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 イタリアのミラノで行われた世界選手権2018。この記事では男子とアイスダンスについて書いていきます。
 平昌五輪の金メダリストと銅メダリストが欠場する中、男子を制したのは全米王者のネイサン・チェン選手。ショート、フリーともに1位で圧巻の初優勝を果たしました。2位は平昌五輪銀メダリスト、日本の宇野昌磨選手、3位はロシア王者のミハイル・コリヤダ選手でした。
 アイスダンスは平昌五輪銀メダリスト、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組が3度目の優勝を勝ち取りました。

ISU World Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 金メダルを手にしたのはGPファイナル王者、アメリカのネイサン・チャン選手です。

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 SP冒頭は4ルッツ+3トゥループ、若干耐えながらも最小限のミスに抑えます。後半に組み込んだ4フリップも同様にこらえながら着氷。さらに苦手の3アクセルは加点の付く出来でまとめ、終盤のステップシークエンスではアップテンポな曲調に合わせ躍動感あふれる滑りを披露しました。得点は101.94点でトップに立ちます。
 フリーはまず単独の4ルッツ、これをクリーンに決め2.14点の加点を得ます。次いで4フリップ+3トゥループはファーストジャンプで少し詰まったためセカンドジャンプを2トゥループにとどめ、続く単独の4フリップもきれいに成功させます。後半最初は4トゥループ、これを軽やかに下りると、4トゥループ+3トゥループも詰まり気味ながらも着氷。4サルコウはステップアウトしますが、鬼門の3アクセルは成功。最後の3+1+3も危なげなく下り、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と取りこぼしなし。演技を終えたチェン選手は満足そうにガッツポーズを見せました。得点はパーソナルベストかつ世界歴代2位となる219.46点でフリー1位、総合でも世界歴代2位の得点で1位となり、頂点を射止めました。
 五輪での劇的なフリーの追い上げから約1か月。今大会はショート、フリーともに揃えたい試合だったと思いますが、その課題を見事にクリアしましたね。五輪で失敗したショートはもちろんですが、最終滑走で迎えたフリーは自分の前に滑った選手たちがことごとく崩れていく展開の中、その流れに飲み込まれることなく終始フィジカルもメンタルもコントロールし切っていたのが素晴らしかったですね。五輪での挫折と復活、そして世界選手権での栄光は、チェン選手にとって忘れられない1か月間となったでしょうし、この経験が今後の彼の競技人生において原風景として強く影響を与え続けるのかなと思います。
 来季はさらに強い選手になることが予想されますから、日本勢にとってはますます強敵になっていくでしょうが、男子フィギュア界をリードする存在として4回転を始めとしたジャンプのみならず、演技全体で圧倒的なスケーターになっていってほしいなと思います。世界選手権初優勝、おめでとうございました。


 2位は全日本王者、宇野昌磨選手です。

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 SPは五輪から構成を変え、まずは4トゥループを確実に決め2.29点の加点を獲得します。後半に3サルコウ+3トゥループを組み込みましたが、ファーストジャンプの着氷でオーバーターンしセカンドジャンプは2回転に。最後の3アクセルはいつもどおりクリーンに跳び切り、ステップシークエンス、スピンは全てレベル4と丁寧にこなしましたが、94.26点で5位にとどまります。

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 フリーは五輪と同じ構成で臨み、まずは五輪では転倒した4ループでしたが、再び転倒となります。続いて代名詞の4フリップはアンダーローテーション(軽度の回転不足)の着氷で大きくバランスを崩し転倒扱いに。次の3ループは難なく下ります。後半最初は得意の3アクセルでしたがこちらも着氷で乱れ。さらに4トゥループはアンダーローテーションであえなく転倒します。しかし、直後の2本目の4トゥループに2トゥループをつけてしっかりコンビネーションジャンプにすると、3アクセル+1ループ+3フリップも成功。最後の3+3もしっかり決め、フィニッシュした宇野選手は疲労からか顔をゆがめ涙を滲ませました。得点は179.51点でフリー2位、総合2位となり、昨年に続き銀メダルを獲得しました。
 今大会の宇野選手は五輪後にスケート靴を新調した影響で右足を痛め、一時は棄権も考えるほど調整不足の状態で試合に臨みました。難度を落としたショートは3+3のファーストジャンプで力がありあまる形で着氷ミスに。一方、ショート前よりかなり痛みが和らいだというフリーは通常のジャンプ構成に戻しましたが、やはり練習不足が響いたのかベストからはほど遠い演技に終わりました。ですが、本人はそんなに痛くなかったと語っているとはいえ、足に多少なりとも違和感が残った状態での演技だったと思いますから、難しい4回転での失敗は致し方ないのかなとも思いますし、そういった失敗以上に最後の3つのジャンプを全てコンビネーションでクリーンに成功させたことが何よりも印象深く、宇野選手の執念を感じましたね。フリーもショート同様にジャンプの難度を落とせばもっときれいにまとめられた可能性はありますが、宇野選手の信念としてそれは許せないことだったのだと想像しますし、最近は以前よく口にしていた「攻める」よりも、「自分を信じる」という言葉をモットーとして挙げていますが、まさに今までの自分の練習や試合での経験を信じていたからこそ、調整不足の状況でもいつもどおりの構成で臨むという決断ができたのかなと思います。
 もちろん宇野選手自身が話しているように、スケート靴を変えるタイミングが遅れたことが怪我の原因ということで、そのあたりは今後への反省として活かしていかなければいけないでしょうが、そのことも含めて今大会での経験が宇野選手にとってプラスになったことは間違いないと思いますし、失敗を必ず成功に繋げられる選手なので、2年連続の世界選手権銀メダルという形で今季を締めくくった宇野選手がどんな来シーズンを送るのか、今から楽しみにしています。


