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 平昌五輪が熱狂の中、終了しました。ですが、当ブログではまだまだアップできていない記事がたくさんありますので、できる限り早く掲載していきたいと思います。
 アイスダンスを制したのはバンクーバー五輪金メダリスト、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。すでに輝かしい経歴を持つ彼らに、また一つまばゆい勲章が加わりました。そして銀メダルを獲得したのは前世界王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組、3位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 2度目のオリンピックチャンピオンになったのは世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。

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 SDはまずホールドなしのステップシークエンスを完璧にこなしレベル4を獲得すると、続いて団体戦では取りこぼしのあったパターンダンスも確実にレベル4。さらにパーシャルステップシークエンス、ツイズルとノーミスを揃え、最後のリフトもパーフェクトで、全ての要素でレベル4という圧巻の演技。自身が持つ世界最高得点を塗り替える83.67点で堂々の首位発進を果たします。FDは冒頭のリフトで観客をプログラムの世界観に引き込むと、次いでツイズルもしっかり音に合わせてレベル4。その後も華麗なエッジワークでどんどんスピード感とスケール感を増していき、その中で正確無比なエレメンツを披露して確実にレベル4を並べ、フィニッシュしたヴァーチュー&モイア組は感極まった表情を見せました。得点はパーソナルベストの122.40点でフリーは2位でしたが、トータルでは世界最高得点の1位でバンクーバー五輪以来2度目となる金メダルを手にしました。
 ショート、フリーを通してまさに圧巻としか言いようのない演技でしたね。決してプレッシャーがなかったわけではないでしょうし、金メダルというのを意識しないわけにはいかなかったでしょうが、頭は冷静に、しかし心は情熱的にというのが激しくアグレッシブな滑りから感じられて、魅せられました。また、2シーズンの休養を経て、昨季復帰してからの金メダルですから、若く勢いのままに取ったバンクーバー五輪の金メダルとはまた違う、思い入れの深い金メダルになったのではないでしょうか。
 3月の世界選手権に出場するのかどうかはまだわかりませんが、ひとまずはゆっくり休んで疲れを取ってほしいですね。平昌五輪優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのはGPファイナル王者、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組です。

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 SDはパターンダンスから幕を開けましたが、その前にパパダキス選手の衣装のホックが外れてしまうというアクシデントが発生。しかし二人は演技を続行し、パターンダンス、ノンホールドのステップ、ツイズルと確実にレベル4を獲得。後半のパーシャルステップシークエンスはレベル3にとどまり、終盤のリフトはレベルは4でしたが加点は思ったほど稼げず。得点はパーソナルベストに迫る81.93点で首位と僅差の2位につけました。FD冒頭はツイズルから、二人の動きをぴったり合わせてレベル4を得ます。さらにリフト、ステップと全てのエレメンツを流れの中で、ベートーベンの「月光」に溶け込ませるように演じ切り、演技を終えた二人はこみ上げてくるものをこらえるような表情を見せました。得点は自身が持つ世界最高得点を更新する123.35点でフリー1位、しかしトータルでは惜しくもバーチュー&モイア組に届かず2位となりました。
 SDはパパダキス選手の衣装がはだけるというまさかのアクシデントがあり、その影響なのかどうかはわかりませんが、特に動きが激しくなり胸が露出した最後のリフトはGOEで加点3をつけるジャッジがいる一方、加点1に抑えたジャッジもいて、そのあたりの採点の意味というのが気になりましたね。しかし一夜明けたフリーは気持ちを切り替えて改めて集中し直していて、まさに“月光”の光景が目に浮かぶような静けさと激しさが合わさった滑りは思わず息をするのも忘れてしまうような美しさでした。
 トータルスコアでは惜しくも頂点には及びませんでしたが、ショートもフリーも演技構成点はヴァーチュー&モイア組を上回ってトップで、それだけにショートのあのトラブルというのが得点に響いてしまった可能性を思うと惜しまれるのですが、22歳と23歳というまだまだ若いカップルで、技術的にも表現的にもこれからより一層進化していくことは間違いないと思いますので、今後パパダキス&シゼロン組がどんなふうに世界のアイスダンス界をリードしていくのか、楽しみですね。


 3位は世界選手権2017銅メダリスト、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。

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 SDは全てのエレメンツを安定して大きなミスなくこなしましたが、序盤のパターンダンスがレベル2にとどまる取りこぼしがあり、77.73点で4位発進となります。表彰台を狙うフリーは冒頭のスピンでレベル4を獲得すると、ステップ、リフトとミスらしいミスなくのびやかに要素をクリア。代名詞となっている得意のツイズルでもほぼ全てのジャッジが加点3をつける圧巻の出来で、ローテーショナルリフトがレベル3になった以外はレベル4を揃え、演技を終えた二人は信じられないといった表情を浮かべた後、笑顔で観客の拍手喝采に応えました。得点は自己ベストに0.4点と迫る114.86点でフリー3位、総合3位に順位を上げ、初めての銅メダルを獲得しました。
 ショートは4位と若干ではあるものの出遅れてしまい、表彰台に向けて背水の陣で迎えたフリー。シブタニ兄妹らしい確実性の高い技術力と、兄妹ならではの一心同体ぶりが全て発揮された滑りでしたね。最近はGPファイナル、全米選手権とフリーで順位を落とすという試合が続いていましたので、今回のフリーももの凄い重圧と緊張だったと思うのですが、自分たちの演技に集中し二人らしさを取り戻しましたね。
 シニアデビューシーズンから世界のトップレベルで活躍しているカップルなので、ベテランのような雰囲気も漂う二人ですが、まだ23歳と26歳でのびしろも大きいと思いますから、これからのさらなる躍進に期待したいですね。


 4位は全米王者のマディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組。SDは最後のツイズルこそレベル3でしたが、それ以外はレベル4かつ高い加点を積み重ね、自己ベストの77.75点で3位と好発進します。FDもまずはツイズルを確実にこなし、次いでスピンやステップも丁寧にクリア。しかし終盤のコレオツイズルでドノヒュー選手が転倒し、規定の回転ができず無得点となる痛いミス。技術点を伸ばせずフリー5位、総合4位と表彰台を逃しました。

 5位はOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組です。SDはツイズルとリフトはレベル4でしたが、それ以外の要素はレベル3にとどまり、75.47点で6位に。FDは冒頭のツイズルをミスなくこなすと、その後も目立ったミスなく情感たっぷりに物語を表現し、111.45点でフリー4位、総合5位と一つ順位を上げました。

 6位はイタリアのベテラン、アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組。SDは後半のステップ以外はレベル4と隙のない演技を見せ、パーソナルベストとなる76.57点で5位につけます。FDも全体を通してスムーズな流れで映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の物語を表情豊かに演じ切りましたが、リフトの時間超過による減点1もあり思ったほど得点を伸ばせず、108.43点でフリー6位、総合6位となりました。

 7位はカナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。SDはパターンダンスとリフトでレベル4を獲得しますが、ツイズルでの小さなミスがあり自己ベストから3点ほど低いスコアで8位にとどまります。FDはステップ、スピン、リフトと序盤から順調にエレメンツをこなしましたが、ツイズルでは再びミスがありレベル2に。その後はミスを引きずることなく巻き返しましたが、107.65点でフリー7位、総合7位でソチ五輪と同じ順位となりました。

 8位は同じくカナダのパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組。SDはパターンダンスがレベル2になるなど取りこぼしが目立ち9位。FDはおおむねミスなくクリーンなエレメンツを揃え8位、総合も8位で初めての五輪を終えました。


 日本の村元哉中&クリス・リード組は15位に入り、日本のカップルとして最高位タイをマークしました。

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 SDは冒頭のツイズルをきっちりこなしレベル3を取ると、続く2つのステップ、パターンダンスもレベル3と大きな取りこぼしなくクリア。最後のリフトはレベル4に加え1点以上の加点を得て、63.41点で15位につけます。
 FDもまずはツイズルをクリーンにこなすと、ゆったりしたメロディに乗せてサーキュラーステップシークエンスを優雅かつ丁寧に披露。中盤以降は少しアップテンポな曲調に変わり、それとともに滑りのスピード感もアップ。その中でリフトやスピンを一つ一つ確実に、しかしスピード感を保ってクリアし、レベルの取りこぼしもなく滑り切った二人は表情に充実感を滲ませました。得点は自己ベストに約1点と迫る97.22点でフリー13位、総合15位となり、トリノ五輪の渡辺心&木戸章之組に並ぶ日本勢自己最高位となりました。
 ショート、フリーともに村元&リード組らしさが存分に出た素晴らしい演技でしたね。技術的にもとても安定していて安心感を持って見られたというのもありますが、何より良い演技を届けたいという二人の気持ちがヒシヒシと伝わってくる滑りで、特に坂本龍一さんの音楽を使って“桜”をテーマにしたフリーは、私が日本人だからというのもあるのかもしれませんが、上位のカップルと比べると派手さはないものの、しみじみといいなあと思ってしまう可憐さや清廉さ、繊細さのあるプログラムで、また、結成して3季目とまだ日の浅いカップルではありますが、二人がここまで辿ってきた道のり、物語が感じられる演技で、心に響きました。
 まだまだ村元&リード組の物語は始まったばかりだと思いますし、さらに上のレベルも目指せるカップルだと感じるので、ぜひ次の世界選手権でも力を出し切って笑顔で終わってほしいですね。



 平昌五輪・アイスダンス編は以上です。基本的に目に見てわかる失敗の少ないのがアイスダンスの特徴ですが、さすがにオリンピックとあって経験豊富なカップルでさえも大きなミスをしてしまうという場面がチラホラと散見され、やはり五輪というのは特別なんだなと感じさせられました。その中でもノーミスでショート、フリーを揃えたヴァーチュー&モイア組、パパダキス&シゼロン組というのはトップの中のトップ、まさに別格で、試合とは思えないほどの美しく芸術的な演技を見られたことは至福の時であるとともに、改めてアイスダンスという種目のおもしろさ、魅力を伝えてくれましたね。
 さて、次の記事はいよいよ女子です。しばし記事アップまでお待ちください。


:アイスダンスメダリスト3組の画像、ヴァーチュー&モイア組の画像、パパダキス&シゼロン組の画像、シブタニ&シブタニ組の画像、村元&リード組のSDの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、村元&リード組のFDの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」の平昌五輪特集ページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-27 23:59 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 平昌オリンピック、男子の結果について、前編に引き続きお伝えしていきます。なお、前編はこちらからご覧下さい。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 7位となったのはOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のドミトリー・アリエフ選手です。

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 ショート冒頭は最高難度の連続ジャンプ、4ルッツ+3トゥループで、これを完璧に回り切って決め1.57点の加点を得ます。続く4トゥループも鮮やかに成功。後半の3アクセルもしっかり下り、スピン3つは全てレベル4と取りこぼしなくまとめ、98.98点と自己ベストを大幅に更新して5位と好発進しました。
 フリーはまず4トゥループ+3トゥループから、これを確実に決めて好スタートを切ります。次いで単独の4トゥループでしたが、こちらは転倒。さらに3アクセルも転倒と波乱の滑り出しに。後半は最初の3ルッツを着氷し、3アクセル+2トゥループもクリーンに決めますが、3+1+3は最初のジャンプが2回転に。残りの2つの単独ジャンプは無難に下りましたが、序盤の転倒が響き168.53点でフリー13位、それでもショートのアドバンテージが活きた形で総合7位と入賞しました。
 ショートは見事に4ルッツ+3トゥループを決め、そこから一気に波に乗ってフリーの最終グループ入りと存在感を発揮しました。一方、フリーは序盤から崩れてしまい、後半はまずまず立て直したものの立て直すのに精一杯の演技になったかなという印象なので、やはりショートとフリーを揃えるという点ではまだ不安定さが露呈しましたね。ただ、その中でも7位に食い込んだのは素晴らしいことで、シーズンの前半を考えるとアリエフ選手が五輪で入賞するというのも想像できなかったので、着実に成長しているなと感じます。次戦の世界選手権ではフリーも納得のいく演技ができることを願っています。


 8位は同じくOARのミハイル・コリヤダ選手です。

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 ショート冒頭は大技の4ルッツ、しかし空中で回転がほどけて3回転になります。続いて4トゥループ+3トゥループは4トゥループで転倒し連続ジャンプにならず。後半の得意の3アクセルは余裕を持って決め2.14点の加点を得ましたが、前半のジャンプミスが影響して86.69点で8位にとどまりました。
 フリーは再び冒頭から4ルッツにチャレンジ、ですがあえなく転倒となります。続く4トゥループ+3トゥループはパーフェクトに成功。さらに3アクセル+2トゥループもスムーズな跳躍と着氷で加点2の高評価。後半は得意の3アクセルからでしたが、パンクして1回転に。3+1+3の3連続ジャンプは何とか下りますが、3ループは2回転に。最後のジャンプは予定を変更して再び3アクセルに挑みましたが転倒し、177.56点でフリー7位、総合8位と順位を上げることは叶いませんでした。
 良い部分もあった一方で悪い部分もはっきりと表れた、ある意味でコリヤダ選手らしい荒れた演技でしたね。良かった部分はミスを引きずることなく切り替えて、直後のジャンプはしっかりと決めてきたところでしょうか。逆に悪かった部分はミスを最小限に抑えられなかったところですね。コリヤダ選手はミスをするときはパンクだったり転倒だったりとわりと派手な失敗をしでかすことが多いのですが、今回もやはりその傾向が強く、ミスをするにしてももう少し小さなミスでとどめられればもっと良い選手になるのになといつも思ってしまいます。ジャンプにしてもスピンにしても質の高さは一級品なので、あとはトータルとして演技をコントロールし切れれば、さらに一皮も二皮も剥けてもう一段階レベルアップできるのかなと思います。
 次の世界選手権ではうまく調整して、ジャンプの調子を取り戻して臨んでほしいですね。


 9位はソチ五輪銀メダリスト、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 SPはまず得点源の4トゥループ+3トゥループから、ファーストジャンプで若干こらえる着氷になったため無理せず単独ジャンプに変更します。続いて単独の予定の3ルッツに3トゥループをつけてきちんとリカバリー。後半は鬼門の3アクセルでしたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。しかし3アクセル以外のエレメンツでは全て加点1以上を積み重ね、90.01点で6位につけました。
 フリーもまずは4トゥループ+3トゥループからでしたが、ファーストジャンプの着氷の感触が良くなかったのか、セカンドジャンプは2トゥループにとどめます。続く単独の4トゥループはパンクして3回転に。直後の3アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプが2回転になったものの、課題だった3アクセルはしっかり跳び切ります。さらに中盤の3+3をクリーンに下りると、3アクセルは着氷で乱れながらも最小限のミスに抑えます。続いて3ループは2回転となりますが、終盤の3フリップ、2アクセルは無難にクリア。終盤のステップシークエンスは珍しくつまずいてバランスを崩す場面があり、いつもほどの加点は得られなかったものののびやかなスケーティングを披露。フィニッシュしたチャン選手は悔しさを滲ませながらも穏やかに微笑みました。得点は173.42点でフリー8位、総合9位と順位を落としました。
 団体戦はショートもフリーも出場し、カナダ初の金メダルに大いに貢献したチャン選手。その疲労は多少なりとも残っていたと思うのですが、まずまずチャン選手らしさは出せたんじゃないかなと思いますね。団体戦のフリーでは完璧に決めた4トゥループは個人戦では耐えるような着氷が多く、やはり団体戦にピークが来てしまったのかなと思うのですが、チャン選手にとっては団体戦も個人戦と同じくらいの意気込みで臨んでいたように見えましたし、団体戦で金メダルを取っているということで気持ち的には少し楽に個人戦を迎えられたんじゃないかなという気もします。順位としては結果的に9位と入賞にも至りませんでしたが、すでにパトリック・チャンというスケーターは順位や点数といった数値的なものを超えて、その先の領域へと足を踏み入れているような感じがしましたし、そういった意味で心に残る素晴らしい演技だったと思いますね。
 今シーズン限りでの現役引退を表明しているチャン選手。来月の世界選手権に関しては出場するともしないとも断言していませんが、個人的には最後にもう一度、彼のスケートを目に焼きつけておきたいなと思います。まずは五輪に向けて厳しいトレーニングを積んできたでしょうから、体と心の疲れを癒やしてほしいですね。


