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 全日本選手権2017、男子&アイスダンスの記事の後編をお送りします。なお、前編はこちらからご覧ください。

第86回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子の6位となったのは全日本ジュニア王者の須本光希選手です。

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 SPは「映画『雨に唄えば』より」。まずは得点源の3アクセルを余裕を持って決めると、3フリップも規定どおりステップから直ちに跳び切り1.2点の加点。後半の3+3はファーストジャンプとセカンドジャンプのあいだにターンが入り減点されますが、スピンは3つともレベル4を揃えました。得点は72.93点で7位となります。

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 フリーは「ミュージカル「レ・ミゼラブル」より」。まずは3アクセル+2トゥループを確実に成功。続けて2本目の3アクセル、3フリップと単独ジャンプをクリーンに下ります。中盤のスピン2つ、ステップシークエンスは最高難度のレベル4を獲得。そして後半の3+3を決めると、2アクセル+1ループ+3サルコウも着氷。3ループ、3ルッツ、2アクセルと全てのジャンプを予定どおり下り、演技を終えた須本選手はガッツポーズで喜びを表しました。得点は非公式ながらパーソナルベストを大幅に上回る152.83点でフリー6位、総合6位と全日本自己最高位を記録しました。
 約2週間前のジュニアGPファイナルで銅メダルを獲得した須本選手。そこから短期間でシニア仕様のプログラムに変更しての全日本となり、特にフリーは3アクセルを1本から2本に増やして難易度をぐっと上げた構成で大変だったと思うのですが、最初から最後まで全く流れの途切れない演技で素晴らしかったですね。須本選手の場合、全日本ジュニア選手権でも優勝しているので世界ジュニア選手権への派遣は内定していて、何かしらの選考が関わってくる試合ではなかったのですが、シニアの全日本でどれだけ自分の力を発揮できるか、インパクトを残せるかという点において、自分自身としっかり戦って、集中し切れているように見受けられました。次世代の日本男子エース候補として、非常に頼もしく感じられる佇まいでしたね。世界ジュニアまで時間が空きますが、うまくピークを合わせて最高の演技ができることを願っています。


 7位は西日本選手権王者の日野龍樹選手です。

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 SPは「映画『恋におぼれて』より」。冒頭は3ルッツからの連続ジャンプの予定でしたが、3ルッツでステップアウトしコンビネーションにならず。次いで3アクセルは回転は充分だったものの転倒。後半の3ループに急遽3トゥループをつけて冷静にリカバリーしましたが、前半のジャンプミスが響き、68.22点で10位にとどまります。

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 フリーは昨季と同じ「キダム」。4回転は回避し、冒頭は3ルッツ+1ループ+3サルコウ、これをパーフェクトに決めます。次いで3+3、3アクセル+2トゥループ、3ループと、前半に固めた4つのジャンプ要素は全てクリーンに着氷。後半はまず3アクセルを完璧に下りて1点以上の加点を得ると、3フリップは踏み切りのエッジエラーを取られますが大きな乱れなくこなし、終盤の2本の2アクセルも問題なし。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と丁寧に演じ切り、フィニッシュした日野選手は感極まった表情を見せました。得点は非公式ながら自己ベストを20点ほど上回る155.39点でフリー4位、総合7位と大きく順位を上げました。
 ショートは意気込みが空回りしたのか思わぬミスが続いて10位と出遅れましたが、フリーはさすが西日本チャンピオンという安心感を持って見ていられる演技でしたね。その西日本では236.22点と国内のブロック大会としてはハイスコアも叩き出していて、それだけの実力があることは証明済みだからこそ、今大会のショートはもったいなかったと言わざるをえません。技術的には昨季と比べても成長が見られるので、あとはメンタル面がそこに追いついてくるのを待つだけなのかなとも思います。西日本の時のような演技が毎回できるようになればまた一皮剥けそうですし、それができるだけの実力の持ち主ではあると思うので期待したいですね。


 8位は東日本選手権2位の佐藤洸彬選手です。

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 SP冒頭は3アクセルから、これをスムーズに決めて1.57点の加点を得ます。続いて得点源の4トゥループは着氷が乱れて減点。後半のコンビネーションジャンプは3+2でセカンドジャンプで両手を上げて跳び成功。得点は77.98点で6位と好発進します。

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 フリーもまずは3アクセルからで、ここに2トゥループをつけて跳び切ります。次の4トゥループはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまいステップアウト。さらに2本目の4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)の着氷で転倒とミスが相次ぎます。後半は最初の3アクセルを決めると、3サルコウも軽やかに成功させ波に乗るかに見えましたが、3ルッツは着氷ミス。終盤の3ループでは転倒し、最後の3フリップはまとめたものの、ジャンプミスが散見され、フィニッシュした佐藤選手は肩を落としました。得点は136.87点でフリー9位、昨年と同じ総合8位となりました。
 今季はNHK杯でGPデビューを飾り、新たな扉を開いた佐藤選手。元々独創的な表現力を持つ個性派のスケーターとして知られていましたが、4トゥループもプログラムに組み込めるようになるなどジャンプでも進化が見られ、この全日本をさらなるステップアップのきっかけにしてほしいところでしたが、4トゥループがなかなか決まらないことによってほかの簡単なジャンプにも影響を及ぼしてしまったかなという感じがしました。ただ、その中でも佐藤選手の武器であるスケーティングや表現は手を抜くことなく、最後まで戦う姿勢を見せていて、演じることに対してこれだけ真摯に向き合い続けていれば、きっとまた新たな扉も開くんじゃないかなと思いますし、チャンスを引き寄せることもできるんじゃないかなと感じますね。



 ここからはアイスダンスです。

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 3連覇を達成したのは村元哉中&クリス・リード組です!

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 SDはツイズルであまり加点が伸びなかったものの、ステップやパターンダンスでは大きな取りこぼしなくまとめ、2位のカップルに9点以上の差をつけて首位発進します。FDもツイズル、ステップはレベル3でしたが、それ以外では確実にレベル4を取り、国内外の大会を含め初めて100点台をマークし、他を寄せつけることなく堂々の3連覇を成し遂げました。
 今季は怪我もなく順調に一歩一歩試合ごとに前進しているという印象の村元&リード組。今大会は課題だったステップのレベルもショート、フリーともに3を取れていて、インタビューでもその部分の手ごたえを口にしていましたね。スケートアメリカ後の練習がしっかり身についているということなのでしょうし、今後の試合でもこのレベルがキープできるように継続していってほしいなと思います。何より、ショートもフリーも本当に素敵なプログラムなので、オリンピックの個人戦でもフリーに進んで、ベストを出し切れるように今から祈りたいですね。全日本3連覇、おめでとうございました。

 2位は昨年3位の小松原美里&ティモシー・コレト組。SDはステップやパターンダンスはレベル2にとどまったものの、ツイズルではレベル4を獲得し2位につけます。FDはステップ2つでレベル3を獲得。そのほかのエレメンツも目立ったミスなく確実にこなし、フリーも2位、総合2位で銀メダルを手にしました。

 3位は今季シニアデビューの深瀬理香子&立野在組です。SDはリフトでレベル4を取るも、ほかのエレメンツで細かな取りこぼしが散見されパーソナルベストより低い得点で3位。FDは2つのステップはレベル2でしたが、ほかのエレメンツは全てレベル4と丁寧にこなして加点も積み重ね、非公式ながら自己ベストを大きく上回るスコアでフリー3位、総合3位で全日本初表彰台となりました。



 さて、これらの結果を受けまして決定された年明け以降の主要国際大会の代表メンバーについてまとめていきます(敬称略)。その前に代表選考基準のおさらいです。


《平昌五輪代表選考基準(男子シングル)》

①全日本選手権大会優勝者を選考する。
②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して 1 名選考する。
 A) 全日本選手権大会2位、3位の選手
 B) ISU グランプリファイナル出場者上位2名
③以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①、②で選考された選手を含め3名に達するまで選考する。
 A) ②の A)又は B)に該当し、②の選考から漏れた選手
 B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名


《平昌五輪代表選考基準(アイスダンス)》

オリンピック最終予選で出場枠を獲得した場合、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A)全日本選手権大会最上位組
 B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング最上位組
 C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング最上位組
 D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコアの最上位組


《世界選手権代表選考基準(男子シングル)》

①全日本選手権大会優勝者を選考する。
②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して 1 名選考する。
 A) 全日本選手権大会2位、3位
 B) ISU グランプリファイナル出場者上位2名
③以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①、②で選考された選手を含め3名に達するまで選考する。
 A) ②の A)又は B)に該当し、②の選考から漏れた選手
 B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名


《世界選手権代表選考基準(アイスダンス)》

以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A)全日本選手権大会優勝組
 B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3組
 C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3組
 D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3組


《四大陸選手権代表選考基準(男子シングル)》

全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A)全日本選手権大会10位以内
 B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位6名
 C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位6名
 D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位6名


《世界ジュニア選手権代表選考基準(男子シングル)》

①全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。
②ジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①で選考された選手を含め2名に達するまで選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権大会2位、3位の選手
 B) ISU ジュニアグランプリファイナル出場者
 C) 全日本選手権大会参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 E) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名



《平昌五輪代表》

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、羽生結弦
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組

《世界選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、羽生結弦
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組

《四大陸選手権代表》

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、無良崇人
アイスダンス:村元哉中&クリス・リード組、小松原美里&ティモシー・コレト組、深瀬理香子&立野在組

《世界ジュニア選手権代表》

男子シングル:須本光希、三宅星南




 まずは平昌五輪代表選考について。
 男子は何といっても全日本で優勝した宇野選手は問答無用で代表に選出です。
 そして2人目。各選考基準において「上位」と記載されている項目に関しては、対象年齢に達していない線府、対象資格を持っていない選手、また、選考済みの選手は除外し繰り上げて対象とするという注意書きがあるので、①で選ばれている宇野選手は除外します。ということで②の条件に該当するのは全日本2位の田中選手と3位の無良選手ということになりますが、ここはやはり上位の成績を残した田中選手が選ばれるのは妥当と言えます。
 最後の3人目。宇野選手に加え、田中選手も除いた上で③の条件に当てはまる選手をピックアップしていくと、A)は②の選考から漏れた選手ということで無良選手、B)は羽生選手、無良選手、友野一希選手、C)は羽生選手、須本選手、友野選手、D)は羽生選手、友野選手、須本選手となります。当てはまる項目の多さでは、羽生選手、友野選手が3項目、無良選手、須本選手が2項目ですが、B)、C)、D)の各項目において羽生選手が他の選手に圧倒的な大差をつけて最上位に立っており、また、全日本出場は原則必須ですが、過去に世界選手権で3位以内に入った選手がやむを得ない理由で全日本に参加できなかった場合は、事情が発生する前の成績を選考基準に照らして評価し選考することがある、となっているので、その救済措置を適用し、羽生選手が3人目として選出ということですね。疑念を挟む余地のない的確な代表メンバーだと思います。
 一方、アイスダンスは4項目に該当するカップルから総合的に判断するとされていますが、A)はもちろん村元&リード組、B)も村元&リード組、C)も村元&リード組、D)も村元&リード組ということで、断トツで村元&リード組が代表入りですね。


 世界選手権は男子は五輪の選考基準と全く同じということで、五輪と同じ顔ぶれになりました。
 アイスダンスは五輪の選考基準よりもゆるやかな基準になっていますが、それでも各項目で村元&リード組が他のカップルを寄せつけない成績を収めていますから、やはり村元&リード組を差し置いてというのは現実的にはありえませんね。


 四大陸選手権は上記2つの大会よりもさらに幅の広い基準となっています。その中で男子は羽生選手を除く五輪代表、世界選手権代表の2人がともに選出。五輪直前ですが、宇野、田中両選手とも出場の意思を示したということですね。そこに全日本3位の無良選手が加わったわけですが、無良選手も全日本で好演していますからチャンスが与えられた形ですね。
 アイスダンスに関しては具体的な基準はなく、国際的な競技力を考慮し総合的に判断するという文言のみで、全日本のトップスリーがそのまま選出されました。


 最後は世界ジュニア。男子は2枠ですが、まず全日本ジュニア優勝の須本選手が選出。その須本選手を除いて②の条件に該当する選手は、A)が三宅選手と壷井達也選手、B)は須本選手のみなのでスルーして、C)は三宅選手、壷井選手、佐藤駿選手、D)は壷井選手、木科雄登選手、三宅選手、E)は壷井選手、木科選手、三宅選手となっています。項目の該当数では、三宅選手、壷井選手ともに4項目、木科選手が2項目、佐藤選手が1項目ということで、三宅選手、壷井選手の一騎打ちとなります。ISUのシーズンワールドランキングやシーズンベストスコアで優位に立っている、つまり国際試合でより好成績を収めているのは壷井選手ですが、全日本ジュニア、全日本ともに三宅選手が壷井選手を上回っていて、海外試合の成績より国内の重要な大会での結果の方を重視したということで、これはシニアの方と同じ選考の傾向と言えますね。
 アイスダンスは国際的な競技力を考慮し……とのことで、その競技力のあるカップルが現時点ではジュニアにはいなかったようで派遣はなしとなっています。



 さて、全日本選手権2017、男子&アイスダンス編は以上です。年明け以降の主要国際大会に選ばれた代表選手たちには、ぜひベストを尽くして、有意義なシーズン後半にしてもらいたいと思います。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、日野選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像、村元&リード組のFDの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、須本選手のSPの画像、佐藤選手のSPの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、須本選手のフリーの画像、佐藤選手のフリーの画像、村元&リード組のSDの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
全日本選手権2017・女子&ペア―宮原知子選手、4連覇で五輪代表決定(前編) 2017年12月25日
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by hitsujigusa | 2017-12-30 02:12 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 オリンピック代表の座をかけた全日本選手権2017が12月21日から24日にかけて行われました。今回はその男子とアイスダンスの結果についてお伝えします。
 男子は世界王者の羽生結弦選手が怪我のため欠場する中、ディフェンディング・チャンピオンの宇野昌磨選手が2連覇を達成し、五輪代表の切符を手にしました。2位は田中刑事選手、3位は無良崇人選手が入り、昨年と同じ表彰台の顔ぶれとなりました。
 アイスダンスはエースの村元哉中&クリス・リード組が3連覇し、こちらも五輪代表に決定しました。

第86回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 男子を制したのは世界選手権銀メダリストの宇野昌磨選手です!