 3位は欧州選手権銅メダリスト、ロシアのミハイル・コリヤダ選手です。

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 SPは大技4ルッツは外し、確実に4トゥループ+3トゥループを決め2.57点の加点を得ます。さらに3ルッツ、後半の3アクセルともに完璧な質で成功させ、演技を終えたコリヤダ選手は満足そうに破顔しました。得点は国際大会では自身2度目となる100点超えとなる100.08点をマークし、2位と好発進しました。
 フリーは冒頭に大技4ルッツを組み込み、果敢に挑みましたが惜しくも転倒。続く4トゥループはこらえながらも最小限の減点にとどめます。次いで3アクセルからの連続ジャンプはクリーンな着氷で前半を終えます。後半は4トゥループからの連続ジャンプでしたが、4トゥループで転倒となったため同じ単独ジャンプの繰り返しに。ですが、直後の3アクセルは落ち着いて成功。さらに3+1+3の3連続ジャンプも下りましたが、3ループはパンクして2回転に。最後の2アクセルは問題なく決めましたが、フィニッシュしたコリヤダ選手は笑みと悔しさが交じったような表情を浮かべました。得点は172.24点でフリー4位、総合では3位となり初めて世界選手権の表彰台に立ちました。
 ノーミスだったショートから一転、フリーは最終グループの負の連鎖に飲み込まれたのかコリヤダ選手も2度転倒と精彩を欠いた演技に。ただ、そのうち1本は実戦での成功が滅多にない4ルッツですし、3アクセルなど重要なジャンプは成功させているところを見ると、苦戦しながらも何とか耐えたと言えますね。また、ショートに関しては4ルッツを外しても100点を出せるとわかったのがコリヤダ選手にとって大きな収穫なんじゃないかなと思うので、今以上に安定感を増してくると来季はさらに手強い存在になっていきそうですね。


 4位はイスラエルのベテラン、アレクセイ・ビチェンコ選手です。

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 ショートは3アクセルを完璧に下り2点の高い加点を獲得。続けて4トゥループにも成功します。後半の3+3も問題なく着氷し、ステップシークエンスやスピンがレベル2になるなど細かい取りこぼしもありつつも、パーソナルベストの90.99点で7位につけます。
 フリーはまず4トゥループ+3トゥループから、これをスムーズな流れで決め1.57点の加点を得ると、次いで単独の4トゥループもパーフェクトでこちらは加点2の高評価。さらに3ループも難なく下り、理想的な前半となります。後半は3アクセルからでしたが着氷が乱れます。次も3アクセルだったものの、再び着氷で大きくバランスを崩し強引に2トゥループをつけましたがコンビネーションジャンプとして認められず。その後のジャンプは全てクリーンに跳び切り、自己ベストに近いスコアでフリーも7位、トータルでは自己ベストで4位と自己最高位をマークしました。
 フリーの3アクセルのミスがなければ自己ベスト更新、さらには初の表彰台という可能性もないではなかったのでもったいなかったなと思いますが、30歳にしてパーソナルベスト更新というのは素晴らしいとしか言いようがないですね。今大会に限らず、今季はシーズン全体を通して大崩れすることが少なく好調を保っていて、もちろん五輪を最大の目標に置いてシーズンを送ってきたでしょうが、五輪が終わった後もこうして心身ともに調子をキープしているというのがヒシヒシと伝わってくる演技でした。30歳という年齢を考えると、つい引退という文字がよぎってしまいますが、ビチェンコ選手自身は特に進退について言及はしていないようですし、まだまだ衰えは感じられませんので、来季も活躍を楽しみにしたいですね。


 5位に入ったのは日本の新星、友野一希選手です。

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 SP冒頭は得点源の4サルコウ、これをきっちり決めて好スタートを切ると、3+3も余裕を持って下ります。終盤の3アクセルも鮮やかに決め、スピンは全てレベル4と取りこぼしもなし。「ツィゴイネルワイゼン」の激しい旋律に乗せて、終始アグレッシブな滑りを披露し、滑り切った友野選手は安堵感からか涙を流しました。得点は自己ベストの82.61点で初めて80点台に乗せ、11位発進となりました。

