbio」から、そのほかの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2018-02-21 17:42 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)