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 SP冒頭は代名詞の4フリップ、これを若干耐えながらもクリーンに成功させます。続いてスピン、ステップシークエンスをレベル4でまとめると、後半は4トゥループ+3トゥループからでしたが、4トゥループで回りすぎて流れが止まってしまい、1トゥループをつけますが規定違反のため4トゥループの単独に。直後の3アクセルはしっかり決め、終盤の2つのスピンもいつもどおりクリアしましたが、コンビネーションジャンプが入らなかったことによって得点は96.83点と100点に届かず、それでも断トツの首位に立ちます。

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 フリー冒頭は大技4ループ、これをきっちりと着氷すると、続く得意の3アクセルは完璧な流れで決め、加点は満点となる3の高評価がつきます。さらに3ループも難なく下り、前半は最高の出来に。スピン2つ、ステップシークエンスもレベル4と丁寧にこなし、後半最初は4フリップでしたが、回転不足で転倒します。次いで4トゥループは何とかこらえますが、初めて挑戦した2アクセル+4トゥループはセカンドジャンプが2回転に。3アクセル+1ループ+3フリップは、うまくジャンプ同士が繋がらず最後のジャンプが1回転になります。次の3サルコウ+3トゥループは詰まりながらも耐えて成功させましたが、演技を終えた宇野選手は両手を合わせて謝るような仕草を見せました。得点は186.47点でフリーも1位、総合1位となり、2連覇を達成しました。
 昨年に引き続き偉大な先輩である羽生選手が不在の中で、絶対的な優勝候補として今大会を迎えた宇野選手。対等なライバルがいないという難しいシチュエーションで、また、五輪代表も間違いないという状況で、とにかく満足できる演技をするということだけが今回の宇野選手の目標だったと思うのですが、GP2戦目のフランス大会からのいまひとつ演技がハマらない流れを止めることはできなかったですね。かといってボロボロの演技が続いているというわけでもなく、ほんのちょっとしたズレという感じがするのですが、そのズレを修正するために宇野選手が新たにフリーに取り入れたのが2アクセル+4トゥループという世界初のコンビネーションジャンプで、試合になると4トゥループが回りすぎてしまってセカンドジャンプがつけられないというミスが多発していたため、2アクセルに4トゥループをつけることで連続ジャンプが単独になるのを防ごうという戦略だったものの、さすがに付け焼刃という雰囲気で成功はなりませんでしたね。宇野選手の場合、現地入りしてから構成を決めるということも多く、そうした引き出しの多さが彼の強みである一方で、いろんなジャンプにチャレンジすることで何がベストなのか見失ってしまうというか、気持ちがしっかり定まらない感じもあったんじゃないかなと想像します。そんな今大会の演技を受け、宇野選手はフリーで跳ぶ4回転を4フリップ、4ループ、4トゥループの3本に絞る意向を示しました。つまりは昨季の構成に戻すということで、普段の練習から一つの構成を体に染み込ませることで演技の安定を狙うというのは賢明な判断だと思います。ここ数試合の宇野選手の演技は方向性が固定されていない分、余裕のなさが少し気になっていたので、演技の方針を固めることで精神的にも余裕を持たせて、宇野選手らしい細部まで繊細な演技が戻ってくることを期待したいですね。
 四大陸選手権を経て、五輪に向かう宇野選手。まずは四大陸で弾みをつける演技をして、満面の笑みで終われることを願っています。全日本2連覇、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは成長株の田中刑事選手です。

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 ショート冒頭は鍵を握る大技4サルコウ、若干耐えながらもしっかり回り切って着氷させます。続いて3+3も成功。後半の3アクセルもクリーンに下りると、ステップシークエンスではブルースの激しい曲調に合わせたパワフルな滑りで会場を沸かせ、フィニッシュでは控えめながらもガッツポーズで手応えを示しました。得点は非公式ながら初めて90点台に乗せる91.34点で2位と好発進します。

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 フリーもまずは得点源の4サルコウから、これを完璧に決めて2.14点の加点を得ます。続けて2本目の4サルコウは着氷が乱れコンビネーションにできず。しかし直後の3アクセルはクリーンに下り、1点以上の加点を積み重ねます。そして後半、キーポイントとなる4トゥループをパーフェクトに着氷し、こちらも2.14点の加点。2本目の3アクセルは着氷ミスで単独になりますが、3+3は何とか下り、3ループ、3ルッツも大きなミスなくまとめ、175.81点でフリーも2位、総合2位で2年連続となる銀メダルを手にしました。
 シーズン開幕前から日本男子3人目として有力候補に挙げられながらも、故障もあってGPでは決め手となるような結果を残せなかった田中選手。そのためほかの候補選手たちとともに、全日本一発勝負という色合いが濃くなりましたが、緊張で演技が小さくなるという感じもなく、非常に田中選手らしいスケールの大きな演技ができていましたね。中国杯後は朝、昼のみならず、深夜練習も加え、血の滲むような練習をしてきたとのことで、その成果をここで発揮するんだという気圧されるような気迫が感じられるショート、フリーでした。ただ、フリーは連続ジャンプが一つしか入らなかったり、ステップがレベル2になったりと、まだまだ取りこぼしは多いなという印象でもあるので、五輪代表に選ばれて明確な目標が定まったからこそ、細部の仕上げ、演技全体のブラッシュアップにはこれから期待したいですね。
 まずは四大陸で納得のいく演技をして、五輪に繋げてほしいと思います。


 3位となったのはベテランの無良崇人選手です。

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 SPは得点源の4トゥループから、回転は充分だったものの着氷で片手をつき減点を受けます。直後の代名詞3アクセルは抜群の高さで2.14点の加点。後半の3+3は詰まり気味の着氷ながらも何とかこらえ、スピンは全てレベル4と取りこぼしなし。85.53点で3位につけます。

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 フリーもまずは4トゥループ、着氷でバランスを崩しかけながらもこらえて加点に繋げます。次いで3+3、3ループと前半のジャンプはほぼノーミスでまとめます。後半は得意の3アクセルに2トゥループをつけて決めると、2本目の3アクセルもクリーンに成功。3+1+2、3サルコウも下り、最後の3ルッツは着氷を乱したものの、最後までエネルギッシュな滑りを披露し、演技を終えた無良選手は力を出し尽くしたように両手を氷につきました。得点は172.88点でフリーも3位、総合3位で3年連続となる銅メダルを獲得しました。
 GPは12位&7位と五輪代表選考に向けてアピールできず、上述した田中選手同様、全日本に全てを託すこととなった無良選手。その気持ちがこれ以上ないというほど凝縮されて、こちらの胸が詰まるほどの感情のこもった演技でした。ただ、フリーは4回転を1本にとどめて演技の完成度を優先させたことによって、もちろん素晴らしいプログラムになったのは間違いないのですが、4回転3本の田中選手に追いつくのはかなり厳しい状況になってしまいましたね。無良選手本人がフリー後におっしゃっているように、4トゥループ2本で攻めてほしかったなという気もしますし、日本を代表して五輪に行くという担うものの大きさを考えても、やはり終始攻める気持ちがないと辿りつけないのが五輪という舞台なのではないかなとも思いました。ですが、その一方で最近まとまった演技がなかなかできていなかった無良選手が、久しぶりに転倒もパンクもなく最後まで演じ切ったというところで間違いなくベストを尽くした演技だったと思いますし、無良選手の五輪への執念がヒシヒシと伝わってきました。
 無良選手が来シーズン以降どういう道を歩むのかはまだ先の判断になるでしょうし、2022年の五輪を目指す気持ちはないということも断言されていますが、未来のことは本人にもわかりません。いろんな可能性を携えて前進していってほしいなと思いますし、もちろん今シーズンが終わったわけでもありませんから、四大陸で無良選手らしい演技が再び見られることを祈りたいですね。


 4位は今季シニアデビューの新星、友野一希選手です。

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 ショートは得点源の4サルコウから、これは着氷が大きく乱れます。直後の3+3はしっかり成功。後半の3アクセルもスムーズに着氷し、スピンは全てレベル4。得点は78.16点で5位発進とします。

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 フリーも冒頭は4サルコウからで、2トゥループをつけてきっちりコンビネーションにします。2本目の4サルコウはパンクして2回転に。3アクセル+3トゥループはセカンドジャンプが回転不足と判定されます。後半最初の3アクセル+2トゥループ+2ループはクリーンに着氷。3ループ、3サルコウも続けて下り、3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされたものの、最後の3フリップは問題なく成功。後半はミスらしいミスなくまとめ、「ウエスト・サイド・ストーリー」の軽快なリズムに乗ってノリノリで滑り切りました。得点は153.05点でフリーも5位、総合では4位と全日本自己最高位で大会を終えました。
 鍵を握る4サルコウが練習からあまり確率が良くなかったようで、クリーンに決まったのはフリー冒頭の1本のみでしたが、ジャンプに頼らずに会場を盛り上げられる演技力、雰囲気の作り方の巧さというのは今回も存分に発揮されましたね。友野選手自身は、「会場(の雰囲気)にのまれないように、精一杯だった」と語ったようですが、とてもそうは思えないのびやかさ、躍動感でしたし、あの空気感の中であれだけ楽しそうに滑れるというのは、友野選手の最大の武器なんじゃないかなと感じました。もちろん本人もおっしゃっているように技術面でのレベルアップは今後の課題で、世界のトップレベルまではまだ差がありますが、何がきっかけでコツをつかんで飛躍するかというのは誰にもわかりませんから、そのきっかけをつかみ損ねないように、いろんなことに挑んだり学んだりしてほしいなと思います。


 5位にはベテランの村上大介選手が入りました。

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 SPは2季前から継続の「彼を帰して ミュージカル『レ・ミゼラブル』より」。冒頭は得点源の4サルコウ、これをこらえながら着氷し最小限の減点にとどめます。続く3アクセルは完璧。後半の3ルッツ+3ループはセカンドジャンプが2回転となってしまい、演技を終えた村上選手は悔しさを滲ませつつも笑顔で観客の歓声に応えました。得点は80.99点で4位と好位置につけます。

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 フリーは「歌劇「道化師」より」。まずは4サルコウ、ショートよりもきれいに決め1点以上の加点を得ます。ですが、2本目の4サルコウは1回転に。3アクセル+2トゥループはクリーンに下ります。後半最初は3ループを難なく着氷しますが、3アクセルはステップアウト。3+1+3は最後のジャンプが2回転に。3フリップは着氷がわずかに乱れますが耐え、最後の3トゥループを確実に成功。ただ、ジャンプミスが響き、149.96点でフリー7位、総合5位と順位を一つ落としました。
 昨季は怪我のためGP2試合、全日本も欠場し、今季も急性肺炎のためNHK杯を辞退するなど不運が続いた村上選手。2年ぶりの全日本の舞台が平昌五輪へのラストチャンスという背水の陣でしたが、ミスがある中でも村上選手らしさが演技の端々から感じられました。ただ、試合勘が不足していた感は否めなく、優勝した2014年のNHK杯だったり表彰台に立った2015年のスケートカナダだったり、今以上に良い時の村上選手を知っているからこそ、さらに切れ味鋭いジャンプや、ダイナミックでありながら流れるようになめらかな滑りをもっともっと見たいなという感じがしました。村上選手はインスタグラムでさっそく、「次に向けてがんばります」「強くなって戻ってくる」と頼もしい言葉を綴っていて、次こそは心からの笑顔が見られることを願いたいですね。



 さて、全日本2017、男子&アイスダンスの前編はとりあえずここまでとさせていただきまして、後編に続けたいと思います。記事アップまでしばらくお待ちください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、宇野選手のフリーの画像、無良選手のSPの画像、友野選手のフリーの画像、村上選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、宇野選手のSPの画像、田中選手の画像、無良選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、友野選手のSPの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-12-27 15:08 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 前記事に引き続き、全日本選手権2017の女子とペアの結果について書いていきます。なお、前編はこちらからご覧ください。

第86回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子の6位に入ったのは本郷理華選手です。

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 SPは得点源の3フリップ+3トゥループから、これを完璧に回り切り流れるようなランディングで決めると、後半の苦手の3ルッツも踏み切りのエッジが不正確と判定されたものの減点なくまとめ、最後の2アクセルもクリーンに成功。終盤のステップシークエンスでは気迫溢れる滑りで観客のスタンディングオベーションを誘い、フィニッシュした本郷選手は目に涙を浮かべました。得点は非公式ながら自己ベストを上回る70.48点で3位と好発進します。

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 フリーも冒頭は3フリップ+3トゥループ、これはセカンドジャンプの高さが足りず回転不足で下りてきてしまいます。続く3サルコウは片手を上げて跳び1点以上の加点。次いで鬼門の3ルッツでしたが、回転は充分だったものの転倒します。後半は最初の2アクセル+3トゥループ+2トゥループを決めますが、3ループで2度目の転倒。しかし、3+2、2アクセルと終盤のジャンプはまとめ、最後までエネルギッシュに滑り切りました。得点は127.14点でフリー8位、総合6位と順位を落としました。
 GPでは表現や滑りからは充実感がうかがえる一方で、ジャンプは細かな回転不足が重なりなかなか点数が伸びない試合が続いた本郷選手。念願の五輪出場のためには全日本優勝しかないという追い込まれた状況で迎えたSPは、五輪を諦めないという本郷選手の強い想い、気迫が演技の端々まで満ち満ちていて、思わず見ているこちらも息を呑むような迫力で圧倒されました。そしてフリーは演技序盤に転倒し、中盤にも再び転倒と、その時点で気持ちが萎えてしまってもおかしくない中、本郷選手の眼の力、体の動きの力強さは変わらず、改めて本当に芯の強い選手だなと感じました。
 最終的にはフリーでミスが出てしまい悔しさが残ったと思いますが、五輪を懸けたこの大会で本郷選手が見せたあのショートは間違いなく今年の全日本のハイライトの一つ、忘れられないシーンになりましたし、最後まで力を尽くしたという経験は本郷選手にとっても得がたい財産になるはずですので、今後のフィギュアスケート人生に活かしていってほしいですね。


