可愛い黒い幽霊: 賢治怪異小品集 (平凡社ライブラリー)


【収録作】
「うろこ雲」
「女」
「〔ひのきの歌〕」
「沼森」
「小岩井農場 パート九」
「三七四 河原坊(山脚の黎明)」
「一四五 比叡(幻聴)」
「夜」
「〔ながれたり〕」
「四八 黄泉路」
「一〇七一 〔わたくしどもは〕」
「白い鳥」
「青森挽歌 三」
「手紙 四」
「黄いろのトマト」
「畑のへり」
「若い木霊」
「二一 痘瘡(幻聴)【先駆形】」
「タネリはたしかにいちいち噛んでゐたやうだった」
「春」
「一八四 「春」変奏曲」
「図書館幻想」
「〔われはダルケを名乗れるものと〕」
「真空溶媒」
「一〇六七 鬼語 四」
「三八三 鬼言(幻聴)」
「三八三 鬼言(幻聴)【先駆形】」
「〔丁 丁 丁 丁 丁〕」
「復活の前」
「三三七 国立公園候補地に関する意見」
「スタンレー探検隊に対する二人のコンゴー土人の演説」
「三一三 命令」
「花椰菜」
「あけがた」
「インドラの網」
「報告」
「月夜のでんしんばしら」
「ざしき童子のはなし」
「とっこべとら子」
「水仙月の四日」
「山男の四月」
「祭の晩」
「紫紺染について」
「毒もみのすきな署長さん」
「地主」
「五二〇 〔地蔵堂の五本の巨杉が〕」
「一九五 塚と風」
「一六 五輪峠【先駆形A】」
「さいかち淵」
「さるのこしかけ」
「一九 晴天恣意【先駆形】」
「三六八 種山ヶ原」
「種山ヶ原」
「種山ヶ原の夜」
「ちゃんがちゃがうまこ」
「上伊手剣舞連」
「原体剣舞連」
「原体剣舞連」


 8月27日は日本を代表する児童文学作家・宮沢賢治の誕生日です。ということで今回は宮沢賢治の作品集を紹介したいと思います。
 宮沢賢治の作品は童話、詩、歌など多岐に渡り、それらをまとめた作品集も星の数ほどありますが、この記事では文芸評論家でアンソロジストの東雅夫氏が編み平凡社から出版された『可愛い黒い幽霊 宮沢賢治怪異小品集』を取り上げます。
 タイトルにある通り、この作品集は“怪異”を基準に童話や詩が選ばれています。これらの作品は五つの章で区別され、「うろこ雲」から「手紙 四」までは「幽霊の章」、「黄いろのトマト」から「真空溶媒」までは「幻視の章」、「一〇六七 鬼語 四」から「報告」までは「鬼言の章」、「月夜のでんしんばしら」から「毒もみのすきな署長さん」までは「物怪の章」、「地主」から「原体剣舞連」までは「魔処の章」と、東氏によってジャンル分けされています。
 宮沢賢治というとファンタジックで幻想的で、ロマンティックでリリカルでというイメージはありますが、怪異、怪談というイメージはあまりありません。ですが、代表作である「銀河鉄道の夜」での死者との旅だったり、「注文の多い料理店」でのこの世のものでない料理店だったり、「風の又三郎」での風のように現れては去っていく謎の少年だったり、賢治作品には常に異界との接触が描かれていて、そう考えるとやはり、宮沢賢治という人は類い稀なる生粋の怪異の語り部なのだと思わされます。

 第1章である「幽霊の章」ではその名の通り、幽霊や死者との交流を描いた小品群がまとめられています。最後の「手紙 四」以外はすべて詩で、賢治独特の視点でとらえられた霊の世界が硬質に、時に柔らかく映し出されています。
 作品集の名の由来となった“可愛い黒い幽霊”という一文が登場する「うろこ雲」では何でもない夜の町が魔に魅入られ、「〔ながれたり〕」では幾体もの屍が水に流され、「白い鳥」では死した妹が白い鳥となって兄の前に現れる。雲や虹、月や風など一見美しいモチーフに彩られながら、そこに投影された生々しい感情や選択された言葉の鋭さには驚嘆とともに、恐怖さえも感じます。