 10位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 ショートはまず3フリップ+3トゥループを確実に決めて好調な滑り出し。3アクセルはわずかに着氷を乱し減点。後半の3ルッツはいつもどおり安定感抜群に下り、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とアップテンポなリズムの中でも丁寧に要素をこなし、演技を終えたリッポン選手は派手なガッツポーズで喜びを露わに。87.95点で7位となります。
 フリー冒頭は2アクセルで堅実なスタート。続いて高難度の3フリップ+3ループを完璧に回り切って着氷します。さらに2本目の2アクセルを下り、前半をクリーンにまとめます。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、3アクセル+2トゥループ+2ループはきれいに下りたかに見えましたが、最後のジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)の判定。続く2本目の3アクセルはパーフェクトに成功。さらに3フリップ+3トゥループもクリーンに着氷させます。残りの3サルコウ、そして3ルッツもノーミスで下り、終盤の2つのスピンもレベル4とリッポン選手らしさを余すことなく表現し、フィニッシュしたリッポン選手は目に涙を浮かべました。得点は171.41点でフリー10位、総合も10位となりました。
 28歳にして最初で最後のオリンピックとなったリッポン選手。マイナスゼロの完璧な演技ではありませんでしたが、終始五輪という舞台を楽しみながら味わいながら滑っているというのが伝わってくる演技でしたね。団体戦のフリーにも出場したリッポン選手ですが、その時は冒頭のジャンプを今シーズン挑み続けてきた4ルッツではなく、確実性の高い2アクセルにして臨みました。個人戦はどうするかなと思って注目していたのですが、4ルッツには挑みませんでしたね。得点的には4ルッツと2アクセルとではかなり基礎点が違うので、4ルッツで失敗する可能性が高いとしても、ほかのジャンプをまとめられれば4ルッツを入れた方が技術点は高くなるのですが、それよりも最初から最後までミスのない流れの途切れない演技をしようという気持ちだったのかもしれませんね。そういった意味ではリッポン選手も上述したチャン選手同様、順位やスコアを超えたところで勝負していたというのが感じられ、心を揺さぶられました。
 世界選手権でも笑顔で終われるような演技となることを祈っています。


 日本の田中刑事選手は18位に入りました。

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 SPは得点源の4サルコウからでしたが、アンダーローテーションで転倒してしまいます。続く3+3は軽やかに着氷。後半の3アクセルも難なく成功させ、ステップシークエンスやスピンもミスらしいミスなくこなしましたが、4サルコウのミスが響いて80.05点で20位に沈みました。

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 フリーも一発目のジャンプは4サルコウ、これを鮮やかに跳び切って1点以上の加点を獲得します。続いて同じく4サルコウからの連続ジャンプの予定でしたが、4サルコウで転倒し同じ単独ジャンプの繰り返しに。直後の3アクセルは決めて何とか立て直しを図ります。レベル4のスピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初は4トゥループでしたが着氷が乱れます。さらに3アクセルは転倒し連続ジャンプにできず。次の3+3は下り、3ループ、3+2+2と終盤のジャンプも決めて挽回しましたが、演技を終えた田中選手は残念そうに肩を落としました。得点は164.78点でフリー15位、総合18位で初めての五輪を終えました。
 団体戦フリーではミスが重なり個人戦での奮起を語っていた田中選手。そこから短期間でどれだけ修正できたかが個人戦の注目ポイントでしたが、修正できているところももちろんあった一方で、五輪の雰囲気に気圧されてしまったのか、本来の躍動感に溢れた滑りよりも少し慎重で大人しめな滑りだったように感じます。ただ、調子が上がり切らない中でも、4回転をパンクではなく最小限のミスに抑えられたこと、ミスに対するリカバリー能力を発揮できたことは収穫と言えると思いますので、世界選手権に向けて、そして次のシーズンへ向けて、この経験を財産にしていってほしいですね。



 平昌五輪・男子については以上です。終わってみればここ数年の世界選手権で表彰台を経験しているメンバーがトップ4に入り、強い人は大舞台でも強いということを改めて示しましたね。一方で優勝候補として脚光を浴びながらもSPで大崩れしてしまったネイサン・チェン選手のように、ポテンシャルは極めて高いけれどもまだ世界トップレベルでの経験が浅い選手たちは、やはり五輪という4年に1度の大舞台で実力の全てを発揮するにはさらなる経験と時間が必要ということなのかもしれません。
 何はともあれ、今大会の男子フィギュアは5種類の4回転が披露されるという未だかつてないハイレベルな五輪となり、ジャンプ技術の進化に改めて圧倒される大会ともなりました。今はただただ、素晴らしい演技を見せてくれた選手たちに感謝するばかりです。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、アリエフ選手の画像、チャン選手の画像、田中選手のSPの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、コリヤダ選手の画像、リッポン選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、田中選手のフリーの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」の平昌五輪特集ページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-26 01:34 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 熱戦が続いている平昌五輪もいよいよ大詰め。というところで、実際に競技が行われてからはけっこうな時間が経ってしまいましたが、遅ればせながら男子の内容と結果を書いていきたいと思います。
 史上最高レベルの男子の戦いを制したのは世界王者、日本の羽生結弦選手です。実に66年ぶり、男子では史上4人目の連覇を達成しました。そして、2位には世界選手権2017銀メダリスト、日本の宇野昌磨選手が入り、日本選手としては初のワンツーフィニッシュとなりました。3位は前世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデス選手で、こちらもスペイン選手として初めての表彰台の快挙を成し遂げました。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを獲得したのは日本の羽生結弦選手です!

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 SPはまず4サルコウから、これを完璧に決め2.71点の加点を得ます。後半に2つのジャンプ要素を固め、最初は得意の3アクセルからで余裕を持って成功させ、満点となる加点3を獲得。最後の4トゥループ+3トゥループも美しいランディングで加点2.57点と隙のない演技を披露しました。得点は自身が持つ世界最高得点に迫る111.68点で圧巻のトップに立ちます。

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 フリーも冒頭は4サルコウ、またもやクリーンな着氷と流れで加点3を獲得。さらに続けて跳んだ4トゥループも軽やかな跳躍でこちらも加点3、3フリップは難なく着氷させ、最高の前半となります。後半最初は得点源の4サルコウ+3トゥループ、しっかりと跳び切って、加点2.71。次いで4トゥループからの連続ジャンプでしたが、こちらは4トゥループの着氷で乱れて単独に。しかし、次の3アクセル+1ループ+3サルコウはパーフェクトに成功。3ループはきれいに着氷し、最後は3ルッツでしたが、これも着氷で乱れこらえる形に。ですが、最後まで力強く、エネルギッシュに「SEIMEI」を演じ切り、フィニッシュした羽生選手は満面に笑みを浮かべ、雄たけびを上げました。得点は206.17点でフリーは2位、ショートと合わせて総合1位となり、男子史上4人目となる連覇を果たしました。
 昨年11月のNHK杯の公式練習での右足首の怪我から、実に2か月以上ぶりの実戦復帰となった羽生選手。どれくらい復調しているのか、どのレベルの練習ができているのか詳細な情報が秘められた中、韓国入りしてからは練習で次々と4回転を下り順調な回復ぶりをアピールしていました。が、実際の試合でここまで高いレベルでまとめてくるとは、さすがに恐れ入りました。ショートに関してはジャンプの本数も少なく演技時間も短いので、完璧な演技にもさほど驚きはありませんでした。そしてフリーは懸念されたスタミナ不足がやはり後半に響いて、2つのジャンプの着氷ミスがあり完璧ではありませんでした。しかし、そうした困難な状況でもあれだけ美しいジャンプを続け、大きな失敗を犯さなかったということが何よりも凄いことで、個人的には金メダルは難しいのではないかと思っていましたが、予想を上回る完成度の高さ、試合への集中ぶりでしたね。
 ただ、ショートは別にして、フリーに関してはこの演技が羽生選手のベストの演技かというと決してそうではなく、スコア的にもパーソナルベストからは17点ほど低いですし、また、どうしてもジャンプを確実に跳び切るというところに集中せざるをえなかったと思うので、表現面ではプログラムの世界観を表現するというよりは、最後まで滑り切るということが最優先になっていたのかなという印象は否めません。それでも、羽生選手にとって五輪というのは、連覇がかかる大会というのはもちろんですが、4年前にフリーで2度転倒してしまった、自分自身に負けてしまったという何よりも悔しさの残る大会でもあって、そのリベンジとして今大会は自分に勝つこと、その上でもう一度頂点に立つことが最大の目標であり、自分自身に課した義務だったのかなと想像します。そうした意味では、間違いなく最高の演技と言えるのでしょうし、フリー後の晴れ晴れとした笑顔にもその気持ちが表れていたように思います。
 今後については現役続行を明言した羽生選手。しかし、今大会は痛み止めを飲んでの出場ということで、3月の世界選手権に関しては出場するかどうかは保留しました。来季以降のことも考えると、今はゆっくり体を休めることが先決なんじゃないかなと思いますね。平昌五輪優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを手にしたのは全日本王者の宇野昌磨選手です。

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 SP冒頭は団体戦ショートでは手をつくミスがあった4フリップ、今度はミスなく跳び切り1点以上の加点を得ます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、4トゥループ+3トゥループもきっちり成功。3アクセルは少し危うい着氷となったものの加点が付く出来でまとめ、演技を終えた宇野選手はほっとしたように破顔しました。得点はパーソナルベストに0.7点と迫る104.17点で3位と好発進します。

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 最終滑走で迎えたフリー。冒頭は4ループでしたが、軸が曲がり転倒してしまいます。次いで代名詞の4フリップ、こちらは回り切ってきれいに着氷。さらに3ループは余裕を持って下り、冒頭のミスから盛り返します。演技後半、まずは得意の3アクセルを若干こらえながらも決めると、4トゥループ+2トゥループは多少体勢を崩したもののセカンドジャンプに繋げます。そして単独の4トゥループも成功。3アクセル+1ループ+3フリップを決め、最後の3サルコウ+3トゥループも下りると、宇野選手は抑えきれないといった笑顔のままフィニッシュしました。得点は202.73点でフリーも3位、総合では2位となり、初出場にして銀メダルを獲得しました。
 団体戦を経てこの個人戦に臨んだ宇野選手。団体戦で滑ったショートの課題もしっかり修正し、フリーは最終滑走というプレッシャーのかかる状況で、冒頭の4ループでいきなり転倒と暗雲漂う出だしでしたが、次の4フリップは成功させてすぐに暗雲を取っ払い、その勢いのままにフィニッシュまで突っ走りましたね。普通なら冒頭のジャンプで転倒したら焦ったり余裕がなくなったりしそうなものですが、宇野選手は「笑えてきた」と言い、さらには羽生選手に勝てないことを悟り、あとは自分の演技を頑張ろうというふうに割り切れたようで、相変わらずのマイペースぶりが演技中にも発揮されたという感じですね。宇野選手といえば前々からオリンピックに対しては特別な想いはないとハッキリ発言しており、そうは言っても実際にオリンピックに入ればさすがの宇野選手でもいつもとは違う緊張感を覚えたりするんじゃないかなと思いましたが、全くの杞憂でしたね。団体戦に始まって個人戦のショート、フリー、さては表彰式に至るまで、宇野選手は結局いつもの宇野選手のままで、強がりなどではなく本当にオリンピックをほかの大会と同じようにしかとらえていないんだなというのが改めて伝わってきました。高橋大輔さんのコーチとして知られる長光歌子コーチが五輪に出場する選手に関して、良い意味での鈍感力が必要、とインタビュー記事で語っていたのですが、“鈍感力”こそ、まさに宇野選手を表すのに一番ふさわしい言葉かもしれないなと感じました。
 初めての五輪でも最後まで自分らしさを貫いた宇野選手。次戦は世界選手権になりますが、そちらでもいつもどおりの宇野選手の演技を見せてほしいと思います。また、五輪ではできなかったこともあると思うので、そういったことも含めてシーズンの集大成として全てを出し切ってほしいですね。


 銅メダリストとなったのはスペインのベテラン、ハビエル・フェルナンデス選手です。

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 ショートはまず得点源の4トゥループ+3トゥループをクリーンに跳び切り、2点という極めて高い加点を獲得。続いて代名詞の4サルコウも完璧に下り2.71点の加点を得ます。後半の3アクセルも危なげなく成功させ、フェルナンデス選手らしい柔らかさとコミカルさが合わさった滑りで観客を魅了しました。得点はパーソナルベストに迫る107.58点で2位と好位置につけました。
 フリー冒頭は単独の4トゥループ、しっかりと回り切って下り、2.14点の加点。続く4サルコウからの連続ジャンプはセカンドジャンプが予定していた3トゥループではなく2トゥループになったもののクリーンに着氷。3アクセル+3トゥループもきっちり成功させます。後半は得意の4サルコウからでしたが、タイミングが合わなかったのか2回転に。次いで3ループ、3アクセルときれいに着氷し、3+1+3の3連続ジャンプもパーフェクトに成功。最後の3ルッツも軽やかに決め、終盤のステップシークエンスでは力強い男性ボーカルに乗せて情熱的に演じ切り、シーズンベストとなる197.66点でフリー4位、総合3位となり銅メダルを手にしました。
 ショート、フリー通してベテランらしく冷静に、常に自分自身をコントロールし切れていましたね。フリー後半の4サルコウが2回転になったことが結果的には銀メダルと銅メダルとの分かれ道になってしまいましたが、全体的な滑りの質の高さ、ジャンプの軽やかさや着氷の柔らかさはさすがで、表現面でもショートの「チャップリン」、フリーの「ラ・マンチャの男」と趣の異なるプログラムを演じ分け、魅せてくれました。
 今大会の演技を見ているとまだまだ現役として第一線で戦えるんじゃないかなと思うのですが、はっきり明言こそしていないもののフェルナンデス選手自身は引退をほのめかしています。今回の演技がラストダンスになってしまうのか、公式な発表を待ちたいですが、スペインというフィギュア後進国から超一流のトップ選手まで上り詰めたことに、今更ながら拍手を送りたい気持ちですね。新たな報道によると、フェルナンデス選手は来季も現役は続行する意思があるようで、あくまで五輪はこれが最後ということだそうです。ただ、来季どういった形でシーズンを送るのかについて具体的な発表はまだしていないようですし、休みを取りつつスローペースでという話もしているようなので、今までのようにフルで試合に出続けるということはなくても、ひとまずは来季もフェルナンデス選手の演技が見られる可能性はあるということで一安心ですね。


 表彰台まであと一歩、惜しくも4位だったのは中国の金博洋(ジン・ボーヤン)選手です。

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 ショート冒頭は世界最高難度の大技4ルッツ+3トゥループ、これをしっかり回り切って着氷し1.86点の加点を獲得すると、次の4トゥループもクリーンに下ります。後半の3アクセルもスムーズに着氷し、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とそつなくまとめ、自己ベストを3点以上上回る103.32点で4位と好スタートを切りました。
 フリー冒頭も代名詞の4ルッツから、ショート同様にクリーンに成功。続く4サルコウ、3アクセル+1ループ+3サルコウと余裕を持って下り、上々の前半とします。後半に2本の4回転を組み込み、その1本目の4トゥループは回転は充分だったものの転倒。続く4トゥループ+2トゥループは成功させます。以降も3アクセル、3+3、3フリップと次々とジャンプを決め、演技を終えた金選手はガッツポーズで手応えを露わにしました。しかし得点はシーズンベストに及ばず194.45点でフリー5位、総合4位と表彰台には届きませんでした。
 シーズン前半は怪我があり際立った好成績は収められなかったものの、復帰戦となった先月の四大陸選手権ではほぼ完璧な演技でトータル300点超えで優勝し、改めて五輪のメダル候補としての存在感をアピールした金選手。今大会もジャンプは好調そのもので、さすが2年連続で世界選手権の表彰台に立っているだけあって、シーズン終盤に調子を上げてくる能力の高さには感服させられました。フリーのフィニッシュでは満面に笑みを浮かべ、本人としてはメダル獲得に向けて手応えがあったのかなと思うのですが、キス&クライで得点が表示されると一転大粒の涙を流しました。やはりフリーで200点、トータル300点を超えてこないと厳しいというのはわかっていたと思いますし、そこに届かなかったという悔しさからくる涙だったのでしょうね。それでも演技自体は本当に素晴らしかったですし、今後の課題としては得意のジャンプをさらに磨くことはもちろん、スケーティングや表現など演技全体の完成度を高めて、世界をリードする選手になっていってほしいですね。


 5位はGPファイナル王者、アメリカのネイサン・チェン選手です。

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 SPは団体戦からジャンプ構成を変更し、まずは最高難度の4ルッツからでしたが、転倒して予定していたコンビネーションにはできず。後半に入り4トゥループも着氷で大きく乱れ、さらには苦手の3アクセルもミス。全てのジャンプでミスを犯し、82.27点でまさかの17位に沈みました。
 フリー冒頭は前日転倒した4ルッツ、今度はこれを完璧に着氷します。次いで4フリップからの連続ジャンプもクリーンに成功。続けて単独の4フリップでしたが、これは着氷でバランスを崩します。後半はまず4トゥループ+3トゥループを決めると、単独の4トゥループも着氷。さらには6本目の4回転となる4サルコウも完璧に決め、五輪では史上初となる5本の4回転に成功。終盤は鬼門の3アクセルを下り、最後の3+1+3も成功。フィニッシュしたチェン選手は感極まったような表情を見せました。得点は世界歴代3位となる215.08点でフリー1位、総合5位と一気に順位を上げました。
 まさかとしか言いようのないショートから一転、フリーはチェン選手の本領を見事に出し切りましたね。やはり今季は出場した全ての試合で優勝ということで、五輪の金メダル最有力としてアメリカ国内からも、海外からも注目を浴び、チェン選手本人も期待に応えたい、五輪で最高の演技がしたいという気持ちはあったと想像します。が、その自分の内と外からの二重の期待が過大なプレッシャーとなって、尋常でない緊張と力みを生ませてしまったのかなと思います。しかし、ショートで表彰台圏外となったことによって、フリーは迷いも戸惑いも捨てて良い意味で吹っ切れて、彼らしい演技に繋がったのでしょうね。いろんなものから解放された演技後のチェン選手の表情はすっきりとしていて、一方で複雑さも滲ませていて、ショートでやりたい演技ができなかったという悔しさも拭えるものではないんだろうなというのも感じましたね。
 ただ、チェン選手の時代はこれから。今まで男子フィギュア界を引っ張ってきたベテラン選手たちが今季を持って引退することが予想される中、チェン選手が次世代をリードする中心選手の一人であるのは間違いないですから、平昌五輪での経験がチェン選手をさらに強くしてくれるのではないでしょうか。まずは来月の世界選手権でショートからチェン選手らしい演技が見られることを祈りたいと思います。