 7位は今季シニアデビューの本田真凛選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これをきっちり決めますが、後半の3ループは着氷で手をつきます。最後の2アクセルは無難にまとめ、スピンも全てレベル4と精度高くこなし、66.65点で6位につけました。

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 フリーはまず3ルッツで始まり、次いで3フリップと単独ジャンプを2本続け、どちらもしっかりまとめます。後半最初は得点源となる2アクセル+3トゥループ、これをきれいに決めます。しかし3ルッツからの3連続は3ルッツが2回転に。直後の3サルコウはクリーンに成功。2アクセル+3トゥループは一見クリーンな着氷に見えましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)に。最後の3ループは2回転にとミスが重なり、演技を終えた本田選手は涙をこらえました。得点は126.72点でフリー9位、総合7位で大会を終えました。
 ショート、フリーともにミスが続いた本田選手ですが、正直本田選手の演技からは何が何でも自分がオリンピックに行くんだという覇気は感じられなかったですね。SP後のインタビューでは、「五輪選考会という感じはなかった」「緊張がなかった」といった話をしていて、個人的な感想としては、本田選手は自分がオリンピックに行くということを心のどこかで諦めていたのかなという印象を受けました。もちろん全日本に出場する全ての選手が五輪を目指す必要はなく、五輪どころか国際大会に出場するチャンスさえ与えられない選手も多い中、選手たちは各々の目標を設定して全日本に臨んでいるわけで、そうした目標に向かって精一杯滑っている選手の演技からはミスがあってもなくても何かしら伝わってくるものがあるのですが、本田選手はその目標を見失った状態で滑っているように見受けられましたね。そういった意味で、本田選手らしい溌剌さ、目が離せなくなるような華やかさが雲に隠れてしまったようで、少し残念でした。
 それでもフリー後に涙を流す本田選手の姿からは、真剣にフィギュアスケートに向き合ってきたんだなというのが感じられましたし、今まで自分がやって来たことが実を結ばなかったという悔しさが伝わってきました。本当の意味で本田選手の競技人生はここから始まっていくと思うので、シーズンの後半をどんなふうに過ごしていくのかはわかりませんが、次の夢に向かって頑張ってほしいと思います。


 8位は全日本ジュニア4位の横井ゆは菜選手です。

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 SPは「ライオン・キング」。冒頭の3フリップ+3トゥループは確実に回り切って着氷。後半に組み込んだ2アクセルは着氷で手をつきますが、最後の3ルッツは完璧な跳躍で加点1.1点の高評価を獲得。スピンは全てレベル4と取りこぼしなくこなし、62.68点で9位発進とします。

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 フリーは昨季から継続の「映画『バーレスク』より」。まずは得意の2アクセルを余裕を持って決めると、さらに3フリップも落ち着いて下り、3ループも成功と、前半は上々の滑り出し。後半にコンビネーションジャンプを固めた攻撃的な構成で、その最初の3+2をまずはクリーンに着氷。次いで単独の3ルッツ、そして3サルコウ+3トゥループを決め、プログラム最後の要素である2アクセル+3トゥループ+2トゥループを成功させると、派手なガッツポーズで歓喜を露わにしました。得点は非公式ながら自己ベストを大幅に上回る130.31点でフリー6位、総合8位となり、初入賞を果たしました。
 今大会において最も新鮮な驚きを与えてくれたのが横井選手でしたね。特にフリーは全ての要素に加点が付く本当にパーフェクトな出来で、しかも後半に3+3を入れたり、演技のいちばん最後に2アクセル+3トゥループ+2トゥループを跳んだりと、ミスをしたらリカバリーできないようなかなりリスキーで挑戦的な構成になっていて、驚かされるとともに、女子選手のジャンプ構成は大体みんな同じ感じになりやすい中で、ほかの選手がしないチャレンジングな試みをしていることに拍手を送りたい気持ちになりました。元々表現に力を入れている選手として知られている横井選手ですが、ジャンプも安定してくるとさらに伸びてくる選手だと思うので、今大会をきっかけに飛躍してくれることを願いたいですね。



 さて、ここからはペアです。

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 初優勝したのはペア結成3季目の須崎海羽&木原龍一組です!

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 SP冒頭は得点源のサイドバイサイドの3ルッツをしっかり着氷。3ツイストはレベル1となりますが、リフトやスピンは確実にレベル4を取り、非公式ながら自己ベストを上回る得点で首位に立ちます。フリーも3ルッツを最小限のミスに抑えますが、スロー3ルッツは転倒。しかし中盤の3+2+2の3連続ジャンプは成功させ、ほかのエレメンツも大きなミスなくこなし、ショートに続き自己ベストより高い点数をマークし、他のペアを寄せつけることなく完全優勝を果たしました。
 初出場した2年前は3位、そして昨年は2位と一段一段確実に階段を上がってきた須崎&木原組。今大会もミスは複数ありましたが、レベルの取りこぼしはかなり抑えられ、ペアとして成長したなと感じさせられましたね。今年はディフェンディング・チャンピオンの須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組が、須藤選手の体調不良による調整不足のため欠場。日本のペア2番手である須崎&木原組が自動的に優勝候補に繰り上がりましたが、今回須崎&木原組がマークしたスコアは160.71点、昨年の全日本で須藤&ブードロー=オデ組がマークしたのは160.25点ということで、須崎&木原組が須藤&ブードロー=オデ組にも匹敵する力をつけてきたことを示す結果となりました。とはいえ国際大会での経験はまだまだ須藤&ブードロー=オデ組には及ばないですし、ペアとしての一体感もこれからさらに強化していくポイントだと思うので、須崎&木原組の強みである難度の高いジャンプ構成に加えて、演技全体の完成度のレベルアップにも期待したいですね。全日本初優勝、おめでとうございました。

 2位となったのはペア結成2季目の高橋成美&柴田嶺組。SPはミスが重なり最下位の3位にとどまりましたが、フリーは2位と挽回し、総合2位で銀メダルを獲得しました。
 ペアを結成してまだ2季目ということで、ペアとしての成熟はまだまだこれから、そしてジャンプの安定感も課題というペアなのですが、SPのステップシークエンスではしっかりレベル4が取れていますし加点もまずまずついていて、スケーティングが強みのペアなのかなと感じました。自分たちの強みを存分に活かして、ウィークポイントをどんどん強化して、日本のペア界を盛り上げる存在になっていってほしいと思います。

 3位はジュニアを主戦場としている三浦璃来&市橋翔哉組です。SPはミスを最小限にとどめて2位と好発進。フリーはミスが相次いで順位を落としてしまいましたが、シニア勢に交じってこの全日本を経験できたことは今季だけではなく、来季にも繋がっていくでしょうね。三浦&市橋組は世界ジュニアだけではなく、四大陸選手権にもエントリーするとのことですから、世界の舞台でどれだけ通用するのか思いっきりチャレンジしてほしいと思います。



 ということで、女子とペアの結果についてお伝えしてきましたが、この結果を受けて発表された平昌五輪、世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表メンバーをまとめます(敬称略)。その前に、代表選考基準をおさらいします。


《平昌五輪代表選考基準(女子シングル)》

①全日本選手権大会優勝者を選考する。
②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①で選考された選手を含め2名に達するまで選考する。
 A) 全日本選手権大会2位、3位の選手
 B) ISU グランプリファイナル出場者上位2名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 E) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名


《平昌五輪代表選考基準(ペア)》

オリンピック最終予選で出場枠を獲得した場合、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A)全日本選手権大会最上位組
 B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング最上位組
 C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング最上位組
 D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコアの最上位組


《世界選手権代表選考基準(女子シングル)》

①全日本選手権大会優勝者を選考する。
②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①で選考された選手を含め2名に達するまで選考する。
 A) 全日本選手権大会2位、3位の選手
 B) ISU グランプリファイナル出場者上位2名
 C) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 E) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名


《世界選手権代表選考基準(ペア)》

以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
A)全日本選手権大会優勝組
B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位3組
C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3組

D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3組


《四大陸選手権代表選考基準(女子シングル)》

全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A)全日本選手権大会10位以内
 B)全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位6名
 C)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位6名
 D)全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位6名


《世界ジュニア選手権代表選考基準(女子シングル)》

①全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。
②ジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、①で選考された選手を含め3名に達するまで選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権大会2位、3位の選手

 B) ISU ジュニアグランプリファイナル出場者
 C) 全日本選手権大会参加者のうち上位3名
 D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位3名
 E) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位3名


《世界ジュニア選手権代表選考基準(ペア)》

以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
 A) 全日本ジュニア選手権大会優勝組
 B)今シーズンのシーズンベストスコア最上位組(国内外公式競技会)



《平昌五輪代表》

女子シングル:宮原知子、坂本花織
ペア:須崎海羽&木原龍一組

《世界選手権代表》

女子シングル:宮原知子、樋口新葉
ペア:須崎海羽&木原龍一組

《四大陸選手権代表》

女子シングル:宮原知子、坂本花織、三原舞依
ペア:須崎海羽&木原龍一組、高橋成美&柴田嶺組、三浦璃来&市橋翔哉組

《世界ジュニア選手権代表》

女子シングル:紀平梨花、山下真瑚、横井ゆは菜
ペア:三浦璃来&市橋翔哉組




 まずはオリンピック代表から。
 女子は第一に全日本を制した宮原選手が優先的に選出。
 そして混戦となった2枠目ですが、各選考基準において「上位」と記載のある選考項目については、対象年齢に達していない選手や選考済みの選手は除外し繰り上げて対象とすると注意書きがなされているため、②の選考基準に関しては、今年の7月1日の時点で15歳に達していない選手や①で選ばれている宮原選手を除いた上で当てはまる選手をピックアップしていくことになります。という条件を考慮しますと、②のA)に該当するのは坂本選手、B)は樋口選手、C)は本郷選手、樋口選手、三原選手、D)は樋口選手、坂本選手、三原選手、E)は樋口選手、坂本選手、三原選手という面々に。当てはまる項目の数で言うと、樋口選手は4項目、坂本選手、三原選手は3項目、本郷選手は1項目となり、1項目しか該当しない本郷選手はまず除外せざるをえません。そして三原選手は3項目に該当するものの、宮原選手が①で選ばれた関係での繰り上がりによるものなので、こういった点からやはり選考の上では不利ですね。ということで、残るは樋口選手と坂本選手。該当する項目の多さでは樋口選手が坂本選手を上回っていますが、最終選考会である全日本の重要性というのを考えると、この試合にしっかりピークを合わせてきた坂本選手の実力というのは高評価に値しますし、シーズンを追うごとに上り調子になっているというのを考慮しても、樋口選手のGPでの安定感、シーズンベストスコアの高さをも上回るインパクトがあり、坂本選手を2人目として選ぶというのは妥当な答えかなと思います。
 一方、ペアは4つの項目に当てはまるペアから総合的に判断するとなっていますが、日本のトップペアである須藤&ブードロー=オデ組はブードロー=オデ選手が日本国籍を保持していないため五輪出場資格はなく、選考の対象とはなりえません。そんな中で須崎&木原組はA)、B)、D)の3項目に、三浦&市橋組がC)のみに当てはまるのですが、三浦&市橋組はまだジュニアでもありますし、須崎&木原組が選ばれるのがやはり順当ですね。


 そして世界選手権。女子の選考基準は五輪と全く同じで、当然全日本女王の宮原選手が1人目として選ばれましたが、2人目は五輪代表の坂本選手ではなく樋口選手が選出されました。このあたりからも、坂本選手と樋口選手の選考が接戦だったというのがうかがえますし、惜しくも五輪に届かなかった樋口選手にチャンスを与えたいという連盟の意思が感じられます。また、世界選手権は五輪と違って次の年の枠取りが懸かる舞台でもありますから、そういった点で世界選手権をすでに経験している樋口選手に3枠を取り戻す重要な任務を託すという意味深い選出なんじゃないかと思いますね。
 ペアは五輪代表選考基準とは少し違っていて、選考の幅をより広げる文言となっています。ただ、ペアは男女シングルとは違って、怪我や体調不良で全日本を欠場した有力選手に対する救済措置がなく、全日本出場が選考対象に入るための必須条件となっているので、全日本不出場だった須藤&ブードロー=オデ組は残念ながら対象から外れます。ということで、4つの条件全てに該当する須崎&木原組が選出となりました。


 四大陸は五輪直前とあって五輪代表選手が出場を希望するかが注目されましたが、宮原、坂本の両選手とも出場の意思を示したということで2人とも選出。そして全日本5位の三原選手が3人目として選ばれました。三原選手はワールドスタンディングやシーズンベストスコアでも上位に入っていますし、五輪も世界選手権も出られない分、四大陸でチャンスをという意義深い試合になりそうです。
 ペアは須崎&木原組に加え、高橋&柴田組、三浦&市橋組が選出。須崎&木原組は五輪へ向けての調整という意味合いが大きいですが、高橋&柴田組、三浦&市橋組にとっては初めてのシニアのISUチャンピオンシップになりますから(高橋選手は他パートナーとともに出場経験あり)、経験を積ませたいというところでしょうか。