 第2章の「幻視の章」について東氏は、「「視る人」である賢治が折にふれ垣間見ていたであろう、この世ならぬ光景が、驚嘆すべき言霊の力によって活写された一群の童話と詩篇を収録した」と説明。
 章の幕開けを飾る「黄いろのトマト」は、ある町の博物館の蜂雀の剥製が、男の子にぺムペルとネリの兄妹の話を聞かせるというストーリー。赤ばかりのトマトの中に実った黄金のような“黄いろのトマト”、遠くから聞こえてくる奇妙な音、赤いシャツと赤い革靴を纏った異国情緒漂う馬乗りの集団――。登場するモチーフは魅惑的で幻想的ですが、それらが組み合わさることによって生み出される得体の知れない不気味さ、何ともいえないゾワゾワする感じと哀しみは、賢治童話ならでは。
 「畑のへり」はある畑に住む蛙たちの視点で世界が描かれますが、普通の動物擬人化にならないところがやはり賢治童話らしさ。人間から見たら日常の一風景にすぎないものを、蛙にとっての異常なもの、恐るべきものとしてありありと書いていて、まさに宮沢賢治その人が非人間的な目を持った人だったのだと思います。

 第3章は「鬼言の章」。東氏によると、「もっぱら聴覚を通じて感得された異界の消息や、鬼神に象徴される超自然の存在による託宣の類を、強迫観念に充ち満ちた独創的文体で綴った一連の作品を収載」とのこと。
 冒頭に収められた「一〇六七 鬼語 四」や「〔丁 丁 丁 丁 丁〕」など、宮沢賢治のイメージを覆す詩群は、ある種の狂気を帯びていて、これが「銀河鉄道の夜」や「セロ弾きのゴーシュ」など美しくのどかな童話を書いた作家と同一人物かと疑うほどです。

 第4章「物怪の章」では月夜に闊歩する電信柱を描いた「月夜のでんしんばしら」といったホラー風味の奇怪なファンタジーが収められている一方、東北の風土を背景にした民俗学的な童話も収録されています。
 「水仙月の四日」は「月夜のでんしんばしら」などとともに、賢治の生前に発表された数少ない作品の一つで、絵本でも複数出ているのでわりと有名なのではないかと思いますが、雪深い東北ならではの自然の厳格さを“雪婆んご”や“雪童子”、“雪狼”など独特のキャラクターを用いて表現していて、冬の物語を得意とした賢治童話の魅力が凝縮されています。
 個人的におすすめなのは、「山男の四月」から「紫紺染について」までの“山男シリーズ”。“山男(山人)”は柳田國男の『遠野物語』にも登場する民俗学では定番の妖怪ですが、賢治が描く山男は一風変わっています。
 「山男の四月」は山男と珍妙な反物売りの支那人との不可思議な物語。一般的な描き方なら普通の人間と普通じゃない山男という対比になるのでしょうが、この作品では山男の視点で突然現れた謎の支那人が描写されていて、むしろ山男の方が普通の人化しています。
 「祭の晩」は主人公の少年亮二が秋の祭りの晩に山男と出会う話。ここでの山男は人間たちの社会で“山男”として存在を認識されながらも、普通の人間とは別個のものとして、虐げられる存在として描かれています。田舎の町の祭りの情緒をとらえつつ、人間と同じように祭りに高揚しながらも差別される山男、そんな山男に対し色眼鏡でなく素直な気持ちで接する少年の交流が、切なくもあり、おかしくもあり、ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。
 「紫紺染について」は盛岡の名産である紫紺染を巡る人間たちと山男とのちょっぴりおかしな攻防のドラマ。かつては名産だったものの明治以降西洋の安物に押されて廃れた紫紺染を県工業会の役員や工芸学校の教師たちが復活させようと考えるが、その詳細な製法を知るのが唯一山男のみということで、山男を西洋料理店に招待し話を聞き出そうとするが……というあらすじ。実際に紫紺染(紫根染め)は盛岡の伝統工芸品で、明治時代には衰退したものの大正期に再興したという歴史があり、この話もそうした事実をなぞっているわけですが、そこに山男という近代とはかけ離れたモチーフを持ち出し、しかも特産品を復活させるために山男に依頼するという一見突拍子もないようで、どことなくリアリティのある展開が、何ともいえないおかしみを誘っています。計算や思惑の下に動く人間たちと、何の企みもなく純粋に人間たちのもてなしに精一杯応えようとする山男とのギャップがおもしろく、ある意味人間より人間味に溢れる山男のキャラクターが印象的です。ただ、人間たちが悪人的に描かれているかというとそうでもなく、自分たちの目標、望みのために手段もいとわない人々の凡人ぶりというか、普通の俗っぽさというのが、逆に愛らしくも感じられます。
 このように各作品に登場する山男たちは人間と比較的近しい存在として定義されていて、この実感を伴った“近さ”こそが賢治が育った風土ならではなのでしょうし、また、賢治自身が山男に好感を抱いていたのかなという気がします。