 6位は昨季の世界ジュニアチャンピオン、アメリカのヴィンセント・ジョウ選手です。

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 ショート冒頭は最高難度の大技4ルッツ+3トゥループから、しかしセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)と判定され減点に。次いで4フリップは着氷で大きく乱れ、さらに後半の3アクセルでも着氷ミスと全てのジャンプでミスがあり、得点としては84.53点と自己ベストだったものの12位にとどまります。
 フリーもまずは4ルッツ+3トゥループ、今度は回り切って完璧に下り1点以上の加点を得ます。続く4フリップはショートに続き着氷ミス。しかし4サルコウはクリーンに着氷します。後半最初は2本目の4ルッツ、こちらはアンダーローテーションに。ですが、直後の4トゥループを決め、さらに2本の3アクセルは大きなミスなく着氷。最後の3+1+3の3連続ジャンプも跳び切り、演技を終えたジョウ選手は歓喜を爆発させました。得点はこちらもパーソナルベストの192.16点でフリー6位、総合6位と大きくジャンプアップしました。
 ショート、フリーともに世界随一の難しいジャンプ構成で挑んだジョウ選手。ショートはランディングが乱れるジャンプが続いて精彩を欠いた演技となってしまいましたが、フリーは気持ちを切り替えてしっかりとベストを尽くしましたね。ジャンプ構成の難度としては上述したチェン選手にも匹敵するレベルだと思いますが、あとは一つ一つのジャンプの精度、クオリティーを磨いていくことが課題になるでしょうか。それができれば将来的にはチェン選手をも超える選手になる可能性もあると思いますので、五輪で自分の演技ができたということを自信に頑張ってほしいですね。まずは来月の世界選手権での好演技に期待です。



 さて、前編はここまでとして、7位以下の選手については後編で書いていきます。お手数をおかけしますが、続きは後編をご覧ください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、羽生選手の画像、宇野選手の画像、金選手の画像、チェン選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、フェルナンデス選手の画像、ジョウ選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-24 02:09 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 4年に1度の熱い戦いが繰り広げられている平昌五輪。この記事では2月14日と15日にかけて行われたペアの模様をお伝えします。
 類い稀なるハイレベルな試合を制したのは、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。ショート4位からの逆転優勝で、サフチェンコ選手にとっては5度目のオリンピック挑戦にして初めての金メダルとなりました。超僅差で2位だったのは世界チャンピオン、中国の隋文静(スイ・ウェンジン)&韓聰(ハン・ツォン)組、3位は元世界王者、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組となっています。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 五輪王者に輝いたのは世界選手権2017銀メダリスト、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。

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 SP冒頭は得意の3ツイスト、これは完璧な回転とキャッチで全てのジャッジから満点となる加点3を得ます。しかし直後の3サルコウはパンクして2回転に。スロー3フリップはクリーンに成功させ、残りのエレメンツも全てレベル4に加え、高い加点を積み重ねますが、ジャンプミスが響き76.59点で僅差ながら4位にとどまります。
 フリーは冒頭の3ツイストを完璧に決めまたもや加点3を得ると、スロー3フリップも成功。さらに3+2+2も全てのジャンプをしっかり下り、次いで3トゥループも着氷、スロー3サルコウも成功と最高の前半とします。後半は難しいリフト、丁寧なスピンなど全てのエレメンツでレベル4に加え、加点1以上の高い評価。しっとりとしながらもダイナミックな音楽を全身で演じ切り、フィニッシュしたサフチェンコ&マッソ組は感極まった表情を見せました。得点は世界最高得点となる159.31点でフリー1位、逆転で総合1位となり悲願の金メダルを獲得しました。
 SPはソロジャンプでミスが出て上位3組を僅差で追いかける形となり、フリーは最終グループの1番滑走で159点というハイスコアを叩き出し、後続のペアたちにプレッシャーをかけましたね。すでにロビン・ゾルコビーさんとのペアでバンクーバー五輪、ソチ五輪で銅メダルを獲得しているサフチェンコ選手にとっては、金以外のメダルでは意味がないという心情だったと思いますし、僅差とはいえ4位という微妙な位置でフリーを迎えなければいけない状況は、よく言われる「追いかける方が楽」という言葉には全く当てはまらない、大いにプレッシャーのかかるシチュエーションだったと思います。その中でもあの完全無欠の演技ができたのは、サフチェンコ選手にとって初出場だったソルトレイク五輪から数えて16年越しの金メダルへの並々ならぬ想いが、不安も緊張もはねのけたのでしょう。
 そして、その大ベテランの“レジェンド”にしっかりとついていったマッソ選手の努力も尋常ではなかったことと思います。ショートの後は、「アリオナにもう一度銅メダルを持って帰らせるわけにはいかない」と思ったそうで、この二人だからこそ取れた金メダルなのでしょうね。思えばこのペアは14/15シーズンに結成されたばかりで、試合に出始めてからはまだ3シーズンしか経っていないわけですが、何かもっとずっと長い時間、この二人の演技を見続けてきたような気さえしますし、それくらいペアとしてのユニゾン、コンビネーションは結成から数年というのが信じられないほど、素晴らしいペアだなと思いますね。
 五輪の金メダルという最大の目標を達成した二人が、今後どういう道を歩むのかはわかりませんが、間違いなくフィギュアスケート史に残る歴史的な演技だったと思います。平昌五輪優勝、おめでとうございました。


 2位は世界選手権2017金メダリスト、中国の隋文静&韓聰組です。

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 SPはまずソロジャンプの3トゥループから、これを二人ともクリーンに着氷すると、スロー3フリップも成功。さらに3ツイスト、スピン、ステップシークエンスなど、全ての要素をパーフェクトにこなし、自己ベストとなる82.39点で圧巻の首位発進します。
 フリーは代名詞の4ツイストに挑み、レベルは3でしたが1点以上の加点を獲得。しかし3+2+2の3連続ジャンプは男性のセカンドジャンプが1回転になってしまいます。続いて3サルコウは女性の着氷がステップアウトと、ソロジャンプで細かなミスが重なります。しかしその後はクリーンなエレメンツを揃え、特に2つのスロージャンプは抜群の高さとランディングの美しさでどちらも加点2.1点を獲得するなど本領を発揮。演技を終えた二人は満足そうな笑みを浮かべました。しかし153.08点でフリー3位、トータルでは自己ベストでしたがサフチェンコ&マッソ組に0.43点及ばず、超僅差で惜しくも2位となりました。
 たった0.43点で金メダルに届かなかった隋&韓組。ソロジャンプのミスであったりスピンでのレベルの取りこぼしであったり、本当にちょっとしたことなのですが、1位と2位という大きな差に繋がってしまいましたね。今季は世界チャンピオンとしてシーズンを迎え、フリーの世界最高得点(当時)を更新するなど順調に歩みを進めていただけに、ここにきて小さな綻びというのが出てしまったのは惜しまれますが、演技内容としてはサフチェンコ&マッソ組にも負けず劣らずの迫力に満ちたものでしたので、自分たちの演技を誇りに思ってほしいですね。
 今回はあと一歩のところで頂点を逃しましたが、次の五輪は母国開催の北京。まだ若い二人ですから、4年後には主役として表彰台の一番高いところで輝いてほしいと思います。


 3位はカナダのベテラン、メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。

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 ショート冒頭の3ツイストはレベル3でしっかりまとめ、続いてこのペアの代名詞でもあるソロジャンプの3ルッツは二人のタイミングはずれたものの大きなミスなく着氷。スロー3ルッツ始め、残りのエレメンツも安定感たっぷりにクリアし、自己ベストに迫る76.82点で3位と好位置につけます。
 フリーもまずは3ツイストをノーミスでこなして好調な滑り出し。次いでソロジャンプの3ルッツはデュハメル選手が着氷で片手をついてしまいます。そして鍵を握る大技スロー4サルコウ、これを完璧に成功させると、3+2+2の3連続ジャンプは二人のタイミングもピッタリに着氷。波に乗った二人はミスらしいミスなくのびやかかつダイナミックな滑りを見せ、フィニッシュでは満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストまで0.48点の153.33点でフリー2位、総合3位で銅メダルを獲得しました。
 ショート、フリーともに減点される要素はあったのですが、それを最小限で抑えたことがメダルに手が届いた要因ですね。シーズン前半は安定感を欠いていたソロジャンプやスロージャンプも転倒、パンクなく揃え、何といってもフリーでは大技のスロー4サルコウに挑み、見事成功。何が何でもメダルが欲しいであろうオリンピックという大舞台でリスクの高い技にチャレンジできる勇気には脱帽ですが、それだけ自分たちの演技に自信もあったのだろうなと思います。
 かつては世界選手権を2度制したペアですから、もちろん理想としては金メダルを取りたかったでしょうが、ショートが終わって3位から9位まで約2点差の中に7組がひしめき合い、フリー次第でどうなるかわからない状況で、自分たちのベストを尽くせた結果の銅メダルは順位以上の価値と深い意味があるのではないでしょうか。演技後の二人の表情にもそれが表れていたような気がしましたね。


 惜しくも4位だったのはOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。ショートは得意の3ツイストはレベル4かつ全てのジャッジから加点3を引き出す完璧な出来。さらにサイドバイサイドの3トゥループもクリーンに跳び切り、スロー3ループも余裕のある着氷でこちらも全ジャッジが加点3の評価。残りの4つのエレメンツも全てレベル4、加点1以上と圧巻の滑りを披露し、自己ベストの81.68点で2位と好発進します。フリーは冒頭に大技の4ツイストを組み込み、見事に成功。しかし続く3サルコウはパンクして2回転に。さらにスロー3サルコウも着氷で乱れます。その後は大きなミスなく立て直したものの、143.25点でフリー4位、総合4位と表彰台には届きませんでした。

 5位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組。SPは全てのエレメンツをクリーンに決め、自己ベストにはわずかに及ばなかったもののハイスコアで6位。フリーは大技のスロー4サルコウに挑戦、着氷が大きく乱れ、さらにソロジャンプの3サルコウも2回転にと前半にミスが重なります。後半は前半のミスを引きずることなく巻き返しを見せ、自己ベストまで約3点に迫る143.19点でフリー5位、総合5位と順位を一つ上げました。

 6位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組。SPは3ツイストでわずかなミスがあり加点を伸ばせず、しかし他の要素では軒並み高い加点を稼ぎ、パーソナルベストで7位につけます。フリーはショートでミスを犯した3ツイストも含め、全てのエレメンツをほぼパーフェクトにこなし、こちらもパーソナルベストの142.09点で6位、総合6位となりました。

 7位はOARのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組。ショートはきっちり全てのエレメンツをクリーンに揃え、パーソナルベストで6位。フリーはソロジャンプの3サルコウがダウングレード(大幅な回転不足)となる痛いミスはあったものの、それでも自己ベストをマークして7位、総合でも7位でフィニッシュしました。

 8位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。ショートは課題にしていた冒頭の3トゥループをきっちり決めると、3ツイストはレベル4に加え、加点2という極めて高い評価。スロー3ループも加点2.1点とパーフェクトな演技で、自己ベストの75.58点で5位と好位置につけます。フリーもまずはソロジャンプの3サルコウからでしたが転倒。続く3ツイストはショートに続きレベル4、加点2.1で挽回。次いで3トゥループからのコンビネーションジャンプでしたが、こちらも転倒してしまいます。後半のスロー3サルコウでもミスがあり、全体的に精彩を欠いた演技となり、フリー11位、総合8位に沈みました。


 日本の須崎海羽&木原龍一組はショート21位で残念ながらフリー進出はなりませんでした。

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 ショートは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツを二人ともしっかり着氷。3ツイストはキャッツがもたついてレベル1でしたが、3スロー3サルコウは成功。ほかのエレメンツはレベル4を並べ、団体戦に続いて自己ベストを更新しました。しかし、フリーに進出できる上位16組には届かず、21位でこのペアとして初めての五輪を終えました。
 結果的には個人戦はショートのみで終わってしまいましたが、内容としては今後に向けて手応えの得られる演技だったのではないでしょうか。なかなか二人揃っての成功がなかった3ルッツも成功率が高まってきましたし、リフトやデススパイラルなども確実にレベル4を取れるようになってきたところは昨シーズンと比べて大きく飛躍したと思います。これからの課題として全体的な滑りのレベルアップだったり、さらに一つ一つの要素で高い加点を取れるようにすることだったりとたくさんありますが、本当に息の合ったペアだと思いますので、五輪で得たものを糧にして、次は世界選手権で再びの自己ベスト更新目指して頑張ってほしいですね。



 平昌五輪ペアの記事は以上です。個人的には隋&韓組の演技が好きで、二人の優勝を応援していた部分もあるのですが、結果的には大ベテランのサフチェンコ選手がようやく金メダルに手が届いたということで、本当に良かったなと心から思いますね。そして、どのペアも五輪に向けてしっかりピークを合わせてきたというのが伝わってくる内容で、その中でもミスを最小限に抑えたペアが順当に表彰台に立ちましたね。
 さて、次は男子です。男子の競技が行われてから時間が経っていますので、もう皆さん結果はお分かりだと思いますが、私なりの視点を加えて男子の演技、結果を振り返っていきたいと思います。


:ペアメダリスト3組の画像はマルチメディアサイト「Zimbio」から、そのほかの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。


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by hitsujigusa | 2018-02-21 17:42 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 2月9日から11日にかけて行われた団体戦。この記事ではその女子フリー、アイスダンスFDについてお伝えします。なお、団体戦のルールについては、こちらの記事の冒頭をご覧ください。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子のフリーを制したのは欧州女王、OAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のアリーナ・ザギトワ選手です。

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 すっかり代名詞となった後半に全てのジャンプを固める攻撃的な構成で五輪初演技に臨んだザギトワ選手。前半はコレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスで確実にレベルを取り、また、加点を積み重ねます。そして後半、高難度の3ルッツ+3ループを完璧に決めて口火を切ると、2アクセル+3トゥループ、3+2+2と難しい連続ジャンプをポンポンと成功させます。終盤の3つの単独ジャンプも難なく下り、演技を終えたザギトワ選手はほっとしたように破顔しました。得点はパーソナルベストかつ世界歴代2位となる158.08点で圧巻の1位となりました。
 今季出場した全ての試合を制しているザギトワ選手ですが、相変わらずの安定感ととどまるところを知らない勢いでしたね。五輪の緊張感というのは微塵も感じられず、本当に自分の演技に集中しているというのが15歳とは思えない強靭な心臓の持ち主だなと思います。一方で得点に関してはさすがに出過ぎかなという感は否めず、技術点はさておいても、演技構成点はちょっと気前良すぎるんじゃないかなという気もします。これは4年前のソチ五輪のユリア・リプニツカヤ選手の時と同じ現象と言えますが、リプニツカヤ選手以上にザギトワ選手に対する演技構成点の上がり方は極端なので、少し疑問も感じます。
 また、得点に関してというわけではありませんが、全てのジャンプを後半に跳ぶという構成についてアメリカのアシュリー・ワグナー選手がツイッターで「これはプログラムではない」と疑問を呈して話題となりましたが、私としてもワグナー選手の意見に共感する部分はありますね。もちろんこれは競技ですから、後半に跳んだジャンプは1.1倍になるというルールを最大限利用することに何ら問題はないのですが、得点を稼ぐためにプログラムの芸術性を犠牲にしているのかなとも感じます。個人的にはザギトワ選手の「ドン・キホーテ」は好きなプログラムで、スローパートから始まって、曲調が激しくなる後半に怒濤のジャンプ連発という流れは痛快さもあって引き込まれるのですが、プログラムに引き込まれているというよりはジャンプのインパクトに圧倒されているという感じで、本当の意味でザギトワ選手の表現力だったりプログラムの美しさに魅入られているという感じはないですね。なので、全項目で9点台が並ぶ演技構成点が妥当な評価とは私には思えません。
 ただ、そうした採点は別にして、ザギトワ選手が魅力的なスケーターであるのは間違いないですし、後半に全てのジャンプを跳ぶ技術と体力、リスクを犯せるタフな精神には感服するしかなく、個人戦でも彼女らしい演技を楽しみにしたいですね。