 そして世界ジュニアの女子は、全日本ジュニアを制している紀平選手が最優先で選出。そして①の紀平選手を除いた上で、②の条件に当てはまる選手を挙げていきますと、A)は山下選手、荒木菜那選手、B)は①で選考済みの紀平選手しか該当しないためスルーして、C)は横井選手、山下選手、荒木選手、D)は山下選手、荒木選手、滝野莉子選手、E)は荒木選手、山下選手、滝野選手となっています。該当する項目の数では、山下選手、荒木選手ともに4項目、滝野選手は2項目、横井選手は1項目です。このうち2人目として選出されたのは山下選手で、山下選手は全日本ジュニアでも190点台をマークして2位、全日本でも10位、国際大会でも結果を残しているという安定感が評価された形ですね。一方、3人目として選ばれた横井選手はC)にしか当てはまらないわけですが、世界ジュニアの最終選考会である全日本でのあの爆発的な演技はやはりインパクト大でしたね。その点で、全日本ジュニアで3位だった荒木選手の方が国際大会での実績も上回っていますが、プレッシャーのかかる全日本で実力を発揮し切れず13位にとどまったというのが印象を悪くしてしまったかもしれません。
 ペアは全日本ジュニアを制し、シーズンベストスコアでも最上位の三浦&市橋組が言わずもがなで選出ですね。



 さて、全日本2017、女子&ペア編は以上です。4年に1度のオリンピックが懸かる全日本とあって、選手たちの意気込み、緊張感も並々ならぬものがあって、また、選手をリンクサイドで見守るコーチ陣からも例年とは違う空気感、思い入れの深さが感じられました。
 男子&アイスダンス編に続きます。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、本郷選手のフリーの画像、ペアメダリスト3組の画像、須崎&木原組のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、本郷選手のSPの画像、本田選手のSPの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、本田選手のフリーの画像、横井選手の画像、須崎&木原組のSPの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-12-26 20:13 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 平昌オリンピックの代表を決める全日本選手権2017が12月21日から24日にかけて行われました。たった2枠しかない代表枠を巡ってトップスケーターたちがしのぎを削った女子シングルは、近年稀に見る熾烈かつドラマチックな試合となりました。
 その女子を制したのは昨年まで3連覇を達成しているエース、宮原知子選手。怪我を乗り越えて浅田真央さん以来の4連覇を成し遂げ、平昌五輪の代表権を手中に収めました。そして2位には今季シニアデビューの新星、坂本花織選手が、3位にはジュニアの紀平梨花選手が入りました。
 一方、ペアは昨年、一昨年と連覇している須藤澄玲&フランシス・ブードロー=オデ組が調整不足のため棄権した中、昨年2位の須崎海羽&木原龍一組が初優勝し、五輪代表を決めました。

第86回全日本選手権大会 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 4連覇の快挙を達成したのは宮原知子選手です!

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 SPは得点源の3ルッツ+3トゥループからでしたが、高さと勢いに欠けセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定されます。しかし、後半の3ループ、2アクセルはしっかり着氷。ステップシークエンス、スピンはいつもどおり全てレベル4と隙のない演技を披露し、73.23点で2位と好発進します。

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 フリーはまず得意の3ループを確実に決めると、続いてショートで回転不足のあった3ルッツ+3トゥループはきれいに下りたかに見えましたが、ファーストジャンプがアンダーローテーションと判定されます。しかし3フリップはクリーンに成功。2つのスピン、そして軽やかでありながらも繊細で緻密なステップシークエンスをレベル4で揃え、後半最初の3+2+2は若干詰まりながらも大きなミスなくこらえ、2アクセル+3トゥループは完璧に着氷。3サルコウ、2アクセルと問題なく下り、レベル4のレイバックスピンでフィナーレを迎えると、珍しくガッツポーズで喜びを爆発させ、感極まったように目頭を抑えました。得点は非公式ながらパーソナルベストを上回る147.16点でフリー1位、総合1位と逆転で4度目の優勝を勝ち取りました。
 圧巻としか言いようのない演技でしたね。細かなミスはショート、フリーともにありましたが、そうした些末なことを補って余りある風格、貫録に満ちた滑りでした。何よりも2017年は宮原選手にとって、左股関節の疲労骨折発覚から始まり、予定していた四大陸選手権や世界選手権を辞退して治療、リハビリに専念するも、今シーズン開幕直前になっても本格的なジャンプ練習再開には至らず、10月にようやく本数制限をかけながらもジャンプ練習を開始し、ギリギリまで出場回避も考えたNHK杯で約11か月ぶりの競技復帰、そしてスケートアメリカで劇的な優勝を遂げ、繰り上がりでGPファイナル進出……という激動の1年でした。その締めくくりが全日本4連覇、そして初めての五輪代表決定というのは、これ以上ない最高の締めくくり方と言えるのではないでしょうか。
 思えばジュニア時代から安定した成績を残してきた選手ではありますが、決して体格的に恵まれてはおらず、ジャンプや表現面に関しても同世代の選手と比べて抜きん出た才能の持ち主というわけではありませんでした。だからこそ誰よりも努力に努力を重ねて、人一倍の練習量をこなすことで世界のトップレベルまで上り詰めたわけですが、そんな豊富な練習量によって自信をつけてきた選手が練習ができなくなれば焦ったり腐ったりしてもおかしくないにもかかわらず、宮原選手はジャンプ練習ができない代わりにスケーティングを強化したり表現面を磨いたりと別の方法で努力をし続けていて、体操の内村航平選手がテレビ番組で“天才”について、“努力をし続けられる人”とおっしゃっていたのですが、まさに宮原選手こそ、その言葉どおりの“天才”だと強く感じました。
 そして、そのたゆまぬ努力に裏打ちされた心の強さは、鋼の心臓と言っても過言ではなく、今大会も過去3連覇しているとはいえ、オリンピック選考が懸かる全日本となると宮原選手といえども今までとは違う精神状態に陥ってしまうのではないかとも思いましたが、全くの杞憂でしたね。むしろ今までのどの試合よりも強い気持ちが表れていて、こんなところで負けるわけにはいかないという確固たる意志が誰よりも滲み出た演技だったと思います。そんな燃え盛りながらも心の内に秘めていた想いをようやく解放したのがあのガッツポーズと涙で、普段好い演技をしても比較的冷静で手放しで喜ぶということがない宮原選手が、フリーのフィニッシュでは今まで見たことがないような出し尽くしたという表情をし、そこから一拍置いてのガッツポーズ、涙をこらえる姿からは、彼女がこの試合に懸けてきたものの大きさと重さ、オリンピックへの覚悟が見て取れて心を揺さぶられました。
 オリンピックでは今までのスケート人生を全てぶつけて、これまで頑張り続けてきた自分のために、楽しんで滑ってほしいと思います。全日本4連覇、本当におめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは今季シニアデビューの坂本花織選手です。

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 SPは全てのジャンプを後半に組み込む攻撃的な構成で臨み、まずはスピン、ステップシークエンスを丁寧にこなし全てレベル4を獲得。そして後半、最初のジャンプは得点源の3フリップ+3トゥループでしたが、目を見張るスピード感と高さ、幅で跳び切り1.4点の加点を得ると、続く3ループ、2アクセルも危なげなく跳び1点以上の加点を積み重ね、最後のスピンもしっかりまとめ、フィニッシュでは拳を握りしめて達成感を露わにしました。得点は非公式ながら自己ベストを4点以上上回る73.59点でトップ発進します。

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 フリーも5つのジャンプ要素を後半に固めた難度の高い構成で、前半はまずショートで完璧に決めた3フリップ+3トゥループからでしたが、いつもより若干勢いと高さが足りずセカンドジャンプがアンダーローテーションと判定されます。ですが、直後の3サルコウはクリーンに下りてすぐに立て直します。ステップシークエンスとスピンを挟んで後半、3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされ加点は付かず。しかし、3+2、2アクセル+3トゥループ+2トゥループ、3ループ、2アクセルと全てのジャンプを予定どおりに着氷。演技を終えた坂本選手はガッツポーズで手応えを表しました。得点は139.92点でフリー4位、ショートと合わせると総合2位となり、初めての全日本表彰台を守り切りました。
 GPのスケートアメリカで2位となり、オリンピック代表候補の一角として名乗りを上げた坂本選手。とはいえ、樋口新葉選手や三原舞依選手らシニアで実績を残している選手と比べると、現実的には五輪代表は遠いのかなと思っていたのですが、まさに全日本での一発逆転を成し遂げましたね。何といってもショートはお見事としか言いようのない演技で、元々得意のジャンプはもちろん、そのほかのエレメンツや表現面の完成度も高く、シーズン序盤の姿を思い返しても数か月でよくぞここまで進化したなと思わせられる内容でした。そしてフリーはトップの座を死守しなければいけないというプレッシャー、最終滑走という緊張感の中、出だしはショートよりも硬さが見られましたが、演技が進むにつれて本来の坂本選手らしさが戻ってきて、坂本選手自身は最初にヒヤヒヤしすぎて気付いたらもう最後のスピンだったと話していましたが、それくらい集中力を研ぎ澄ました演技だったのだと思います。やはりあの異様な緊張感の中で、周囲の状況や雰囲気に惑わされることなく滑り切るというのは大変なことですし、その大仕事を最後までやり遂げた坂本選手の強心臓ぶりと集中力は、五輪代表として必要なものを今季の戦いの中でしっかり習得したという証なのではないでしょうか。
 今まではあくまで五輪代表候補としてのプレッシャーがかかるのみでしたが、これからは五輪代表としてさらなる期待感を背負うことになると思います。ですが、代表としての責任感を意識しすぎてしまうとせっかくの坂本選手の良さが発揮されないように思うので、オリンピックでも今大会のように自分を信じて、滑ること自体を楽しんで、チャレンジャーとして思いっきり世界にアタックしてほしいですね。


 銅メダルを手にしたのは全日本ジュニア女王の紀平梨花選手です。

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 SPは「カンフーピアノ」。まずはレイバックスピンから入り、これをしっかりレベル4とすると、続いて代名詞の大技3アクセルをパーフェクトに決めて加点も1点以上得ます。後半に2つのジャンプを組み込み、3フリップ+3トゥループはクリーンに着氷。しかし3ルッツはパンクして1回転となってしまい規定違反のため無得点に。しかし、残りのスピン、ステップシークエンスはそつなくこなし、自己ベストに迫る66.74点で5位と好位置につけました。

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 フリーは「映画『道』より」。冒頭は先日のジュニアGPファイナルで世界初成功となった3アクセル+3トゥループ、これを再び完璧に回り切って下り1.86点の加点を獲得。次いで単独の3アクセルも難なく決め、3フリップも成功と最高の形で前半を終えます。後半はまず3ルッツ+2トゥループを確実に決めますが、次の3ループは軸が曲がって着氷が乱れます。しかし、終盤の3+2+2、3サルコウはクリーンに成功させ、フィニッシュした紀平選手は納得したように笑みを浮かべました。得点は非公式ながら自己ベストを大幅に上回る141.29点でフリー2位、総合3位と順位を上げ、初出場で初表彰台となりました。
 シーズン序盤は感覚がつかみ切れていなかったのか、なかなか得点源の3アクセルが決まりませんでしたが、11月下旬の全日本ジュニアのフリーで2本の3アクセルを完璧に決めてからというもの、ほとんど失敗する気配のない、安定感抜群の3アクセルが続いていますね。技術的にはもうほとんど完成されているという印象で、あとはその時々の気持ち次第という感じでしょうか。一方で、3アクセル以外でのミスというのがあり、3アクセルを2本跳ぶことで身体への負担も大きいと思いますし、3アクセルに注ぐ集中力というのも並々ならぬものがあるでしょうから、3アクセル後も気を緩めず集中を保ち、疲れてくる後半のジャンプをいかにノーミスでまとめるかというのは今後の課題ですね。
 それにしても現在進行形で素晴らしいことを成し遂げていることに変わりはありません。昨年の全日本を最後に稀代の3アクセルジャンパーである浅田真央さんが引退されましたが、その翌年にこうして紀平選手が同じ全日本で3アクセルを跳び、日本女子の3アクセルの伝統が受け継がれている光景を見て、何とも言えない感動を覚えました。残念ながら年齢制限のため平昌五輪の出場資格はありませんが、今回の経験は必ず4年後に活きてくるでしょうし、もちろん3月の世界ジュニア選手権に向けて弾みをつける試合になったと思いますので、ベストな演技を目指して頑張ってほしいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのは、樋口新葉選手です。

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 SP冒頭は得意の2アクセルからでしたが、タイミングが合わなかったのかパンクして1回転となり規定違反のため0点に。しかしその後は切り替えて、後半の3ルッツ+3トゥループ、3フリップと完璧に成功させ、68.93点で4位と表彰台を狙える位置につけます。

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 フリーもまずは2アクセルから、これを今度はしっかりと決めます。さらに得点源の3ルッツ+3トゥループもクリーンに下りて序盤は上々の滑り出し。ですが、中盤の3サルコウがパンクして1回転に。そして後半は2つ目の3ルッツ+3トゥループ、これは大きなミスなく跳び切りましたが、セカンドジャンプがアンダーローテーションの判定。その後の3ループ、2アクセル+2トゥループ+2ループ、3フリップは問題なく終え、終盤のステップシークエンスでは重厚な女性ボーカルの歌声に合わせたダイナミックな滑りを披露しました。得点は138.03点でフリー5位、総合4位と表彰台には届きませんでした。
 今季はGPで安定した結果を残し、五輪代表選考レースで宮原選手とともに一歩リードしていると目されていた樋口選手。しかし、好成績を残しているがゆえに、周囲からの期待も日に日に増し、樋口選手自身も自分に対して必要以上にプレッシャーをかけすぎてしまったのかなと今回の演技を見ていて感じました。ショート、フリーともにミスがあっても落ち着いてはいましたし、リズムを大きく狂わすことがないというのは今シーズンの戦いの中で得た最大の強みだと思うのですが、逆に落ち着きすぎているような気もしましたね。シーズンの始まりの頃はもっと弾けた演技ができていたように思いますし、今回はショートで少し出遅れてしまったためか、フリーは余計に背水の陣というか、悲壮感さえ漂うような雰囲気が感じられたので、本来の樋口選手の思い切りの良さは少し鳴りを潜めてしまったかもしれません。
 ですが、樋口選手が今シーズン一皮剥けたのは間違いありませんし、五輪代表は逃しましたが、2年連続となる世界選手権の切符はつかみましたから、一旦休んで気持ちを切り替えて、新たな目標に向かってまた歩き出してほしいと思います。