 最後の章は「魔処の章」。“魔の処”=種山ヶ原とその周辺を舞台にした詩や童話が集められています。
 「さるのこしかけ」は少年楢夫が夕方、家の裏の栗の木の下に行くと、幹に白いきのこ“さるのこしかけ”が3つ出来ていて、そこに3匹の小猿が現れ、ひょんなことから猿たちに連れられやって来たのは種山ヶ原で……というストーリー。猿に案内されて幹に開いた穴から現実とは違う場所に行くという一見ユーモラスでほのぼのした雰囲気ですが、一筋縄ではいかないほの暗さみたいなものも含まれていて、種山ヶ原という場所が“魔の処”である感じがシンプルに表されています。
 その名も「種山ヶ原」という童話は、家畜の牛を追いかけて種山ヶ原に迷い込んだ少年達二の冒険譚で、「さるのこしかけ」よりも一層種山ヶ原のコアに踏み込んでいて、草原を渡る風や冷たい霧の粒、明るくなったり暗くなったりする空や速く走る鼠色の雲など幻想的かつ臨場感に満ちた自然描写を織り交ぜつつ、美しいだけで終わらない恐るべき場所である種山ヶ原の神髄が凝縮されています。
 そして最後に収められた2つの「原体剣舞連」は、前者が短歌、後者が詩となっていますが、田原村原体(現奥州市の田原)に伝わる伝統芸能“原体剣舞”にインスパイアされて書かれたといわれ、仮面を被り、剣を振りかざし、舞い踊る子どもたちや、特徴的な“ダーダーダーダーダースコダーダー”という節回しを描写しつつ、自身の宇宙世界が交ざり合って、“種山ヶ原”同様、現実の土地と賢治の目に映った世界とが呼応しているように思います。

 宮沢賢治の作品は多々絵本化もされていますし、まず賢治世界に親しもうという場合はそちらの方が入りやすいかもしれません。また、ネット上の青空文庫でもかなりの数の作品が公開されていてこちらもとても読みやすいのですが、あまりたくさんありすぎてどれから手を付けていいかわからないという場合もあるでしょう。そういった時はやはり何かしらの基準によって作品が選ばれている作品集が魅力的かと思いますし、さらに賢治世界に奥深く分け入りたいとなると、“怪異”という一点において企画されたこの作品集は、賢治のビギナーにとっても、コアなファンにとっても、多角的な楽しみ方ができる本なんじゃないかと思います。特に山男や種山ヶ原など賢治世界の中核をなす作品群は、誰にとってもとっつきやすい温かさをそなえていますし、一方で毒々しかったり死の匂いに満ちていたりととっつきにくい作品も世界を形成する欠かせない要素となっていて、賢治世界の両面を行ったり来たりできるという意味でも、ほかにないおもしろさを持った作品集といえます。今年は宮沢賢治生誕120年の区切りのいい年でもあるので、この機会にぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。


:記事内の引用部分は、宮沢賢治著、東雅夫編『可愛い黒い幽霊 宮沢賢治怪異小品集』(平凡社、2014年7月)から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
宮沢賢治の絵本・私的10撰 2014年9月20日


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by hitsujigusa | 2016-08-25 22:48 | 児童文学 | Comments(0)


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※2016年9月24日、マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組のプログラムについて訂正しました。 