 2位はアメリカのベテラン、長洲未来選手です。

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 冒頭は今季初成功させた大技3アクセル、これを回転、着氷ともにクリーンに決め1.57点の加点を得ると、続く3フリップ+3トゥループは着氷はわずかに詰まるもののしっかり回り切ります。さらに3サルコウも鮮やかに下り、最高の前半とします。後半に入っても勢いは衰えるどころか加速し、2アクセル+3トゥループ+2トゥループ、3ルッツ+2トゥループ、3フリップと相次いで成功。最後の3ループを下りた長洲選手はガッツポーズし、フィニッシュでは雄たけびを上げて喜びを爆発させました。得点はパーソナルベストを5点以上上回る137.53点で2位と実力を出し切りました。
 何といっても冒頭の3アクセル、非の打ちどころのない素晴らしい跳躍でしたね。今季は9月のUSインターナショナルで初めて3アクセルを成功させて以来、毎試合必ず3アクセルは跳び続けてきましたが、回転は認定されるもののGOEでは減点というジャンプが続いてきました。加点が付く3アクセルとしては初めて成功ということで、喜びもひとしおだったのではないでしょうか。ただ、それ以上に素晴らしかったのは3アクセル以降で、3アクセルの成功で気を緩めることなく全てのジャンプをほぼノーミスで跳び切り、8本の3回転ジャンプを跳ぶ、いわゆる“エイト・トリプル”を達成。これも3アクセルジャンパーでないとできないことですから、本当に感嘆せざるをえません。
 女子では3人目となる五輪での3アクセル成功という偉業で歴史に名を刻んだ長洲選手。思えばバンクーバー五輪、ソチ五輪と浅田真央さんのみが3アクセルに挑み、そして成功させてきて、その浅田さんが引退した今、平昌五輪では長洲選手が五輪における3アクセルの歴史、伝統を受け継ぎ、繋いでいるというのが感慨深く、嬉しく思います。ぜひ個人戦でも、ショート、フリーともに3アクセルを決めて、最高の笑顔を再び見せてほしいですね。


 3位は世界選手権2017銅メダリスト、カナダのガブリエル・デールマン選手です。

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 まずは代名詞となっている3トゥループ+3トゥループ、これをダイナミックに決めて1.2点の加点を獲得。さらに3ルッツ、3フリップとクリーンに着氷してそれぞれ1点以上の加点を得ます。後半最初は3ルッツからの3連続ジャンプ、これも決めて波に乗ります。3ループはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で減点となりましたが、2アクセル、3サルコウ+2アクセルのシークエンスジャンプとミスらしいミスなく跳び切り、ステップシークエンス、スピンも全てレベル4。演技を終えたデールマン選手は満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストまで約5点の137.14点で4位とチームに大いに貢献しました。
 シーズン前半はデールマン選手らしい躍動感溢れる演技がほとんど見られず目立った成績を残せませんでしたが、カナダ選手権で圧巻の滑りを見せて2度目の優勝を果たし、満を持して五輪に乗り込んできました。カナダ選手権からフリーを昨季の「ラプソディー・イン・ブルー」に戻したわけですが、プログラムを変えるだけでこんなにも変わるものかというくらい、自信に満ちたデールマン選手が復活しましたね。そして今回のこの素晴らしい演技ですから、個人戦もおのずと期待が高まります。まずは今季安定感のあるショートでどの位置につけるかがポイントとなってきそうですが、爆発力のあるフリーでデールマン選手がどこまで上位を引っ掻き回すのか、楽しみですね。


 4位はソチ五輪銅メダリスト、イタリアのカロリーナ・コストナー選手です。

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 冒頭は若干苦手としている3ルッツでしたが、クリーンに跳び切って加点1.5を得ます。次いで3フリップ+2トゥループはファーストジャンプでこらえながらもセカンドジャンプに繋げます。さらに3ループも着氷ミスと細かなミスが重なります。後半は最初の3トゥループを決めますが、2アクセル+1ループ+3サルコウは最後のジャンプが回転不足に。続いて2アクセルも回転が足りず。最後の3+2はクリーンに下り、代名詞のステップシークエンスはレベル4はもちろん、2点という極めて高い加点を得てアピールしましたが、自己ベストからは8点ほど低い134.00点で4位にとどまりました。
 ショートでは2位と高順位を確保したコストナー選手でしたが、このフリーはジャンプの課題が見えた内容だったかなと思いますね。ショートは3フリップ+3トゥループを得点源として、ほかの選手とのジャンプ構成の差を最小限にしていますが、フリーは3+3を入れていない分、どうしても技術点で他選手と差がついてしまいます。女子のフリーの技術点はトップレベルだと60点台は当たり前、目指すところは70点台、その中でも一握りの選手だけが80点台に乗せられるわけですが、コストナー選手の今回の技術点は59.73点ということで、51.86点だった欧州選手権よりはかなり良いですが、個人戦の表彰台を狙う上ではさらに上げていく必要があります。
 個人戦はまず得意のショートで良い位置につけて、フリーでノーミスできれば、メダルもぐっと近づくのではないでしょうか。


 5位は四大陸女王、日本の坂本花織選手です。

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 冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループ、しかしファーストジャンプでいつもほどの高さが出ず、アンダーローテーションとなったため単独にします。続く3サルコウはクリーンに成功。後半に5つのジャンプ要素を固め、その最初の3ルッツはきれいに着氷しますが、踏み切りのエッジが不正確と判定されわずかに減点。次いで3フリップからのコンビネーションジャンプは急遽3トゥループをつけて、冒頭のミスをリカバリー。2アクセル+3トゥループ+2トゥループは3トゥループの着氷で詰まったため、3つ目のジャンプはつけられず。単独の3ループは予定どおり下り、そして最後の2アクセルに2本の2トゥループをつけてこちらもミスを補いましたが、細かなミスが散見され、演技を終えた坂本選手は悔しそうに顔を歪めました。得点は131.93点で5位でした。
 スケートアメリカから全日本選手権、四大陸選手権と怒濤の快進撃を見せてきた坂本選手ですが、初めてのオリンピックはさすがに特別な緊張感があったのか、彼女らしいのびやかさが鳴りを潜めてしまいましたね。まず最初の3+3で力みからか本来のスピード、高さが出ず単独になったことで、どこでリカバリーしようかと考えながらの滑りになったと思うので、演技全体の躍動感はあまりなかったかもしれません。ただ、ミスをしても挽回できる強さがあるということが改めて証明されたと思いますので、この経験を活かして、個人戦では怖がらずに自信を持って思い切ってぶつかっていってほしいですね。



 女子フリーの終了時点での順位はこうなりました。


1位:カナダ 63ポイント
2位:OAR 58ポイント
3位:アメリカ 53ポイント
4位:イタリア 49ポイント
5位:日本 44ポイント



 この時点でカナダの金メダル、OARの銀メダルが確定。あとは銅メダルをアメリカとイタリアが争うという展開となり、日本はメダル獲得の可能性は消滅しました。坂本選手の実力を考えると、ザギトワ選手に次ぐ2位に食い込むチャンスは充分にあったので残念でしたが、団体戦の経験が個人戦に活かされることを今は期待したいですね。




 ここからは最終順位が確定するアイスダンスフリーダンスです。
 FDのトップに立ったのは、世界チャンピオン、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組です。2つのステップはレベル3でしたが、そのほかは全てレベル4、しかも極めて高い加点を積み重ねる圧巻の演技で、パーソナルベストに0.23点と迫るハイスコアでショートに続き堂々の1位となりました。
 女子フリーでカナダが初の団体優勝を決め、その締めくくりの大トリとしてこれ以上ない素晴らしい演技を見せたヴァーチュー&モイア組。個人戦前の団体戦で調整的に難しい部分もあったでしょうが、力を温存するというよりは現時点での全力を尽くした演技のように思えました。長年のパートナーシップから生まれる二人ならではの一体感、二人の連帯した動きから生み出されるストーリーというのが、まさに映画『ムーラン・ルージュ』の世界そのもので、改めてうっとりしてしまいました。あとはこの団体戦には出てこなかったフランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組との一騎打ちですから、この団体戦の演技も充分すぎるほど美しかったですが、これ以上のパフォーマンスが見られることを楽しみにしたいですね。

 2位はアメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組。2つのステップはレベル3にとどまりましたが、得意のツイズルではほかのカップルよりもより多く回るシーンもあり、高い技術力を充分に示し2位に入りました。
 シブタニ兄妹もヴァーチュー&モイア組同様、順調に仕上がっているかなという印象ですね。技術的な不安は何もないはずですので、メダル争いに向けては精神面の勝負になってきそうです。まだ加点を伸ばせるエレメンツがあると思いますので、個人戦でのブラッシュアップに期待ですね。

 3位はOARのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。2つのステップは上述した2組のカップル同様、レベル3でしたが、そのほかのエレメンツはレベル4を揃え、演技構成点では全体の2位の高評価を得て、ショートと同じ3位でした。
 自己ベストまでは約2点という得点で、団体戦を上々の内容とスコアで締めくくったボブロワ&ソロビエフ組。個人戦ではさらにピークを合わせてくるでしょうから、パーソナルベスト更新も可能性として大いにあるのではないでしょうか。

 4位は元世界王者、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組です。ステップ2つがレベル3、リフトが1つレベル2という取りこぼしがあり、技術点を伸ばし切れず、パーソナルベストから5点ほど低い得点で4位にとどまりました。
 点数的にはもう少し伸ばしたかったなという印象ですが、演技としては非常に印象深く二人の気持ちが伝わってきましたね。フリーはイタリアの名作映画『ライフ・イズ・ビューティフル』ということで、カッペリーニ&ラノッテ組の表情の豊かさ、多彩な演技力が思う存分発揮できるプログラムだと思いますから、個人戦では全て出し切って笑顔で終われることを祈りたいですね。

 日本の村元哉中&クリス・リード組は5位となりました。

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 冒頭は課題のツイズル、これをしっかりまとめてレベル4に加え加点も取ります。続いてサーキュラーステップシークエンスでしたが、リード選手が氷にけつまずいてしまい転倒するアクシデントが発生。レベル1、そしてGOEでも減点となります。しかし、その後は動揺を引きずることなくすべての要素を確実にこなし、何とか挽回しました。
 序盤のステップでまさかのミスがあり、演技後リード選手は悲しそうにうなだれました。ですが、そのリード選手を励まし慰める村元選手の姿が心強く、良いカップルだなと思いましたね。また、転倒後の立て直しは見事で、真価が問われる失敗後の演技をまとめられたことはまさに二人の成長の証だなと感じます。今回の失敗は忘れて、オリンピックを楽しむ気持ちを大切にして、個人戦のショートダンスでまず好演技をして、フリーダンスに繋げてほしいですね。



 ということで、団体戦の最終順位は以下のようになりました。


1位:カナダ 73ポイント
2位:OAR 66ポイント
3位:アメリカ 62ポイント
4位:イタリア 56ポイント
5位:日本 50ポイント

―――
6位:中国 18ポイント
7位:ドイツ 16ポイント
8位:イスラエル 13ポイント
9位:韓国 13ポイント
10位:フランス 13ポイント




 優勝したのはソチ五輪では2位だったカナダです。

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 終わってみればカナダが圧倒的に強かったですね。4種目、それぞれショートとフリーが行われた中で必ずトップ3内に入っていたのですから、優勝しないわけがないという感じですね。出場メンバーもショートとフリーで選手を入れ替えたのは女子のみ、その女子もデールマン選手、ケイトリン・オズモンド選手ともに世界選手権メダリストという甲乙つけがたいダブルエースの二人ですから、実力差がないというところも大きかったです。そして、4種目中2種目で選手の入れ替え可能というルールでしたが、男子、ペア、アイスダンスでエースをショート、フリーの両方で投入したという戦略からは、何が何でも金メダル取るぞという強い意志がうかがえました。昨シーズン、バンクーバー五輪金メダルのヴァーチュー&モイア組が休養から復帰したことによって、チャン選手とモイア選手とのあいだで本気で団体の優勝を狙いにいこうといった話がなされたそうで、カナダはチームとして個人戦と変わらないくらいの意気込みで団体戦にも全力を注いでいたようですね。団体戦というのは個人競技であるフィギュアにおいては軽く扱われがちですが、このカナダチームの姿、戦いぶりを拝見して、やはりチーム戦も良いなと個人的には感じましたし、団体戦に加われなかったカナダの選手たちも、金メダルを手にする同国の仲間たちを見てうらやましい気持ちは少なからず抱いたんじゃないかなと思います。個人戦が最重要なのはもちろんですが、カナダチームの力の入れよう、喜びようが、五輪における団体戦の価値を高めてくれたような気がします。カナダチームの皆さん、団体戦優勝おめでとうございました。


 惜しくも銀メダルだったのはソチ五輪金メダルのOARです。

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 OARも女子ではエフゲニア・メドベデワ選手、ザギトワ選手のダブルエースを起用し、男子もエースのミハイル・コリヤダ選手、アイスダンスもエースのボブロワ&ソロビエフ組、ペアもショートではエースのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組という万全の布陣で臨みましたが、最初の男子ショートでのつまずきが痛かったですね。もしその出遅れがなくカナダとの差がもっと小さければ、ペアのフリーでナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組ではなく、ショートに続いてタラソワ&モロゾフ組が出場するという選択肢もあったのかなと想像したりもします。


 銅メダルを獲得したのはソチ五輪でも3位だったアメリカ。

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 3位のアメリカは全体を通してコンスタントにポイントを獲得しましたが、どの種目でも一つも1位というのがなかったので、そのあたりで上位2チームと差がついたのかなと思います。こちらも男子ショートのネイサン・チェン選手の演技内容が違っていれば、その後の試合展開も変わっていたかもしれません。


 4位のイタリアはペア以外の3種目で1人の選手(組)がショートもフリーも出場し、特に女子のコストナー選手がショートもフリーもというのは少し驚きましたが、それだけ団体戦に懸ける想いも強かったのかなと思います。また、男子のマッテオ・リッツォ選手、ペアフリーのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組といった伏兵の活躍がひときわ印象に残りましたね。
 そして、日本はソチ五輪と同じ5位でした。男子ショートの宇野昌磨選手の圧巻の1位、ペアショートの須崎海羽&木原龍一組の8位、アイスダンスSDの村元&リード組の5位とショートまでは良い流れでしたが、フリーは一転、全種目で最下位と流れを手離してしまいましたね。男女シングルに関してはエースをショート、フリーともに起用するという戦い方もありますが、個人戦との兼ね合いもあって難しいところですし、また、男女シングルは団体戦出場を見送った羽生結弦選手以外は全員五輪初出場ということもありましたから、そこでいきなり団体のショートもフリーもというのはさすがに負担が大きすぎるので、ショートとフリーで選手を入れ替えざるをえなかったですね。何より、どれだけ男女シングルの選手が頑張ったとしてもペアとアイスダンスで高いポイントは望めないというのがわかっているので、選手たち自身も「メダル獲得」というのは現実味を持って考えられなかったでしょうし、3位と5位の差というのは、実際の数字以上に大きなものだなと改めて感じさせられましたね。


 とにもかくにもこうして無事に幕を閉じた団体戦。そして、とうに個人戦が始まっており、ペア、男子はこの記事をアップした時点で終了しています。かなりのスローペースですが、順番に記事にしていきたいと思いますので、お時間がある時にでもぜひご覧ください。


:記事冒頭の表彰式の画像、カナダチームの画像、アメリカチームの画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、ザギトワ選手の画像、長洲選手の画像、デールマン選手の画像、コストナー選手の画像、坂本選手の画像、村元&リード組の画像、ロシアチームの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-17 17:39 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 世界最強国を決める団体戦。この記事アップの時点ですでに個人戦が始まってしまっていますが、この記事では少し駆け足に団体戦の男子フリーの結果を書いていきたいと思います。なお、団体戦のルールについては、こちらの記事をご覧ください。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 1位となったのはカナダのベテラン、パトリック・チャン選手です。

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 まずはショートで失敗した4トゥループ+3トゥループ、これを今度は完璧に決めて2.14点の加点を得ます。次いで単独の4トゥループも成功し、最高の滑り出しを見せます。しかし直後の3アクセルはパンクして2アクセルに。コレオシークエンスを挟んで中盤、3ルッツ+1ループ+3サルコウはパーフェクト。そして後半、課題の3アクセルはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で転倒。3ループも乱れます。その後の2つのジャンプはクリーンに下りて、代名詞のステップシークエンスではほとんどのジャッジから加点3を獲得しました。得点は179.75点とシーズンベストをマークして1位となりました。
 SPでは転倒した4トゥループを完璧に決めたことで流れをつかんだという印象でしたね。あとは苦手の3アクセルの問題のみ、という感じがしますが、最後の最後までチャン選手にとっては3アクセルが鬼門であり続けていて、だからこそ個人戦では3アクセルの壁も乗り越えて久しぶりのチャン選手の満面の笑みを見たいなと思いますし、3アクセルさえクリアできればきっとそういう光景が見られるのではないでしょうか。