 5位は昨年の銅メダリスト、三原舞依選手です。

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 SPはまず得点源の3ルッツ+3トゥループをスムーズな流れで着氷。しかし、後半最初の2アクセルは回転が足りずに転倒します。最後の3フリップは何とか決め、スピンは全てレベル4と取りこぼしなくまとめましたが、演技を終えた三原選手は顔を曇らせました。得点は64.27点で7位にとどまります。

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 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これをクリーンに下りると、ショートで失敗した2アクセルも難なく決めます。後半に5つのジャンプ要素を固め、最初の3フリップをきっちり着氷させると、2アクセル+3トゥループ、3ループと続けて成功。3ルッツからの3連続は3ルッツが回転不足と判定されわずかに減点を受けますが、両手を上げて跳んだ3サルコウは問題なく下り、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4。フィニッシュした三原選手はガッツポーズし、感極まったような表情を見せました。得点は140.40点でフリー3位、総合5位と順位を上げました。
 今シーズン苦戦しているショートは、キーポイントだった3+3を決め好調なスタートを切ったものの、ほとんどミスすることのない2アクセルで転倒と、全日本の魔物に足をすくわれた形になりました。ですが、フリーはいつもどおりの三原選手の流れの途切れないなめらかな演技で見事に挽回しました。ただ、ショート5位から総合3位まで追い上げた1年前とは違って、今年は3位まで6点以上の点差があり、フリーに強い三原選手といえども台乗りはかなり厳しい状況でしたね。やはりショートで後れを取ってしまうと実力が拮抗している中で逆転するのは至難で、逆に言えばフリーに絶対の自信を持っている三原選手としてはショートさえクリアすればというところだったと思うのですが、そのショートを完璧にしなければいけないという重圧が演技全体をぎこちなくさせていたように感じました。
 目標のオリンピックには届きませんでしたが、今季はまだ四大陸選手権も残っています。三原選手にとっては昨年優勝した思い出深い大会だと思いますし、五輪出場というプレッシャーから解放されることでようやく三原選手らしいのびやかさも戻ってくるでしょうから、次戦こそはショートもフリーも笑顔で終われることを祈っています。



 ここまで女子の1~5位の選手について書いてきましたが、6~8位の選手、そしてペアの結果については後編で書きますので、記事アップまでもうしばらくお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、坂本選手のフリーの画像、紀平選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宮原選手の画像、坂本選手のSPの画像、紀平選手のSPの画像、樋口選手の画像、三原選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2017-12-25 23:54 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 グランプリファイナル2017が12月7日から10日にかけて行われましたが、同時にジュニアのグランプリファイナルも開催され、日本からは男子の須本光希選手、女子の紀平梨花選手の2人が出場しました。そんなジュニアグランプリファイナル(以下、JGPF)の模様をざっくりと書いていきます。

ISU Junior Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

《男子シングル》


 まずは男子の結果からです。
 男子はアメリカのアレクセイ・クラスノジョン選手が2位に約19点差をつけて圧勝。SPで全てのエレメンツで軒並み高い加点を積み重ね、自己ベストをマークして首位発進すると、フリーは冒頭で大技4ループに挑戦、着氷するもアンダーローテーション(軽度の回転不足)に。しかしその後はほぼノーミスでまとめ、フィニッシュでは派手なガッツポーズ。自己ベストとなる155.02点でフリーも1位となり、完全優勝でJGPFを初制覇しました。
 高いポテンシャルの持ち主でありながら、ファイナルや世界ジュニア選手権といった大舞台ではなかなか実力を発揮し切れずにいたクラスノジョン選手。4ループ成功こそなりませんでしたが、ようやく本領を出し尽くせたのかなと思いますね。4ループを始め、3アクセルも得意ですし、コンビネーションジャンプの2つ目に3ループをつけられるという点でバランスの取れた選手だと思いますし、ジャンプ以外の部分も以前と比べて上手になったなと感じるので、今後が非常に楽しみです。

 2位は同じくアメリカのカムデン・プルキネン選手。SPは3+3が3+2となり、スピンでもミスがありましたが、それでもパーソナルベストで5位につけます。そしてフリーは前半に固めたコンビネーションジャンプ3つを全て高い質で決め、後半の単独ジャンプ4本のうち、3フリップが2回転になるミスはありましたが、スピンは全てレベル4とそつなくまとめ、自己ベストをマークしフリー2位、トータルでも2位と順位を大きく上げました。
 ショートこそ出遅れましたが、フリーは実力をほとんど出し切ったと言える内容で素晴らしかったですね。4回転こそない選手ですが、3回転ジャンプの基礎がしっかりしているというのがうかがえる演技でした。

 そして日本の須本選手は3位に入り、日本男子としては7人目となる表彰台に立ちました。
 SPで鍵を握る3アクセルをまず決めて波に乗る形でその後のエレメンツも丁寧にこなし、自己ベストを4点近く更新して3位と好発進。フリーは冒頭の3アクセルこそ転倒しましたが、その後は切り換えて全てのジャンプを大きなミスなく着氷。自己ベストに近いスコアでフリーも3位、トータルでは自己ベストを叩き出し総合3位で銅メダルを手にしました。
 須本選手にとって初めてのJGPFでしたが、そこまで過度な緊張感を漂わせることなく、落ち着きの感じられる演技でしたね。3アクセルの安定や、スピン、ステップのレベルアップはこれからの課題ですが、今回接戦の中で表彰台に立てたということは彼にとって非常に得がたい財産と自信になるでしょうから、この経験を活かして、全日本選手権、さらには来年の世界ジュニアでも頑張ってほしいですね。

 以下、4位はロシアのマカール・イグナトフ選手、5位も同じくロシアのアレクセイ・エロホフ選手、6位はアメリカのアンドリュー・トルガシェフ選手となりました。4、5、6位の選手はそれぞれ4回転を含むジャンプ構成で挑みましたが、GOEで加点が付くクリーンな成功はありませんでした。4回転のないプルキネン選手、須本選手が2位、3位に入ったということで、ジュニア男子にとって4回転の扱いの難しさが改めて露わになったなという印象を受けました。もちろん練習で跳べているからこそ本番でもチャレンジするわけですが、まだ体のできあがっていないジュニア選手が4回転を完全に操るのはやはり大変なことで、その諸刃の剣がたとえ未完成でリスキーであってもジュニア時代からどんどん挑んでいくのか、ある程度確実性が高まるまでは3回転のみで演技全体の完成度を高めるのか、今後もジュニア男子は主にこの2タイプに分かれそうですし、ジュニアとして成績を残しながらもシニアを見据えてという点でいろんな選択肢、戦略が考えられますね。


《女子シングル》

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 女子は6選手中5選手がロシアという圧倒的ロシア有利のシチュエーション。そんな中で頂点に立ったのはアレクサンドラ・トゥルソワ選手でした。SPはジャンプは全て完璧、また、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とノーミスの演技で、ジュニア女子歴代最高得点となる73.25点で圧巻の首位に立ちます。フリーは冒頭で超大技の4サルコウに挑戦、しかし回転不足であえなく転倒してしまいます。後半に6つのジャンプ要素を固め、その最初の3ルッツ+3ループは着氷が若干詰まりますが、以降のジャンプは全てクリーン。フリー2位となる132.36点をマークし、トータルでは2位の選手を約1点差でかわして金メダルを獲得しました。
 シリーズ2連勝でファイナルに進み、優勝候補筆頭だったトゥルソワ選手。その期待どおりの演技でしたね。惜しくも4サルコウは初成功なりませんでしたが、練習ではきれいに成功させる姿も見られていますので、今季中の成功も充分ありえるのかなと思います。ファイナリスト6人中最年少ということで、表現面ではさすがに初々しさ、幼さも感じられましたが、演技前、演技中の表情はすでに一人前のアスリート、ファイターといった雰囲気で、今季をスタートとしてトゥルソワ選手がどんな選手に育っていくのか、今から楽しみに思いますね。

 2位はシリーズランキング3位のアリョーナ・コストルナヤ選手です。SPは全てのエレメンツで加点1点以上を稼ぎ、首位と僅差の2位につけると、フリーは7つのジャンプ要素を全て後半に固めた攻撃的な演技をパーフェクトに滑り切り、自己ベストでフリー1位となりましたが、トータルでは惜しくも2位にとどまりました。
 上述したトゥルソワ選手と同じエテリ・トゥトベリーゼコーチ門下生のコストルナヤ選手。トゥトベリーゼチームではすっかり主流となったほとんどのジャンプを演技後半に組み込むという戦法の中でも、最上級と言える全ジャンプを後半に跳ぶ戦略を取っていますが、今回もその全てをしっかりと跳び切り、ベストを出し尽くしましたね。トゥルソワ選手にはわずかに及びませんでしたが、コストルナヤ選手も優勝しても全くおかしくない演技でしたし、次に2人が対戦した時に一体どちらが上回るのか、ライバル物語としても興味深いなと思います。

 3位はシリーズランキング5位のアナスタシア・タラカノワ選手です。SPは2つのジャンプを後半に組み込んだ構成をきっちりこなしパーソナルベストで3位。フリーは6つのジャンプを後半に跳んで、こちらもノーミス。ショートに続き自己ベストで3位、総合3位と安定感を見せつけました。
 1、2位の2人と同じくトゥトベリーゼ門下生のタラカノワ選手。JGP2戦目のクロアチア大会ではフリーで大崩れするなど脆さも露呈していましたが、今回はしっかりと自分の演技に集中して、メダル争いの緊張感の中でも自分のペースを保てているのが滑りからもうかがえましたね。

 そして、4位に入ったのが唯一のロシア以外の選手となった日本の紀平梨花選手です。
 SPは規定のため得意の3アクセルは入れられず。しかし2アクセルや3ルッツで片手を上げて跳ぶ工夫を取り入れ、得点源の3+3も確実に決め、わずかながら自己ベストを更新して4位につけます。フリーは2本の3アクセルを組み込み、まずは国際大会では成功例のない超大技3アクセル+3トゥループに挑み、これをパーフェクトに決め、しかも1.86点という極めて高い加点も得ます。ですが、直後に跳んだ2本目の3アクセルは力んだのかパンクして1回転に。次いで3フリップも下りたものの、回転が若干足りず減点。しかし後半はジャンプを軽快に次々と下り、映画『道』の壮大な音楽に乗せて伸びやかな滑りを披露し、フリー4位、総合でも4位となりました。
 表彰台こそ届きませんでしたが、フリー冒頭の3アクセル+3トゥループの衝撃はもの凄かったですね。3アクセルだけでもとてつもなく難しいジャンプですが、そこにあんなにスムーズに3トゥループをつけられるというのは、男子選手でさえあれだけ美しく跳べる選手は数えられるほどしかいないんじゃないかなと思います。また、表現面も昨季と比べるとかなり進化したなという印象で、特に身体を大きく見せる使い方や、間合いの取り方など、見違えるように上手になっていましたね。
 全日本ジュニア選手権を制しているのですでに世界ジュニア出場は決まっている紀平選手。次戦はシニアの全日本になりますが、初めての大舞台で独特の雰囲気に気圧されることさえなければ表彰台に乗れる可能性も充分にあり、オリンピック選考には関係のない彼女が、どれだけ上位を引っ掻き回せるかという意味でも本当に楽しみだなと思います。ぜひのびやかな演技を期待したいですね。

 以下、5位はダリア・パネンコワ選手、6位はソフィア・サモドゥロワ選手となっています。
 パネンコワ選手もトゥトベリーゼ門下生で、ショート、フリーともに全ジャンプを後半に跳ぶ戦略で技術点を荒稼ぎできる選手ですが、今回はショートもフリーもステップがレベル3どまりだったこと、また、加点も上位3選手ほどには積み重ねられなかったことが響いて思ったように点を伸ばせませんでしたね。
 サモドゥロワ選手はJGP2戦とも優勝でファイナルに駒を進めた選手ですが、トゥトベリーゼ門下生であるほかの4選手とは違って、名伯楽のアレクセイ・ミーシンコーチに師事しています。ということでフリーは前半に3つ、後半に4つのジャンプ要素というオーソドックスな構成で、技術点で劣勢にならざるをえないというウィークポイントがあったのですが、今大会はまずショートで6位にとどまったことで、なおさら表彰台争いに向けては不利な状況に追い込まれてしまったかなという感じですね。また、ルッツの踏み切りがインサイド気味になる癖があり、そのあたりが修正されないと、群雄割拠のロシア女子の中で生き残るのは厳しいかもしれません。
 今回女子はショートからフリーへと順位の変動がなかったということで、男子とは違って跳ぶジャンプにそこまで大きな違いがない女子においては、まずショートで少しでもリードしてジャッジにより強い印象を与え、勢いをつけてフリーに臨むというのがいかに重要かというのを感じさせられる試合でしたね。一方で、4サルコウに挑んだトゥルソワ選手、3アクセルを成功させた紀平選手の存在というのはしばらくなかった新たなムーブメントでもあり、シニアも含め多くの女子選手が同じようなジャンプ構成を組む中で新鮮な驚きと可能性を与えてくれて、今後の女子フィギュア界の多様性の幅がより広がっていくといいなと感じましたね。