 16/17シーズンの新プログラムについてお伝えするシリーズの続報、その③です。今回も日本選手を始めとして、海外選手の新プログラム情報に関してもざっくりと紹介していきたいと思います。 


 まずは上の写真でもお分かりのとおり、日本男子の最年長者である無良崇人選手です。 
 無良選手はSPに関しては新プログラムの「フラメンコ」をすでにアイスショーでお披露目していましたが、フリーは7月に行われた日本代表の合宿で発表し、演目はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」、振り付けは昨季に続いてチャーリー・ホワイトさんであることが判明しました。
 ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」といえば近年では浅田真央選手のソチ五輪フリーでの伝説的演技が記憶に新しいところですし、かつては高橋大輔さん、伊藤みどりさんが使用するなど、定番中の定番作品です。どの楽章を使用するかによっても雰囲気は変わってくると思うのですが、ピアノをメインにした優雅で華やかな楽曲なので、ここ2、3年意欲的に新しいスタイルを追求している無良選手にとって、これもまたチャレンジですね。しかもあまりにも有名な曲なので、それをいかに無良選手らしく表現してくるか、無良崇人の「ピアノ協奏曲第2番」を作り上げていくかというところに注目したいと思います。


 続いてはベテランの域に入りつつある村上佳菜子選手。

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 村上選手は7月末から8月初めにかけて行われた浅田選手が座長を務めるアイスショー「THE ICE」に出演し、その場で新フリーの「トスカ」をお披露目しました。
 「トスカ」はプッチーニの代表的なオペラ。フィギュア界でも定番です。村上選手の「トスカ」を拝見しましたが、最も知られるアリア「星は光りぬ」など力強いパートで村上選手らしい躍動感、情熱的なさまを表現しつつ、柔らかなスローパートも織り交ぜられていて、多彩な見どころのあるプログラムだなと感じました。“力強さ”という点では村上選手の得意分野かなと思うのですが、ここまで重厚なオペラ作品というのは初めてだと思うので、ベテラン選手といわれる年齢に差し掛かっている村上選手の新たな表情が見られるんじゃないかなと楽しみです。なお、ショートプログラムに関しては今のところ未発表です。


 すでにフリーについては発表済みだった田中刑事選手は、8月初旬にフィリピンで開催されたB級国際大会のアジア杯に出場し、昨季からの持ち越しとなるショートプログラム「ブエノスアイレスの春」を披露しました。昨シーズン見た限りでも大人の滑りを身につけつつある田中選手に合っているなと感じましたが、2季続けることでさらに音楽が体に馴染んでハマることが期待できるので、新しいフリーとともに注目ですね。


 同じくアジア杯に出場した今季シニアデビューとなる松田悠良選手。こちらも新プログラムをお披露目し、SPは14/15シーズンから演じ続けている「映画『ピアノ・レッスン』より」、フリーは「スパニッシュ・キャラバン」であることがわかりました。
 ショートはすでに2季使用しているプログラムなので、シーズン初めから松田選手の持ち味を十分に発揮できるのではないでしょうか。フリーは新しく作ったもので、イギリスのヴァイオリニスト、ナイジェル・ケネディさんが演奏する楽曲。元はアメリカのロックバンド、ドアーズの曲ですが、それをクラシック風にアレンジしています。タイトルのとおりスペイン風で、ヴァイオリンが奏でる旋律が華麗でありながらもアップテンポで激しくもあり、しっとりとした曲想のショートとは対照的な選曲ですね。シニアデビューの年なので新たな挑戦という意味合いもあるかと思いますが、大人っぽい雰囲気を醸しつつ、松田選手らしく演じてほしいなと思います。


 日本のアイスダンス王者、村元哉中&クリス・リード組は自身の公式ブログでショート、フリーと順々に演目を発表し、SDは前の記事でもお伝えしたとおり「レイ・チャールズメドレー」ですが、7月末に新たにFDが「ポエタ」であることが明かされました。
 「ポエタ」といえばスペインのギター奏者ビセンテ・アミーゴさんが1997年に発表したフラメンコ曲。フィギュア界でも幾度も用いられ、特にステファン・ランビエールさんのプログラムは伝説的演技として今も語り継がれています。そんな「ポエタ」に村元&リード組がチャレンジするということで、昨季の明るくポップなイメージからすると大転換で楽しみです。このプログラムのストーリーについて二人は、「アイデンティティのわからない女性と、そんな彼女を光に導く守護神のような人物との出会い」を描くとブログで綴っていて、この二人ならではのオリジナルの「ポエタ」が見られそうですね。