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 フリーはまず4サルコウ+2トゥループ、着氷を乱しながらも回転不足なくクリアします。続いて2本目の4サルコウはクリーンな着氷で1.29の加点。さらに3アクセル+3トゥループは完璧で1.79点の加点を得ます。後半も3アクセルからの3連続ジャンプを決めると、3ループ、3サルコウ、3ルッツ、3フリップと次々とクリーンに成功。「ウエスト・サイド・ストーリー」の世界をスケール感たっぷりに演じ切り、フィニッシュした友野選手は力強く拳を天に突き上げ、喜びを表しました。得点は自己ベストを18点ほど更新しフリー3位、総合でも自己ベストを約24点上回り、初出場にして5位と大健闘しました。
 怪我の治療のため欠場を表明した羽生結弦選手の代役として急遽出場が決まった友野選手の大躍進は、今大会最大のサプライズと言ってもいい驚きに満ちた出来事となりました。SPは順位こそ11位でしたが内容的には申し分なく、思わずこぼれた涙からはのびやかな演技とは裏腹に相当緊張していたのであろう友野選手の素顔が垣間見えました。そしてフリー、冒頭の4+2こそ少し乱れがありましたが、単独の4サルコウを決めたところから一気に波に乗り、序盤からあっという間に会場を友野選手の色に染め上げていった印象を受けました。技術面がしっかりしていただけではなく、表現面でも一つ一つのポーズがきれいに決まっていたので見栄えが良く、観客やジャッジへの目線の送り方やアピールも素晴らしく、観客がどんどん友野選手の滑りに引き込まれていく雰囲気がテレビ画面を通しても伝わってきました。
 友野選手といえば2シーズン前、怪我で欠場した山本草太選手の代わりに初めて世界ジュニア選手権に出場してパーソナルベストをマークしたり、今シーズンも体調不良で欠場した村上大介選手の代役として出場したNHK杯で7位に食い込んだりと、代役出場での活躍というのが印象深い選手なのですが、今大会も同じようなシチュエーションで予想以上の演技を見せてくれました。初めての世界選手権でいつもとは違う緊張がなかったわけはないと思うのですが、それ以上に滑る喜びや楽しさが上回っていたのかもしれませんし、友野選手のインタビューを聞いているととても冷静に自分を分析できているなという印象で、今回の結果に関して満足感を漂わせつつも、「今の自分の限界がわかった」とも話していて、結果に浮かれることなく地に足がしっかりついている選手なんだなと感じましたね。
 とはいえまだシニア1年目でこれからいろんな壁にぶつかることもあるでしょうから、今回のように楽しんで滑る気持ちを大切にして、さらなる飛躍目指して頑張っていってほしいですね。



 さて、前編はとりあえずここまでとして、続きは後編に。後編の記事アップをお待ちください。


:男子メダリスト3選手のスリーショット画像、宇野選手のSPの画像、コリヤダ選手の画像、ビチェンコ選手の画像、友野選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、チェン選手の画像、宇野選手のフリーの画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2018-03-29 22:24 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 前記事に引き続き、3月19日から25日にかけて開催された世界選手権2018の女子とペアについてお伝えします。なお、前編はこちらのリンクからご覧ください。

ISU World Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 6位に入ったのはアメリカ王者のブレイディ―・テネル選手です。

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 SP冒頭は得点源の3ルッツ+3トゥループ、着氷自体は問題ありませんでしたが、ルッツの踏み切りが不正確だったため加点は付かず。後半の3ループ、2アクセルではしっかり加点を得て、スピンは全てレベル4とそつなくまとめ、パーソナルベストの68.76点で7位につけます。
 フリーもまずは3ルッツ+3トゥループ、ショート同様にきれいに下りましたが、再び3ルッツの踏み切りミスでわずかに減点を受けます。次いで2アクセルはクリーンに着氷。続く3フリップも問題なく着氷したかに見えましたが、アンダーローテーション(軽度の回転不足)の判定。さらに後半最初の2アクセル+3トゥループも同様の理由で減点となります。3+2+2はファーストジャンプのルッツがやはり踏み切りのミス。終盤の3ループ、3サルコウは完璧に決め、演技を終えたテネル選手は満面に笑みを浮かべました。ただ、得点は思ったほど伸びず、131.13点でフリー4位、総合6位で初めての世界選手権を終えました。
 ショート、フリーともに目立ったミスはなかったですが、細かな回転不足で少しずつ失点したのがもったいなかったですね。ただ、今シーズン全体を通してテネル選手にとっては飛躍のシーズン、新たな一歩を踏み出せたシーズンになったのは間違いないでしょうから、来季は今季の安定感を持続させることはもちろん、さらなるスケーティング面の強化や表現面の洗練が必要かなと感じます。特に表現面でさらに一皮剥けることができれば、スケーターとしてもう一段階レベルアップできると思いますから、期待したいですね。