 2位はOAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のミハイル・コリヤダ選手です。

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 冒頭は大技の4ルッツ、回転は回り切っていましたがこらえきれず転倒します。続いて4トゥループはダウングレード(大幅な回転不足)で着氷ミスと不穏な出だしに。ですが、直後の3アクセル+2トゥループはクリーンに決めます。後半最初は2本目の4トゥループ、着氷はしますがセカンドジャンプには繋げられず、単独ジャンプの繰り返しということで基礎点としては減点に。続く3アクセルは完璧で2.29点の加点。さらに3+1+3、3ルッツ、2アクセルと終盤はきれいなジャンプを続け挽回しました。得点は自己ベストから12点ほど低い173.57点で2位となりました。
 ショートでは致命的なミスを連発してまさかの8位に沈んだコリヤダ選手。中2日でどれだけ修正してきたかが注目点でしたが、今回はまだその課題をクリアし切れなかったのかなという感じですね。技術的に何かがずれているのか、それとも精神的な影響なのかはわかりませんが、3アクセルを始めとした3回転ジャンプは全てクリーンに決まっているところを見ると、4回転だけ感覚がつかみ切れていないのかもしれません。こういった姿は今季のほかの試合でもあったので珍しいことではありませんから、うまく調整して16日の個人戦のショートに繋げてほしいですね。


 3位はアメリカのベテラン、アダム・リッポン選手です。

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 冒頭は大技の4ルッツではなく、2アクセルでまずは無難にスタート。続いて高難度の3フリップ+3ループを完璧に跳び切って1点以上の加点を得ます。直後の2アクセルも問題なく成功。後半は得点源の3アクセル+2トゥループ+2ループからで、これを確実に成功。続く2本目の3アクセルも着氷させると、3+3、3サルコウも着氷。最後の3ルッツはわずかに回転が足りませんでしたが、終盤のコレオシークエンス、2つのスピンでは全て加点1以上と高い質を揃え、演技を終えたリッポン選手はガッツポーズで喜びを露わにしました。得点はパーソナルベストまで約9点の172.98点で3位とチームに貢献しました。
 この演技が五輪初演技となったリッポン選手。近年フリーの冒頭でほぼ毎試合挑んできた4ルッツこそ回避しましたが、その分演技全体の完成度は非常に高く、個人戦を前にこの演技ができたことでさらに自信を深められるでしょうね。表彰台争いに加わるのは難しいでしょうが、これが最初で最後の五輪になるであろうリッポン選手にとって、ベストを出し切り、プログラムの世界を観客に伝えることこそが最大の目標になるのではないかと思うので、個人戦もリッポン選手らしい演技を見せてほしいですね。


 4位はイタリアの新星、マッテオ・リッツォ選手です。

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 まずは得点源の3+3、これをスムーズな流れで決めて1.2点の加点を獲得。3アクセル+2トゥループ、3ルッツも完璧に下りて、それぞれ1点以上の加点を得ます。後半最初は2本目の3アクセルでしたが、これはアンダーローテーション(軽度の回転不足)に。しかし、直後の3+1+3はクリーンに決め、残りの3ループ、2つの2アクセルも成功。フィニッシュしたリッツォ選手は破顔しました。得点は156.11点とパーソナルベストには約1点及びませんでしたが、4位と健闘しました。
 ショートに続いて出場したリッツォ選手。ショートも自己ベストに近いスコアで本領を発揮しましたが、このフリーも本当に安定していましたね。緊張で身体が硬くなるとか演技が縮こまるといった感じがほとんどなくて、最初から最後までのびやかでした。4回転こそ持っていない選手ですが、くせのないジャンプは加点もつきやすいですし、ステップやスピンも安定していますので、今後がますます楽しみになりました。まずは個人戦でも団体戦のような、もしくはそれ以上の会心の演技を期待したいと思います。


 5位は日本の田中刑事選手です。

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 まずは得点源の4サルコウでしたが、パンクして2回転になります。次いで2本目の4サルコウ、こちらも回転できず2回転と大きなミスが続きます。直後の3アクセルはクリーンに下りて1.57点の加点。そして後半、鍵を握る4トゥループは転倒。3アクセルからの3連続は最後が1回転になります。3+3はクリーンに下り、終盤の2つの単独ジャンプも軽やかに決めますが、基礎点の高いジャンプのミスが響き、148.36点で5位にとどまりました。
 五輪初演技だった田中選手ですが、その緊張感がジャンプの感覚を狂わせてしまったのか今季成功率が高まっていた4サルコウが全く形になりませんでしたね。全日本選手権、四大陸選手権で決めた後半の4トゥループもうまくはまらず、やはり五輪の雰囲気に飲まれてしまったのかなという印象を受けます。田中選手本人は4サルコウの失敗について、直前の6分間練習で決まらずイメージが悪くなったことを原因として挙げているので、いつもどおりの感覚さえつかんで、落ち着いてやれれば個人戦は問題ないのではないかと思います。この失敗はさっぱり忘れて、個人戦のショートではまっさらな気持ちで挑戦者として思い切り演技してほしいですね。



 団体戦男子フリーが終了し、順位は以下のようになりました。


1位:カナダ 55ポイント
2位:OAR 48ポイント
3位:アメリカ 44ポイント
4位:イタリア 42ポイント
5位:日本 38ポイント



 カナダがどんどん2位以下に差をつける一方、日本のメダルはかなり厳しい状況になりましたね。男子フリーに出場した田中選手の実力を考えると、イタリアのリッツォ選手を上回る力は充分にあったと思うので、最下位の5位となってしまったのは少し予想外でした。


 次はいよいよ団体戦最後の記事、女子フリー&アイスダンスフリー編です。早足な感じの記事になってしまって申し訳ないですが、ぜひ次もご覧下さると幸いです。


:記事冒頭の日本チームの画像、コリヤダ選手の画像、リッツォ選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、チャン選手の画像、リッポン選手の画像、田中選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-15 01:20 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 平昌五輪3日目、2月11日にフィギュア団体の女子SP、アイスダンスSD、ペアフリーが行われました。競技順としてはアイスダンス、女子、ペアの順でしたが、この記事では女子、アイスダンス、ペアの順に書いていきます。なお、団体戦のルールについては、こちらの記事をご覧ください。

Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 女子のトップに立ったのは世界女王、OAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)のエフゲニア・メドベデワ選手です。

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 ジャンプは全て後半に固め、まずはスピン、ステップシークエンスをいつもどおり完璧にこなします。そして後半、得点源の3フリップ+3トゥループはファーストジャンプで片手、セカンドジャンプで両手を上げた難しい空中姿勢で跳び切り、1.7点の加点を得ます。さらに3ループ、2アクセルとクリーンに下り、終盤2つのスピンももちろんレベル4を揃え、フィニッシュ前から観客の拍手喝采に包まれました。得点は自身が持つ世界最高得点を0.21点更新する81.06点をマークし、圧巻の1位となりました。
 先月の欧州選手権で右足甲の疲労骨折による休養から復帰し、ジャンプミスがいくつかあって連勝記録が途絶えたメドベデワ選手。しかし着実に調子を本来のレベルに戻していて、もうすっかりいつもどおりのパーフェクトなメドベデワ選手という感じでしたね。個人戦を前にして早々と世界最高を塗り替えてしまい、個人戦はどうなるんだろうと逆に心配な気持ちも個人的には抱いてしまいますが、約10日後の個人戦に向けてさらなるピーキングをしてくると思いますので、再びの世界最高更新に期待したいですね。


 2位はイタリアのベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

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 まずは得点源の3フリップ+3トゥループから、ファーストジャンプでわずかに乱れセカンドジャンプに繋げますが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)で着氷します。続く3ループは余裕を持った跳躍で加点1.4。後半の2アクセルも難なくこなし、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4。演技を終えたコストナー選手は破顔しました。得点は75.10点と自己ベストには3点ほど及ばなかったものの、2位と好位置につけました。
 12月のイタリア選手権からジャンプ構成の難度を上げたコストナー選手。シーズン前半まで跳んでいた3トゥループ+3トゥループと比べると、3フリップ+3トゥループは難度を上げた分、確率が良いとは言えないですが、2大会連続の表彰台を狙う上で必要なジャンプと言えますね。そして、何といっても世界随一のスケーティングから生み出されるスピードがありながらも軽やか、重力を感じさせないような優雅な滑りというのは抜きんでた美しさで、演技構成点でメドベデワ選手と張り合える数少ない選手の一人ですから、個人戦も非常に楽しみになってきます。
 その前にはまずは団体戦のフリーにもコストナー選手は出場とのことで、こちらも好演技を楽しみにしたいですね。


 3位は世界選手権2017銀メダリスト、カナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 冒頭は3フリップ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプの着氷で乱れ、何とか3トゥループに繋げますが回転不足となってしまいます。続く3ルッツはこらえた着氷となり、踏み切りのエッジも不正確と判定。後半の2アクセルは決め、ステップシークエンス、スピンはレベル4に加え、全て1点以上の加点を得ましたが、71.38点と自己ベストからは6点ほど低い得点で3位となりました。
 昨季から使用しているこのSPに関しては抜群の安定感を誇り、オズモンド選手の復活を印象付け、支えたプログラムと言っても過言ではないですが、最近は少しバラつきも増えてきているかなという気もします。絶好調の時は失敗する気配の全くないという感じでしたが、今は絶対的な自信というよりは、出だしから多少慎重さが感じられます。フリーに対しては後半のスタミナに課題を抱えているオズモンド選手なので、このショートは不安感なく臨めることが個人戦のメダルに向けて最大のキーポイントかなと思いますし、ショートで70点台後半のパーソナルベストを持っているからこそ、その優位性を最大限活かすためにはショートである程度点差をつけないと、フリーは厳しい状況になるかもしれません。団体戦フリーには出場しないそうですから、個人戦までの期間をうまく利用して本来のショートの余裕を取り戻してほしいですね。


 4位は全日本女王の宮原知子選手です。

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 冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、一見きれいに下りたかに見えましたが、両ジャンプともアンダーローテーションを取られます。2つのスピンを挟んで後半の3ループはクリーンに着氷。ステップシークエンスでは日本の情緒漂う軽快なリズムに乗せて繊細かつメリハリの利いた滑りを披露。終盤の2アクセルも問題なく下り、得意のレイバックスピンでプログラムを締めくくった宮原選手はガッツポーズで喜びを表しました。しかし3+3の回転不足が響き、得点は68.95点と伸び悩み4位にとどまりました。
 内容自体は納得の演技となった一方で得点は思ったほど伸びず、得点が表示された瞬間、顔をこわばらせた宮原選手。スロー映像を見る限り、3+3はセカンドジャンプは回転不足を取られる可能性が高いかなという感じでしたが、ファーストジャンプは微妙なところでしたね。どうしても今季はこの3+3の回転不足というのがついて回りますが、今回はジャンプ自体はきれいで良い感覚で跳べているような印象を受けますし、そのほかの部分は時間をかけて磨いてきたものをしっかり発揮できたという感じで素晴らしかったですね。宮原選手本人も3+3に関して、「大丈夫という感覚」「悪いジャンプとは思っていない」と話していますので、あまり回転不足にとらわれすぎないでほしいですし、細かい部分を気にするあまりに演技全体の流れやリズムを失っては宮原選手らしさが鳴りを潜めてしまいますから、回転不足になったらなったで仕方ないくらいの気持ちで、開き直ってぶつかっていってほしいなと思います。何より、宮原選手が自分自身に対して焦ったり不安を抱いたりすることなく、今までどおり自分が積み重ねてきたものに自信を持って、個人戦では思い切って演技してほしいですね。


 5位は全米女王のブレイディ―・テネル選手です。

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 まずは3ルッツ+3トゥループから、これをダイナミックな跳躍で回り切って着氷します。後半の3ループ、2アクセルもクリーンに成功。ステップシークエンス、スピンでは全てレベル4を獲得し、パーソナルベストとなる68.94点をマークし5位と健闘しました。
 今シーズン飛躍を遂げ、一躍時の人となったテネル選手。ただ、勢いだけでは乗り切れないであろうこのオリンピックの舞台で、まず初演技でこの落ち着いた滑りができたというのは、勢いだけではない彼女の紛れもない実力を証明したと言えるでしょう。団体戦フリーは出場しないようですが、団体戦ショートで自己ベストを更新したことで追い風がテネル選手に吹いているとも言えますから、個人戦のショートも同じような演技ができれば再び自己ベスト更新も夢ではありませんね。


 6位は地元韓国のチェ・ダビン選手。3+3、3フリップ、2アクセルと全てのジャンプを確実に成功。ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と取りこぼしなくまとめ、パーソナルベストを3点以上更新し6位に食い込みました。
 7位は中国の李香凝(リ・シャンニン)選手。3+2、3ルッツ、2アクセルと目立ったミスなく着氷。ステップシークエンスはレベル2どまりでしたが、柔軟性を活かしたスピンは全てレベル4と実力を出し切り、58.62点で7位でした。
 8位はドイツのニコル・ショット選手です。冒頭は単独の3フリップでしたが転倒。しかし直後の3+3はノーミスで跳び切り挽回します。後半の2アクセルも下り、55.32点で8位となりました。
 9位はフランスのマエ=ベレニス・メイテ選手。冒頭の3+3はセカンドジャンプが回転不足となり着氷も乱れます。さらに後半の苦手の3ルッツはダウングレード(大幅な回転不足)で転倒。最後の2アクセルはまとめましたが、ジャンプミスが響き46.62点で9位にとどまりました。
 10位はイスラエルのエイミー・ブキャナン選手。前半はスピンとステップシークエンスのみ、後半に全ジャンプを組み込む攻撃的な構成でしたが、3+2は若干着氷を乱します。2アクセルはクリーンに下りますが、3サルコウはアンダーローテーションに。それでも全体を最小限のミスに抑えパーソナルベストをマークしました。



 各国のエース格が出揃った団体戦女子ショート。波乱らしい波乱のない中で、やはり際立ったのは絶対女王メドベデワ選手の強さでしたね。この演技が個人戦にどう引き継がれるのか注目です。細かなミスのあった宮原選手やコストナー選手、オズモンド選手らメダル候補たちも、団体戦を経て個人戦まで日程が空く中で、その空白の期間をどう過ごすかによって個人戦の演技も変わってきそうです。




 ここからはアイスダンスのSDについてです。
 トップに立ったのは世界王者、カナダのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。パターンダンスがレベル2にとどまる取りこぼしがありましたが、いつもと変わらず安定した滑りでパーソナルベストに迫る80.81点で断トツの1位でした。
 オリンピックの初演技として上々のスタートを切りましたね。もちろん最大の焦点は個人戦に合わせてくると思いますので、まだ最高潮の状態ではないでしょうが、とはいえ世界王者らしい隙のない貫録に満ち溢れた演技でした。SDは個人戦でもメダルを争うであろうカップルたちが勢揃いしましたが、その中でもやはり別格という佇まい、演技前から雰囲気は圧倒的でしたね。

 2位は世界選手権2017銅メダリスト、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組です。こちらもパターンダンスはレベル2でしたが、そのほかはほぼノーミスで安定感抜群の演技を披露。自己ベストまで約2点ほどのハイスコアで2位と好位置につけました。
 全米選手権ではSD首位発進からFD3位で優勝を逃したシブタニ兄妹。まずは自信を持っているSDということで余裕のある滑りでしたね。五輪のスタートとしては個人戦に向けて良いイメージを作り出せた演技だったと言えるのではないでしょうか。

 3位はロシアのエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビエフ組。こちらもパターンダンスはレベル2で思ったほど技術点は稼げませんでしたが、演技構成点では5項目で9点台を並べ3位と好発進しました。
 こちらも実力者らしい余裕を持った滑りでしたね。SDの今季のジャンルはラテンということで、この艶っぽく濃厚なプログラムがボブロワ&ソロビエフ組にはぴったりという気がしますね。

 4位はイタリアのベテラン、アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組。ツイズル、リフトではレベル4を獲得し、他のカップルが苦戦したパターンダンスでもレベル3を得ましたが、演技中の動作が転倒と見られたのか減点1もあり、自己ベストには3点ほど届きませんでしたが4位と上位につけました。
 イタリアのカップルらしい陽気さと情熱的な滑りで会場を盛り上げましたが、演技構成点は2項目が8点台と全てを大台の9点台に乗せることはできませんでした。カッペリーニ&ラノッテ組としても5項目全てで9点台を狙っていると思うので、なかなかジャッジの評価がついてこないことでもどかしさはあるでしょうが、五輪の舞台で彼ららしさは充分に発揮できていると思いますね。

 そして5位に日本の村元哉中&クリス・リード組が入りました。

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 冒頭の課題としているツイズルはしっかりレベル4に加え加点も獲得し好調な滑り出し。パターンダンスはレベル1にとどまりましたが、ほかのエレメンツでは確実にレベル3を取り、自己ベストまで約3点というスコアで5位と上位に食い込みました。
 苦戦が予想されたアイスダンスで5位に入り貴重な6ポイントを獲得した村元&リード組。同じくらいのパーソナルベストを持つカップルがほかに3組くらいいる中で、強豪のトップ4に続く位置でショートを終えられたのは村元&リード組にとって大きな自信になるのではないでしょうか。先月の四大陸選手権で自己ベストを更新して、この団体SDでも及第点ということで、着実に自信を深めているのが演技以外の表情や佇まいからも感じられますね。