 ここからは海外選手。
 まず初めはアメリカのベテラン、アシュリー・ワグナー選手です。

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 ワグナー選手は自身の公式インスタグラムで新フリーについて動画とともに発表、イギリスのロックバンド、ミューズの楽曲「エクソジェネシス交響曲第3部」であることを明かしました。
 「エクソジェネシス交響曲」といえばフィギュア界でもしばしば使用される楽曲で、ロックバンドの楽曲ながらクラシックの趣きも濃い壮大な音楽です。女子選手が使用するのは珍しいですが、ダイナミックな滑りを持ち味とするワグナー選手に合いそうですね。ここ2シーズン演じていた「ムーラン・ルージュ」とはまた違った雰囲気になるので、楽しみです。ショートプログラムは村上選手同様、まだ発表されていません。


 元全米チャンピオンで実力者のマックス・アーロン選手はインタビュー記事で新プログラムについて、ショートは昨季と同じ「誰も寝てはならぬ 歌劇『トゥーランドット』より」、そしてフリーは新しく制作した「映画『ライオン・キング』より」で、どちらも振り付けはフィリップ・ミルズさんであると語りました。
 SPは昨季からの持ち越しですが、実際には14/15シーズンの最終盤のワールド・チーム・トロフィーでも演じているので、事実上は3シーズン連続となりますね。このプログラムで手応えを得て、アレンジしてブラッシュアップしてさらなる進化を目指したいというところでしょうか。一方、フリーの方は新しいものということで、ディズニー映画の『ライオン・キング』を演じるということで、ワイルドで男らしい演技が魅力のアーロン選手に合っているような気がします。振り付けは元バレエダンサーのミルズさんということでボーカル入りになるようなので、一体どんなプログラムになっているのか興味深いですね。


 同じくアメリカ女子のコートニー・ヒックス選手もインタビュー記事でショートとフリー、両方について明かし、ショートは「映画『マレフィセント』より」、フリーは「映画『ノートルダムの鐘』より」とのことです。
 ショート、フリーともにディズニー映画(前者は実写、後者はアニメーション)ですね。どちらもドラマティックなストーリーで、キャラクターの印象が濃い作品なので、そうしたキャラクターを演じることではっきりとした個性の出るプログラムになりそうです。前者では邪悪な要請を、後者ではヒロインであるジプシーの踊り子エスメラルダを演じるそうで、まだ20歳と若いながらも迫力のある滑りを見せるヒックス選手がどのように演じ分けるのかに注目したいですね。


 アイスダンスでは、2016年世界選手権銅メダル、アメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組がSDは「Uptown Funk You Up」「Bad to the Bone/Uptown Funk」、FDは「アンダー・プレッシャー」であることを明かしています。SDは誰の曲かなど詳細は分からないのですが、コンセプトはヒップホップになるようです。後から出てきた情報によると、SDのブルースパートはアメリカのブルースロックの歌手ジョージ・ソローグッドの代表曲と、後半のヒップホップパートは同じくアメリカの歌手ブルーノ・マーズの代表曲の組み合わせとのこと。これまでもミュージカルやバレエ、王道のクラシックなど多彩な表現、演技を見せてきたチョック&ベイツ組ですが、どちらかというと正統派のアイスダンサーというイメージだったので、ヒップホップという選曲は新鮮ですね。一方、フリーはイギリスを代表するミュージシャンであるクイーンとデヴィッド・ボウイが共作した大ヒット曲。こちらの方もやはり今までにない選曲で、五輪プレシーズンである今季に懸ける二人の意気込みが感じられますね。