 7位は昨年の世界選手権銅メダリスト、カナダ王者のガブリエル・デールマン選手です。

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 ショートはまず代名詞のダイナミックな3トゥループ+3トゥループ、これを完璧に決めてほとんどのジャッジから加点3を得ます。後半の3ルッツ、2アクセルもミスらしいミスなくこなし、演技を終えたデールマン選手は笑顔で観客の歓声に応えました。得点は自己ベストに迫る71.61点で6位と好位置につけます。
 フリーも冒頭は3トゥループ+3トゥループ、全ジャッジから満点となる加点3の評価を受けます。次いで3ルッツでしたが、パンクして2回転に。さらに3フリップもこらえる着氷となります。後半最初は3ルッツからの3連続ジャンプをきっちり着氷。しかし3ループはアンダーローテーションで着氷が乱れます。その後も全てのジャンプで耐える着氷が続き、フィニッシュしたデールマン選手は表情をこわばらせました。得点は125.11点でフリー8位、総合7位にとどまりました。
 五輪ではフリー19位とまさかの大崩れで悔しい結果に終わったデールマン選手。リベンジを期す今大会でしたが、フリーは五輪ほどではないにせよ、似たような崩れ方をしてしまいましたね。元々デールマン選手によく見られるミスの仕方として、パワーをコントロールし切れず着氷でふんばるという形のミスが多いのですが、今回も3+3のように素晴らしいジャンプがあった一方で、ほとんどのジャンプは力を制御できていない印象を受けました。ただ、ハマれば昨年の世界選手権のように爆発力のある選手なので、来季は爆発力に加えて、常に一定以上の演技ができる安定感を手に入れることが課題になるのかなと思います。


 8位はGPファイナル銀メダリスト、ロシアのマリア・ソツコワ選手です。

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 SP冒頭は3ルッツ+3トゥループ、若干流れが滞りましたがクリーンに跳び切ります。後半の3フリップ、2アクセルともに確実に成功。ステップシークエンス、スピンは全てレベル4を揃え、71.80点で5位と好発進します。
 フリーも冒頭は3ルッツ+3トゥループでしたが、セカンドジャンプがアンダーローテーションに。続く3フリップは鮮やかに成功。後半に5つのジャンプ要素を固め、その1発目の3ループはクリーンに下りましたが、次の3+1+3は全体的に詰まった着氷になり回転不足の判定。直後の3ルッツも回転が足りず転倒してしまい、終盤の2つのジャンプは大きなミスなくまとめたものの、ジャンプミスによる減点が響き、124.81点でフリー9位、総合8位と順位を落としました。
 ショートはまずまずまとめて良い滑り出しでしたが、フリーはソツコワ選手の課題である回転不足、そして安定感の不足というのが如実に表れた内容だったかなと思います。大柄な選手なのでどうしても回転がギリギリになりがちなのですが、現在は多くのジャンプで片手を上げて跳んでいるので、その跳び方があまりジャンプに良い影響を与えていないのかなという気もします。余裕を持ってジャンプを跳ぶためにはさらに高く跳ぶか、回転軸を細くするしかないのでしょうが、ソツコワ選手の場合、体格には恵まれているので高く跳び上がって跳ぶジャンプというのが理想的なように思いますが、そのためには基礎的な体力作りやジャンプを一から見直す必要もあるでしょうし、簡単なことではないですね。ただ、さらに安定感のある選手になるためには回転不足は喫緊の課題ですから、来季ソツコワ選手がどんな成長を見せてくれるのか期待したいと思います。



 さて、ここからはペアについてです。

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 優勝は平昌五輪金メダル、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組です。SPは冒頭の3ツイストを完璧に決め全てのジャッジから加点3の高評価を得ると、その後のエレメンツでも軒並み高い加点を積み重ね、パーソナルベストかつ世界歴代2位の82.98点を叩き出し圧巻の首位に立ちます。フリーもまずは安定感抜群の3ツイストを成功させ再び全ジャッジが加点3の評価。次いでスロー3フリップ、ソロジャンプの3+2+2でも多くのジャッジから加点3を得て最高のスタートを切ります。中盤以降も全ての要素が完璧で、加点1以上、そのうち4つでは加点2以上を稼ぎ、フィニッシュした二人は表情に充実感を漂わせました。得点は自身が五輪でマークした世界最高得点を塗り替える162.86点でもちろんフリー1位、トータルではロシアのタチアナ・ボロソジャー&マキシム・トランコフ組がソチ五輪でマークした世界最高を上回る245.84点をマークし、大差で世界選手権初制覇を成し遂げました。
 とにもかくにも素晴らしいとしか言いようのない演技でしたね。ショートは五輪ではジャンプミスで4位と出遅れたので、苦い記憶がよぎる感じもあったかもしれませんが、今回はスロージャンプの場面でサフチェンコ選手がバランスを崩しそうなところを必死にぐっとこらえたのが見て取れ、五輪と同じ轍は踏まないという強い意思がうかがえたシーンでもありました。そして世界最高となったフリーは、全てのエレメンツがまさに完璧。ショートで2位のペアと僅差だったことを考えると、優勝のためにはミスが許されないという状況で決して心理的にも楽なシチュエーションではなかったと思うのですが、そういった重圧を全く感じさせないのびやかな演技は驚異的でした。また、改めてこのペアの演技を見て感じたのは、リフトにしてもスロージャンプにしても、男性が女性を持ち上げる時によいしょという感じが全くなく、本当に重力を感じさせないような浮遊感があるなということで、まさにペアの醍醐味を存分に味わわせてくれるペアだなと感じました。来季サフチェンコ&マッソ組がどういう選択をするのかはわかりませんが、34歳とはいえサフチェンコ選手はまだまだ衰えは見えず、ペアとしてさらに進化していく感じもしますので、楽しみにしたいですね。世界選手権初優勝、おめでとうございました。