 6位はフランスのマリー=ジャド・ローリオ&ロマン・ルギャック組。全ての要素でしっかり加点を積み重ねましたが、ステップ2つがレベル2、パターンダンスがレベル1となったことであまり技術点を伸ばせず、自己ベストからは5点近く低い得点で6位でした。
 7位は中国の王詩玥(ワン・シーユエ)&柳鑫宇(リュー・シンユー)組。こちらも大きなミスはありませんでしたが、ステップ2つがレベル2、パターンダンスはレベル1、ツイズルもレベル3と取りこぼしが散見され、技術点が伸びず。パーソナルベストから7点ほど低いスコアで7位に沈みました。
 8位はドイツのカヴィタ・ローレンツ&ヨティ・ポリゾアキス組。ノンホールドのステップ、パターンダンスはレベル2でまとめましたが、ツイズルは若干乱れがあり減点に。自己ベストから5点以上低い得点で8位でした。
 9位は地元韓国のミン・ユラ&アレクサンダー・ガムリン組。パターンダンスは丁寧にこなしレベル2を取りましたが、ツイズルや最後のステップでミスがあり減点を取られます。また、女性のミン選手の衣装の背中側のホックが外れるアクシデントもあり、少し慎重な演技となり、自己ベストから10点低い得点にとどまりました。
 10位はイスラエルのアデル・タンコワ&ロナルド・ジルベルベルグ組。ツイズル、リフトはレベル3とまとめましたが、ほかの要素は全て減点となり、自己ベストより4点ほど低い44.61点で最下位にとどまりました。


 大きなミスが出にくく実力が順当に表れやすいアイスダンス。ということでSDも下馬評どおりの順位でしたね。その中で、実力やパーソナルベストが拮抗するカップルたちを抑えて5位に入った村元&リード組の活躍は素晴らしかったですね。



 ということで、4種目のショートが終了した時点で順位はこうなりました。


1位:カナダ 35ポイント
2位:OAR 31ポイント
3位:アメリカ 29ポイント
4位:日本 26ポイント
5位:イタリア 26ポイント
―――
6位:中国 18ポイント
7位:ドイツ 16ポイント
8位:イスラエル 13ポイント
9位:韓国 13ポイント
10位:フランス 13ポイント



 この結果を受けて上位5か国のみがフリーに進出。ソチ五輪と全く同じ5か国となりました。




 ここからは女子SP、アイスダンスSDと同日に行われたペアフリーについてです。
 ペアフリーのトップに立ったのはカナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。冒頭の3ツイストをレベル3ながらクリーンにまとめて1.3点の加点を得ると、サイドバイサイドの3ルッツもしっかり着氷。続いて大技スロー4サルコウに挑み、これは着氷が乱れましたが、直後の3+2+2の難しい3連続ジャンプを成功。その後もミスらしいミスなく最後までエネルギッシュに滑り切り、演技を終えた二人は破顔しました。得点はシーズンベストとほぼ同じ148.51点で2位のペアに10点ほどの点差をつけての1位でした。
 ショートに続いて出場したデュハメル&ラドフォード組。ショートもよくまとまっていて素晴らしかったですが、それ以上といっても過言ではない見事なフリーで、快進撃を続け無敵状態だった頃の二人の姿が蘇ってくるような演技でしたね。団体戦のショートもフリーも出場するというのは大変だったと思うのですが、この2つの好演技が個人戦にも繋がるように祈りたいですし、あとはペアの個人戦まではあまり間がないので体調をうまく整えて、体の疲労を取って、個人戦ショートに備えてほしいと思います。

 2位はイタリアのヴァレンティーナ・マルケイ&オンドレイ・ホタレク組。まず冒頭の3ツイストを完璧に決めると、ソロジャンプの3トゥループも二人のタイミングぴったりに着氷。さらに3+2+2を下り、後半の難しい2つのスロージャンプもパーフェクト。全てのエレメンツで高い加点を積み重ねる会心の演技となり、フィニッシュした二人は歓喜を爆発させました。得点も自己ベストを5点以上更新し、2位と高順位を記録しました。
 本当に隅から隅まで完全無欠の演技で、このペアフリーで最大の盛り上がりを見せましたね。思えば4年前のソチ五輪ではマルケイ選手は女子シングルの選手として団体戦のフリーで演技していたわけで、それから4年経ってペア選手としてトップレベルで活躍し、これほどの演技を見せたというのは脱帽としか言えません。今やすっかりペア選手のイメージが定着したマルケイ選手ですが、転向した時すでに20代後半だったことを思うと、正直ここまでペア選手として活躍するとは思っていませんでした。シングルとペアとでは全く異なる競技といってもよいくらいの違いがありますから、4年という長いようで短い期間で彼女が作り上げてきたものに対して拍手を送りたい気持ちですね。ぜひ個人戦でもこのような演技を見せてほしいと思います。

 3位はOARのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組。まず3ツイスト、3+2+2のサイドバイサイドジャンプを決め好調なスタートを切りましたが、続く3サルコウはパンクして2回転に。終盤のつなぎの部分で女性がつまずいて転倒するアクシデントもありましたが、動揺を見せることなくエレメンツを丁寧にこなし、自己ベストまで約4点というスコアで3位と健闘しました。
 この演技が五輪初演技となったザビアコ&エンベルト組。思わぬ転倒もありましたが、こういった予想外の出来事も含めていろんなことが起きる五輪というのを個人戦前に経験できたことが二人にとってメリットとなるのではないかと思います。

 4位はアメリカのアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組。冒頭の3ツイスト、スロー3サルコウ、サイドバイサイドの3サルコウと順調な滑り出しに成功しましたが、続くサイドバイサイドの3トゥループは転倒。その後はミスらしいミスなく立て直しましたが、自己ベストには遠く及ばず4位でした。
 もったいない転倒はあったものの、さすが実力者だけあってミスを引きずることなく、直後のエレメンツですぐに切り替えて質の高い技を続けられるというところに実力者の実力者たるゆえんを感じましたね。

 日本の須崎海羽&木原龍一組は5位となりました。

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 まずは得点源となるサイドバイサイドの3ルッツから、二人のタイミングはずれましたが、回転不足なくしっかりと着氷します。しかし続く3ツイストはキャッチミスで減点。高難度のスロー3ルッツも転倒します。その後もソロジャンプ、スロージャンプともにクリーンに決められず、ほかの要素でも細かなミスが重なり、パーソナルベストから3点ほど低いスコアにとどまりました。
 パーソナルベストを叩き出し歓喜に包まれたショートから一転、フリーはショートよりも硬さが気になりましたね。やはりショートのようにうまくまとめたいという気持ちもあったでしょうし、チームに貢献したいという気持ちもあったでしょうから、いろんな想いが重なって硬くさせてしまったのかもしれません。ソロジャンプの3ルッツやスロージャンプの3ルッツなど、トップペアと比べても遜色ない構成で攻めの滑りをしているペアだと思うので、この構成を完璧に完成させるまでにはまだ時間がかかるのかもしれませんが、彼らのベストを尽くせれば必ずできるエレメンツばかりだと思うので、ぜひ個人戦でもショートで好演技をしてフリーに進んで、団体戦のリベンジをしてほしいですね。




 ということで、ペアフリーが終わった時点での順位はこうです。


1位:カナダ 45ポイント
2位:OAR 39ポイント
3位:アメリカ 36ポイント
4位:イタリア 35ポイント
5位:日本 32ポイント



 カナダが徐々に2位に差をつけてきて、初優勝に向けて足固めに入ったという印象ですね。OAR、アメリカとフィギュア大国が続いて順当な順位と言えます。日本は苦戦が予想されたペアでそのとおりの結果にはなってしまいましたが、イタリアのマルケイ&ホタレク組がフリー2位と思った以上に上位に食い込んだこともあって、イタリアに逆転され、点差も少しつけられてしまった印象ですね。


 さて、次は団体戦の男子フリーの記事に続けます。そうこうしているうちに個人戦が近づいてきていて、急いで団体戦の記事を仕上げたいところですが、もうしばらくお待ちください。では。


:記事冒頭の日本チームの画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」の平昌五輪特集ページから、メドベデワ選手の画像、コストナー選手の画像、オズモンド選手の画像、村元&リード組の画像、須崎&木原組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手の画像、テネル選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-14 00:58 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 2018年2月9日、平昌オリンピックが開幕しました(正式には8日から一部競技の予選が始まっていますが)。そしてフィギュアスケートはその開会式当日の9日の午前から競技が開始。まずは国別で争われる団体戦からです。その団体戦は初日の9日に男子ショートプログラムとペアショートプログラムが行われました。日本チームは好スタートを切りましたが、その模様をお伝えする前に団体戦の試合の流れとルール、システムについてざっくりとおさらいしたいと思います。

*****

◆出場国とチーム構成


カナダ、OAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)、アメリカ、日本、中国、イタリア、フランス、ドイツ、イスラエル、韓国


 各国の選手が対象となる国際試合において獲得したポイントの合計によって国別のポイントが累積され、そのランキング上位10か国が団体戦に出場できることとなっています。なお、開催国枠での出場も可能ですが、開催国の韓国は国別のランキングで10位に入っているため、今回は開催国枠は使用されません。また、団体戦に国としてエントリーするためには、男子、女子、ペア、アイスダンスの4種目のうち、最低3種目で個人戦での出場枠を獲得していることが必須で、国別ランキングではスペインがイスラエル、韓国の上に位置していますが、スペインは男子とアイスダンスのみでしか出場枠を持っていないため、団体戦の出場要件を満たしておらず、国別ランキングでは実際は11位の韓国が繰り上がるということとなりました。
 各チームの選手構成は主に個人戦に出場する選手で構成されますが、個人戦での出場枠がなく団体戦のみに出場する選手の参加も可能です。そして、4種目のうち最大2種目でショートとフリーで滑走する選手を入れ替えることができます。言い換えれば、最低2種目は同じ選手がショートもフリーも滑らなければいけません。


◆試合の流れと順位決定方法

 試合は各種目のショート、フリーごとに各国1名(組)が出場し、まず個人戦同様にショートから行われ、順位によって1位は10ポイント、2位は9ポイント、3位は8ポイントというように順位が一つ下がることにポイントも1つ減っていきます。4種目のショート全てが終わった段階で、獲得した国別ポイントの上位5か国のみがフリーに進出できます。フリーにもショートで獲得したポイントは持ち越され、その最終的な合計ポイントで最終順位が決定されます。
 また、その国別のポイントで2か国以上が同点で並んだ場合は、選手が獲得した得点を合算して順位を決定します。


 そんなフィギュア団体戦。まず行われた男子SPとペアSPの結果を駆け足ですが書いていきたいと思います。


Olympic Winter Games 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子ショートの1位に立ったのは日本の宇野昌磨選手です!

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 まずは得点源の4フリップから、しかしこれは着氷で手をつき大きく減点されます。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、フリー最初は今季鬼門となっている4トゥループ+3トゥループ、しっかり両ジャンプとも着氷し1点以上の加点を獲得。さらに得意の3アクセルでは2点以上の加点を得る出来栄えで跳び切り、演技を締めくくる2つのスピンもレベル4を揃え、演技後の宇野選手は思わず笑みをこぼしました。得点は自己ベストに約1点と迫る103.25点で圧巻の1位となりました。
 10人中最終滑走となった宇野選手。その前に滑った選手たちが次々と大失敗を連発し、宇野選手は大丈夫だろうかと心配もしましたが、全くの杞憂でしたね。演技前も演技後もいつもどおりの淡々とした様子で、今自分がやるべきことをやっただけという冷静さを感じました。そうは言ってもここ最近はショートで転倒したり4+3が4+2になったりとミスが多かったので、久しぶりに全てのジャンプが予定どおりに入ったなという印象ですね。
 演技後のインタビューでは「特別な緊張感はない」「全日本選手権の方が緊張した」とオリンピックに対しての特別な意識を感じさせない発言もあった一方で、前の選手たちの演技をバックヤードで見ていてその影響はあったとも話しました。ただ、「朝早いからかな」「自分も失敗するのかな」などと思いながら演技に臨んだとのことで、不安がゼロというわけではなかったものの、ほかの選手の演技を冷静に受け止められるだけの余裕も持っていたようで、頼もしいとともにどこまでこの人はマイペースなんだろうと改めて驚かされました。
 4年前のソチ五輪で羽生選手がまず団体戦のショートで勢いをつけて個人戦に繋げたというのを思い起こさせるような展開でもあり、個人戦でもこの調子をキープしてさらに上げて、満足のいく演技をしてほしいなと思います。


 2位となったのはイスラエルのベテラン、アレクセイ・ビチェンコ選手です。

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 冒頭は3アクセル、これを完璧に下りて1.86点の加点を獲得。次いで4トゥループもクリーンで加点1.43を得ます。後半の3+3も難なく決め、スピンでは取りこぼす場面もありましたが、終盤のステップシークエンスではアップテンポなリズムに合わせて軽快な滑りで観客を沸かせ、フィニッシュしたビチェンコ選手は破顔しました。得点はパーソナルベストの88.49点で2位と好位置につけました。
 今シーズンはコンスタントに成績を残し安定感を示しているビチェンコ選手。緊張感漂う五輪の舞台でもいつもどおりの伸びやかさで、演技をしながら五輪の空気感を味わっているような余裕さえ伝わってきましたね。イスラエルは団体戦においてはメダル獲得というのは厳しいポジションなので、ビチェンコ選手も個人戦前の肩慣らしの場としてうまく団体戦を利用しているという印象も受けますし、しっかりと自分自身に集中できているというのは経験豊かなベテランならではかもしれませんね。
 個人戦でもぜひビチェンコ選手らしい元気の良い滑りで会場を盛り上げてほしいと思います。


 3位はソチ五輪銀メダリスト、カナダのパトリック・チャン選手です。

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 まずは得点源の4トゥループ+3トゥループでしたが、ファーストジャンプで転倒してしまいコンビネーションにはならず。続いて3ルッツは空中で軸が曲がり、何とか2トゥループをつけてコンビネーションにします。後半の苦手の3アクセルはこちらも軸が傾き転倒。ステップシークエンスでは相変わらずの世界一のスケーティングで音楽との調和を見せましたが、ジャンプミスが響き81.66点の3位と伸び切りませんでした。
 今季はジャンプに苦戦し11月のNHK杯を辞退、五輪選考会のカナダ選手権に向けて調整を優先したチャン選手。そのカナダ選手権でも4トゥループや3アクセルのミスが散見され、そこからどれだけ調子を取り戻しているかが注目されましたが、まだ完全復調とまでは行っていないのかなという感じですね。3アクセルの成功率が低い分、4トゥループや3ルッツは確実に決めたいところでしたが、全体的にジャンプが傾いてしまいました。個人戦に向けては不安が残りますが、チャン選手は団体戦に関してもショートもフリーも出たいと強い意欲を示しているようで、実際にフリーにチャン選手とキーガン・メッシング選手のどちらが出るのかは不明ですが、チャン選手にとっては4年前と違って個人戦の表彰台が厳しい状況の中で、より団体戦にも力を注ぎたいという気持ちもあるのかなと想像しますし、単なる推測ですがそうした感情も理解できるような気がします。
 次の演技が団体戦のフリーになるのか、個人戦のショートになるのかはわかりませんが、彼にとって最後の五輪になる可能性が高いですから、悔いのない滑りをしてほしいですね。


 4位はGPファイナル2017王者、アメリカのネイサン・チェン選手です。

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 冒頭は最高難度の4ルッツではなく4フリップからの3トゥループを組み込みましたが、4フリップの着氷で体勢を崩しセカンドジャンプは2トゥループに抑えます。2つのスピンを挟んで後半、得意の4トゥループでしたがパンクして2回転となり、規定違反で無得点に。さらに鬼門の3アクセルは転倒。スピン、ステップシークエンスは全てレベル4とさすがの実力を見せつけましたが、全てのジャンプでミスを犯し、演技を終えたチェン選手は呆然とした表情を浮かべました。得点は80.61点で4位にとどまりました。
 今シーズン出場した試合で全勝しているチェン選手でしたが、まさかの演技でしたね。4フリップからの連続ジャンプのミスは許容範囲内としても、4トゥループでパンクするという姿は今季皆無だったので驚きました。その動揺が残る中での3アクセルも転倒と、最後まで彼らしさはなかったですね。これが五輪の魔物というものなのか、フィギュアの大会とは違う独特の雰囲気に飲まれてしまったのか、氷との相性が悪かったのか、いろいろ理由は考えられますが、これが個人戦でなくて良かったととらえることもできます。団体戦のフリーに出場するのかしないのかはまだわかりませんが、次は今回のミスは忘れて、いつもどおりのチェン選手らしさを取り戻してほしいですね。