《ペア》

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 ペアはオーストラリアのエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組が優勝。ショートはミスをスロージャンプのわずかな着氷ミスのみに抑え、首位と僅差の2位につけます。フリーは序盤のサイドバイサイドの3サルコウで転倒がありましたが、その後は立て直してノーミスでまとめ、2位のペアを0.84点差でかわして逆転での初優勝を射止めました。昨季の世界ジュニア王者に輝いているアレクサンドロフスカヤ&ウィンザー組ですが、JGPF制覇は初めて。オーストラリアのペアが優勝すること自体も初めてで、歴史に残る快挙を成し遂げました。
 そして小差で2位となったのはロシアのアポリナリーア・パンフィロワ&ドミトリー・リロフ組です。SPでトップに立ち、フリーも大きなミスなく演じ切りましたが、元々技術点の基礎点でアレクサンドロフスカヤ&ウィンザー組とは差があることもあって、フリーだけだと3位となり、トータルで逆転を許しました。
 3位もロシアのダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキン組。ショートはスロー3ループで転倒し3位にとどまり、フリーはスロージャンプやソロジャンプで細かな着氷の乱れはあったものの大崩れすることなくまとめフリー2位、トータルでも2位まで0.07点差と追い上げましたが、惜しくも3位となりました。
 以下、4位は中国の高誉萌(ガオ・ユーメン)&解衆(シー・ジョン)組、5位はロシアのアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組、6位もロシアのアナスタシア・ポルヤノワ&ドミトリー・ソポト組となっています。


《アイスダンス》

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 アイスダンスを制したのはロシアのアナスタシア・スコプツォワ&キリル・アリョーシン組。SDで首位発進すると、FDも隙のない演技で首位の座を明け渡すことなく、完全優勝で初制覇に花を添えました。
 2位は昨季の世界ジュニア銀メダリスト、アメリカのクリスティーナ・カレイラ&アンソニー・ポノマレンコ組です。SDは首位と0.08点差の2位。FDはツイズルがレベル2になる取りこぼしがあり、スコプツォワ&アリョーシン組に差を広げられましたが、それでも2位のポジションはしっかりと死守しました。
 3位はロシアのソフィア・ポリシュチュク&アレクサンデル・ヴァフノフ組。ショート、フリーともに目立った取りこぼしなくまとめ、初出場ながら表彰台に立ちました。
 以下、4位はロシアのソフィア・シェフチェンコ&イゴール・エレメンコ組、5位もロシアのアリーナ・ウシャコワ&マキシム・ネクラソフ組、6位はカナダのマージョリー・ラジョワ&ザカリー・ラガ組となりました。



 JGPFの記事は以上です。全体的に今年もロシア勢の活躍が目立つ結果となりましたが、男子はアメリカ勢がワンツーフィニッシュしフィギュア大国としての矜持を示す結果に。アメリカ男子の1、2位独占は2007年にアダム・リッポン選手、ブランドン・ムロズさんがワンツーフィニッシュして以来、実に10年ぶりで(この年は3位もアメリカのアーミン・マーバヌーザデーさんでアメリカの表彰台独占でした)、もちろんジュニアで活躍した選手がそのままシニアでも第一線で活躍できるとは限らないのですが、それでも男子フィギュア界におけるアメリカ勢の復権を予感させる結果と言えますね。
 女子は相変わらずロシアが無双状態ですが、その中で3アクセルを武器に4位に食い込んだ紀平選手の存在感はひときわ異彩を放っていたと思いますし、間違いなく女子フィギュア界に新しい風を吹き込んだと言えるのではないでしょうか。
 さて、そうこうしているあいだに早くもシーズン前半の大一番、全日本選手権が開幕です。どんなオリンピック代表メンバーとなるのか、ドキドキしながら見守りたいと思います。では。


:男子のメダリスト3選手のスリーショット画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、スケート情報サイト「icenetwork」の公式サイトのフォトギャラリーから、女子メダリスト3選手のスリーショット画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
ジュニアグランプリシリーズ17/18について 2017年10月20日
世界ジュニア選手権2018―ロシア勢全種目制覇 2018年3月19日

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by hitsujigusa | 2017-12-21 16:17 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 12月7日から10日にかけて日本の名古屋で行われたグランプリファイナル2017。前回の男子&ペア編に続き、今回は女子&アイスダンス編をお送りします。
 女子を制したのは今季シニアデビューしたばかりのロシアの新星、アリーナ・ザギトワ選手です。トータルで自己ベストをマークし、シニア1季目にして初優勝の快挙を達成しました。2位は同じくロシアのマリア・ソツコワ選手、3位はカナダのケイトリン・オズモンド選手となりました。
 アイスダンスはフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が世界最高得点を塗り替え、圧巻の初優勝を果たしました。

ISU Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は昨季の世界ジュニア女王、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手です。

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 SPはスピンで幕を開け、続いてステップシークエンスと、丁寧に確実にこなしてレベル4を獲得。後半に入りようやくジャンプが登場し、最初の3ルッツ+3ループを完璧に成功させて加点1.2を得ると、続く3フリップは若干着氷で乱れたものの最小限のミスに抑え、最後の2アクセルも成功。終盤の2つのスピンも問題なくクリアし、自己ベストとなる76.27点で2位と好発進します。
 フリーもジャンプは全て後半で、前半はコレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスを比較的ゆったりした曲調の中でメリハリをつけながらこなしていきます。そして後半、最初はショートできれいに決めた得点源の3ルッツ+3ループ、これをクリーンに回り切って着氷すると、2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプでバランスを崩しかけるも大きなミスなくまとめ、3+2+2も成功。次の3ルッツでも着氷ミスによる減点はありましたが、3サルコウ、3フリップ、2アクセルと終盤のジャンプは軽やかに決め、フィニッシュしたザギトワ選手はホッとしたような笑みを浮かべました。得点は147.03点でフリー1位、トータルでは223.20点とパーソナルベストをマークし1位となり、逆転で金メダルを手にしました。
 ショート、フリーともに細かなミスはありましたが、大勢に影響を及ぼすような致命的なミスはなく、シリーズ2戦と変わらない安定感を発揮しましたね。そのシリーズ2戦に関してはショートで出遅れて、フリーで驚異の追い上げを見せるというパターンが続いていたのですが、今回はショートでもミスを最小限にとどめて首位と僅差の2位につけ、フリーでも大きなミスはなしと、ザギトワ選手にとって理想的な試合運びができたのではないでしょうか。ファイナル初出場とあってさすがに緊張感の感じられる場面もありましたが、その中でも自分のペースを崩すことなく平常どおりの演技に徹する姿は腹が据わっているなという感じがしますし、シリーズ2戦での課題をしっかり克服してきたのもお見事でした。
 次戦のロシア選手権はまた今回とは違うプレッシャーがかかる試合になると思いますが、ここまでのシーズンで得た経験を活かして頑張ってほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 2位に入ったのはロシアの成長株、マリア・ソツコワ選手です。

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 SPはまず得点源の3ルッツ+3トゥループから、両方のジャンプで片手を上げて跳び1.4点の加点を得ます。後半に組み込んだ3フリップ、2アクセルもクリーンに着氷。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と隙のない演技を披露し、パーソナルベストとなる74.00点で4位につけます。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループ、これを確実に決めると、次いで3フリップも正確な踏み切りと着氷で加点1.4点を引き出します。後半に5つのジャンプ要素を固め、その最初の3ループは若干着氷で身体が傾いたものの、直後の3+1+3の高難度の連続ジャンプはきっちり成功。さらに3ルッツ、終盤の2アクセル+2トゥループ、2アクセルと全てクリーンに決め、ソツコワ選手は控えめながらも安堵したように微笑みました。得点はショートに続き自己ベストの142.28点でフリー2位、総合でも2位となり、銀メダルを獲得しました。
 今大会ショート、フリーともに全選手中最も安定感を発揮したと言えるソツコワ選手。昨シーズンは自身の高身長に対応し切れていなかったためか回転不足も多く見られましたが、今季はその癖もかなり修正されたように感じます。プログラムもソツコワ選手のエレガンスさ、可憐さを存分に活かした作りとなっていて、さらに演技全体で緩急をつけられるようになれば演技構成点の得点アップも望めるのかなと思いますし、まだまだ伸びしろの大きい選手ですね。
 オリンピック選考に関しては、ソツコワ選手といえども代表の座はまだ確定的ではありませんが、ロシア選手権でも今回のような演技ができればぐっとオリンピックは近づいてくるでしょうね。


 3位となったのは世界選手権2017銀メダル、カナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 ショート冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループ、これを抜群のスピードと高さで決め1.4点の加点を得ると、続く3ルッツは踏み切りのエッジが不正確とされたもののしっかり加点を引き出します。後半の2アクセルも難なく下り、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4に加え、加点は1点以上と高い質でまとめ、77.04点と世界歴代6位となる自己ベストを叩き出し、トップに立ちます。
 フリーもまずは3フリップ+3トゥループ、ショートに続いてパーフェクトに決めて1.6点の加点を獲得。さらに、2アクセル+3トゥループ、3ルッツも成功させ前半を最高の形で終えます。しかし後半に入ると、3ループが2回転に。3フリップはきれいに着氷しますが、3サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。最後の2アクセルからの3連続ジャンプは成功させたものの、尻すぼみの演技となってしまい、演技を終えたオズモンド選手は疲れたように顔を曇らせました。
 昨季から継続している「パリの空の下/ミロール」のSPはいつもどおりの安定感でしたが、懸念だったフリー後半は予想どおりと言ったら失礼かもしれませんが、やはり崩れてしまいましたね。演技序盤のパワーがどうしても後半では萎んでしまうのがもったいないのですが、それでも一つ一つのエレメンツは手を抜くことなくしっかりこなしているので加点は稼げますし、演技構成点での評価も高いので、オリンピックの表彰台候補であることに変わりはないですね。ショートに関してはオズモンド選手本人も余裕と自信を持って臨めていると思いますので、あとはフリーの完成度をどれだけ高められるか、ミスを最小限にとどめられるか、カナダ選手権を経て、オリンピックでショート、フリーともに完成されるのを楽しみにしたいですね。


 惜しくも表彰台まであと一歩の4位だったのは、イタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

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 SP冒頭は得点源の3トゥループ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプが2回転となってしまいます。直後の3ループはスムーズな流れで決め、後半の2アクセルも問題なし。ステップシークエンス、スピンは全部レベル4とそつなくこなしますが、コンビネーションジャンプのミスが響き、72.82点で6位にとどまります。
 フリーは3+3なしの構成で臨み、まず3フリップ+2トゥループを完璧に下りて1.3点の加点を得ると、続く単独の3フリップもパーフェクト。さらに3ループは加点1.5と前半のジャンプを申し分ない出来でクリアします。後半最初の3トゥループもノーミス。続いて2アクセル+1ループ+3サルコウでしたが、これは3つ目が2回転に。2アクセルは決め、最後の3+2はファーストジャンプで氷に手をつきかけますが何とかこらえセカンドジャンプに繋げます。最終盤のコレオシークエンス、ステップシークエンスでは2点という極めて高い加点を得るなど本領を発揮し、フィニッシュでは両手を合わせて喜びを抑えきれないというように破顔しました。得点は自己ベストに0.78点と迫る141.83点をマークしフリー3位、総合4位と順位を上げました。
 ショートもフリーも細かなミスはあったのですが、全体を通してコストナー選手らしさ、そして彼女の滑る喜びというのが滲み出るような素晴らしい演技でしたね。ジャンプの難度はほかの5選手と比べて圧倒的に劣りますが、それらを補って余りある表現力というのがやはり大きな武器となっていて、シリーズを勝ち残ったファイナリストたちというのは全員極めて素晴らしいスケーターですが、その中でもコストナー選手の滑りによって生み出される空気感や世界観というのはまた別次元というのを改めて感じて、思わず見とれため息がこぼれてしまいました。また、ステップはもちろん、ジャンプもスピンも非常に高い加点を引き出せるので、技術点でも充分に点を稼げますし、何より過去3度のオリンピックの経験というのはほかの誰も持っていない最強の強みであり、総合的に見てオリンピックでコストナー選手がメダルを取る可能性は大いにあるのではないかなと思います。
 4度目のオリンピックでコストナー選手がどんな集大成の演技を披露してくれるのか、期待ですね。


 5位となったのは日本のエース、宮原知子選手です。

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 SP冒頭は今季まだクリーンな成功がない3ルッツ+3トゥループでしたが、これをしっかり回り切って着氷します。後半の3ループ、2アクセルも危なげなく下り、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と完璧にまとめ、パーソナルベストに0.03点と迫る74.61点で3位と好位置につけました。

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 フリーはまず得意の3ループから、これはクリーンに回り切って成功させます。次いで得点源の3ルッツ+3トゥループでしたが、高さが足りず両ジャンプともアンダーローテーションと判定されます。続く若干苦手としている3フリップも勢いに欠け回転不足に。スピン2つとステップシークエンスは丁寧にこなしてレベル4を獲得し勝負の後半、最初の3+2+2を着氷すると、2アクセル+3トゥループも問題なく下ります。3サルコウ、2アクセルと残りのジャンプも確実に決め、最後は柔軟性を活かした美しいレイバックスピンで締めくくると、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。ただ、得点はジャンプの回転不足が響き138.88点と伸び切らずフリー4位、総合5位と表彰台には届きませんでした。
 世界女王のエフゲニア・メドベデワ選手の辞退により、3年連続となるファイナル出場のチャンスが巡ってきた宮原選手。結果というよりも全日本選手権に向けた実戦感覚を養う場として臨み、SPは思い切りの良い演技でキャリアベストと言っても過言ではない演技を披露。フリーは序盤こそ慎重さが目立ち回転不足が続きましたが、そこから中盤の軽快かつ滑らかなステップシークエンスを経て、後半に入るとどんどんスピード感と力強さを増していって、息を呑むような迫力が感じられました。元々繊細で優雅な表現力の持ち主ではありましたが、左股関節の疲労骨折によって休養せざるをえなかった時期、表現力向上やスケーティング強化に力を入れてきたというのが、一つのプログラムの中での緩急や身のこなしの使い分けの巧みさからヒシヒシと伝わってきました。正直個人的にはフリーの演技構成点がオズモンド選手より下というのは納得がいかないのですが、ジャッジの宮原選手に対する評価が高まっているのは間違いないですから、一歩一歩着実にフィジカルを100%の状態に戻していけば、技術点も演技構成点ももっともっと上積みしていけるでしょうね。
 たった2枠しかない五輪代表の切符を狙う全日本選手権は、栄光も挫折も経験してきた宮原選手といえども難しい試合になるでしょうが、自分のペースで順調に調整することさえできれば“ミス・パーフェクト”の名にふさわしい演技が見られると思うので、楽しみにしたいですね。