 2位は欧州王者、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組です。ショート冒頭は得意の3ツイスト、パーフェクトな出来で全ジャッジから加点3を得ると、3トゥループ、スロー3ループもクリーンに着氷。残りのエレメンツでも全てレベル4を獲得し、自己ベストに迫る81.29点で首位と僅差の2位につけます。フリーは冒頭で大技4ツイストに挑み、レベル3、加点も1以上とクリーンにまとめます。しかし続く3サルコウはパンクして2回転に。3トゥループからの連続ジャンプも着氷ミスとなります。そのほかのエレメンツは全て完璧にこなしましたが、2つのジャンプミスが響き、144.24点でフリーも2位、総合2位となりました。
 五輪はショートで2位発進しながらもフリーでミスを犯し表彰台を逃したタラソワ&モロゾフ組。そのリベンジの意味もあってこの世界選手権は強い意気込みを持って臨んだと思うのですが、五輪と似た試合展開になってしまいましたね。結果的には自己最高の銀メダルを獲得しましたが、演技内容としてはフリーでミスが複数出てしまったということで五輪と同じ課題が残ったのかなと思います。今でも充分完成度の高いペアですが、世界の頂点を狙うためにはどんな状況でも揺るがない安定感が求められますから、来季はさらに強くなった姿に期待したいですね。

 3位はフランスのヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ組です。SPはサイドバイサイドの3サルコウでミスがありましたが、そのほかのエレメンツは無難にまとめて3位。フリーもスロー3サルコウで転倒するミスがあったものの、そのミスを引きずることなく挽回し、技術点では全体の2位の得点を獲得し、フリーも3位、総合3位で初めて世界選手権の表彰台に立ちました。
 五輪ではショートでノーミスだったもののフリーでミスが重なり5位だったジェームズ&シプレ組。今大会は五輪の2、3位のペアが欠場ということで、順当にいけばメダルが狙えるという状況でしたが、ショートで4位のペアと1点差もないというきわどい展開となりました。ただ、フリーはジェームズ&シプレ組の直前に滑った4位のペアがあまり振るわず、ジェームズ&シプレ組にとっても少し心の余裕が生まれたのか大技のスロー4サルコウを回避し3サルコウに難度を落としたのですが、惜しくも転倒。メダルというものを意識する中でいつもとは違う感じもありつつ、ミスをしたあとに落ち着きを取り戻したというのが、このペアにとって来季に繋がる成長なのではないかと思いますね。

 以下、4位はロシアのナタリア・ザビアコ&アレクサンデル・エンベルト組、5位はイタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ組、6位はカナダのカーステン・ムーア=タワーズ&マイケル・マリナロ組、7位は中国の于小雨(ユー・シャオユー)&張昊(ジャン・ハオ)組、8位はロシアのクリスティーナ・アスタホワ&アレクセイ・ロゴノフ組となっています。

 日本の須崎海羽&木原龍一組は、SP24位でフリーに進めませんでした。

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 SPは冒頭の3ルッツをしっかり跳び切りましたが、踏み切りのエッジが不正確とされたのと、二人のジャンプのタイミングがずれたため減点を受けます。次いで3ツイストはキャッチミスでレベル1に加えこちらも減点。スロー3サルコウでもステップアウトがあり、技術点を思ったほど稼げず、24位でフリー進出を逃しました。
 今回のフリー進出ラインは63.26点ということで自己ベストが57.74点の須崎&木原組にとっては現実的にフリー進出は厳しかったのですが、それ以上に彼ら本来の実力が発揮できなかったというのが残念だったかなと思います。二人にとっては初めての世界選手権で、五輪で2度自己ベストを更新した流れのままにいきたかっと思うのですが、今回は1つのミスから連鎖してしまう悪い流れを止められなかったですね。ただ、もっともっと進化する余地のある可能性に満ちたペアだと思いますので、今季の経験を活かして、オフシーズンを存分に利用して、来季はさらに強いペアになってほしいと願っています。



 さて、世界選手権2018、女子&ペアの後編は以上です。
 五輪から約1か月後の世界選手権で、五輪で大成功を収めた選手、五輪で苦杯を味わった選手、五輪にたどり着けなかった選手、さまざまな選手が集いましたが、それぞれのドラマが繰り広げられ、五輪にも劣らぬ見ごたえたっぷりの試合となりました。そんな中、五輪チャンピオンで今大会に参加したのは女子のザギトワ選手とペアのサフチェンコ&マッソ組のみでしたが、一方は涙、一方は満面の笑みと明暗がくっきり分かれる形に。ザギトワ選手とサフチェンコ&マッソ組の明暗の理由を挙げるとすれば、やはり経験の差なのかなと思いますね。
 そして日本勢は女子のダブル表彰台という予想以上の結末に。ザギトワ選手、コストナー選手のミスに助けられた形ではありますが、結果的には余裕で3枠復活も達成し、シーズンの締めくくりとしてこれ以上ないハッピーエンディングとなりましたね。
 さて、次は男子&アイスダンスです。こちらも予想外の試合展開となりましたが、記事アップまでしばらくお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、毎日新聞のニュースサイトの英字版「The Mainichi」が2018年3月24日に配信した記事「Figure skating: Canada's Osmond wins world title as Zagitova, Kostner fall」から、テネル選手の画像、デールマン選手の画像、ソツコワ選手の画像、ペアメダリスト3組の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、須崎&木原組の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2018-03-27 16:38 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)