 5位はイタリアの新星、マッテオ・リッツォ選手です。

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 冒頭の3アクセルは着氷が乱れて減点。しかし直後の3+3はクリーンに跳び切って加点1を得ます。後半の3ルッツも問題なくクリアし、スピン、ステップシークエンスは全てレベル4と丁寧にエレメンツをこなし、フィニッシュしたリッツォ選手は満面に笑みを浮かべました。得点は自己ベストに約1点と迫る77.77点で5位と好発進しました。
 今シーズン前半はシニアのB級国際大会に出場しながら、ジュニアGPにも出場し母国開催のイタリア大会では初優勝するなど二足のわらじで活躍しているリッツォ選手。初めての五輪で緊張感はあったでしょうが、滑るごとにのびやかさが増していくような演技で素晴らしかったですね。コーチは父のヴァルテル・リッツォさんですが、すぐ隣りにお父さんがいてくれるというのは心強いでしょうし、特にスピン、ステップ全部レベル4というのは勢いだけではなく、落ち着いていないとできないことだと思いますから、全体的に高揚する気持ちとともに落ち着きもあったのかなと想像します。
 イタリアが団体戦フリーに進出できればリッツォ選手も再び演技することになりますから、ぜひ頑張ってほしいですね。


 6位は韓国の新星、チャ・ジュンファン選手。4回転は外した構成で、冒頭の3+3を確実に下りると、3アクセルもきっちり成功。後半の3ルッツも決め、ステップシークエンスはレベル2どまりだったものの、スピンはレベル4を揃え、致命的なミスなく演技を終え地元の観衆の喝采を浴びました。得点はシーズンベストの77.70点で6位と上位に迫りました。
 7位は中国の実力者、閻涵(ヤン・ハン)選手。冒頭は代名詞の3アクセルでしたが、回転不足となった上に転倒。さらに4トゥループも転倒と大きなミスが相次ぎます。後半の3+3は何とかまとめ、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4とさすがの質の高さも発揮しましたが、77.10点で8位にとどまりました。
 8位はOARのミハイル・コリヤダ選手です。冒頭は大技4ルッツ、回転は充分でしたが着氷でこらえきれず転倒します。続いて4トゥループも転倒しコンビネーションにできず。さらに後半の得意の3アクセルも力んだのかパンクして1アクセルとなり、規定違反で無得点に。精彩を欠いた内容で74.36点の8位に沈みました。
 9位はドイツのパウル・フェンツ選手。序盤に得点源のジャンプを固めますが、4トゥループ、3アクセルともに転倒。後半の3+3も乱れ、スピンでもわずかな減点が重なり、66.32点で9位となりました。
 10位はフランスのシャフィク・ベセギエ選手です。冒頭に4トゥループ+3トゥループを組み込みましたが、3+2となり大幅な失点に。直後の3アクセルも回転が抜けて2回転になります。後半の3ルッツはクリーンに下りましたが、全体的にミス、取りこぼしの多い演技となり、61.06点で10位でした。



 団体戦男子ショートの結果は以上です。全体を通して転倒が非常に多く、まだ会場の雰囲気や氷になじめていない選手が多いのかなと感じましたが、その中で自分のペースを保っていた宇野選手は見事でしたね。一方、チャン選手やチェン選手、コリヤダ選手は個人戦に向けてどこまで立て直せるか、この団体戦の経験を個人戦にどう活かしていくか注目したいと思います。




 ここからはペアです。
 トップに立ったのは欧州王者、OARのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。冒頭の3ツイストを鋭い回転とクリーンなキャッチで決めると、続くサイドバイサイドの3トゥループは二人のタイミングもピタリと合わせて成功。さらにスロー3ループも下り、残りのエレメンツも全てレベル4と完璧な演技に、フィニッシュではモロゾフ選手が力強く拳を握り締めるシーンも。自己ベストを0.1点更新して堂々の1位となりました。
 さすがの欧州王者の演技でしたね。先月の欧州選手権ではこのショートで出遅れてしまったわけですが、その反省と教訓を活かしてしっかり調整してきたことが感じられました。また、ロシア代表としてではなくOARとしての出場ということで複雑な想いもあるでしょうが、氷の上ではそういった雑念はなく、演技にのみ集中してコントロールし切れていたように思います。団体戦フリーに出場するか否かは不明ですが、まずは個人戦でのメダルに向けて良い感覚をつかめたのではないでしょうか。

 2位は元世界チャンピオン、カナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード組です。冒頭の3ツイストはレベル2にとどまりましたが、難度の高いソロジャンプの3ルッツを最小限のミスに抑え、スロー3ルッツは完璧に成功。その後のエレメンツでは軒並みレベル4を揃え、76.57点で2位につけました。
 ちょっとしたミスはありましたが、よくまとまった好演技でしたね。今季序盤はソロジャンプの3ルッツで大きなミスを犯すことも多かったですが、シーズンが進むにつれて改善されてきたように思います。個人戦のメダルにも繋がる内容と言えますね。

 3位は世界選手権2017銀メダリスト、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。冒頭の3ツイストを抜群の高さで決め2.1点という極めて高い加点を得ると、次いでソロジャンプの3サルコウも確実に着氷。しかしスロー3フリップでは転倒。その後は目立ったミスなく質の高いエレメンツを揃えましたが、転倒が響き75.36点で3位となりました。
 全体的には非常に体もよく動いてキレの良い技が続いただけに、スロージャンプの転倒だけがもったいなかったですね。ドイツが団体戦フリーに進めるかどうかは微妙なところですが、このミスを個人戦でどう修正してくるかに注目ですね。

 4位はアメリカのアレクサ・シメカ=クニーリム&クリス・クニーリム組。冒頭の3ツイストをクリーンに成功させ1.6点の加点を獲得。その後もサイドバイサイドの3サルコウ、スロー3フリップ、ステップシークエンスと息の合った演技を披露しましたが、終盤のリフトのエンディングで若干バランスを崩すミスがあり減点。しかしシーズンベストで4位と好位置につけました。
 第2グループの1番滑走と比較的早い時間での登場となったシメカ=クニーリム&クニーリム組ですが、全米王者らしい風格のある演技で世界選手権で入賞経験もある実力を示しましたね。やはり夫婦ペアらしいユニゾンというのも感じられて、団体戦フリーも期待できそうですね。

 5位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組。まずはサイドバイサイドの3トゥループからでしたが、女性の于選手が2トゥループになってしまい大きな失点に。その後はクリーンなエレメンツを揃え本領を発揮しましたが、ジャンプミスが影響して69.17点で5位にとどまりました。
 団体戦フリー進出に向けて、中国チームとしては最も力のあるペアでより多くのポイントを稼ぎたいところだったと思うのですが、その想定からは少し外れてしまったかなと思います。于選手にとっては初めてのオリンピックというところで、また、若干ソロジャンプを苦手にしている感もあるので、ウィークポイントが如実に表れてしまったかもしれません。大ベテランの張選手がいかに于選手を導いて立て直していくのか、注目点ですね。

 6位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組です。こちらも演技序盤のサイドバイサイドの3サルコウが2回転になるミスがあり大きなロスに。そのほかはミスらしいミスなく滑り切りましたが、得点は伸び切らず6位でした。
 7位はイタリアのニコル・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組。3ツイストがレベル2、スロージャンプで着氷ミスがあり、自己ベストには約3点及ばず7位となりました。

 そして日本の須崎海羽&木原龍一組は8位と健闘しました。

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 冒頭は代名詞となっているサイドバイサイドの3ルッツ、木原選手がこらえた着氷になりましたが、最小限のミスにとどめます。続く3ツイストはキャッチが抱える形になりレベル1に加え減点。しかし、その後は全てのエレメンツをクリーンにこなし、これまでの自己ベストを7点近く更新し8位に入りました。
 緊張する五輪の舞台でパーソナルベストという見事な活躍でしたね。木原選手は滅多にミスすることのない3ルッツで着氷が乱れたということで悔しがっていましたが、そこで耐えたことも含めて、よく粘り、そして丁寧に演じ切ったと思います。思えば4年前のソチ五輪でも木原選手は高橋成美選手と組んで団体戦に出場し同じくショート8位となっていて、本番で強いなーと感じます。4年前はペアに転向してから約1年で、経験豊富な高橋選手にリードされる形だったと思いますが、今は若い須崎選手を木原選手がしっかりリードしていて、4年という年月の経過を感じるとともに、成長を実感して感慨深くなりました。ぜひ団体戦フリーもこの調子で頑張ってほしいですね。

 9位はイスラエルのペイジ・コナーズ&エフゲニー・クラスノポルスキー組です。演技序盤から安定して大きなミスなく要素をこなし、流れに乗った演技を披露しますが、終盤のステップシークエンスで女性のコナーズ選手が氷にスケート靴のエッジが引っかかった形で転倒。それでもアクシデント的な転倒を引きずらず、最後まで笑顔で滑り切り9位となりました。
 10位は韓国のキム・ギュウン&アレックス・カン・チャン・カム組。2ツイストは無難にまとめ、その後も大崩れすることなくエレメンツをこなしましたが、細々とした減点が多く自己ベストには及びませんでした。



 フィギュア競技の先陣を切って行われた団体戦男子ショートとペアショート。それぞれで各国が獲得したポイントを合わせて、初日の順位はこうなりました。


1位:カナダ 17ポイント
2位:アメリカ 14ポイント
3位:日本 13ポイント
4位:OAR 13ポイント
5位:イスラエル 11ポイント
6位:中国 10ポイント
7位:イタリア 10ポイント
8位:ドイツ 10ポイント
9位:韓国 6ポイント
10位:フランス 6ポイント



 カナダ、アメリカは男子、ペアともにコンスタントにポイントを稼いで上々のスタートを切りました。そして日本は何といっても宇野選手が獲得した10ポイントが効いて3位と好発進。前回のソチ五輪では初日4位だったことを考えても、メダルの希望が少し広がったかなと思います。一方、優勝候補のOARは男子での出遅れが響いて4位にとどまりましたが、ペアで1位となったことによってしっかりリカバリーしていて、さすがフィギュア大国の層の厚さを感じさせます。
 このあと団体戦は11日にアイスダンスSD、女子SP、ペアフリーが行われます。日本はアイスダンスに村元哉中&クリス・リード組が、女子にエースの宮原知子選手が登場。フリーに進めれば、ペアはもちろん須崎&木原組が再び登場です。まだまだ予断を許さない状況ですが、初日の良い流れを繋いで、表彰台を狙えるポジションをキープしてほしいと思います。では。


:記事冒頭の日本チームの画像、ビチェンコ選手の画像、チェン選手の画像、リッツォ選手の画像は、マルチメディアサイト「Zimbio」から、宇野選手の画像、須崎&木原組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、チャン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」の平昌五輪特集ページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-11 02:29 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 四大陸選手権2018、男子&ペア編の後編です。なお、前編はこちらからご覧ください。

ISU Four Continents Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 男子の6位となったのはウズベキスタンの実力者、ミーシャ・ジー選手です。

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 SPは冒頭の3アクセルをクリーンに決めますが、3+3はファーストジャンプの3ルッツの踏み切りのエッジが不正確とされわずかに減点、さらに足替えキャメルスピンではぐらつく場面がありこちらも減点と、細かな減点が重なり82.27点と得点は伸び切らず8位にとどまります。
 フリーはまず得点源の3アクセル+1ループ+3サルコウ、これをパーフェクトに決め1.57点の加点を得ます。続く単独の3アクセルは若干こらえてマイナス。3フリップはクリーンに着氷します。後半は3+3を鮮やかに成功させると、3ルッツ、3ループ、2アクセル+2トゥループ、2アクセルと全て成功。ステップシークエンスやコレオシークエンスでは高い加点も稼ぎ、166.69点でフリー7位、総合6位と自己最高位で7度目の四大陸を終えました。
 今季は好調をキープし続けているジー選手。今大会も最小限のミスのみでいつもどおり安定感のある演技でしたね。珍しくスピンでの取りこぼしが目立ちましたので、そういた細部の綻びをしっかり修正して、五輪ではジー選手のキャリアベストの演技が見られることを祈っています。


 7位はカナダのベテラン、ケビン・レイノルズ選手です。

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 SPは「モーニン」。2本の4回転を組み込み、最初の4サルコウはアンダーローテーション(軽度の回転不足)で両足着氷となります。次いで3アクセルはしっかり着氷。4トゥループからの連続ジャンプは4トゥループでステップアウトし単独に。ステップシークエンスやスピンでは目立った取りこぼしなくまとめましたが、ジャンプミスが響き74.65点で13位と出遅れます。
 フリーは「アルバム「The Armed Man」より」。冒頭は4サルコウ、大きな乱れなく下りますがアンダーローテーションの判定。次の4トゥループは回り切って着氷。さらに大技4サルコウ+3トゥループ+3ループに挑み、ファーストジャンプは回転不足だったもののサードジャンプまでしっかり跳び切ります。後半最初の3アクセルはこちらもアンダーローテーションに。4トゥループ+2トゥループは成功させ、3+2、3ルッツ、3サルコウと後半をほぼノーミスでクリア。フィニッシュしたレイノルズ選手は感極まった表情を浮かべ、力強く拳を握り締めました。得点は166.85点とシーズンベストをマークしフリー6位、総合7位と大きく順位を上げました。
 今大会をもって現役を引退することを発表していたレイノルズ選手。その並々ならぬ想いが込められたショート、フリーは完璧ではありませんでしたが、終始彼らしさに満ち溢れたものでした。特にフリーは4回転が敬遠されていた時代から4回転を果敢に跳び続けてきたレイノルズ選手らしく4回転を4本組み込み、そのうちの1本は4+3+3という最高難度のコンビネーションとして挑みました。近年は4回転の回転不足が多くなり苦労していたとはいえ、4回転の第一人者であるレイノルズ選手だからこその自信、矜持、凄みを感じさせられましたし、稀代の4回転ジャンパーとして時代を切り拓いてきたレイノルズ選手らしさを最後まで貫いた演技だったなと思いますね。
 今後彼がどういう道を歩むのかはわかりませんが、さまざまな挫折や怪我を乗り越えてきたレイノルズ選手ならばどんな道を選んでも力強く前進していけるのではないでしょうか。今までたくさんの素晴らしい演技の数々をありがとうございました。


 8位は同じくカナダのエラジ・バルデ選手です。

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 SP「サウンド・オブ・サイレンス」。まず冒頭の3フリップを決めると、次の3アクセルも着氷。後半の3+3も成功させてミスらしいミスなくまとめて75.17点で12位につけます。
 フリーは「I've Been Loving You Too Long/Get Up Offa That Thing/Coming Home/Uptown Funk」。まずは得点源の3アクセル+2トゥループをクリーンに下りて1点の加点を獲得。続く単独の3アクセルも軽やかに決め1.29点の加点を得ます。中盤の3ループは若干着氷でバランスを崩しかけますが、後半最初の2アクセル+3トゥループはクリーンに着氷。さらに3ルッツ+1ループ+3サルコウ、3ルッツ、3フリップ(踏み切りのエッジが不正確なためわずかに減点)、2アクセルと目立ったミスなく全てのジャンプを跳び切り、エレメンツ以外の場面ではバルデ選手らしいノリの良さと盛り上げ方で観客を沸かせ、演技を終えたバルデ選手は歓喜を爆発させました。得点は自己ベストまで0.77点の163.03点でフリー8位、総合8位となりました。
 昨年の9月上旬、練習中に転倒し頭を打ち脳震盪を起こしたバルデ選手。その影響もあってシーズン前半の試合は欠場せざるをえず、五輪代表を決める1月のカナダ選手権がシーズン初戦となりました。そのカナダ選手権は4位となり残念ながら五輪には届きませんでしたが、困難を乗り越えたからこその滑る喜びが今大会の演技にも表れていたような気がしましたね。
 バルデ選手は今シーズンをもって引退するとのことで、この四大陸が最後の試合となる可能性が高いのかなと思いますが、エキシビションには欠かせない選手として知られるエンターテイナーの彼が試合でもまさに彼らしい演技を最後に見せたことが本当に印象深かったですね。これからもスケートに大いに関わって、フィギュア界を別の形で盛り上げてほしいと思います。


 日本の無良崇人選手は12位となりました。

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 ショート冒頭は今季鬼門となっている4トゥループでしたが、パンクして2回転となり規定違反のため無得点になります。続く得意の3アクセルはダイナミックな跳躍で1.86点の加点。後半の3+3も決めますが、4回転のミスが致命的となり76.66点で10位にとどまります。