 今回はこれで以上です。まだまだプログラムについて未発表の選手の方が多いので、今後も楽しみに発表の時を待ちたいと思います。では。


:記事内の写真は全て、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【参考リンク】
Aaron debut 'Lion King’free at Collegiate champs アーロン選手のフリープログラムについて報じた記事です。
The Inside Edge:Aaron,Settlage announce split 記事内にヒックス選手のプログラムについての言及があります。
Ward gets Chock,Bates into the hip-hop groove  チョック&ベイツ組のプログラムについて報じた記事です。

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by hitsujigusa | 2016-08-19 17:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 フィギュアスケーターのコスチュームを振り返るフィギュアスケーター衣装コレクション。今回で第12弾となります。取り上げるのはアメリカの長洲未来選手。日系アメリカ人であることから日本のフィギュアファンにもおなじみの選手ですが、08/09シーズンのシニアデビュー後、さまざまな怪我やアクシデントに見舞われながらも、困難を乗り越え第一線で活躍し続けています。そんな長洲選手の主な衣装を見ていきたいと思います。


 まずはバンクーバー五輪が開催された09/10シーズンのフリー「カルメン」です。

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 女子スケーターにとって一つのステータスともいえる定番の「カルメン」ですが、この衣装も赤と黒というスタンダードな色づかいでスペインらしさを表しています。ワンピースのベースとなるのは赤で、そこに黒をバランス良く組み合わせています。胸の部分は植物が這っているような黒いレース風のシンメトリーなデザイン、脚の付け根の部分には黒い3枚の葉っぱと黒い縁取りでバラの花がデザインされていて、ベースとなる赤い生地の色をそのまま活かしながら黒いラインやビジューを巧く使って絵柄を作り出していて、オーソドックスな色づかいながらも、個性的なコスチュームになっているなと思います。


 続いては10/11シーズンのフリー「映画『SAYURI』より」。

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 日本を舞台にした映画『SAYURI』は映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズがサントラを担当し、女子選手、特に日本の女子選手にとっては定番のプログラムとなっていますが、長洲選手も日本にルーツを持つ選手として、日本らしさを意識したプログラムを演じました。
 ということで衣装もまさに日本らしい和服風のデザイン。このプログラムで長洲選手は2種類のコスチュームを着用し、シーズン前半は白とピンクのワンピースでしたが、シーズン後半からこの青を基調としたワンピースに変更しました。ベースとなるのは青ですが、襟の合わせ目は紺色になっていて着物の襟っぽいです。そして胸からお腹にかけて写実的に桜の枝と花が描かれていて、日本のシンボルフラワーを用いることで日本らしさというのをさらに強調していますね。


 次は12/13シーズンのSP「ダウンヒル・スペシャル」とフリー「交響曲第3番」です。

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 この頃の長洲選手は若手から大人のスケーターへと脱皮しつつあるという印象で、プログラムの選曲も衣装も大人びたものへと変化している時期でしたね。
 ショートプログラムはスウィング・ジャズを代表する作曲家であり演奏者であるベニー・グッドマンのノリノリでどことなく洒落た雰囲気が特徴的な楽曲。音楽の明るさ、陽気さを表すように衣装も華やかな濃いピンク色で、首から胸にかけて垂れ下がるようなアクセサリー風の装飾がよりゴージャスさをプラスしています。そしてスカートの裾をフリンジにすることで必然的に露出多めとなり、セクシーさが前面に押し出されています。
 一方、フリーはサン=サーンスの交響曲という王道のクラシックで、重厚な曲調に合ったシックなブルーのドレス姿。お腹の部分を横切るように斜めのラインが入っていて肌がのぞくデザインになっていますが、ホルターネックのストラップの部分や上半身全体に細かなビジューが散りばめられていて、気品のある音楽にふさわしい高級感のあるコスチュームになっています。


 次は13/14シーズンのフリー「映画『ジェームズ・ボンド』より」。

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 こちらも近年定番となっている“ジェームズ・ボンド”ということで、衣装は黒を基調としたカッコいいデザイン。首元と胸からお腹にかけてはシルバーのビジューでシャープなラインが走り、デコルテと胸元は透け感のある黒いシースルー生地、それ以外は透け感のない黒い生地と、素材感の違いがうまく活かされています。黒とシルバーというクールな色づかい、そしてシャープさを強調したデザインで、「007」の世界観を忠実に表現していると思います。