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 激動の17/18シーズンを締めくくる世界選手権2018が今年はイタリア北部の都市ミラノで行われました。平昌五輪が終了して約1か月後ということで、五輪に出場した選手たちにとっては調整の難しさをうかがわせる場面がしばしば見られ、五輪シーズンならではの世界選手権となりました。
 大荒れとなった女子の戦いを制したのは平昌五輪銅メダリスト、カナダのケイトリン・オズモンド選手です。五輪と変わらぬ安定感を発揮し、カナダ女子としては45年ぶりの世界女王の座を射止めました。2位は日本の樋口新葉選手、そして3位も同じく日本の宮原知子選手となり、2007年以来となる日本女子ダブル表彰台の快挙を達成しました。
 ペアは平昌五輪金メダル、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブリュノ・マッソ組が初優勝し、五輪王者の矜持を示しました。

ISU World Championships 2018 この大会の詳しい結果、各選手の採点表が見られます。

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 女子のチャンピオンとなったのはカナダのケイトリン・オズモンド選手です。

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 ショート冒頭は得点源の3フリップ+3トゥループ、これを完璧に決め1.4点の加点を引き出します。次いで3ルッツはきれいに下りましたが、踏み切りのエッジが不正確と判定されわずかに減点。後半の2アクセルで着氷を乱し、72.73点で4位にとどまります。
 フリーもまずは3フリップ+3トゥループ、ショート同様に鮮やかな跳躍で1.6点の加点。しかし2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプの着氷でステップアウトします。続く3ルッツは踏み切りのエッジに関してはショート同じく不正確と判定されたものの、若干ながら加点を獲得。後半に入り最初の3ループを軽やかに下りると、3フリップ、3+2+2と危なげなく着氷。最後の2アクセルも余裕を持って成功させ、演技を終えたオズモンド選手はほっとしたように破顔しました。得点は自己ベストに迫る150.50点でフリー1位、総合1位と逆転で初の世界女王に輝きました。
 オリンピックと比べると細かなミスは散見されましたが、それでも2試合続けて安定した演技を披露したというのが何よりも素晴らしかったですね。フリー後半になると転倒など大きな失敗を犯してしまうというパターンがシーズン前半は続いていましたが、五輪ではしっかりその課題を修正し、そして今大会は五輪で銅メダリストになったことによってさらに自信を深めて、精神的に多少ゆとりを持った状態で臨めたのかなという気がします。
 カナダ女子にとっては1973年のカレン・マグヌセンさん以来となる世界選手権優勝という快挙を成し遂げたオズモンド選手。ベテランの域に入っていますが、表現力もますます円熟味を増しつつあって、これからまだまだ進化していく予感を感じさせますね。世界選手権初優勝、おめでとうございました。


 銀メダルを獲得したのは日本の樋口新葉選手です。

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 SP冒頭は得意の2アクセルをパーフェクトに決めて好い流れを作ります。後半に3ルッツ+3トゥループを組み込みますが、セカンドジャンプで持ちこたえられず転倒。直後の3フリップはきれいに決めたものの踏み切り時のエッジミスで若干の減点に。フィニッシュした樋口選手は顔を曇らせました。得点は自己ベストから8点ほど低いスコアで8位と出遅れます。