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 フリーもまずは4トゥループからでしたが、再びパンクして2回転に。直後の2本目の4トゥループは何とか回り切りますがステップアウト。3ループは難なく下ります。後半は確実に決めたい3アクセルから、これをコンビネーションで決めますが、2本目の3アクセルは着氷で乱れ。3+1+2は大きなミスなくこなし、3サルコウ、3ルッツと終盤にかけて尻上がりにジャンプを成功させましたが、精彩を欠いた内容に無良選手は顔を曇らせました。得点は148.75点でフリー11位、総合12位に沈みました。
 ショート、フリーともに4回転が決まらず本領を発揮できなかった無良選手。今大会を総括して無良選手は「4回転に翻弄された」という言葉を残しましたが、その言葉は今シーズン全体についても言えることなのかなと思います。世界の男子フィギュア界が4回転多種類時代に突入している中で、無良選手も元々持っている4トゥループに加え4サルコウにも取り組んできたわけですが、種類を増やすことで演技全体のバランスが崩れ、完成度が低くなり、4回転を1種類に絞っても負の連鎖から抜け出せていないような印象を受けました。4回転とどう向き合っていくかというのは難しいところですが、来季は無良選手の笑顔がもっともっと試合で見られるといいなと願っています。



 ここからはペアの結果です。

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 優勝はアメリカのタラ・ケイン&ダニエル・オシェア組です。ショートは減点なくすべてのエレメンツをこなしますが、3ツイストやサイドバイサイドジャンプであまり加点を稼げず、それでもパーソナルベストをマークして3位と好位置につけます。フリーは2アクセルからの連続ジャンプが単独になるミスはあったものの、そのほかの要素は全てクリーンに決め、しかも3ツイスト以外は全てレベル4と安定感を発揮し、自己ベストを約5点更新してフリー1位、総合1位となり、逆転で四大陸の頂点に立ちました。
 数週間前の全米選手権では2位となって惜しくもオリンピックの代表には選ばれなかったケイン&オシェア組。しかし世界選手権の代表には選出されていて(アメリカのペアの代表枠は、五輪が1枠、世界選手権が2枠のため)、この四大陸は3月の大舞台に向けてジャッジへアピールする重要な機会でもありました。そうした意味でこの優勝は本当に意義深いのではないかと思いますね。内容的にも手応えのつかめる演技だったでしょうし、今回のような演技をぜひ世界選手権でも楽しみにしたいですね。四大陸選手権初優勝、おめでとうございました。

 2位は同じくアメリカのアシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組です。SPは全要素をクリーンに成功させて自己ベストを更新して首位発進。しかしフリーはスロージャンプやサイドバイサイドの3+2+2のジャンプなど大技を決める一方で、細々としたミスや取りこぼしも散見され、自己ベストは上回ったもののフリー2位、総合2位とトップの座を守り切れませんでした。
 フリーの出来次第では初優勝の可能性も十二分にあっただけに、ちょっとしたミスの重なりがもったいないなと思うのですが、結成してまだ2季目のペアですから、今後の伸びしろ、レベルアップに期待ですね。

 3位は北朝鮮のリョム・テオク&キム・ジュシク組です。ショートは3ツイストやステップシークエンスのレベルは2どまりでしたが、GOEでのマイナスなくまとめ、わずかながら自己ベストを塗り替えて4位。フリーはサイドバイサイドの2アクセルで転倒、スロー3ループでの着氷の乱れがあったものの、そのほかのエレメンツではおおむね高い加点を積み重ね、自己ベストに極めて近いスコアでフリー3位、総合3位となり、北朝鮮のフィギュア選手としては初めての、ISU主催の国際大会でメダルを獲得するという歴史的快挙を成し遂げました。
 政治的なことで何かと話題になっているリョム&キム組ですが、実力は間違いなくハイレベルなものを持っていますね。今大会は中国勢は不在だったとはいえ、北米の実績のあるペアを押しのけての銅メダルですから、技術的にはもちろん、精神的にもタフなんだなと思います。五輪でもベストを尽くして、台風の目のような存在になってほしいですね。


 以下、4位はカナダのリュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコヴィッチ組、5位はアメリカのディアナ・ステラート&ネイサン・バーソロメイ組、6位はオーストラリアのエカテリーナ・アレクサンドロフスカヤ&ハーレー・ウィンザー組、7位はカナダのカミーユ・ルエ&アンドリュー・ウルフ組となりました。


 全日本王者の須崎海羽&木原龍一組は8位に入りました。

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 SPは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツで着氷が乱れ、3ツイストもレベル1とミスが続きますが、そのほかのエレメンツでは加点を獲得し、パーソナルベストを6点以上上回る56.95点で7位につけます。フリーは冒頭のサイドバイサイドの3ルッツが回転不足になり着氷もステップアウト。次いで3ツイストもキャッチが乱れるなどミスが続きます。その後も2つのスロージャンプやサイドバイサイドの3連続ジャンプなどがクリーンに決まらず、それでも100.32点で自己ベストを約5点更新し、フリー8位、総合8位で2度目の四大陸を終えました。
 ショート、フリーともに複数のミスはあったのですが、大きなミスというよりは惜しいミスという感じなので、一つの経験として収穫の多い試合になったのではないでしょうか。何よりも五輪に向けてパーソナルベストを更新できたことは自信にしてほしいなと思いますし、団体戦でも個人戦でも二人の力を思い切りぶつけてほしいですね。


 全日本3位の三浦璃来&市橋翔哉組は10位となりました。

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 SPは冒頭の2ツイストでレベル3を獲得しますが、キャッチで若干もたついたためGOEでは減点。サイドバイサイドの3トゥループはクリーンに決めますが、デススパイラルではうまく回転ができず無得点になるミスもあり、自己ベストに及ばず10位発進に。フリーは2ツイストを確実に成功させ加点も獲得。しかしサイドバイサイドの3トゥループは回転不足で転倒してしまいます。その後も細々としたミスがあり思ったように得点を伸ばせず。しかしわずかに自己ベストを更新してフリーも10位、総合10位でした。
 今季はシーズン前半はジュニアとしてジュニアGPに参加しながら、シニアの国際大会にも挑戦した三浦&市橋組。四大陸はもちろん初出場でしたが、今まで出場してきたどの国際大会とも違う感覚、雰囲気があって緊張感もあったのではないかなと想像します。ミスの多い演技とはなってしまいましたが、この経験を活かして世界ジュニア選手権では納得のいく演技ができるよううまく調整してほしいですね。



 四大陸2018、男子&ペア編は以上です。男子に関しては出場選手の年齢層が比較的高めで、その中でもジー選手やレイノルズ選手、バルデ選手のように今季で引退する選手も多く、五輪シーズンならではですが、例年とは違う雰囲気も感じました。五輪を控える選手たちにとっては改めて現時点での自分の状態を見つめ直す良い機会になったのではないかと思いますし、四大陸の演技が五輪に繋がることを願いたいですね。
 その平昌五輪はいよいよ6日後の2月9日に開幕。フィギュアスケートは、開会式当日の9日の午前から団体戦が始まり、11、12日と3日かけて世界最強国の称号を競う試合が続きます。そして、14、15日にペア、16、17日に男子、19、20日にアイスダンス、21、23日に女子、25日にエキシビションが行われます。当ブログでもできるだけ早めに、随時記事をアップしていく予定ですので、ぜひご覧ください。では。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、無良選手のSPの画像、ペアメダリスト3組の画像、須崎&木原組のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、ジー選手、レイノルズ選手、バルデ選手、無良選手のフリーの画像、須崎&木原組のSPの画像、三浦&市橋組の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」から引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-03 17:50 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)

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 1月22日から27日にかけて台湾の台北にて行われた四大陸選手権2018。この記事では男子とペアの結果についてお伝えします。
 男子の頂点に立ったのは中国のエース、金博洋(ジン・ボーヤン)選手。自身2度目となる300点の大台を突破し、初優勝を果たしました。2位は全日本王者の宇野昌磨選手、3位はアメリカの実力者、ジェイソン・ブラウン選手となっています。
 ペアはアメリカのタラ・ケイン&ダニエル・オシェア組が制し、こちらも初制覇です。

ISU Four Continents Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

*****

 四大陸王者となったのは世界選手権2017銅メダリストの金博洋選手です。

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 SPは大技4ルッツ+3トゥループから、これを完璧に決めて1.43点の加点を得ると、続く4トゥループも難なく着氷。後半の3アクセルも軽やかに下りて1.71点の加点を得て、ほぼノーミスで演じ切りました。得点は100.17点と初めて100点台に乗せ、2位と好発進します。
 フリー冒頭は単独の4ルッツ、これを鮮やかに成功させ2.71点の加点を獲得。さらに4サルコウ、3アクセル+1ループ+3フリップと難易度の高いジャンプを続けます。後半は4トゥループからで、これに2トゥループをつけたコンビネーションとして決めると、単独の4トゥループも着氷。単独の3アクセルも下り、3+3は着氷が乱れて3+2になったものの、最後の3フリップまで安定感抜群のジャンプを連発。ステップシークエンス、スピンも全てレベル4と取りこぼしなく、シーズンベストの200.78点でフリー1位、総合1位と逆転で四大陸を初制覇しました。
 シーズン前半は足の怪我の影響もあってなかなか本来の力を発揮し切れなかった金選手。GPファイナルも辞退して治療に専念し、そして満を持して11月以来の実戦となった今大会でしたが、じっくりと時間をかけて調整に集中してきたというのが見て取れる演技内容でしたね。金選手にとっても今回は五輪前の小手試しという意味合いが大きかったと思うのですが、シーズン前半であまりジャッジにアピールできなかった分、ここでしっかりとした滑りを見せるぞという本気度もうかがえて、気迫が感じられましたね。一つ一つのジャンプの質も以前よりもレベルアップしているような気がしましたし、この演技を五輪でもされると日本勢にとってはかなり厄介だなという印象を受けました。
 2年連続世界選手権銅メダリストとしての矜持を大いに示した金選手。元々シーズン後半の試合に調子を合わせてくる能力は高い選手ですが、そのポテンシャルが五輪でもどれだけ発揮されるか、楽しみです。四大陸初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは世界選手権2017銀メダリストの宇野昌磨選手です。

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 SPはまず代名詞の4フリップから、着氷で若干こらえますが大きな乱れなく下ります。後半に2つのジャンプ要素を組み込み、最初の4トゥループ+2トゥループは確実に成功。さらに得意の3アクセルも流れの中で跳び切り2.29点の加点を獲得し、100.49点で首位発進します。

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 フリー冒頭は4ループから、これをしっかり着氷しますが判定としてはアンダーローテーション(軽度の回転不足)に。続いて4フリップはこちらも回転が足りず転倒してしまいます。しかし直後の3ループはきれいに決めてすぐに立て直します。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、3アクセルは完璧に成功。続いて鬼門となっていた4トゥループ+2トゥループ、単独の4トゥループもクリーンに着氷。さらに3アクセル+1ループ+3フリップ、3サルコウ+3トゥループと終盤のコンビネーションジャンプも余裕を持って成功させ、演技を終えた宇野選手は表情に充実感を漂わせました。得点は197.45点でフリー2位、総合2位で優勝には惜しくも届きませんでした。
 細かな取りこぼしはチラホラありましたが、演技中、また演技後の宇野選手の笑顔が物語っていたように、一定の手応えを得た試合だったと言えますね。GPから全日本選手権にかけてフリー後半の4トゥループでミスすることが多くなっていた宇野選手にとって、今大会はその課題に真正面から取り組んで練習してきた成果をどれだけ出し切れるかというのが最重要ポイントだったと思うのですが、そのフリー後半がノーミスだったということで笑顔に繋がったのでしょうね。ただ、本人が「達成感はない」とおっしゃっていたように、あくまでも今回はオリンピック前に足元を固めるという意味合いが大きく、宇野選手が常々キーワードとして挙げている「攻める」というよりは、一つ一つ確実にという意識がうかがえたので、五輪ではここからさらに上積みをして、宇野選手自身が攻めることができたと思えるような達成感のある試合になるといいなと思いますね。
 五輪でも宇野選手らしく思い切りの良い演技で笑顔で滑り切れることを願っています。


 3位はアメリカの実力者、ジェイソン・ブラウン選手です。

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 ショート冒頭は得点源の3アクセル、これは着氷を乱します。しかし、3+3、後半の3ルッツはクリーンに決め、失敗した3アクセル以外は全て加点1以上と質の高いエレメンツを揃え、89.78点で4位と好位置につけます。
 フリーは全米選手権からプログラムを変更し「愛の香気 映画『ピアノ・レッスン』より」。冒頭はショートでミスを犯した3アクセルからの3トゥループの連続ジャンプ、これをパーフェクトに決め最高の滑り出しを見せます。続く2本目の3アクセルは着氷が乱れますが、後半に6つのジャンプ要素を組み込み、まず2アクセル、そして3ルッツ、3+2、2アクセル、3ループ、3ルッツ+1ループ+3サルコウと全て大きなミスなく予定どおりに成功。ステップシークエンス、スピンでもいつもどおりレベル4を揃え、笑顔のフィニッシュとなりました。得点はシーズンベストの179.44点でフリー3位、トータルでもシーズンベストをマークして3位に順位を上げました。
 全米ではまさかの6位に沈み五輪の切符を逃したブラウン選手。この四大陸が彼にとってシーズンの集大成の試合となったわけですが、最後にシーズンベストの演技ができて良かったなと思いますね(まだほかの試合にも出場予定があるかもしれませんが)。特にフリーは15/16、16/17シーズンと2季に渡って使用した「愛の香気」に戻しての演技で、体になじんだプログラムを再演することでシーズン最後に最高の演技をしたいという想いがあったのかなと想像します。今季は3アクセルに苦しめられた形で、今大会も3本中クリーンな成功は1本のみということで完全に調子を取り戻したわけではなかったかもしれませんが、演技への集中、表現への強い意志は途切れることなく、最初から最後までしっかりプログラムをコントロールしていて思わずうっとりとしてしまいました。やはり唯一無二の表現力はブラウン選手の最大の武器ですから、来季もその長所を最大限に活かして頑張ってほしいなと思いますね。


 表彰台まであと一歩の4位に入ったのは日本の田中刑事選手です。

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 SPは得点源の4サルコウから、これをしっかりと回り切って下り加点を得ます。次いで3+3、後半の3アクセルとどちらも高い加点を稼ぎ、ブルースの激しいメロディに合わせてエネルギッシュに演じ切りました。得点は90.68点で国際大会では自身初の90点台に乗せ、3位と好発進しました。

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 フリーもまずは4サルコウから、しかしパンクして3サルコウに。続く4サルコウは着氷で乱れ、さらに3アクセルもパンクで2回転にと低調な滑り出しとなります。スピンとステップシークエンスを挟んで後半、最初の4トゥループはこらえながらも何とか着氷。次いで3アクセルからの3連続ジャンプも決めます。さらに3+3、3ループ、3+2と後半はノーミスでまとめ挽回しました。得点はパーソナルベストとなる169.63点でフリー5位、自己ベストで総合4位となりました。
 好調なショートから一転、メダルに対する意識もあったのかフリーは硬さの目立つ出だしとなってどうなることかと危ぶまれましたが、後半の立て直しは見事でしたね。基礎点の大きいジャンプでミスが相次いでもパーソナルベストが出せたというのは地力が上がっている証拠だと思いますし、ジャッジからの評価も間違いなく高まっているんだなと感じます。とはいえ田中選手本人は今回の演技に納得感はないでしょうし、全日本に全力を注いだ後の試合なので多少調子が落ちるのは仕方ないのかなとも思いますので、五輪ではさらにパワフルな演技で世界に存在をアピールしてほしいですね。


 5位はアメリカのマックス・アーロン選手です。

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 SPは4トゥループからの連続ジャンプ、これを確実に成功させます。続いて3ルッツ、後半の3アクセルともに1点以上の加点の付く出来でまとめ、84.15点で6位につけます。
 フリーもまずは4トゥループ+2トゥループ、ショート同様に軽やかに成功。直後の4サルコウは着氷を乱しますが、次の3ループは切り換えて難なく跳び切ります。後半はまず3ルッツを決めると、3アクセル+2トゥループ、3アクセルと続けて着氷。3+1+3の難しいコンビネーションジャンプも下り、最後の2アクセルも成功と予定どおりにジャンプをクリアし、演技を終えたアーロン選手は満面に笑みを浮かべました。得点は171.30点でフリー4位、総合5位で大会を終えました。
 上述したブラウン選手同様、五輪代表入りはならなかったアーロン選手。こちらもシーズン集大成として臨んだ四大陸でしたが、ショート、フリーともにアーロン選手らしいジャンプが数多く見られましたね。アーロン選手はシーズン序盤こそ好調なスタートを切りましたが、GP2戦目のフランス大会以降は調子が下降していましたので、この大会に懸ける想いというのは意外に強かったんじゃないかなと思います。フリーは4回転を2本に絞ることで全体の完成度を高めていて、その効果がプログラムの端々にまで行き渡っているように感じられました。
 25歳とベテランの域に入っているアーロン選手ですが、まだまだ円熟味というよりはフレッシュな、エネルギーがほとばしるような演技を見せてほしいなと思います。



 さて、前編はここで終了とさせていただきまして、続きは後編とします。お手数をおかけしますが、続きは後編でお読みください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、宇野選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、金選手の画像、宇野選手のSPの画像、ブラウン選手の画像、田中選手の画像、アーロン選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから引用させていただきました。

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by hitsujigusa | 2018-02-02 02:35 | フィギュアスケート(大会関連) | Comments(0)