 6位は日本の有望株、樋口新葉選手です。

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 SPは得意の2アクセルから、余裕たっぷりに成功させ1点の加点を得ます。後半に入り鍵となる3ルッツ+3トゥループもクリーンに着氷。最後の3フリップは踏み切りのエッジが不正確とされわずかにマイナス評価となりますが、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4で、特にステップシークエンスでは躍動感に満ち溢れた滑りで観客を沸かせました。得点は73.26点で5位発進とします。

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 フリーも冒頭は2アクセルで、これはいつもどおり危なげなく着氷。続いて3ルッツ+3トゥループはいつもより高さが低めとなりましたがノーミスでまとめます。スピンを挟んで中盤の3サルコウはパンクして2回転に。そして後半の3ルッツ+3トゥループは、3ルッツが2回転となって予定どおりとはならず。直後の3ループはクリーンに決め、次の2アクセルに急遽3トゥループを付けますがオーバーターンの着氷に。3フリップ+2トゥループ+2ループは回転は問題ありませんでしたが、3フリップの踏み切りのエッジが不正確だったことにより減点。終盤のステップシークエンスやコレオシークエンスは丁寧にこなしそれぞれ1.4点の加点を獲得しましたが、実力を発揮し切れずフィニッシュした樋口選手はがっくりと肩を落としました。得点は128.85点でフリー6位、総合6位で初めてのファイナルを終えました。
 今大会は練習からジャンプの感覚が狂っていたとのことで、本番での立て直しに苦慮する様子がうかがえた樋口選手。SPはジャンプの数が少ないということもあって大きなミスなくまとめられましたが、フリーは冒頭から硬さが見受けられ、演技終盤は樋口選手にしては珍しくぐっとスピードが落ちて本来のキレのある滑りは見られませんでした。フリー後はかなり落ち込んでいるような様子で、「去年から何も変わっていない」というような発言もありましたが、たった一度の試合だけで樋口選手がこれまで地道に積み重ねてきたものが否定されるわけではありませんし、ファイナル前の3試合で得たものの方がファイナル1試合で失ったものよりずっと多いはずなので、気を落とさず全日本選手権に向かっていってほしいですね。
 ファイナルは悔しい試合になったと思いますが、樋口選手が1年前よりも強い選手になっているのは間違いないですから、気負いすぎずに自信を持って、全日本では笑顔が見られることを祈っています。



 ここからはアイスダンスです。

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 アイスダンスを制したのは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。SDは非接触のステップ以外は全てレベル4を揃え、軒並み高い加点を積み重ね、パーソナルベストを上回る82.07点をマークし首位発進。FDも2つのステップ以外は全てレベル4で、隅々まで非の打ちどころのない完全無欠に近い演技を披露し、自身が保持する世界最高得点に迫る120.09点を叩き出し、トータルでは自己ベストかつ世界最高を塗り替える202.16点をマークし、初優勝に花を添えました。
 今季は出場した全試合でSD、FDともに1位を逃していないパパダキス&シゼロン組。中国杯でアイスダンス史上初めて総合200点を突破してからというもの敵なしの快進撃を続けていますが、今大会も強敵の世界チャンピオン、テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が背後に迫っているのもお構いなしという感じでしたね。優勝を意識せざるをえないはずのFDも全く硬さを感じさせないゆとりのある滑りでしたし、演技構成点も徐々に10点満点を出すジャッジの数が増えてきて、オリンピックの頃にはどうなっているんだろうと今からワクワクします。その前にフランス選手権や欧州選手権があり、また世界最高得点の更新の可能性もありますから、パパダキス&シゼロン組がどこまで点を伸ばしていくかにも注目です。ファイナル初優勝、おめでとうございました。

 2位は現世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。SDは非接触のステップ以外で全てレベル4を獲得し自身が持つ世界最高得点に迫るハイスコアで2位につけると、FDも死角のない演技でパーソナルベストを更新、トータルでも自己最高をマークしましたが、パパダキス&シゼロン組には及ばず連覇は逃しました。
 ショート、フリーともに本当に完璧に近い演技だったと思うのですが、結果的にはパパダキス&シゼロン組に2点以上の差をつけられての2位ということで、ヴァーチュー&モイア組としてはパーソナルベストを更新した嬉しさなどよりも、優勝に届かなかった悔しさの方が大きいんじゃないかなと思います。たった2点差と言えばたった2点差なのですが、アイスダンスではなかなかこの2点差を埋めるのは難しく、パパダキス&シゼロン組が明確なミスでも犯さない限り、この格付けをシーズン中にひっくり返すのは厳しい状況です。それでもオリンピックでは実際に何が起こるかはわかりませんから、ヴァーチュー&モイア組にも五輪金の可能性はもちろんあって、その目標のために二人がこれからの約2ヵ月間で、どのようにプログラムを仕上げてくるか期待したいと思います。

 3位は全米王者のマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。SDは序盤のパターンダンスのレベルが2にとどまる取りこぼしがあり、自己ベストから約1点ほど低い得点で3位。FDは珍しく得意なツイズルで二人のタイミングがずれるミスがあり、その後のステップでもいつもほどの伸びのあるスケーティングではなくレベルも2どまりで、自己ベストから5点以上低い得点でまさかの6位に。しかしトータルでは4位のカップルを0.6点上回り、ギリギリで表彰台を死守しました。
 確かな技術力が最大の武器であるシブタニ兄弟にしては珍しいミスが散見されたフリー。演技後は兄のアレックス選手が特に疲労感を強く漂わせていて、キス&クライで点数が表示されると頭を抱えていましたが、何かいつもとは違う感じがあったのか、体の調子が悪かったのかはわかりませんが、予想外の演技ではありました。普段ミスらしいミスをするということがほとんどないカップルですので、滅多にないことが起こって二人の動揺も画面越しに伝わってきましたが、この経験も必ず今後の競技人生に活きてくるはずですから、全米選手権では満足のいく演技となることを願いたいですね。



 GPファイナル2017、女子&アイスダンス編は以上です。
 女子は大本命のメドベデワ選手が不在となり、シリーズのポイントランキングでメドベデワ選手に次ぐ2位のザギトワ選手が優勝と、下馬評どおりの結果でした。ただ、2位がソツコワ選手というのは少し意外で、驚くべき大技や目を引くような新鮮な特徴を持っている選手ではないのですが、確実に安定感をつけてきているなと感じました。そのソツコワ選手から5位の宮原選手までは3点差もなく、本当にちょっとしたミスや取りこぼしで順位が大きく左右された試合となり、現在の女子フィギュア界の混沌とした勢力図を如実に反映した結果と言えるのではないでしょうか。
 アイスダンスは予想どおりのワンツースリーの顔ぶれ。4位以下も順当な順位でしたが、あのシブタニ兄妹でさえもミスをすれば銅メダルは危うかったということで、試合は何が起こるかわからないなと改めて感じさせられましたね。
 ほとんどの選手は次戦は国内選手権になると思いますが、当ブログではこのファイナルと同時に開催されたジュニアのGPファイナルについての記事を次はアップしたいと思いますので、しばしお待ちください。では。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像、ザギトワ選手の画像、コストナー選手の画像、樋口選手の画像、アイスダンスメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ソツコワ選手の画像は国際スケート連盟フィギュアスケート部門の公式フェイスブックページから、オズモンド選手の画像、宮原選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2017・男子&ペア―ネイサン・チェン選手、ファイナル初制覇 2017年12月12日

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by hitsujigusa | 2017-12-13 02:42 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 グランプリシリーズ全6戦を戦い抜いたトップ6のみが集まるグランプリファイナルが今年も行われました。今年の開催地は日本の名古屋でしたが、オリンピックの前哨戦としても見どころの多い、熱い試合となりました。この記事では男子とペアについてお伝えします。
 男子を制したのはアメリカのネイサン・チェン選手。チェン選手本来の演技とはなりませんでしたが、攻めの演技で接戦をものにしました。2位は日本の宇野昌磨選手。地元名古屋での試合でしたが、わずかな差で惜しくも優勝を逃しました。3位はロシアのミハイル・コリヤダ選手となっています。
 一方、ペアは世界選手権2017銀メダルのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が完全優勝を果たしました。

ISU Grand Prix Final 2017/18 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 優勝は全米王者のネイサン・チェン選手です。

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 SP冒頭は代名詞の大技4ルッツ+3トゥループ、これはファーストジャンプでバランスを崩しかけながらもセカンドジャンプに繋げます。後半に跳んだ4フリップは若干着氷が乱れ減点。最後の鬼門の3アクセルはノーミスでまとめ、終盤のステップシークエンスではエネルギッシュかつ緻密な滑りで加点2.1点という高評価を得、自己ベストに迫る103.32点で首位発進します。
 フリーもまずは4ルッツ+3トゥループから、これを完璧に軽々と決めて加点2を獲得。しかし続く4フリップはショートに続き着氷が乱れて減点されます。さらに4サルコウは2回転にと、前半はミスが相次ぎます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の4ルッツはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で下りてきてしまい着氷も乱れます。次の4トゥループからの3連続ジャンプはクリーンに下りますが、直後の4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。最後の3アクセル+2トゥループ、3ルッツは成功させましたが、フィニッシュしたチェン選手は残念そうに肩を落としました。得点は183.19点でフリーは2位でしたが、総合では1位となり、初優勝を遂げました。
 優勝したスケートアメリカから中1週間でのファイナルでしたが、そういった疲れや調整の難しさがあったのか、全体的にジャンプは安定しませんでしたね。フリーでは4回転に6本挑んできれいに決まったのは2本のみと、特定の4回転というよりは全体的に不安定でした。スケートアメリカの時もフリーは似たような演技内容だったので、その時の感覚を引きずっていたのか、約2週間という短期間で調子を上げられなかったのかなという印象です。それだけ4回転というのはチェン選手ほどの選手にとってもデリケートで、難しい技なのだということを改めて感じさせられますね。
 ただ、それでもファイナル優勝と、昨季の四大陸選手権に続きビッグタイトルを獲得し、大舞台での強さを発揮したチェン選手。最重要の大会としては全米選手権に照準を当てているでしょうし、このファイナル制覇も通過点に過ぎないと思うので、全米選手権ではより良い、納得のいく演技をして、オリンピックに繋げてほしいですね。ファイナル初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは日本の宇野昌磨選手です。

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 SPは代名詞の4フリップから、これをクリーンに決めて1点以上の加点を得ると、スピン、ステップシークエンスはレベル4に加えてどちらも1点以上の加点と丁寧にクリア。そして後半の4トゥループ+3トゥループを完璧に着氷し加点2を獲得し、残すは得意の3アクセルのみでしたが、着氷後にエッジが滑る形で転倒するという珍しい失敗となり、演技を終えた宇野選手は舌を出し、悔しさをのぞかせつつも破顔しました。得点は転倒による減点1と、演技時間超過による減点1もあり、101.51点で2位となりました。

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 フリーはまず4ループからでしたが、回転が足りずに転倒します。ですが、自身2度目の挑戦となる4サルコウは回り切って着氷し加点も1点以上獲得。さらに3アクセルは完璧な流れで加点2.86点と極めて高い評価を得て、前半のジャンプを終えます。後半は4フリップから、これを若干耐えながらも成功させると、続いては4トゥループでしたが着氷が大きく乱れます。2本目の4トゥループは空中で回転がほどけダウングレードとなりコンビネーションジャンプにもできず。続く3アクセル+1ループ+3フリップは完璧に下り、最後の3サルコウも難なく成功。最後までスピード感溢れる滑りで観客を魅了しましたが、細かなミス多発の演技にフィニッシュした宇野選手は天を仰いで悔しさを露わにしました。得点は184.50点でフリー1位、しかしトータルではチェン選手に0.5点及ばず、惜しくも逆転優勝はなりませんでした。
 ショートでは3アクセルの着氷後に通常よりエッジが傾き転倒、さらに演技が1秒タイムオーバーで減点1、そしてフリーでは練習で成功率の高い4トゥループで2本ともミス、また、2本目の4トゥループが空中分解したことによって3トゥループの本数を勘違いし、最後の3サルコウにセカンドジャンプをつけられるはずがつけられず結果的にコンビネーションが1つのみにと、宇野選手にしては珍しいシーンが相次いだ今大会。ですが、本人はそこまで優勝を逃したという意識はなさそうであっけらかんとしていて、ファンからして見れば0.5点差の2位は本当に惜しいと思ってしまいますし、もしショートのタイムオーバーがなければ、もしフリーで最後の3サルコウに2トゥループでもいいから付けていたら等々、“タラレバ”を想像してしまうのですが、宇野選手自身がその時々、その場面場面でのベストを尽くした結果の2位ですし、何より本人があれだけすっきりと晴れやかな表情をしているのを見ると、こちらもまあいいかという気がしてしまいますね。
 改めて今回感じたのは宇野選手の試合や演技に対するスタンスの独特さで、順位や点数ではなく、いかに自分がその試合に向けてしっかり練習を積めて、そしてどれだけ演技でベストを尽くせたか=攻めることができたかということが最重要ポイントなんだなというのがヒシヒシと伝わってきました。そして、その姿勢はシニア1季目からほとんど変わっていなくて、これだけシニアでの経験を積み重ねるともっと欲も出てきて、新人の頃の気持ちというのが薄れてもおかしくないと思うのですが、彼に関しては良い意味で全く変わっていなくて、周りの環境がどうであれ常にマイペースを保てていて、周りの自分を見る目やかけられる言葉にも全然翻弄されていないというのは、もの凄いことだなと再認識しました。
 次戦はオリンピック出場権が懸かる全日本選手権ですが、きっとその大舞台もいつもの宇野選手らしく淡々と乗り切ってくれると思いますから、また攻めの演技を楽しみにしています。