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 フリーは冒頭に今季鬼門となっていた3サルコウを組み込み、確実に成功。さらにショートで転倒した3ルッツ+3トゥループはしっかり着氷し1.3点の加点を得ます。中盤の2アクセルも難なく着氷し、勝負の後半、鍵を握る2つ目の3ルッツ+3トゥループをまたもや成功させると、3ループ、2アクセルからの3連続ジャンプもクリーンに着氷。最後の3フリップは踏み切りから着氷までノーミスでクリア。終盤はパワフルな女性ボーカルに乗せたダイナミックかつのびやかなステップシークエンスで観客を引き込み、演技を終えた瞬間、樋口選手は喜びの声を上げるとともに大粒の涙を流しました。得点は自己ベストに0.29点と迫るハイスコアでフリー2位、総合2位と一気に追い上げました。
 オリンピック出場を逃し、今大会が4年後に向けての再スタートの舞台となった樋口選手。練習から好調な姿を見せていたものの、ショートはちょっとしたズレによるものなのか3+3で思いがけない転倒があり8位。結果的には1年前と近い順位、スコアで迎えたフリーでしたが、全てのエレメンツで加点を獲得する完璧な演技で悪夢を払いのけ、8位から2位へと大きくジャンプアップしました。五輪への強い想いを当初から口にしていた樋口選手にとって、今季はパーソナルベスト更新のロンバルディアトロフィーで幕を開け、GPシリーズも2試合ともに表彰台と安定感を発揮。しかしGPファイナルで最下位の6位にとどまり、五輪の切符を懸けた全日本選手権では足の怪我の影響もあって、初出場以来初めてメダルを逃し五輪メンバーにも選ばれずという悔しさが募るシーズンの経過をたどっていました。そんな中で臨んだシーズン最終戦の今大会、ショートで痛いミスを犯し出遅れながらもフリーであれだけ素晴らしい演技をできたのは、紛れもなく樋口選手の成長の証だと思います。もちろん今でも五輪に出たかったという気持ちは強いでしょうし、世界選手権でメダルを取れたからと言ってその悔しさが帳消しになるわけではないでしょうが、五輪に行けなかったからこその今回の演技だったと思いますし、五輪の代表争いに敗れたという負けをただの負けで終わらせず、その経験を糧に再び自分の足で立ち上がって、さらに新たな強さを手に入れるというのは本当に素晴らしいとしか言いようがありません。フリーの演技後、そして得点表示後の涙からは、樋口選手が今シーズン背負ってきたものの重さが感じられましたし、ようやくこれで五輪の呪縛みたいなものから解放されて、新しい気持ちで次のシーズンに向かっていけるのではないでしょうか。
 山あり谷ありの今季だったと思いますが、悪かったことも良かったことも全てひっくるめて財産になっていくでしょうから、来季はさらに進化した姿を期待したいですね。


 3位は日本のエース、宮原知子選手です。

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 SP冒頭は鍵を握る3ルッツ+3トゥループでしたが、1つ目のジャンプで若干詰まりセカンドジャンプが回転不足となります。後半の3ループ、2アクセルは問題なく成功。ステップシークエンス、スピンもいつもどおり全てレベル4で揃え、パーソナルベストに迫る74.36点で3位と好発進します。

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 フリーはまず3ループをきっちり決めると、続いてショートで回転不足のあった3ルッツ+3トゥループ、これはファーストジャンプが回転不足となってしまいます。次の3フリップはクリーンに着氷し前半をまとめます。後半はまず3+2+2からでしたが、ファーストジャンプでバランスを崩しかけながらも何とか最後のジャンプまで繋げます。直後の2アクセル+3トゥループは余裕を持って成功。次いで今季鬼門となっている3サルコウは踏み切ってすぐに軸が傾き、2回転になった上に転倒します。最後の2アクセルは落ち着いて決め、終始「蝶々夫人」の世界観を情感たっぷりに演じ切りました。得点は135.72点でフリーも3位、総合3位で3年ぶりにメダルを獲得しました。
 結果的には表彰台に立てたとは言え、内容としては宮原選手にとっては全く納得はできないでしょうね。オリンピックであれだけ素晴らしい演技をしたあとですから、もう一度同じような演技をするというのは非常に難しかったと思いますが、常に完璧な演技を目指す宮原選手ですから今回も当然完璧を求めていたでしょうし、また、五輪であと一歩のところでメダルに届かなかったことによって今回こそはという想いもあっただろうと想像します。その強い気持ちが今回は珍しく空回りしてしまったのかもしれませんし、もちろん五輪から短い期間で再びピークを持ってくる難しさというのはほかの選手同様にあったと思います。さらには今回転倒したのは今季何度かパンクや転倒をしている3サルコウで、五輪ではクリーンに跳び切りましたが、力みがあると軸が傾いてしまう傾向にあるので、そうした部分は来季に向けて重要な修正ポイントになりそうですね。
 ただ、大きな失敗があった中でも演技構成点では五輪以上の評価を受け、着実にジャッジからの信頼は高まっているので、来シーズンは今までどおりの安定感はもちろん、表現面でもこれまで見たことのないような宮原選手の新たな一面を楽しみにしています。