 続いて14/15シーズンのSP「パガニーニの主題による狂詩曲」とフリー「蝶々夫人」です。

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 SPは定番のラフマニノフのピアノをメインとしたオーケストラ曲。壮大ながらもエレガンスな曲想が魅力ですが、鮮やかな紫色でその優雅さを表現しています。片方だけが長袖のアシンメトリーなデザインで、胸元からお腹にかけて火花のように伸びる幾本ものラインが特徴的な絵柄を作り出していて、じっくり見ると個性的なデザインではあるのですが、細部までこだわった繊細な装飾づかいが正統派のクラシックにピッタリ合っていますね。
 フリーはこちらも大定番のオペラ「蝶々夫人」。ということで、ワンピースは胸の部分がそのまま蝶々になった斬新なデザイン。蝶の翅の模様の感じにしても、触角のごとく伸びたシルバーの細い曲線にしても、蝶を写実的に描きつつ、ドレスのデザインとしてもモダンで美しく、一方でデザインは個性的な分、色はシックな黒でまとめてごちゃごちゃしないようにしていて、全体的なバランスの取れた素晴らしい衣装だと思います。


 最後は15/16シーズンのSP「デーモンズ」とフリー「映画『華麗なるギャツビー』より」。

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 ショートの「デーモンズ」はアメリカのロックバンド、イマジン・ドラゴンズの楽曲をサム・チョイというシンガーがカバーしたバージョンで、ダイナミックであり抒情性もあるプログラム。グレーを基調としているので一歩間違うと地味になり過ぎかねない色づかいですが、ボディのバスト部分を縁取るビジューだったり、そこから肩に伸びる紐状のラインだったり、首元のゴージャスなジュエリーだったり、細部のデザインや小物の装飾性というのがアクセントになっていて、全体的に色味はそこまで華やかではありませんが、グレー、シルバー、赤の色合いが絶妙で、ほどよいゴージャスさのあるコスチュームになっていますね。
 そして、フリーの「映画『華麗なるギャツビー』より」は、古き良き華やかなりし時代のアメリカの上流階級を描いた物語ということで、長洲選手の衣装もその時代の富裕層のレディのドレスを意識したデザインですね。お腹の部分がのぞく作りとなっていて比較的露出度の高いデザインですが、衣装全体に散りばめられた繊細なビジューや、ベージュという落ち着きのある色づかいなど、高貴さや上品さを感じさせるデザインで、まさに作中の登場人物のような、本格的なコスチュームだなと思います。



 こうして長洲選手のコスチュームをざっくりと見返してみると、少女スケーターから大人の女性のスケーターへと少しずつ脱皮を遂げてきたことがうかがえます。「カルメン」や「SAYURI」の衣装はまだまだ少女らしい、リリカルな印象ですが、12/13シーズン以降の衣装は選曲の傾向の変化に伴って、衣装も趣向がガラリと変わって、特にビジューやラインストーンなど装飾の使い方が印象的なコスチュームが多いですね。
 長洲選手は16/17シーズンのプログラムについて、SPがショパンの「夜想曲第20番」、フリーがABBAが原曲の「The Winner Takes It All」であるとすでに発表していて、今からプログラムの内容とともに、衣装に関しても楽しみでなりません。
 長洲選手の16/17シーズンが昨季以上に充実したものになることを心から祈っています。では。


:記事冒頭のポートレート写真は、ロシアのフィギュアスケートサイト「FSKATE.RU」のロステレコム杯2013のページから、「カルメン」の写真、「ダウンヒル・スペシャル」の写真、「映画『ジェームズ・ボンド』より」の写真、「蝶々夫人」の写真は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、「映画『SAYURI』より」の写真、「交響曲第3番」の写真は、マルチメディアサイト「Newscom」から、「パガニーニの主題による狂詩曲」の写真はAFPBB Newsが2015年10月26日の16:33に配信した記事「トゥクタミシェワが女子SP首位、スケート・アメリカ」から、「デーモンズ」の写真、「映画『華麗なるギャツビー』より」の写真は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2016-08-05 18:27 | フィギュアスケート(衣装関連) | Comments(0)