 銅メダルを手にしたのはロシア王者のミハイル・コリヤダ選手です。

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 SPは今季習得した大技4ルッツから、スピードや高さは充分でしたがあえなく転倒となります。ですが、直後の4トゥループ+3トゥループは完璧な跳躍で加点2。後半の3アクセルもクリーンに決めて1.86点を獲得し、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4とそつなくまとめ、99.22点で3位と好発進します。
 フリーもまずは4ルッツからでしたが、ショート同様に転倒となります。次いで4サルコウも転倒。さらに3アクセルも着氷で乱れ、不穏なスタートに。しかし、後半は4トゥループ+3トゥループを決めると、3アクセル+2トゥループも成功。得点源となる3ルッツ+1ループ+3サルコウもクリーンに下ります。3ループはタイミングが合わなかったのかパンクして1回転となりましたが、最後の3ルッツは軽々と決め、軽快な「エルヴィス・プレスリー・メドレー」を躍動感たっぷりに演じ切りました。得点は182.78点でフリーも3位、総合3位となり、ファイナル初出場にして表彰台に立ちました。
 ショート、フリーともに4ルッツは成功せず、フリーは冒頭の2つのジャンプで転倒ということでどうなることかと少しヒヤッとする滑り出しでもありましたが、その後大崩れしなかったのはコリヤダ選手の最も成長した部分と言えますね。これだけミスがあってもトータル280点台というハイスコアが出ているわけなので、ここにショートもフリーも4ルッツがハマって、些細な凡ミスもなくまとめられれば、まだまだ大幅な上積みができる選手だと思うので、今後のシーズンも楽しみですね。一つ一つのエレメンツの質が高い選手でもあるので、オリンピックでノーミスに近い演技ができればメダル争いに食い込む可能性も大いにあるのではないかと思いますし、ぜひ台風の目のような存在になってほしいですね。もちろんその前にロシア選手権がありますし、そこで出場権を獲得して、さらにはロシアは選手団としての参加が不可能となったので、個人で参加するための資格も認められなければいけませんが、それらがクリアされた際には思いっきり頑張ってほしいと思います。


 4位はロシアの大ベテラン、セルゲイ・ボロノフ選手です。

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 ショート冒頭は得点源の4トゥループ+3トゥループ、これを確実に成功させると、続く3ルッツもクリーンに下りますが、ステップから直ちに跳ばなければいけないところジャンプに入るまでの構えが長かったため減点となります。また、後半の3アクセルも珍しく乱れ、87.77点で5位発進となります。
 フリーもまずは4トゥループ+3トゥループ、これをショートと同じく完璧に決めて加点2を得ると、ショートでミスのあった3アクセルも危なげない跳躍と着氷で加点2.14と上々の出だしとします。しかし2本目の4トゥループは着氷ミス。スピンとコレオシークエンスを挟んで後半、最初の3アクセル+2トゥループ+2ループはしっかり回り切って成功。さらに3ルッツ、3+2,3ループ、そして最後の2アクセルとリズミカルにジャンプを次々と決め、締めくくりのステップシークエンス、スピンも力強くこなし、演技を終えたボロノフ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は178.82点でフリー4位、総合4位と順位を一つ上げました。
 細かいミスはところどころありましたが、今季を通じての安定感は今大会も存分に発揮されましたね。特にフリーは今季一番なんじゃないかというくらいボロノフ選手自身も乗っていて、NHK杯やスケートアメリカはフィニッシュは肩で荒い息をして疲れ切ったというような表情を見せていましたが、今回はそこまで息絶え絶えという感じではなく余裕も感じられて、シーズンの中でも進化しているというのがうかがえましたね。
 ボロノフ選手に関しては、ジャンプの基礎もしっかりしていますし、精神面も非常に充実しているというのは間違いなさそうですから、あとはロシア選手権でいつもどおりの実力を発揮さえすれば、おのずと五輪の切符は近づいてくると思いますので、期待したいですね。


 5位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これをクリーンに成功させると、続く3アクセルもパーフェクトで両方とも1点以上の加点を得ます。しかし、後半の3ルッツは回転が足りず減点。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と安定感抜群で、86.19点で6位につけます。
 フリーは冒頭で大技4ルッツに挑戦、しかしスケートアメリカに続きダウングレードで激しく転倒してしまいます。しかし、直後の3フリップ+3ループは回り切って着氷。次いで2アクセルも問題なく下り、挽回します。後半最初は3アクセルからの連続ジャンプ、これを完璧に決めると、単独の3アクセルも軽やかに成功。3+3はファーストジャンプもセカンドジャンプもわずかに回転不足と判定されますが、終盤の3サルコウ、3ルッツはクリーンにまとめ、“鳥”をモチーフにした物語性豊かなプログラムを終始しっとりと演じ切りました。得点は168.14点でフリー5位、総合5位で大会を終えました。
 2週間前のスケートアメリカではフリー冒頭の4ルッツで転倒し激しく右肩を氷に打ちつけ脱臼。しかしすぐに肩をはめ演技を続け観客から拍手喝采を浴びたリッポン選手。今大会もその右肩に痛みは多少残っているとのことでしたが、ショートもフリーもリッポン選手らしさは変わらずでしたね。細かなジャンプミスはありましたが、ささやかなものですし短期間でも修正は充分可能でしょう。あとはフリーで挑み続けている4ルッツを全米選手権でも組み込むのかどうかという点が注目ですが、リッポン選手の唯一無二の完成された表現力、エレメンツのクオリティーの高さを考えると、4ルッツなしでも3位以上には入れるんじゃないかという気もしますし、一方で爆発力のあるジャンプ構成を組める若手選手もアメリカにはいるので、確率が低くとも4ルッツを外せない事情も理解できますね。やはりアメリカ男子はチェン選手以外は実力が拮抗している印象ですので、リッポン選手がその過酷なレースを勝ち抜いてオリンピックにたどり着くためには、まずはショートでミスをしないこと、そしてフリーで4ルッツのミスを最小限に抑え、そのほかのエレメンツを完璧にまとめる必要があるのかなと思います。
 リッポン選手にとって今回がオリンピックへのラストチャンスになる可能性が高いですから、全米選手権で悔いのない演技をして、あの素晴らしい2つのプログラムを五輪の大舞台でも見せてほしいと思います。


 6位はアメリカのジェイソン・ブラウン選手です。

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 SPはまず鍵を握る3アクセルから、これをクリーンに着氷させ1.43点の加点を得ます。続く3+3はセカンドジャンプでステップアウトしますが、後半の3ルッツは余裕を持って成功。ステップシークエンス、スピンでも軒並み高い加点を積み重ね、89.02点で4位と好位置につけます。
 フリーも4回転は回避。冒頭の3アクセルは何とかこらえて成功。次いで2本目の3アクセルはコンビネーションにしなければならないジャンプでしたが、回転不足で転倒してしまいます。次の3フリップは難なく下り、中盤のステップシークエンスも丁寧に、正確なエッジワークでこなしレベル4に加え、加点1.7点を獲得。そして後半はNHK杯から構成を変更しまず2アクセル+3トゥループでしたが、着氷で若干乱れます。続いて3ルッツ、3ループとクリーンに決めますが、3+1+3の3連続ジャンプは3+1+2に。最後の2アクセルは危なげなく決め、繊細かつダイナミックなプログラムの世界観を全身を使って余すことなく表現しました。得点は164.79点でフリー6位、総合6位と順位を落としました。
 中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手の辞退により、約1週間前に初のファイナル出場が決まったブラウン選手。調整としては難しさがあったと思いますし、各ジャンプもブラウン選手本来のゆとりのある跳躍ではなかったかなと感じました。NHK杯の時も3アクセルに苦戦している印象でしたが、3アクセルはブラウン選手の生命線なので、これが決まってこないと点数的には厳しいですね。ただ、いくつジャンプのミスがあっても表現を疎かにしないのがブラウン選手の凄さでもあって、演技構成点はショートで3位、フリーで2位と確固たる高評価は揺るいでいないので、全米選手権に向けてジャンプの調子を取り戻して、うまくピークを合わせてオリンピックの切符を再びつかんでほしいですね。



 ここからはペアです。

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 金メダルを獲得したのはドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組。ショートは全ての要素を高い質で揃え、自己ベストに0.43点と迫るハイスコアで首位に立つと、フリーは冒頭の3ツイストがレベル3だった以外は全てレベル4で、GOEも全て加点を引き出し、フリーの世界歴代最高得点となる157.25点を叩き出し、トータルでも世界歴代2位のスコアをマークし、圧巻の初優勝を成し遂げました。
 ショート、フリーともにとにかく強かったとしか言いようのない演技でしたね。もちろん世界選手権の銀メダリストなので優勝してもおかしくなかったのですが、ここまでの強さを見せつけて優勝するとは想像以上でした。二人の好調さがピタリと今大会にハマったのでしょうが、スケートアメリカから中1週間でさらに一段階も二段階もレベルを上げてきたというのは驚くべきことです。また、結成してからまだ4季目ということを考えても(実戦デビューからは3季目)、ほかのトップペアと比べて日が浅い中でこれだけ年々急激に進化できるというのは、よほど二人の相性が良くないとできないことだと思いますし、そういったパートナーを見つけられたというのはお互いにとって本当に幸運なことだったのだなと今更ながら感じましたね。
 オリンピックの優勝候補としてますます期待を高める演技を見せてくれたサフチェンコ&マッソ組。オリンピックで金メダルを手にするためには再び今回のような演技が求められると思いますが、1シーズン中に二度もこれほどまでの演技をするのは大変だと思います。オリンピック前には欧州選手権もありますから、うまく調整してオリンピックでの最高の演技を楽しみにしたいですね。

 2位となったのは現世界チャンピオン、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組です。SPは冒頭の3トゥループで男性の韓選手が転倒するという滅多にないミスがあり、首位と僅差の3位にとどまります。フリーもサイドバイサイドの3サルコウで韓選手に着氷ミスがあったものの、高難度の大技4ツイストや3+2+2の3連続コンビネーションジャンプ、2つのリフトなど得点源となるエレメンツは完璧に成功させ、NHK杯でマークした自己ベスト(=当時の世界最高得点)に0.03点と迫るハイスコアで2位と追い上げましたが、サフチェンコ&マッソ組には届かず初優勝はなりませんでした。
 ソロジャンプにも安定感のある隋&韓組にしては珍しくショート、フリーともにミスがありましたが、演技自体の完成度はさすがのもの。フリーはしっかり巻き返したのですが、ショートで勢いをつけたサフチェンコ&マッソ組を止めることはできませんでしたね。正直、今回のファイナルは隋&韓組の優勝はほぼ間違いないであろうと思っていたのでこの結果は意外でしたが、ジャンプは水物とよく言われますので、韓選手にとってはその調子の悪い時にあたってしまったのかなという感じですね。根本的な技術面の問題があるわけではないと思うので、長いシーズンの中での小休止ととらえるくらいが良いのかもしれません。とはいっても3試合連続でフリー150点台、トータル230点台ですから、すごいことに変わりはないのですが。
 残念ながらファイナル初制覇はなりませんでしたが、それでもオリンピックの優勝候補筆頭であることは間違いないですから、今大会で得た課題や収穫を活かして、オリンピックではベストな演技ができるよう祈っています。

 3位は世界選手権2015、2016のチャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。SPはサイドバイサイドの3ルッツでこらえる着氷となり、スロー3ルッツでも氷に手をつくミスを犯し5位にとどまります。フリーは大技のスロー4サルコウは転倒、3+2+2のコンビネーションジャンプが3+2+1となるミスがありましたが、そのほかのエレメンツはおおむねコンスタントにまとめてフリー3位、総合3位と順位を上げました。
 演技としてもスコア的にもデュハメル&ラドフォード組の絶好調だった時にはまだ少し遠いかなという内容でしたが、その中でも接戦の3位争いを制することができたというのはシーズン後半に向けて貴重な財産であることは間違いないでしょう。現在世界をリードしているサフチェンコ&マッソ組、隋&韓組とはエレメンツの精度において差があるように思いますが、デュハメル&ラドフォード組もクリーンにまとめられれば高い加点の付く技を多く持っているペアですし、何といってもトップペアでも稀なサイドバイサイドの3ルッツやスロー4サルコウという武器もありますから、その武器を最大限活かせるフィジカル面とメンタル面のコンディションさえ整えば、オリンピックでも充分優勝争いに絡めるペアだと思いますね。まずはカナダ選手権で納得のいく演技をして、オリンピックに繋がることを願っています。



 GPファイナル2017、男子&ペアの記事は以上です。
 男子は終わってみればシリーズのポイントランキングどおりの順位ということで、順当な結果ではあったのですが、上位3選手はミスが散見される演技となり、4回転多種類複数の時代の弊害も感じさせられました。4回転を3種類以上というのが当たり前になっている中で、ショートはともかくとして、フリーをクリーンにまとめるのは至難の業となっていますが、オリンピックではぜひ極力ミスの少ない演技で優勝争い、メダル争いが繰り広げられることを願いたいですね。
 ペアは私個人の予想とはだいぶ違う方向に行ってしまい、特に世界選手権銅メダリストのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組が5位となったのが最大の予想外ではあったのですが、3位から6位までは約4点差だったので、裏を返せば現時点ではサフチェンコ&マッソ組と隋&韓組の実力が抜きん出ているというのが明確に露わになった試合でもありましたね。となると、オリンピックの銅メダル争いがどうなっていくのか……、今から楽しみです。
 ということで、女子&アイスダンス編に続きます。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、チェン選手の画像、宇野選手の画像、リッポン選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、コリヤダ選手の画像、ボロノフ選手の画像、ブラウン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

【ブログ内関連記事】
グランプリファイナル2017・女子&アイスダンス―アリーナ・ザギトワ選手、パーソナルベストで初優勝 2017年12月13日

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by hitsujigusa | 2017-12-12 02:44 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)