 4位だったのはイタリアの大ベテラン、カロリーナ・コストナー選手です。

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 SP冒頭は3フリップ+3トゥループ、これをしっかり回り切って下り加点1.8の高評価を得ます。さらに3ループもパーフェクトな流れで決め1.4点の加点。後半の2アクセルもクリーンに着氷し、代名詞のステップシークエンスではスケールの大きいスケーティングと繊細な表現が融合した滑りで観客を魅了。フィニッシュしたコストナー選手は母国のファンの大喝采を浴びました。得点は自己ベストかつ世界歴代3位となる80.27点で堂々の首位に立ちました。
 フリーはまず苦手の3ルッツからでしたが、回転が抜けて2回転に。続く3+2は軽やかに下り1.5点の加点を獲得。さらに3フリップ、3ループとどちらも1点以上の加点が付く美しい跳躍でまとめます。後半、最初の3トゥループは問題なく決めましたが、2アクセルは空中で回転がほどけて1回転に。さらに3サルコウは転倒と大きなミスが重なります。最後は世界一のスケーティング技術を駆使したステップシークエンスと安定したスピンで締めくくりましたが、複数のジャンプミスが響き、128.61点でフリー5位、総合4位となり4年ぶりの表彰台は逃しました。
 ショート1位という最高の展開で迎えたフリー。しかし最終滑走だったコストナー選手の直前に五輪女王のアリーナ・ザギトワ選手が3度転倒する大波乱があり、その余波が残る中でコストナー選手の演技が始まりました。最初の3ルッツこそミスとなったものの、そのあとは予定どおりにジャンプを次々と決め、いつものコストナー選手のように見えたのですが、最後の2つのジャンプでまさかのミスが続いてしまい、結果的にはコンビネーションジャンプが1つしか入らなかったということもあり、全体の13番目の技術点にとどまりました。演技が始まる前の表情はいつになく硬く、母国開催の世界選手権で、しかも目の前で絶対的な優勝候補だったザギトワ選手が優勝争いから脱落していき、コストナー選手にとってはまたとない優勝のチャンスが訪れた一方で、否応なく優勝を意識せざるをえない状況に追い込まれたということが、力みを生じさせてしまったのかなと想像します。14度目の世界選手権という経験豊富なコストナー選手といえども、こういうシチュエーションでフリーを滑るというのは初めてだったと思いますし、誰よりも豊富な経験の持ち主である彼女でさえも、想像を超えた緊張やプレッシャーというのがあったのでしょうね。
 母国でメダルを手にできなかったのは残念でしたが、ミスがあっても優雅でダイナミックな彼女らしい演技を存分に見せてくれました。今後はどういう道を歩むのかはわかりませんが、競技でも競技じゃなくても、これからも氷上で輝き続けてほしいと思います。


 5位は平昌五輪金メダリスト、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手です。

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 ショートは3つのジャンプ全てを後半に組み込んだいつもの構成で、その最初の3ルッツ+3ループは若干着氷を乱します。しかし、3フリップ、2アクセルはきっちりと決め、79.51点で2位と好位置につけます。
 フリーもジャンプは全て後半。まずはスピンとステップシークエンスを丁寧にこなし後半へ向けて流れを作り出します。そして後半、まずは3ルッツ+3ループからでしたが、ファーストジャンプで転倒し連続ジャンプにならず。さらに2アクセル+3トゥループはセカンドジャンプがダウングレード(大幅な回転不足)となり再び転倒に。続く3+2+2は何とか下りますが、単独予定だった3ルッツに急遽3ループをつけた連続ジャンプはセカンドジャンプがアンダーローテーション(軽度の回転不足)となり、3度目の転倒。3サルコウも回転が足りず、終盤の3フリップ、2アクセルはクリーンにまとめましたが、まさかの演技にザギトワ選手は顔をゆがめ流れる涙をこらえることができませんでした。得点は128.21点でフリー7位、総合5位に順位を下げました。
 五輪女王として、圧倒的な優勝候補として臨んだ初めての世界選手権。フリーは信じられないような演技となりました。五輪後はさまざまな取材やイベントがあって練習の時間が不足していた可能性もありますが、何よりも優勝するのが当たり前と世界中から期待されているという重圧が、今大会は重くのしかかってしまったのかなと思います。五輪の時は好敵手としてエフゲニア・メドベデワ選手がいて、ザギトワ選手だけに期待が集まるということはなかったのが幸いしましたが、今回はライバルとなるような選手はいませんでしたから、五輪とは違う異様な緊張を感じたのではないでしょうか。ですが、まだ15歳で初出場ということを考えると致し方ない部分もありますし、今シーズン15歳離れした強さを見せつけてきた彼女が最後に15歳らしい表情を見せたというのが、ある意味ほっとしたというか、彼女も普通の女の子だったんだなと感じましたね。
 ただ、五輪女王として毎試合優勝を求められる来季以降こそがザギトワ選手にとっては本当に大変な日々になると思います。若くして五輪を制してしまった選手の宿命と言えますが、これからどのようにオリンピックチャンピオンらしさを示していくか、そして選手として進化を見せていくかという困難な課題に向き合いながら、素晴らしいスケーターに成長していってほしいと思いますね。



 さて、世界選手権2018、女子&ペア編は一旦ここで終了し、後半に続けます。後編の記事アップをしばしお待ちください。


:女子メダリスト3選手のスリーショット画像は、毎日新聞のニュースサイトの英字版「The Mainichi」が2018年3月24日に配信した記事「Figure skating: Canada's Osmond wins world title as Zagitova, Kostner fall」から、オズモンド選手の画像、宮原選手のフリーの画像、コストナー選手の画像は、スポーツ情報サイト「スポーツナビ」のフィギュアスケートページから、樋口選手の画像、ザギトワ選手の画像は、マルチメディアサイト「Newscom」から、宮原選手のSPの画像は、「The Japan times」のニュースサイトが2018年3月22日に配信した記事「Carolina Kostner takes lead at world championships; Satoko Miyahara sits in third place」から引用させていただきました。

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# by hitsujigusa | 2018-03-26 18:00 | フィギュアスケート(大会関連) | Trackback | Comments(0)